コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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41 わたあめと焼きもろこし

 

 気を取り直して。ご飯だ。

 階段下の道に戻ってきた。リーナはもうそわそわしっぱなしだ。リーナの希望を聞いて選ぼうと思ったけど、この様子だと待っているといつまでも決まらない気がする。

 希望が出てくるまではわたしが勝手に決めよう。とりあえず、わたあめから。

 

「一つください」

「まいどあり!」

 

 アニメのキャラクターが描かれた袋に入ったものも買えるんだけど、この出店は目の前で作ってもらうこともできるみたいで、今回は後者にしてもらった。

 わたあめ機に素を投入。お店の人が割り箸をくるくる回すと、わたあめがすぐにまとわりついてくる。その様子が、見ていておもしろい。わたあめってこんな感じで作るんだね。

 

――なにこれ。どうなってるの?

――えっと……。さあ?

 

 さすがに興味がなかったかな。一応、理科の授業で何か聞いた覚えがあるけど……。その程度だ。はっきり覚えてない。

 とりあえず食べよう。一口、はむり。

 

――わあ……。これは、砂糖ね? すごい、口の中で溶けちゃってる……。すごい!

――おー……。こんな感じなんだ。美味しいね。

――もっと! もっと!

――はいはい。

 

 もぐもぐはむはむ。がつんと来る甘さじゃなくて、ちゃんと食べられる甘さだ。薄い糸みたいになってるから、かな? ふわふわで食感がとてもいい。

 他にもいろいろと食べ歩き。りんご飴、ベビーカステラ、焼きそば……。

 

――菜月! 菜月! 焼きもろこしが気になる!

「う……。り、リーナ……。本当に次で最後にしてね……。おなか、いっぱい……」

 

 リーナに付き合っていたらよくあること。限界まで食べさせられる。この満腹感も共有しているわりには、リーナはずっと食べたがる。くるしい。

 焼きもろこしは、文字通り焼いたとうもろこし。醤油をぺたぺたして、じっくりと焼いていく。醤油の焼ける香ばしい香りを周囲にまき散らしていて、なかなか暴力的だ。リーナも食べたくなるわけだ。

 一本購入して、早速食べる。うーん……。満腹感は確かにあるけど、やっぱり美味しいものがあるとついつい食べてしまう。

 

――とうもろこしの自然な甘さに、醤油のあまじょっぱさがマッチしているわね……。ああ、美味しい……。とても、いいもの!

――あはは……。リーナが喜んでくれたなら、嬉しいよ……。

 

 正直、わりと限界。食べ終わったら、次を言われる前に移動しよう。

 次を言われても移動すればいい、なんて思われそうだけど、わたしはリーナのおねだりには勝てないから。わたしが食べたいと思うものも多いからね。

 焼きもろこしを食べ終えて、ゴミをゴミ箱に捨てて、その場から離れる。リーナはちょっと残念そうにしてるけど、明日また来るようにするから我慢してほしい。

 それじゃあ……。ギルドに行こう。昨日助けたあの子が起きているかもしれないから。

 

 

 

 元旦のギルドはいつもと違って、閑散としていた。普段ならいつも人が並んでる受付にも誰もいない。受付の中にいる人も一人だけだ。

 これには理由があって、ギルドが三が日を休むから。三が日にダンジョンに入ることを禁止してる。三が日ぐらい休め、ということなんだと思う。

 ただ、休むといっても人がいなくなるわけじゃない。というのも、元旦までにダンジョンから戻ってこられない人は当然いるから。そういった人たちのために、医務室にも担当の人が必ずいる。

 受付の人に医務室に向かうことを告げて、その部屋へ。ダンジョンで誰かを助けた時にここに連れてくるから、わたしの顔、というより風貌は覚えられてしまっていた。

 

「ああ、魔女さん。ようこそ」

「あの……。その……」

「ふふ……。落ち着いて、ね?」

「あ、はい……」

 

――これが探索者で話題の魔女の姿です。

――変なこと言わないで……。

 

 自分でも情けないとは思ってるけど、こればかりはどうしようもない……。

 

「あの……。昨日の、子……」

「まだ眠ったままです。検査では健康そのものなんですけどね……。会っていかれます?」

「は、はい……!」

 

 そうして案内された先は、医務室でも個室になっている場所。重症な人とかのための部屋だ。その部屋の一つに、昨日助けた銀髪の子が寝かされていた。

 個室はとてもシンプル。大きめのベッドに、医療関係の機械がいくつか置かれてる。一応、心拍数とかもチェックしてるみたいで、ぴっぴっと機械から音がしていた。

 

――ドラマでよくあるやつ。

――家にテレビがないのにどこで見てるの?

――商店街のテレビで見かけるわよ。

 

 よく見てるなあ……。リーナが見ているならわたしも見ているはずなのに、全然分からない。

 ベッドに近づいて、顔をのぞき込んでみる。今も整った寝息を立てていて、本当にただ眠っているみたい。体を揺すったら起きそう。

 

「ギルドでも調べたのだけど、この子の情報が何もないのよ。魔女さんは知らない?」

「その……。すみません……」

「ああ、ごめんなさい。一応聞いてみただけだから。知っていたら教えてくれてるよね」

 

 でも、誰も分からないだろうな、というのは思う。きっとリーナの、月の関係だから。

 

「それじゃあ、帰る時はまた声をかけてね」

 

 そうして、わたし一人になった。いや、わたしと、このずっと眠っている子だけ。

 さて、どうしよう。リーナは何か調べたかったりするかな?

 

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