「で、どうなったんだよ」
「あー……」
陽葵とのダンジョン。六層でのんびり釣りをしていると、陽葵がそう聞いてきた。
三十層から戻ってきて、そろそろ一ヶ月。陽葵は私が話すまでは待つつもりだったみたいだけど……。さすがに、我慢の限界らしい。むしろ一ヶ月もよく聞かずに我慢してくれたなって思うよね。
いや、全面的に私が悪いんだけど。なんだか、こう……。話しづらくて。
「あのね、菜月。わたしたち、友だちだよね?」
「え? 当たり前だろ?」
「どんな話でも、絶好とかないよね?」
「なんか怖いんだけど!?」
リーナは許してくれてるけど、やっぱり私がリーナの体を奪ったことは事実だから……。そこだけを隠して話すなんて、そんなことはしたくないし。
菜月には、全部話しておきたいから。
「私の心の重みを……菜月にも知ってほしい!」
「それ共有しても重さ変わらないやつだろ!」
そんなことを言いながらも、陽葵はちゃんと話を聞いてくれた。
そうして話し終えた後の陽葵の感想は。
「うん……。で?」
「で? って……。あの、だから、わたしはリーナの体を奪っていて……」
「そのリーナは気にしてないんだろ? じゃあ別にいいだろ。あたしが何か言うようなことでもないしな」
「それは、まあ……」
その通り、ではあるんだけど……。なんだろう。ずっともやもやしてる。
「もしかしてお前……。誰かに怒ってほしいとか、そういうのがあるんじゃないか?」
「え? あー……。どう、なんだろう?」
言われてみると……。そうかもしれない。私の身勝手でリーナの体を奪った。きっかけは別だとしても、原因の一端はわたしだから。だから、責めてほしいのかもしれない。
――あっそ。でも私は何も言うつもりはないからね。
「だってよ」
「あはは……」
まあ、うん。そうだよね。リーナはそれを知っても、何も言ってくれないと思う。こればかりは、わたしの気持ちの問題だから。
「それで、そのホムンクルスだったか? 結局どうなったんだ?」
「ん……。消えたよ」
「あー……。そっか」
今回だけ助けることができる、なんて都合のいいことがあるはずがない。あのホムンクルスは、リーナの手によって命を終えた。それが、全て。
リーナも何か思うところがあるのか、あれ以来ちょっと口数が少ない。仕方がなかったとはいえ、親友と同じ姿の人を殺すのは……。やっぱり辛かった、よね。
私が何かできればいいんだけど……。何も思い浮かばない。せめて美味しいものでも食べようかなってぐらいだ。
ともかく。いろいろあったけど、一段落はした。だからこれからはまた、のんびりダンジョンに潜りながらお金を貯めて、美味しいものを食べようと思う。
「ねえ、陽葵。春休みに旅行に行かない?」
「まだ学年末テストもあるんだが」
「え、真面目に受けるの?」
「あたしもお前も学生だからな?」
不良な陽葵からそんなことを言われるとは思わなかった。思わず固まってしまっていると、陽葵が苦笑いする。自分でも似合わないと思ったみたい。
「まあいいさ。それで、旅行だっけ」
「うん。京都とか滋賀とか。長崎とか北海道とか沖縄とか」
「せめて一つに絞れよ……」
「美味しそうなものがどこにでもあるから……」
「やっぱり食べ物なんだなあ」
食べ物だよ。もちろん。
――ちなみに私のオススメはやっぱり長崎ね! カステラ食べたいカステラ! 本場のカステラが食べたい! あとちゃんぽん!
「お、おお……。案外元気だな……」
口数は少なくなってるけど、食べ物に関わることになるとこんな感じです。まあそれでこそリーナのような気もする。
「まあ問題はあたしらが未成年だってことだけど……」
「探索者として行けばいいでしょ」
「まあなー」
魔女として行けば、きっと大丈夫。ギルドカードが身分証としても使えるから。ギルドに報告はしないといけないけど、きっと許可してくれるはず。私たちはいろいろ、ギルド側からいい評価をもらってるみたいだから。
――あれだけ人助けしていたらね。
「あはは……。無視はできないからね」
五層でも六層でも人助けは継続中。今後もずっと続けていきたい。それが、この世界にとって異物な私ができる恩返し……なんてね。
「じゃあ、釣りなんてさっさと切り上げて、旅行計画でも練るか」
「だね」
――長崎! カステラ! ちゃんぽん!
「分かったから」
そんな会話をしながら、わたしたちは地上へと戻っていった。
わたしは相棒の体を奪ってしまった転生者ではあるけれど。せめて、相棒と一緒にこの世界を楽しんでいきたいと思う。今後もダンジョンを探索しながら、お金を稼いで、美味しいものを食べに行こう。リーナも喜んでくれるから。
――カステラを三本は食べたいわね!
「…………。太りそう……」
「が、がんばれよ……」
ただ、うん……。食べる量とかは、もうちょっと加減してほしいかなあ……。
了
壁|w・)ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次は、旅する女の子を甘やかすお話を書きたいな。