コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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37 月のお魚……魚?

 

 そのわくわくを返してほしい。

 

「なななななななつきなつきなつき! やべーのが釣れた!」

 

 後藤さんを残して、陽葵が慌てたように走ってきた。本当に、とても慌ててる。配信だからとわたしを呼ぶ時は魔女で徹底してたのに。今はドローンを残してきたみたいだから、声を拾われることはないだろうけど。

 

「どうしたの?」

「人が釣れた!」

「は……?」

 

 人? 人が、釣れた?

 

「月の魚って人の形をしてるの?」

――そんなわけないでしょ。

「だよね」

 

 もしもそうだったら、人の形をしているものを食べていたことになるからね。気持ち悪いにもほどがある。

 いや、でも。だとしたら、本当に、人?

 

「行方不明の探索者とか……」

「わからん! とりあえず菜月も確認してくれ!」

「ああ、うん」

 

 わたしが会ったことのある人の可能性もあるからね。ちゃんと確認しておかないと。

 陽葵に連れられてまた泉へと向かう。すると、すぐにその姿が確認できた。

 シンプルな青色のワンピースの女の子。水に濡れた髪は銀色で、腰よりも長い髪だ。なんとなく、その髪の色には見覚えがあるような気がする。

 具体的に言うと、夢で。つまりはリーナのこと。

 

「ああ、魔女さん。来てくれたんですね」

 

『てえへんだてえへんだ』

『釣りでなんで人が釣れるんだよ!』

 

 ちょっとコメントがうるさい。後藤さんもそう思ったみたいで、とりあえず読み上げの機能を切った。

 

「魔女さんはこの人に見覚えはありますか? 俺は見覚えないので、六層から先に行く探索者じゃないと思うんですけど……」

 

 六層から先に潜る探索者さんのほとんどを後藤さんは知っているらしい。逆に、五層で引き返す人は有名人ぐらいしか知らないのだとか。

 わたしは逆に、六層から先の探索者さんは知らないけど、五層に来る探索者さんはわりと知ってる方。四層で引き返す人はあまり知らないけど、ここにいるってことは五層はどうにかなる探索者、のはず。

 でも……。

 

「知らない、です……」

「そうか……」

 

 これは……。本当に、ちょっととんでもないことになってしまった、気がする。

 

――リーナの髪の色と似てるけど、知り合いだったりしない?

――…………。

――リーナ?

――…………。知らない。

 

 これ……。知ってるやつ、だよね。リーナはこの子のことを何か知ってるみたい、だけど……。答えられないこと、なのかな? 月の何かに関わること……。

 まさか、月の住人? リーナを殺すために来た、とか……。

 

「とりあえず保護しよう。ギルドに連れて帰るけど、お二人はそれでいいですか?」

「あ、はい!」

「まああたしらには全然わかんねーし……」

 

 ひとまずギルドに連れて行くことになった。何か、分かるかな?

 

 

 

 後藤さんには女の子を背負ってもらって、わたしと陽葵がその護衛という形を取った。道中の敵はわたしがさくさくと倒していく。陽葵は、もしものための遊撃。わたしが倒し損ねた場合のサポート、だね。今のところそんなことはないけど。

 

「暇だよね」

「暇と言えば暇だけど、魔石回収はしやすいかな」

 

 わたしが倒した魔物の魔石の回収がお仕事になってるね。そういうつもりじゃなかったんだけど……。

 

「ご、ごめん……」

「なんで謝ってんだよ」

 

 ぺちんと頭を叩かれてしまった。いたい。

 夕方頃には地上に戻ってきた。ギルドに入ると、すぐにギルドの制服の人に囲まれて、そのまま別室に案内された。まだ何も言ってないのに、対応が早すぎると思う。

 

「もしかして、探索者の配信ってチェックされてるのかな」

「されてますよ」

「え」

 

 後藤さんが言うには、探索者の配信をチェックする専門の人がいるらしい。明らかな異常があれば速やかに情報が共有され、今回みたいに戻ってきた探索者を待ってたりするのだとか。

 なんだか監視されてるみたいに思うけど……。そもそも配信をしてるのは探索者の方、だね。もとより全世界へと公開しているわけだから、文句が言えるはずもない。

 わたしたちが通された部屋は、テーブルと椅子があるだけのシンプルな部屋だ。椅子は四脚あって、わたしと陽葵が並んで座った。後藤さんは向かい側。

 

「お待たせしました」

 

 しばらく待っていると、わたしとよく話す受付のお姉さんが入ってきた。手には書類の入ったファイル。わたしたちを見て、空いている椅子を見て、そしてなぜか後藤さんを見た。

 

「後藤様。話しづらいので魔女様側に座っていただけませんか?」

「あー……。了解」

 

 ささっと椅子ごと移動。わたしの隣に後藤さんが移動してきて、改めて対面にお姉さんが座った。

 

「まずは救助の方、ありがとうございます。あなたたちのご尽力で、失われてしまう命が救われました」

「いえ……」

「救助の報酬ですが……」

 

 そこでお姉さんが言葉を止めてしまう。書類を見て、なんだかとても心苦しそう。救助の報酬なんて気にしたことがなかったけど、何かあるのかな。

 

「ねえ、これ……」

「うん? あー……。救助の報酬って、基本的にギルドが口を出すことはないって知ってるか?」

「それは、うん」

 

 ギルドからの依頼の場合は別だけど、原則ダンジョン内は自己責任。誰かを助けた場合は、その誰かに報酬をもらうことになる。その報酬額は決まってなくて、相手次第。まあ、だいたいの目安はあるらしいけど、わたしは気にしていない。

 これがパーティの場合は、そのパーティに支払ってもらうことになる。パーティメンバーを救助してもらったら、他の人が報酬を支払うなんてよく聞く話だ。

 

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