コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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27 秘密の開示

 

 包み隠さずに。本当に包み隠さずに、全て話した。突然頭の中にリーナの声が聞こえるようになったことも、月の魔法も、ダンジョンと月、そしてリーナの関係も。

 そうして全て聞き終わった陽葵の反応は。

 

「ええ……」

 

 どん引きでした。

 

――仕方ないけど! 仕方ないけどなんか傷つく!

 

 いやあ……。正直、ちょっと、こう……。うん。傷つくね!

 

「陽葵。信じられない、よね……?」

「あー……。まあ、正直、菜月じゃなかったら信じなかったな」

 

 あれ? ということは……。

 

「まあ、信じるよ。というか、実際にダンジョンの外で魔法を使ってるだろ。ある意味証拠みたいなものだと思う。リーナってやつの存在は分からないけど」

 

 ああ、よかった。信じてくれるみたい。さすが陽葵だ。安心した。

 リーナについては、確かに分からないのは仕方ない。声も聞こえないのに信じられるわけが……。

 

――それなら、これでどう?

 

 そんなリーナの声。いつも通りの声にわたしは首を傾げただけだったけど、目の前の陽葵は目を丸くして固まっていた。

 まさか。

 

「え。陽葵、もしかして……。聞こえたの?」

「き、聞こえた。菜月にちょっと似てるけど……。確かに、違う声だ」

「リーナ!?」

――ふふん。念話の魔法よ。これを使えば、菜月以外とも会話は可能なの。

「それ先に知りたかったなあ!?」

 

 初めて聞いたんだけど! それがあったらもっと簡単に……。

 

――教えたところで念話をする相手なんていなかったでしょ。

「…………」

「やめてやれよ!? こいつ素でへこんでるぞ!?」

 

 いや……。大丈夫。分かってる。否定できない。友だちなんていなかったし、相談できる相手もいなかったし、今でも陽葵しか話し相手がいないし……。

 

「陽葵……友だちになってくれて……ありがとう……」

「やめてくれよ……。あたしまで泣きそうになるだろ……」

 

 そう言ってくれるのが、本当に嬉しいんだよ……。

 

――改めて、私がリーナ。月の魔女よ。よろしく。

「ああ……。よろしく。なんか、目の前に相手がいないっていうのは、違和感がすごいけど。

――慣れて。

「だよなあ」

 

 陽葵の言いたいことは分からないでもない。いや、もしかしたらわたしよりも違和感があるのかも。陽葵からすれば、向かい側にわたしがいるのに、話す相手は違うってことだから。

 

――でもこのままだとちょっと不便ね。ちょうどいいし、菜月。念話の魔法を教えるから。菜月が念話の魔法を使えば、私と菜月、陽葵の三人で念話で会話することが可能よ。

「わ、すごい。いいの?」

――もちろん。

 

 というわけで、リーナから念話の魔法を教えてもらった。わりと簡単な魔法だ。教わり始めた頃ならともかく、今ならすぐに使うことができる。

 

――こう、かな? リーナ。陽葵。聞こえる?

――おお! 聞こえる! 聞こえるぞ! すげえ!

――ふふん。これなら教室で内緒話とかもできるから。好きに使いなさい。

 

 すっごく便利な魔法だ。リーナが言うには、魔力さえこめればわりと長距離でも使えるらしい。まあそんな距離があるなら、電話した方が早いと思うけど。

 

――いいな、これ。やっていてちょっと楽しい。

――だねだね。授業の暇つぶしとかでも使えるかも。

――いや授業は真面目に受けろよ。

――不良から言われるとは思わなかった……。

 

 そういえば、陽葵ってわりと成績がいい方なんだっけ。学年トップレベル、とまではいかないけど、上澄みと言えるぐらいだっていうのは漏れ聞こえてきた会話で知ってる。

 ちなみにわたしは、平均ぐらい。悪くもなければ良くもない、その程度。

 

――ちなみに、念話の注意点だけど。

――あ、うん。

――当たり前だけど、念話の会話は外には聞こえないから。つまりひたすら無言の時間が流れてるってこと。歩いてる時とかにずっと念話していたらちょっと不気味だから気をつけなさい。

――あー……。なるほど。気をつける。

 

 二人並んで歩いているのに、ずっと無言。確かに何も知らなかったら不気味すぎるから、気をつけないと。

 

「必要なら念話、ぐらいがちょうどよさそうだな」

「だね。気をつけよう」

 

 そういうことになりました。

 

「それにしても……。月か……。リーナさんが言うには、月にも町があるってことだよな」

――呼び捨てでいいわよ。ええ、大きな街がある。地球の人には見つからないようにしてあるけど。

「で、その月の街にダンジョンで繋がっていると」

――そういうことね。

「…………。つまり、ダンジョンを攻略すれば、月に行ける?」

 

 そういうこと、なんだと思う。でもかなり難しいんじゃないかな。きっと、魔物の数も増えていくだろうから。

 

――魔物は地球の人が来ないようにするための防衛機構も兼ねているから、そう簡単にはいかないわよ。ドラゴンとか出てくるかもね。

「ドラゴン、いるんだ……」

「見てみたい……」

 

 いつか見れたらいいなあ。あまり深くまで潜りたいわけでもないんだけど。

 

「それでも、月の街ってなんか憧れるな……。菜月、行く時は言えよ」

「うん。ないとは思うけどね」

「フラグって知ってるか?」

「なにそれ」

「いや……。気にすんな」

――ふふ……。

 

 フラグってなんだろう。リーナも笑ってるし、何かあるのかな。

 大事な話は一段落。陽葵が信じてくれたから、わりとあっさり終わってしまった。まだ時間はあるから、お菓子でも食べながらお喋りしよう。

 チョコクッキーの袋を開けて、口に入れる。うん。あまい。

 

――あまーい! おいしー! チョコ! 本当に日本のお菓子は最高ね!

「…………」

 

 なぜか陽葵が神妙な面持ちになった。

 

「なあ、菜月」

「もぐもぐ……。うん?」

「リーナは菜月と感覚を共有してるのか?」

「うん。そうみたい」

「もしかして……。いろいろ美味しい物を食べたいっていうのは……」

 

 わ。今のリーナの感想でそれに気付くんだ。なんだか理解者が増えたみたいで、ちょっと嬉しいかもしれない。

 

「うん。そうだよ。リーナの希望」

「なるほどなあ……。もしかして、月にはまともなメシがなかったのか?」

――魔法でどうとでもなるからないわね!

「そっか……。いっぱい食べろよ」

「そうなるとわたしが太るんだけどね?」

「…………。がんばれ」

「見捨てられた!?」

 

 いや、いいんだけどね。これでもダンジョンに行くたびにかなり動いてるから、きっとカロリー消費でどうにか……なってる……かな……?

 別に誰かに見せるわけでもないけど、太りたいとは思わない。ちょっと、本当に気をつけたい。

 

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