コミュ障少女と月の魔女   作:龍翠

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壁|w・)ここから第二話のイメージです。



09 嫌がらせ

 

 中学校も、半年もすれば当然だけど人間関係は安定する。してしまう。仲の良いグループができたりもするし、なんとなく生徒で力関係ができあがったりもする。カースト、みたいな言い方をするのかな。

 わたしの学校でも、当然だけどある。そしてわたしは。

 

「うっわ。汚いなあ! 自分でどうにかしろよ?」

 

 わたしが登校すると、机の上にゴミが散乱していた。気まずそうに目を逸らすクラスメイトもいるけど、にやにやと意地悪く笑う人もいる。

 わたしに声をかけてきた人みたいに。

 

「…………」

「あ? なんだよ。何か言いたいことでもあるのか?」

「いえ……。何もない、です……」

 

 カーストで言えば、わたしは最下位だと思う。そして目の前の、髪を茶色に染めた人は、かなり上の方。カラーコンタクトを入れて、瞳を赤く見せてる。

 高橋陽葵(たかはしひまり)さん。半年前、掃除当番を押しつけられそうになった時に拒否してから、嫌がらせを受けてる。

 

「ほんっと……。なよなよしてて、情けない。言いたいことがあるならはっきり言えよ。なあ」

「その……。なんでもない、です……」

 

 言いたいことは、あるけれど……。どうしてこんなことをするのか、とか……。こんなことをしていて楽しいのか、とか……。でも、それを言うと面倒なことになるかなって思う。

 この人にどう思われようとももうどうでもいいけど、それを聞いた周りの人が、こんなやつなんだ、とか思ったりとか……。それが、怖い。

 

――卑屈すぎない?

 

 わたしの中から呆れてるリーナは無視だ。こういうのはコミュ能力が高い人には分からないんだ。

 こうしてゴミを散らかされるのは初めてじゃない。だからゴミ袋も持ち歩いてる。そのゴミ袋にささっとゴミを片付けて、終わり。

 

「ちっ……」

 

 高橋さんに舌打ちされてしまった。わたしが特に反応も示さずにゴミを片付けたのが不愉快らしい。最初はわたしも慌ててたから、そういうのを期待してるのかもしれない。

 

「陽葵、かわいそうだからやめてあげなよ」

「かわいそうだって思うなら笑いながら言うなっての」

「あはは!」

 

 そんな会話をしていて、まだまだこういうのが続くんだろうなっていうのが分かる。ちょっと疲れるけど、いいんだ。わたしは、波風立てたくない。わたしが我慢しているだけでクラスが平和なら、それでいい。

 

――菜月の魔法なら、あんなやつ泣かせられるわよ。

「そんなことのために、リーナの魔法を使うつもりはないよ。それに、抵抗されちゃうかもしれないし……」

 

 リーナの魔法は、お金を稼いでリーナが食べたいものを食べるための魔法だ。うん。なんか、こっちの方が俗物的なような気がするけど、気にしちゃいけない。

 それに。高橋さんは、探索者だ。三層、つまりゴブリンの群れを安定して狩れる実力者。中学生でそれは珍しくて、ギルドでもよく話題になってる。

 わたしはその話に参加してないけど。周りの人の会話で聞いてるだけだけど。

 

――情けない……。

「面目ない……」

 

 ともかく。わりと強い人だから、魔法を使って仕返ししたら、何か反撃されたらちょっと怖い。言い逃れもできなくなるし。

 

――菜月がいいならそれでいいけど。私は美味しいものが食べられたら満足だし。

「あはは……。また土曜日にダンジョンに行こうね」

――ウナギが! 食べてみたい!

「また高いものを……」

 

 わたしがダンジョンに潜るようになってから、一ヶ月。十二月の半ば。今は土曜日にダンジョンに潜るようになってる。五層がわたしの狩り場だ。

 土曜日だけなのは、他の日は勉強をするため。特にここ半年は魔法の訓練で学校の勉強がおろそかになっちゃって成績が下がったから、取り返さないと。

 五層を狩り場にしてるのは、日帰りするならそこがちょうどいいから。そこからさらに潜るとなると、どうしてもダンジョンで泊まらないといけなくなってしまう。

 ダンジョンで生計を立ててる人はそういうこともやるみたいだけど……。さすがにそこまでしたくない、かな。リーナが食べるお金は五層でも十分だし。

 

「冬休みになったら、ちょっと本格的に潜ってみてもいいかも……?」

――あら。さすが魔女様。やる気がおありのようね?

「それやめて……」

 

 魔女。わたしの、二つ名。二つ名というか、ダンジョン内で一切喋らずにこそこそ人助けとかしていたら、いつの間にかそう呼ばれるようになっていただけだけど。

 わたしにはちょっと分不相応で、恥ずかしい。

 

――大声で自己紹介すればいいじゃない。

「死ぬ」

――そこまでなの……?

 

 恥ずかしさで死ぬ自信がある。そんなこと、絶対できない。

 わたしが心の中で断言していたら、それを感じ取ったのかリーナは呆れたようなため息をついた。

 

 

 

 休み時間。トイレに入って、座ったところで。

 水が振ってきた。

 

「わあ……」

――あは! テレビで見たやつ!

「楽しそうだね……」

 

 いや、わたしも真っ先に同じことを思ったんだけど。まさか本当に、こんなことをされるなんて思わなかった。

 

「ごめーん! 手がすべったわ!」

 

 そんな声が聞こえてくる。高橋さん……ではないけど、高橋さんのグループの人だ。この声には聞き覚えがあるから。

 

――直接的に何かやられるのは初めてじゃない?

「そうだねー……」

 

 そう。そうなんだ。今までの嫌がらせは、机に何かされたり、物を隠されたりとかだったけど、わたしの身体に何か直接手を出してくるようなことはなかった。

 物を隠す、というやつも、ゴミ箱とかじゃなくて、棚のどこかだったりと破損とかしないように気をつけてるのが分かるぐらい。

 だからこそ、わたしは高橋さんを憎みきれなかったんだけど……。

 

「高橋さんの指示じゃないよね?」

――取り巻きの暴走ってやつじゃない? テレビドラマのワンシーンを直接体験できて、私は今とても興奮してる。

「ほんっとうに楽しそうだね……!」

 

 ちょっとは心配してくれてもいいと思うんだけどなあ!

 

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