なんか思ったよりリアルが忙しくなるっぽいので小出しですが投稿。
ストーリーが進まねぇ。
ほんとにすまねぇ。
薄暗く染まった闇夜を真っ白に切り裂く閃光は、
獲物目掛けて蠢いていたゾンビの群れを一時的に行動不能にするほどのダメージを与えていた。
普通ならこれほどの効果は見込めなかっただろう
しかし、いくつかの要因によってリシュの閃光手榴弾は劇的な効果を発揮するに至った。
第一にゾンビ達の感覚器官が
ゾンビになった彼等は触覚が鈍くなり、聴覚は鋭くなり、視覚は夜も効くようになっている。
付近を走っている人間の足音で動き出し、夜闇の中でも獲物を見逃さない。
獲物を逃がさないという点では素晴らしい能力の進化だが、夜闇でも効く目というのが今回はマイナスに作用している。
第二にすでに辺りが夜闇に閉ざされ始めているという点
真っ暗闇のなかでいきなり太陽の光が目の前に現れれば、当然視界を数瞬失う。
ましてや彼等はゾンビ。
生身の人間とは違って、脳機能は徹底的に鈍り切っており、焼けた視神経の復活もまともな人間よりはるかに遅い。
第三にゾンビ達が投げ込まれた閃光手榴弾に注目していた点
全力でゾンビ達を引き付けていたリシュ。当然だが、ゾンビ達の視界はリシュに釘付けになっていた。
そして、そんな彼が投げた閃光手榴弾は偶然ではあるが丁度空中、しかもゾンビ達の頭上程の位置で爆発した。
暗闇の中で慣れた眼で、ど正面から瞬間的に放たれた白光は、推定でも数十万カンデラ級。
距離は数メートル圏内、その照度は数万ルクスに跳ね上がる。
眩し過ぎて見えない、
などという生やさしいものではなく。
もはや、視界が消し飛ぶ、そんなレベル。
昼間の直射日光を、至近距離で叩きつけられたような光。それが暗闇の中からいきなり現れた訳だ。
直視したゾンビ達がまともに動けるはずもなかった。
今だ!
ゾンビの恐怖と、自分の作った
2つの恐怖にガクガクと笑っていた足に喝を入れてリシュは必死にビルに走り出す。
時同じくしてマイルズ、コナー、エイブリー、トリシャ、クロエの5人も急ぎ足でビルに近づいていた。
走らないのはエイブリーが
とはいえ、彼等の方はリシュが囮として目立っていた時も移動を続けていた為に、もうビルは目と鼻の先といったところまで近づけている。
逆にゾンビの囮役になったリシュはビルからかなり離れた所にいる。
というのも、女性陣には話さなかったがこの作戦が上手くいかなかった場合、リシュは大量のゾンビに追い回されることになってしまう。
そしてリシュがビルのそばで作戦を初めてしまっていたら、ゾンビ達が近くの獲物であるクロエと母さんに気付いてしまう。最悪ビルのローレンに気付く可能性すらある。
マイルズ達を助けるつもりで助けに向かうクロエと母さんを失ったり、ビルがゾンビに包囲されてしまえば、木乃伊取りが木乃伊になる最悪の状況が完成してしまう。
故にリシュはローレン達には「自分の作戦は完璧だから大丈夫」といった態度を取りながら、
実際にゾンビ達をおびき寄せ始めるときは、ビルから離れた場所で始めたのだ。
しかし、ここに来てその判断の欠点が出てしまっている。
ーービルまでが遠い!
