コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

34 / 49
34 魔女の魔法は不思議

――陽葵?

――ご、ごめん……! いや、な。魔女さん……菜月はシャイとか内気とか言われただろ? だから人を誘えるわけがないとか、見栄を張ってるとか、思われてんじゃないかな。

――むう……。

――あっはっはっは!

――リーナうるさい!

 

 さっきからずっと笑いすぎだよわたしの相棒は! 確かにわたしは初めて会う人と会話するのが苦手だけど、それも少しは改善……改善……は、されてない、けど……! ぬううう!

 

――はは。拗ねるなって。それじゃ……。

 

 陽葵は笑いながら立ち上がると、こっちに歩いてきた。そのまま、カメラに映る場所へ。

 

『お?』

『誰か出てきた!?』

『黒ずくめの剣士さん!』

『ビータ……』 

『それ以上はいけない』

 

「あたしが魔女のパーティメンバーだ。まあ、剣士さんとでも呼んでくれよ。よろしく」

 

『マジでパーティメンバーがいた、だと……!?』

『そんな、魔女さんは孤高のソロ冒険者だと信じていたのに!』

『何の妄信だよw』

 

 確かに、陽葵が表に出てくれたらそれが一番信じてもらいやすかっただろうけど……。よかった、のかな? 陽葵のマフラーには認識阻害の魔法がかかってるから、素性はばれないけど……。

 だめだったとしても今更ではある。でも……。いや、うん。ここは素直に陽葵に感謝だ。

 

「ごめん……。ありがと」

「いいって。会話が苦手なのは分かってるから」

「ん……。撫でないでほしい」

「いやだって、しょぼしょぼしてるのかわいいし」

「むう……」

 

 なんか、陽葵になでなでされるのは、ちょっと……。いや、気持ちいいけど、かなり恥ずかしい。今は特に不特定多数の人に見られてるわけだし。

 

『なんだこれ』

『俺たちは何を見せられて……?』

『てえてえですか!?』

『なんでも結びつけるなよ』

 

 てえてえってなに……?

 

「ひ……。剣士さん。てえてえってなに?」

「なんでもない。そのままでいてくれ」

「……?」

 

『魔女さんはあれか、もしかしてわりと純粋なのか』

『このご時世に純粋魔女ちゃんだと!?』

『希少種だ!』

『言い方www』

 

 むむ……。よく分からないけど、まあいいか。

 

「おっと……。狼が来た。ちょっと倒してくるよ」

 

 ふと、そんなことを後藤さんが言った。

 

『魔物きた!』

『やっぱくるよなあw』

『そりゃこれだけ楽しそうにはしゃいでるんだからね』

『仲良し女の子の間に挟まれたい狼』

『よし殺そう』

 

 視聴者さんってわりと過激なんだね。相手は魔物だから結局倒すんだけど。

 

「それじゃ、二人はそのまま配信を……」

「あ、だいじょうぶ、です」

「え?」

 

 狼たちは……。あそこか。それじゃあ……。

 

「ファイア」

 

 わたしの杖の先に小さな火球が現れる。それを狼の群れに投げつけた。火球はゆっくり飛んで落ちていく。だいたい、狼たちの群れの中心に落ちるタイミングだ。

 

『魔法だー!』

『これが魔女さんの攻撃魔法!』

『火の玉……?』

『なんか、しょぼくない……?』

「しょぼい……」

 

 後藤さんまで言わなくてもいいと思う。

 でもこの魔法を知ってる陽葵はにやにやと笑っていて……。

 火球が地面に着弾。轟音を伴う大爆発が起こった。

 

「うわあああ!?」

『ぎゃあああ!』

『目が! 目があああ!』

『お前らわりと余裕だなw』

 

「ん……。倒した」

「たーまやー」

 

――花火見てみたいわね!

――そういえば魔法の練習で見てなかったね。

 

 でもそれはまた今度ね。

 煙でちょっと確認はできないけど、魔物の反応は全部なくなってるから倒せたのは間違い無いはず。あとは魔石を回収するだけだ。

 

「おわり、です」

 

『ええ……』

『マジで倒したの?』

『バカ野郎、倒せたことを確認するまで油断すんな!』

 

「ん……。気配察知には、反応しない、ので……。その、えと……。はい」

 

『はいじゃないが』

『さらっとすごいこと言ってる……』

『気配察知って魔法であったっけ?』

 

 あ、あれ? こっちの魔法にはないの?

 振り返って陽葵を見る。首を傾げられた。後藤さんを見る。驚いたような目でわたしを見てる。

 余計なことを言ってしまったと思いました……。

 煙がはれて、爆心地の周辺が見えるようになってきた。やっぱり魔物の姿はどこにもなくて、残されているのはたくさんの魔石だけ。

 

『ほんとに全部倒してる……』 

『魔女さんってベテランの冒険者だっけ?』

『姿が確認されてから二ヶ月ぐらいだぞ』

『ちょっと意味が分からない』

 

 魔石の回収は風魔法で。魔法をちょっとこねこねして……。

 

「ウィンド」

 

 風を作って魔石を集めて、こっちに回収。んー……。十個か。結構多かったみたい。

 

「え、え、え?」

 

『なに今の魔法!?』

『魔法ってあんな緻密な制御できんの?』

『んなばかな。攻撃とか防御とか回復とか、分かりやすいものしかないはずだぞ』

 

 狼狽えたような後藤さんの声と、たくさんのコメント。

 

「あー……。魔女」

「え、あ……。うん」

「お前ちょっと何もすんな」

「ええ!?」

 

『草』

『剣士さんからストップ入ったw』

『魔女さんの魔法はかなり特殊なんて噂もあったけど、こういうことか』

 

 あー……。そっか。ダンジョンで得た魔法だと、こういう風にちょっとしたことに魔法を使うってできないんだった……。

 いや、もちろん知ってはいたけど、普段は人に見られることなんてほとんどなかったから、気にしてなかった。その結果がこれです。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。