初対面の人と話すのも怖い。でもそれよりも怖いのは、二回以上会う人。クラスメイトとか。
一回だけだったら、もういっそ印象が悪くなってもその時限りだからって忘れることもできる。でも二回以上会うってなると、そうも言ってられない。今後の関係とかも考えないといけなくなって……。正直、わたしには無理だ。
「だから、わたしはこれでいいの」
――そう……。
それに、あの両親のことはほとんど気にしなくていい。ここには、この部屋には、ほとんどわたししかいないから。
「あ、でも今日からはリーナも一緒だね」
――ごめんね。気が休まらないでしょう。
「んー……。なんでだろう。リーナなら、なんとなくだけど……。大丈夫」
こうして普通に会話できるぐらいだから。リーナとだったら、楽しそうだなって素直に思えるよ。
――菜月はいい子だね。
「子供扱いしないでほしいなあ」
――子供じゃない。
「子供だけど」
そういうリーナは子供じゃないのかな? いやでも、指名手配されてたぐらいだし、大人だったのかな。
とりあえず、今日の晩ご飯は……。
――ね、ねえ……菜月……。なにそれ……。
「え。パンの耳」
――パンの……耳……?
「安いんだよ、これ」
――…………。まあ、悪くはないわね……。
実際に食べてみると、リーナも納得してくれたみたい。でも。
――メンチカツと比べると、微妙すぎるでしょ……。
「あはは……」
あまりお気に召さなかったのかな。わたしも、好きこのんで食べてるわけじゃないけど。安くていっぱい食べられる、ただそれだけ。
――うん……。よし。決めた。
「え? なにを?」
――菜月。お金を稼ぎましょう。
「はい……?」
お金を稼ぐって……。中学生のわたしはまだ働くことができない。だからお金を稼ぐなんて普通の方法じゃできないよ。
――普通じゃない方法があるってことよね?
「あー……」
ない、とは言えない。でも、現実的じゃないし、危なすぎる。それこそ、命の危険があるぐらいには。
「ダンジョン、というのがあるよ」
十二年前か十三年前か。わたしが生まれた年に、突然日本に出現したものがダンジョンだ。
日本の奈良の山で突然出現したダンジョンは、最初は新発見の洞窟だと思われたらしい。けれど実際に入ってみると、明らかに山よりも広い洞窟に、見慣れない動物。しかも動物はとても獰猛で危険。幸い洞窟から出ることはなかったけど。今では魔物と呼ばれてる。
最初は危険なだけの洞窟だと思われていたけど、魔物を倒すと死体が消えて不思議な石が残されるのが分かった。その石には信じられないほどのエネルギーがあるとかなんとかで、今では日本のエネルギー事情をほとんど解消してくれてる。
そんなエネルギー資源だから、他の国も自分たちの国に同じような洞窟がないかと探したらしい。けれど、今ではダンジョンと呼ばれてる不思議な洞窟は、結局日本の一つだけだった。
こうなると当然いろんな国からずるいとかなんとか言われるわけで……。ただ、日本としても、この石の安定した入手は難しいというのもある。魔物を倒さないといけない、というのはかなり危険なことだから。実際に、今でも少なくない人が亡くなってる。
資源になる石をある程度安定して入手したい、とかで、いろいろと受け入れることになったみたい。外国の人のダンジョン探索も許可して、その代わりに手に入れた魔石の何割かを提供してもらう、とか。
あとは、一部の国の強い要望で、ダンジョンに入ることができるのは十三歳から、ということになった。この辺りはいろいろと反発とかがあって揉めに揉めたらしいけど……。その時はわたしはまだ幼かったから、全然知らない。授業でも詳しくは教えてくれなかったし。
ともかく。良くも悪くも、中学生でも合法的にお金を稼げる手段ができてしまった、と教わった。
――つまり。菜月が十三歳になれば、ダンジョンを探索してお金を稼げると。ちなみに場所は?
「すぐ近く。だってこの町、ダンジョンがあるからってできた町だから」
この町は奈良市からもちょっと離れた場所にある。一応電車は通ってるけど、ちょっとした飛び地みたいになってしまっている町だ。
その理由が、ダンジョンに人が集まってきて、自然とできた町だから。本来は町にするつもりなんてなかった……かもしれない。
ともかく。ダンジョンはすぐ近く。山をちょっと登らないといけないから時間は少しかかるけど、徒歩で二時間ぐらいで行ける場所だ。
「でも、その……。わたしは、入りたくないかなって……」
――どうして? 菜月も美味しいもの食べたいでしょ?
「だ、だって……。戦うなんて、できないから……!」
ダンジョンに入る時は武器とかも支給してもらえるけど……。何故か銃とかは効果が薄いらしい。というより、武器の類いが微妙なんだとか。
魔石を加工して作られた剣とかなら有効。もちろん弾丸にすれば効果があるらしいけど、さすがに使い捨てになる弾丸はもったいないとかで使う人はほとんどいない。
つまり。基本的には近接戦闘ということになる。無理です。
――例外、あるでしょ?
「あるには……あるけど……」
魔物を倒すと、不思議な力が使えるようになる、らしい。ゲームの魔法みたいなもの。ただ不思議なことに、ダンジョンの中でしか使えない力だ。
でもそれだって、魔物を倒してようやく手に入る力だ。まずその魔物を倒すのが……。
――私が教えてあげる。