コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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07 ローブと杖

「え」

 

――私の魔法なら、ダンジョンの中どころか、外でも使えるわよ。

「え」

 

――というか、ダンジョンが月由来のものだし。

「え」

 

 待って。情報量が多い。リーナの魔法? 外でも使える? というより、ダンジョンが月に関係するもの……?

 

――いえ、その、あのね……。そのダンジョン、多分私が原因なのよ……。

「え……」

 

――月の奴らが、私を捕まえるために、地球に繋がる道を作った結果のもの、かな。あのダンジョンの最奥は月の都市に繋がってるはずよ。

「うわあ……」

 

 ちょっと知りたくなかった事実だ。あ、まって、じゃあダンジョンが出現したのがわたしが生まれた年なのも……。

 

――偶然じゃないわね。菜月の体に宿る私の魂を追って、ダンジョンが作られた、ということ。

「ある意味わたしが原因……?」

――はあ? 原因は私よ。気にする必要ないから。

 

 なんだかとても呆れたような言い方だった。でも、気を遣ってくれてるみたい。やっぱりリーナは優しいね。

 いや、待って違う。落ち着けわたし。間違いなくリーナが全ての原因だ。

 

「えっと……。魔法を外でも使えるっていうのは……。

――ダンジョンでしか使えないのは、魔法を使うのに必要な魔力が月と、そこに繋がるダンジョン内にしかないから。その魔力は、私の魂からでも自然に湧き出てるから、それを使わせてあげる。

「それ……。リーナに影響とか、ない?」

――放置していてもいくらでも出てくるものだから気にしなくていいわよ。

 

 それなら安心、かな? 安心なのかな? むしろ影響出てくれた方がダンジョンに入らない口実になっ

たと思うなあ!

 

――ねえ、菜月。

「な、なに?」

――お金、欲しいでしょ? 私の魔法はとても強力。安心安全にお金稼ぎができて、美味しいものを食べられて、欲しいものを買うこともできる。

「…………」

 

 ごくり。

 

――菜月の誕生日は……十一月だったわね。今は五月だから、約半年。それだけあれば、必要な魔法を教えてあげられる。人よりも楽にお金を稼げる。どう?

 

 とても、とても魅力的な提案だ。でも。

 

「そんなお金稼ぎ、しちゃってもいいのかな……」

――なにを言っているのよ。今まで苦労してきたんでしょう? その分を取り返すだけ。そう思いなさい。

「う、うん……」

――それでメンチカツをお腹いっぱいに食べなさい。今から楽しみね!

「…………。油物ばっかりお腹いっぱいに食べるのは普通に嫌かな……」

――あ、はい。

 

 でも、油物以外にも美味しいものはたくさんある。リーナの魔法でお金を稼ぐなら、できるだけいっぱい食べてもいいかも。太らない範囲で、だけど。

 

「じゃあ……。よろしくお願いします」

――はい。お願いされました。頑張りましょう、菜月。

「うん……!」

 

 こうして、わたしはリーナから月の魔法を教えてもらうことになった。

 

 

 

 魔法を教わる前に事前準備が必要とのことで、次の休みの日にわたしは商店街に来ていた。商店街の、雑貨屋さん。あまりお金に余裕がないから、高い物は買えないんだけど……。

 

――あれがいいかな。あの大きい黒い布と、角材。

「何に使うの……?」

――いいから。

 

 ちょっとご飯を我慢すれば問題ないかな、という程度の値段。しばらくご飯が夕食一回だけになりそうだけど、必要経費だと思っておく。

 そうして、黒い布と角材を買って、家に帰って。さて何をするのかなと思ったら。

 

――じゃあ、明日のお楽しみ、ということで。

「え? あ、うん」

 

 結局その日は何もしなかった。本当に、何のために買ったんだろう。無駄な買い物だったらさすがに怒らないといけないけど。

 そうして、さらに翌日。

 黒い布はローブに、角材は立派な杖になってました。

 

「いやなんで!?」

――がんばった!

「がんばった、じゃないよ! なにこれ!?」

――もちろん作った!

「どうやって!?」

 

 そうして聞いたのは、わたしが寝ている間はわたしの体を動かせる、ということと、その状態でも魔法を使えるということ。だから、リーナの魔法で加工とかしたんだとか。

 正直いろいろと言いたいことはあるけど……。

 

「それ、わたしの体は大丈夫なの?」

――悪影響がないことは確認してあるわよ。というよりね。一蓮托生なんだから無茶なんてさせるわけないでしょう。

「食べ物のためにダンジョンに入れという人を信用できない」

――そ、それは菜月のためでもあるから!

 

 いや、いいんだけどね。今更リーナを疑おうとも思ってないから。

 ローブは、思っていたよりも立派に見える。袖を通すものじゃなくて、羽織るタイプのものだ。ポンチョみたいに見えるけど、前は閉じていないから動きやすい。あと、不思議とずり落ちなくなってる。これも魔法、かな?

 フードも取り付けられていて、目深に被れば顔を隠すこともできそうかな。クラスメイトに見られても安心……かもしれない。

 

――ローブには結界の魔法をかけてあるから。それを着ていれば、物理攻撃だろうと魔法攻撃だろうとほとんど防げる。フードは軽い認識阻害つきよ。

「…………。もしかしてやばい代物だったりする?」

――まあ売れば一財産になるわね。

「これを売った方が早いんじゃ……?」

――月の誰かにばれたら追われるわよ。

 

 それは嫌だ。誰にも言わないようにしておこう。

 杖は、普通の木の杖、みたいな感じ。杖の先端には青い宝石が取り付けられている。

 いや、うん。待って。杖は分かるよ? 魔法で加工したんだよね。じゃあ、この宝石は?

 

――私の魔力で作った魔石よ。魔法の効率が良くなるから使いなさい。

「あ、うん……。これもやっぱり……」

――一財産になるけど追われるわね!

「なんでそんな危ないものばっかり作るかなあ!?」

 

 わたしを守るため、とは思うんだけど、それにしてもやり過ぎのような気もする。死にたくないから使わせてもらうけど。

 

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