リシュは必死に走りながら、そう毒づく。
1日ものを食べないだけでこうも体力は落ちるものなのか、と自分のあまりのスタミナの無さに内心驚愕しながら、ゼェゼェと荒い息を吐き続ける。
リシュ自身は気付いていないが、このスタミナの無さは何も空腹による栄養失調だけが全ての原因では無かった。
バクバクと必死に全身に血を送る心臓と、走り始めたばかりにしては荒い吐息。
閃光手榴弾の効果がいつまで続くか分からない状況で、彼らが自分を再度見つける前にビルに逃げ込まなければならない。もし逃げ遅れれば自分だけではなく、ローレンや母さんにも危害が及ぶ。
そんな緊張、責任感と言い換えてもいいそれがリシュの幼い体にズシリと重くのしかかっていた。
それでも、よほどあの閃光手榴弾が効いたのだろう、
時間にして30秒ほど走ったリシュが避難しているビル付近に辿り着いたとき、ちらりと後ろを振り向けば
ゾンビの群れはまだ先ほどの姿勢で固まったまま、
――ついた…
荒い息をなんとか整えようとしながらもリシュはビルまで帰り着いた。
ゾンビ達も自分を見失っているし、皆も自分より先にビルに入ったはずだ。
作戦は完璧に機能したのだった。
こんなに上手くいくものなのかと、場違いな感想が浮かぶ。
「リーシュ君早く中に‼」
あまりに出来すぎな事態にリシュが軽く現実感の無さを感じていると、ビルから出てきたローレンが小さく声をかける。
ハッと、ローレンの声に慌ててビルの中に入る、外でボウっとしていればせっかくの作戦の成功が台無しになってしまう。
ビルのドアをくぐり、中に目をやれば、そこには緊張のせいか、はたまた疲労のせいかは分からないが、
ひどく疲れた様子で座り込んだり横になったりする皆の姿があった。
――パッと見て噛まれたような傷はない!全員無事っぽい!
と一人一人をつぶさに観察してら、ホッと安堵のため息を零しながら内心喜ぶリシュの後ろで、
ローレンが玄関に鍵をかけ、両開きの扉のレバーハンドルタイプの2つのドアノブをビルの中で見つけた麻紐でグルグルと雁字搦めにしていく。
ローレンは帰ってくるときの安全確保と1階部分を外から見えなくするように頼んでいた。
全員が出ていった後に行動を始めたローレンは、ガラス張りの扉には外から見えないように段ボールや紙を隙間なく貼りつけており、さらに全ての窓のカーテンを閉めている。
必死になって帰ってきたマイルズ達に手を貸し、リシュが帰ってきた今扉を完全に封鎖したのだ。
これだけ雁字搦めに巻けば、外からはゾンビが多少叩いたところでびくともしないだろう。
両開きの立派な扉を、完全に開かないただの壁へとジョブチェンジさせたローレンは、
役目をやり遂げた達成感からか、はたまた緊張が完全緩んだのか、
思わず、といったように脱力してその場に座り込む。
その光景を見たリシュも、強張っていた全身から嘘のように力が抜けてローレンの隣に座り込んでしまう。
よっぽど疲れが溜まっていたようだ。
さっきまでの全力ダッシュが嘘だったように、身体はピクリとも動かない。
まるでマラソン大会の後みたいな疲労感だな、と思いながら息を整えていると、
コナーが足音静かにこっちに近づいてくる。
コナーさん、とリシュが口を開こうとするとコナーはその前にこちらに手を上げて「待て」のしぐさを見せつつ、反対の手で
そのしぐさにハッと気を引き締める。
そうだ、まだ壁1枚隔てた向こう側はゾンビだらけ、こんなところで声を出すのは危険すぎる。
コナーさんにコクリと頷いて見せ、ローレンちゃんの手を取って立つように促す。
ローレンちゃんにも静かにのジェスチャーを見せるのも当然怠らない。
他のメンバーに改めて視線をやれば、こちらを見ているマイルズさんと視線がぶつかる。
話したいことはあるけどまずは上に行こう。
そう思いを込めて上を指させば、彼も心得たと言わんばりに頷いてくれる。
相変わらず察しがいい、流石ここのメンバーのリーダー役なだけはある。
クロエと
コナーさんもと視線をやれば、コナーはローレンが紙で塞いだ窓に張り付き、チラリと外を確認していた。
ゾンビ達の様子を伺っているらしい。俺も見たい、と場所を代わるように譲ってもらい外を見れば右往左往とばらけていくゾンビの姿。よかった、どうやらこちらを完全に見失ってくれたようだ。
しかし見失ってくれたとはいえ、やはりこの場では大きな音を立てることができないため話も碌にできない。
コナーさんとローレンちゃんと一緒に階段の方に向かうが、そこにはエイブリーさんを立たせようとしているマイルズさん・クロエさん・
――いったいどうしたんだ?
疑問に思いながら、仕方なく小声で事情を尋ねようとしたところで、コナーさんがため息を一つついて
スタスタと駆け寄っていくと無言でエイブリーさんの右腕を掴み上げて歩き始めた。
なんでそんな乱暴に?
