コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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42 目覚め

――気になることはあるけど……。この国の言葉にあるでしょう。触らぬ神になんとやら、よ。

「リーナはそれでいいの?」

――もしもこいつの話を聞いたら、私は怒るかもしれないから。

「なんで……?」

 

 どういう理屈でそうなるのかと聞きたいけど……。リーナがそう言うなら、やめておこう。とりあえずわたしももう帰ろうかな。リーナはもう、この子と関わりたくないみたいだし。

 そうしてわたしが踵を返すのと、わたしの手首が掴まれたのは同時だった。

 

「は……?」

 

 慌てて、振り返る。眠っていた女の子が、目を大きく開いてわたしの手首を掴んでいた。

 

「……っ!」

 

 手を振り払おうとして……、できない。いや、力がすごく強い……! 身体強化を……しても無理!? この子も身体強化を使ってる!

 

――菜月!

 

 リーナの慌てたような声にはっと顔を上げれば、女の子がこっちに飛びかかってくるところだった。

 

「あ……」

 

 まずい。避けられない。結界は……反応しない!? なんで!?

 そうして、気付けばわたしは女の子に押し倒されていた。

 

「ああ……。やっと、会えた……」

「え……」

「探していました……! リーナ様!」

「は?」

 

 リーナを、知ってる……? じゃあ、やっぱりこの子は月の人みたいだけど……。月の人ということは、リーナを捕まえに来た、人……?

 そこまで考えて、わたしは反射的に魔法を使っていた。風の魔法で相手を吹き飛ばす。女の子は驚いた様子もなく、ベッドの上に着地した。

 壁際まで距離を取って、女の子を見据える。心臓がばくばくとうるさい。

 どうしよう。月の人が相手となったら……。わたしの魔法は、アドバンテージにはならないかもしれない。むしろ、オリジナルはあっちだ。わたしは、あくまでわたしが使えるものをリーナに教えてもらっただけだから。勝ち目があるとは思えない。

 どうしようどうしようどうしよう……!

 

――菜月。落ち着いて。

――リーナ?

――まずは、対話。追っ手なら、泉に沈んでいたのはおかしいから。

――それはまあ確かに……。追っ手じゃなくてもおかしいけど……。

――まあね!

 

 でも……。うん。そうだね、落ち着いて、まずは話し合いだ。追っ手かどうかも分からないんだから。

 女の子はずっとこっちを観察してる。その目が、ちょっと怖い。

 

「あなた……。リーナ様じゃないの?」

「え……。ち、違うよ。わたしは、菜月」

「あり得ない。だって、その体はリーナ様のものじゃない!」

「え……?」

 

 リーナの、体? 何を言ってるの?

 

「リーナ様の子供の頃とほぼ同じ体! 違うのは、髪や瞳の色だけ!

 

 いや……。いや。あり得ない。だって、わたしは、ちゃんと日本人として生まれたわけで……。あまり会わないけど、両親だってちゃんといるし……。

 

――り、リーナ? これ、どういうこと?

――…………。あの子が勘違いするのも無理はないぐらい、似ているわよ。

――そ、そうなんだ……。えっと、あの……。

――心配しなくても、菜月は菜月よ。その体は、菜月の体。

――う、うん……。

 

 リーナにそう言ってもらえたら、ちょっと安心する。わたしは小さく深呼吸して、女の子に視線を戻した。

 

「この体は、わたしの体だよ。間違い無く。リーナだって、そう言っているから」

「リーナ様が……? まさか……。お前の中に、リーナ様がいるの!? 魂が二つってこと!?」

「そんなところ、だけど……」

 

 分かってもらえたかな? あ、いやだめだ。ものすごく怒ってる。すごく睨まれてる。こわい。

 

――私だって気になることがあるのよ。聞いてもらっていい?

――あ、うん……。そのまま、伝えていくよ。

――よろしく。

 

 リーナの知り合いなら、リーナが話した方がいい。私が自分の意志でリーナに体を預けられたらいいんだけど、今はまだわたしが寝ないとできない。

 

「あの……。リーナが話したいらしいから……。リーナの言葉をそのまま伝える。いい?」

「構わないけど、それなら体を譲りなさいよ。直接話したいのだけど」

「寝ないといけないから……。今は眠くないし……」

「…………」

 

 あ、すごく呆れられた。なにそれ、みたいな顔されてる。面倒だとは思うけど、ちょっと我慢してほしい。

 

「まあ、いいけど。それで?」

「うん……。あなたの名前を教えてほしい。予想はつくけど、確認のため」

「レフィ」

「えっと……。あり得ない? どうして、生きてる……? え、なにこれどういうこと?」

「魔法によるもの。正確に言えば、私はレフィの記憶を植え付けられたホムンクルス」

「は……。ちょ、リーナ!?」

 

 あ、頭が痛い! な、なにこれ!? こんなこと、今まで一度もなかったのに……!

 

――記憶を植え付けた!? ホムンクルス!? ふざけるな! 私の! 研究を邪魔しておいて! お前らは平気で禁忌を犯す!? 納得できるか!

――り、リーナ、落ち着いて……! 声が、頭が、いたい……!

――ふざけるなふざけるなふざけるなあああ!

――りー……な……!

 

 リーナが興奮するほどわたしの頭が痛くなっていって……。気付けば、意識が遠のいていた。

 




壁|w・)リーナさん大興奮。
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