コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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08 ギルドと目指すランク

――魔法の訓練でもその二つは常に身につけておくこと。暴発してしまった時に身を守れるし、誰かに見られても誤魔化すことができるはず。

「わ、わかった……」

――それじゃあ、魔法の訓練といきましょう。半年である程度まで戦えるようにしてあげるからね。

「お手柔らかにお願いします……」

――嫌です。厳しくいくから。

「ひえぇ……」

 

 その日から、魔法の訓練が始まりました。本当にかなりスパルタだった、とだけ記しておく。

 

 

 

 半年後。十一月。

 わたしは、生まれて初めて、ダンジョンを管理するビルの前に立っている。

 

「ついに……来たよ……」

 

 魔法の訓練も一段落。もう大丈夫だろう、とのお墨付きをもらって、わたしはダンジョンに入ることになった。今日はとりあえずお試しで、少し魔物を倒して戻ってくる予定だ。

 訓練が終わったことにリーナも一安心して……。

 

――ようやく……ひもじさから解放される……!

 

 一安心! していた!

 リーナには申し訳ないと思ってるよ? でも、お金ばっかりはどうしようもなかったから……。ひらすらパンの耳を食べ続ける月もあったけど、それも今日までだ。多分。

 ダンジョンの周りはとても大きなフェンスで囲まれていて、微弱だけど電気も流れているらしい。さらに一定間隔で自衛隊が立って警戒してる。かなり物々しい雰囲気だ。

 ビルだけが出入り口になっていて、受付をして奥の扉からダンジョンに向かうという流れ。

 ビルの一階はその受付がメイン。市役所みたいにたくさんの受付があって、これからダンジョンに入る人の列もあれば、ダンジョンから帰ってきた人の列、魔石を売る列などがある。

 わたしは当然、ダンジョンに入るための列だ。

 もう受付の人も慣れているもので、かなり長い列なのにあっという間にわたしの順番になった。

 

「ようこそ、ギルドへ」

「あ、どうも……」

 

 ギルド。なんだか不思議な名称だけど、元は違う名前だったはず。仰々しい名称だったんだけど、そのせいであまり浸透しなくて、いつしか誰かが言ったギルドが馴染んで正式名称になったんだとか。

 ちなみに、ダンジョンに入る人は探索者と呼ばれてる。これも誰かが言ったのが浸透した形。

 国の人はいつも難しい名前をつけたがるけど、結局呼ばれなくなってちょっとかわいそうだと思う。いや、分かりやすい名称にしておけよ、という話ではあるんだろうけど。

 

「ダンジョンに入るのは初めてですか?」

「その……。はい」

「では、身分証のご呈示と、契約書及び同意書にサインをお願いします。どちらもしっかりと読んでくださいね」

 

 読み終わったらまた来てください、とのことなので、列から離れて、椅子に座って読むことにした。

 

――ふむふむ……。魔石の買い取りとかは大きさで決まるのね……。まあ魔法後進国だし仕方ないか。

「めちゃくちゃ失礼な言い方してる……」

 

 間違ってないんだろうけど、もうちょっと言い方があるんじゃないかな……?

 

「同意書は……死んでも文句は言わない、とかそんな内容、だね……」

――日本って未成年を守るってイメージを持ってたんだけど、親の同意もなしに探索できるのね……。

「この辺りが決まった時はいろいろとあったみたいだよ」

 

 国会は大荒れ、世論も大荒れ、大変な時期だったらしい。今となってはそういうもの、として諦められているけど、今でもたまにネットとかで論争がある。

 二枚ともしっかりとサインして、受付に持っていった。

 

「はい。確認致しました。探索者のランクについてはご存知ですか?」

「えっと……。貢献度、とかなんとか……?」

「簡単に言うと、お持ちいただいた魔石の量でランクが上がっていって、いろいろな優遇を受けられる、というものですね。下はEから上はAまであります。一応、特例としてのSなんてものもありますけど……。まあ、本当に特例なので気にしないでください」

「はあ……」

「特典の一覧はこちらです」

 

 えっと……。最初は何もないけど、ランクが上がれば買い取り価格がちょっと上がったりするみたい。あとは、ギルドの宿泊施設を使えたり、全国のレジャー施設で割引があったり……。

 

――菜月! こうきょうこうつうきかん? の割引があるわよ! 旅行しましょう旅行! 食べ歩き! 食べ放題の割引もあるって!

「ああ、うん……」

――目指すはAランクね! 食べ放題のために!

「わたし、いつか太りそう……」

 

 今はお金がないのが理由で食べる量は少ないけど、お金に余裕ができてきたら、際限なく食べさせられそうで不安だよ……。太っちゃうと、周りの視線もまた変なものになりそうで、怖いなあ。

 

「何か分からないことがあれば、いつでも来てくださいね」

「はい。ありがとうございます」

「最後に、ですが……」

 

 す、と。受付の人が真顔になった。

 

「あなたはまだお若いのです。絶対に無理はしないように。命を大事にしてください。毎年、無茶をして帰ってこない学生が一定数いますから」

「…………。わかり、ました」

 

 それは、本当にわたしのことを心配している声で。きっとこの人は、ううん、ここの人たちは、帰ってこない子供を何人も見てきたんだと思う。

 わたしは、リーナからいろんな魔法を教わった。リーナが言うには、ローブにかかった魔法もあるし、ダンジョンで死ぬ心配はまずないらしい。

 わたしだけがそんな恩恵を受けているというのは、やっぱりちょっと、気になってしまう。

 受付の人に頭を下げて、ダンジョンへと向かう。向かいながら、リーナに言った。

 

「ねえ、リーナ」

――うん?

「せめて……危ない人を見つけたら、助けるぐらいは、してもいい……?」

 

 わたしの力はリーナからもらったもの。だから、リーナの目的のために使うのが当然だと思う。けれど、せめて、少しでも犠牲者を減らせれば……。

 リーナは。小さく笑って頷いた、ような気がした。

 

――私の魔法は、もう菜月のものだから。好きにしなさい。

「うん……! ありがとう、リーナ」

――ふふ。どういたしまして。

 それじゃあ……。魔石集めと、人助け。頑張っていこう。

 

 

 こうして、わたしのダンジョン探索は始まった。

 




壁|w・)ここまでが第一話のイメージです。
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