と思いながらも皆もコナーさんの後について屋上に向かうのだった。
「皆すまなかった‼作戦を失敗した挙句、皆まで危険にさらしてしまった。」
「いいんですよマイルズさん。皆無事に帰ってこれたんですから」
屋上について早々に腰を折って皆に謝罪を始めるマイルズさんに、相変わらず責任感強いなぁ
と可笑しな笑いが出てしまう。
話を聞けば、食料を詰めたリュックを落としてきてしまったらしい、
食料が得られなかったのは確かに残念だが、今はひとまずマイルズさん達が無事なことの方が大切である。
「しかし、リュックは確かに回収できなかったが、食料はゼロじゃないぞ!」
そう言ってマイルズさんとコナーさんは不自然に膨らんでいたポケットから次々と食料を取り出してきた!
缶詰のスープにピーナッツバター、ベーグルやマフィンといったパン類。
どうやら、マイルズさんとコナーさんはゾンビから逃げ出し店から脱出するときに手に持っていた食料や脱出ルートにあった食料をポケットにねじ込んで脱出したらしい。
2人ともジャケットを羽織っていた為にズボンと合わせてポケットの数は8つあった。
これにギリギリまで食料を詰めて持って帰ってきてくれたのだ。
食料だ!と皆でそれに我先にと群がる。
ほとんど1日以上食べていなかった胃袋がいきなり大音量で主張した。
だがそんな音は誰も気にしなかった。
平等に分配するから待っててねと、マイルズさんが缶詰の蓋を開けた瞬間に屋上に漂うトマトの香り。
これはトマトスープだ!
普段ならこんな香りは気にも留めないのだが、この時ばかりは話が違う。
漂うその香りに全員が黙る。
隣にいるローレンちゃんとほぼ同じタイミングで、ごくりと喉が鳴る。
その喉の音に返事をするかのように
誰かが噴き出したのをきっかけにみんなが笑いだした。
いままで笑う余裕なんてないほど張りつめていた緊張が完全にほぐれるのを感じた。
いきわたったスープに手を付けてパンを食べ一息つけば、
みんな笑いながら話をはじめる。
ピンチな部分もたくさんあったけど、無事に切り抜けてみれば笑い話だ。
リシュは「お前の機転で助かったぞ!」と頭をくしゃくしゃ乱暴に撫でつけるコナーやマイルズ、
「流石ラクーン1の天才少年!」などと褒めてくるクロエ・トリシャ・ローレンに、
気恥ずかしさで頬を真っ赤に染めながら満更でもないような笑みを浮かべ、誇らしげに胸を張るのであった。
作戦は完璧だったはずだ。
上から瓦礫を落として
――エイブリーは、頭の中で何度も成功の光景を描いていた。
普段は
頭の中では既にそんな
――なのに
「いやー、リーシュ君が機転を利かせてくれていなかったら私たちは全滅してたよ!」
「ほんとよ、あの場で閃光手榴弾を作ってしまうなんて、天才少年の面目躍如ね!」
「ねぇ!材料があったらもっといろんな物も作れるんでしょ?今までどんな物作ったの?」
拠点へ戻るなり、皆がリーシュを囲んでいた。
肩を叩かれ、笑われ、食べ物を押し付けられる。
当のリーシュは困ったように頭を掻いていた。
「いや、別に……たまたま思いついただけだって」
「またまた!」
「謙遜しなくていいのよリーシュ!」
リーシュを中心に笑い声が広がる。
エイブリーは少し離れた場所で、それを見ていた。
胸の奥からぐちゃぐちゃと嫌な何かが込み上げてくる。
違うだろ。
あそこに立っているのは、本来なら俺だったはずだ。
皆に驚かれて。
褒められて。
「すごい!」って言われて
それで、女
それは俺の役だったはずだろ?
なのに。
失敗した俺を助けたせいで、あのガキが全部持っていった。
あのガキは悪くない。
助けられたことも分かってる。
あいつのお陰で帰ってこられたことも分かってる。
分かっているのに、頭の奥でドス黒い感情が膨らんでいく。
――なんであいつなんだ。
拳を握る。握りこみすぎ自らの爪が皮膚を裂き鮮血が垂れるがエイブリーは気付きもしない。
輪の中心で笑っている
その眩しさが、今はただただ腹立たしかった。
読了お疲れ様です!
皆さんたくさんの感想ありがとうございます!
おかげさまで作者もヤル気モリモリです!
頂いた感想は無理のない範囲で小説に反映していきますので、
これからも感想ください!(感想乞食)
あ!あと高評価もくれたらうれしいです!
書き始めたときは評価はつかないだろうと思ってたのに皆さんが評価付けてくれたので、
かなり嬉しくなっちゃいました。
でも、☆0はできればやめてね((((;>д<))))