コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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35 ぐだぐだ

――魔法をこねこねできないなんて、不便すぎるでしょ。

――むしろ魔法こねこねがわけわかんねーよ。お前らの魔法、同じ名称なのに効果違うもの多いし。

――え? ファイアは火の魔法、アイスは氷の魔法、ウィンドは風の魔法、だよ?

――ファイアで火の玉ぶつけたり爆発させたり火の壁作ったり種類が多すぎるって言ってんだよ!

――うん……? 何かおかしいの?

――くっそ、そこから分かってなかったのか……!

 

 ごめん、本当に意味が分からない。ちゃんと属性別にしてるはずなんだけど……。

 でも、後藤さんや視聴者さんの反応から察すると、確かにわたしが何かおかしいのかも。あまり配信で魔法とか使わないようにしないと。

 とりあえず今は魔石の分配だ。十個あるから……。

 

「どうぞ、後藤さん。魔石」

「え? いや、俺は何もしてないんですけど……」

「今はパーティですし」

「だからってもらえないですよ! 俺! 何も! してない!」

 

『確かにw』

『狼見つけました、行ってきます(行ってない)』

『有言不実行なんてかっこわるい』

 

「実行しようとしたが!?」

 

 んー……。あまり気にしないでほしいんだけどなあ……。だって、こうして配信なんて貴重な機会をもらってるわけだし。

 

「えっと……。狼、見つけてくれました」

「魔女さんも普通に気付いてましたよね?」

「…………」

「目を逸らさないでくれます?」

「ふふ……っ」

「剣士さんは笑わないでくれます?」

 

『ぐだぐだw』

『なんだこのコントはw』

『どうすんだよこれw』

 

 とりあえず……。魔石は押しつける。面倒だから拒否は許さない。許さないったら許さない。無言でぐいぐい押しつけたら、後藤さんは諦めて受け取ってくれた。それでいいのです。

 質問コーナーは、なんだかそんな空気じゃなくなったから終わり、だね。次は何をするのかな?

 

「あー……。じゃあ、いつも通り六層観光と行きましょう。このメンバーなら、というか魔女さんなら一切不安ないですし、ちょっと遠出もいいかもですね。ちなみに魔女さん、さっきの魔法は何発打てますか?」

「ファイア? それなら、いくらでも……大丈夫です、よ?」

「…………」

 

 今のはわたしでも分かった。どん引きってやつだ。化け物を見るような目とも言う。ちょっとだけ、ショック。

 

『いくらでもって、マジか』

『この魔女さん、もしかしなくても十分最前線に行けるのでは?』

『この配信で有名になってスカウトとかありそうw』

 

 それは普通に断るよ。大人数とか、考えたくもない。

 

「そ、それじゃあ! 泉に行きましょう! 花もたくさん咲いていて、綺麗な泉があるんです!」

「その……。はい。でも、あの……。釣りの道具、持ってなくて……」

「え? 釣り?」

「だって、さっき……釣りがどうとか……」

「え……。あ。ああ!? いや、釣りって、違くて……!」

 

『もしかして……魔女さんが出てこなかった時に言われてた、あれ?』

『うそやん、あれを勘違いしてんの?』

『やばい思った以上に魔女さんが純粋すぎるw この子ネット環境に触れたことないんかw』

 

「あ、その……。ない、です。お金がなくて、パソコンとか携帯とか……ない、ので……。ダンジョンに潜るのも、お金が欲しくて……」

 

『お、おう……』

『お金欲しいの理由が切実すぎて泣きそう』

『もしかしてご飯がパンの耳とかあったりしてwww』

 

「え、すごい。わかるんですね」

 

『   』

『   』

『うそやろ……?』

 

 視聴者さんってすごいね。わたしのご飯事情まで分かるなんて。隠しているわけじゃないけど、わざわざ言ったりもしないのに。

 

「今は……ごはん、いいものが食べらて……。その……。えへへ……」

 

『てれてれ』

『くっそかわいい』

『そっか、六層まで潜れるならお金もいっぱいだもんね』

『美味しいものいっぱい食べてね』

 

 それはもちろん。リーナの希望でもあるから、たくさん食べたいと思う。

 それよりも。釣りだよ釣り。わたし、釣りの道具なんて持ってないんだけど、どうしよう?

 

「釣りは……したことがない、ので……。ちょっと楽しみ……」

「あー……」

 

 あれ? 後藤さんがちょっと困ってるように笑顔が引きつってる。陽葵も何か言いづらそうにしていて……。何か、間違えてるのかな。

 

「その……。釣りっていうのはさ……」

「い、いや! 待ってほしい剣士さん! 釣り竿なら、あるから……!」

 

 そう言って、後藤さんが背負っていたリュックを開いて、ずるりと何かを引っ張り出した。それは……釣り竿。しかも結構大きい。どう見てもリュックには入らないサイズなんだけど……。

 もしかして。わたしのポシェットと似たようなものだったりするのかな。

 

「あの……。そのリュックって……」

「え? ああ、はい。魔道具です。知りません?」

「魔道具は……知ってます、けど……」

 

 リーナが作ってくれたわたしのポシェットも、いわゆる魔道具というもののはず。魔法で、見た目以上に物が入るようになってる。

 でもそれは、リーナが作ってくれたからこそあるもので。地球の人が使える魔法で作れるとは思えない。直接月の魔法を教わってるわたしでも作れないから。

 

「ダンジョンの下の方でごく稀に落ちているんですよ。かなり貴重なもので、拾った人がそのまま使っていることが多いので、出回ることはほとんどないですけど」

「へえ……。じゃあ、後藤さんは?」

「俺は……まあ、一応もともとパーティ所属していたので……」

 

『後藤はかなり深く潜っていたパーティに所属していたんだぞ』

『でないと六層ソロとかできるわけないしw』

『なお魔女さん』

『特殊な事例だから……』

 

 わたしが特殊なのは仕方ないとして。後藤さんはやっぱりただ者じゃないらしい。有名なパーティの探索者さん。

 どうしてそのパーティから離れてこんな場所でソロをやっているのか、ちょっと気になるけど……。きっと、わたしが聞いていいことじゃないと思う。

 

「さあ、泉で釣りをしましょう!」

「あ、うん」

 

 ひとまず今は忘れることにして。泉での釣り、楽しみだね。

 

――ところで、リーナ。もしかしてポシェットみたいなものをたくさん作ったら、大金持ちになれるのでは?

――寝言は寝てから言いなさい。悪目立ちしてろくなことにならないわよ。

――あ、そっか……。なるほど……。

 

 わたしよりもリーナの方が考えてるな、と思いました。

 

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