コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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31 後藤さんからの打診

「あー……。もしかして、魔女さんはフロアボスを知りません?」

「…………。はい……」

 

 小さく頷くと、後藤さんは笑いながら教えてくれた。

 六層から現れる、フロアを徘徊する大きめの魔物。それをフロアボスって呼んでるらしい。

 フロアボスはその階層でも強力な個体で、その階層で問題なく狩りができる人でも、苦戦、もしくは勝てないほどなんだとか。

 

「六層のフロアボスはそこまでじゃないですけどね。七層からは俺だと戦いにすらならないです」

「そんなに……」

 

 月の魔法でも厳しい相手もかもしれない。ちょっと気をつけておこう。

 

「まあ、広大なフロアに一匹しかいないようなので、そうそう出会うことはありませんよ」

「フラグかな?」

「剣士さん、それを言ったらマジで出てきますよ」

 

 うん。陽葵は余計なこと言わないでほしい。

 

「それじゃあ、行きましょうか。近場のスポットだけ教えますね。探索の楽しみがなくなりますから」

「あはは……。お願いします」

 

 探索の楽しみ、なんて気にしたことがなかったけど……。でも、こんな草原のフロアなら、確かに自分でいろいろ探してみるのも楽しいかも。

 そうして後藤さんに教えてもらった場所は、美味しい木の実がなる大木の場所とか、ちょっと大きめの泉とか、見晴らしがいい景色とか……。本当に、ちょっとした観光案内だ。

 途中で狼の群れとも遭遇したけど、わたしと陽葵で問題なく処理。後藤さんは見守ってくれていただけ。後から聞いた話だと、厳しそうだったら助ける、かつまだこのフロアは早いと帰らせるつもりもあったらしい。

 

「なんか、ちょっとした慈善事業だな……」

「はは……。よく言われますよ」

 

 後藤さんはずっとそうして過ごしているのだとか。新しくこのフロアに来た人を見つけたら、声をかけていろいろ世話を焼く……。なんだろう。ちょっと親近感を覚える。

 

――菜月みたいなことを考えるやつっているんだな。

 

 陽葵も同じことを思ったみたいで、そんな念話を伝えてきた。わたしも、ちょっと嬉しい。

 そうして、案内は終わり。わたしたちならフロアボスも問題ないだろうから、のんびり探索してほしい、とのこと。

 

「ありがと……ございました」

「あざっす」

 

 わたしと陽葵がお礼を言うと、後藤さんはいえいえ、と笑って手を振った。

 

「むしろ余計なお世話だったかなって思いました。お二人ならこの階層なら問題なく過ごすことができるでしょうから」

「いえ……。でも、助かる、ので……」

「ははは。ここから先のフロアは本当に広いので、じっくり探索してみてくださいね」

 

 そうしてみようと思う。きっと楽しいから。

 それじゃあ解散、というところで、後藤さんが思い出したように言った。

 

「無理ならいいんですけど……。配信とかに出てもらうのはだめですか? そっちも楽しいですよ」

「ん……」

 

 配信。不特定多数に見られる。それはちょっと怖い。お世話になったお礼はしたいけど、さすがに配信に出るのは……。

 

――よし、出なさい。

――え。

――その面倒な性格を直すチャンスよ! どうせこっちの顔も分からなければ個人情報が特定されることもないんだから、チャレンジしてみなさい!

――いきなりハードルを上げすぎだと思います! だって、絶対にこの人の視聴者さん多いよ!

「じゃあその配信に出るよ。魔女が」

「!?!?!?」

 

 陽葵は何を言っちゃってるの!? いやちょっと笑い堪えてるし! おもしろそう、だとか思ってる顔だ! ひどい!

 

「いいんですか!?」

 

 そして後藤さんは純粋に嬉しそう……! くそう、これじゃあもう断れない……!

 

「その……。会話、苦手で……。あの……」

「進行は俺がするので任せてください! じゃあ、そうですね……。明日は探索するんですか?」

「そのつもり、です……」

「じゃあ、十三時頃にこのフロアの入口で、どうでしょう」

「あ、はい……。わかり、ました……」

 

 そういうことになりました。

 笑顔で手を振って去って行く後藤さん。最後に、気が変わったら来なくても大丈夫、とまで言ってくれた。優しい人だなあ。

 それはともかく。

 

「リーナ。あとでピーマン生でかじるから」

――ちょ!?

 

 わたしも嫌いだけど、嫌がらせにはちょうどいい。少しぐらい仕返ししないと、ね?

 

「陽葵」

「うん?」

「…………」

「あ、その……。悪かった。いやマジでごめん。だからそんな無表情で見つめないでくれ……!」

「いいよ、許すよ……。わたしと陽葵の仲だもんね……。ふふふ……」

「なんか怖いんだが!?」

――学んだ。悪ノリだめ、絶対。

 

 まあ、実際はそこまで怒ってないけど。ちょっと楽しそう、と思ったのも事実だから。

 でも帰り道でピーマンの生かじりはしました。悲鳴を上げるリーナはおもしろかったです。

 

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