更新止まっててすいません。
エタった訳ではないんですが、去年は仕事がクッソ忙しくなって、
今年は年が明けて早々に身内の不幸がありバタバタしていました。
まだ色々忙しくてバタバタしていますが、チョコチョコ書き溜めていた分がいい長さになってきたので
投稿します。
「・ ・・ --- ・・・」
モールス信号。
前世の中二の頃に、かっこよさから憧れて勉強しだしたはいいが、
暗記の面倒くささと、
覚えても誰もやり取りする相手がいないことから
途中で覚えるのを放り出した、この通信手段だが、
こんな中途半端な知識しか持たない俺でも覚えているこの一文
トントントンツーツーツートントントンだ
すなわちSOS。
まぁ覚えているのは中途半端な勉強のおかげではなく
流行っていた曲のおかげだった気もするがそんなことはどっちでもいい。
問題なのは...
(この信号はちゃんと誰かに届くのか?)
リーシュの心は不安に包まれていた。
周りの皆にモールスで救難信号を発していると説明し、
沈んでいた空気も明るくなりはした。
だが、モールスを発信しだしてから、既に5時間弱。
辺りはうっすらと暗くなり始めていた。
マイルズ達は、警察もこの騒動で忙しくて手が回らないのだろう、と
言ってはくれていたが...
「クソッ!何ちんたらやってんだよ!早く助けに来いよ!もう1日以上は碌に食ってないんだぞ!」
苛立たしさをぶつけるように、手に持ったお菓子の包み紙を投げ捨てるエイヴリー、
時間の経過とともにストレスのせいからか凶暴になっていく彼に、もはや女性陣は近づきもしなくなっている。
そんな彼を「落ち着け」となだめるコナーさんとマイルズさんの大人二人組。
彼らの顔にもしっかりと疲労の色が見て取れる。
彼らは必死にこの避難グループをまとめているのだ、疲れがピークに達しているのも無理はない。
女性陣。すなわちクロエさんとローレンちゃん、それと母さんはひとまとまりになって
座り込んでしまっていた。
モールスのお陰で僅かに元気を取り戻したように見えていたが、
この数時間でまた暗い雰囲気に逆戻りしてしまっていた。
俺も、母さんとローレンちゃんに挟まれる形でこの女性グループに交じっている。
やはり空腹という最大の問題はいかんともしがたいものだ、
俺も気分が悪い方へ悪い方へと勝手に傾いていくのが何となくわかる。
しかし、自覚したところで気分は持ち上がらない。
そんなとき、ローレンちゃんが懐の内ポケットにゴソゴソと手を突っ込んで、
何かを取り出した。
「はいリーシュ君。これ機械修理してたときのリーシュ君の分のお菓子」
「とっててくれたのローレンお姉ちゃん?」
もちろんだよ、勝手に食べたりしないよ。
と薄っすら微笑むローレンちゃんが差し出したのはビニールに包装された1枚のビスケット。
このビルで見つかった唯一の食料だ。
しかもこれは最後の一枚だ。
ビルの中にあったこれらは、職員がおやつのために持ち込んでいたものだったのであろう、市販のビスケットが数箱のみ。
これではとてもじゃないが7人分の食料の代わりにはならない。
「ありがと、でも僕これあんまり好きじゃないからローレンお姉ちゃん半分こしよう?」
「えっ?いいのリーシュ君?これで最後の食料なんだよ?」
「いいから早く、エイヴリーさんに見つかったらまた文句言われちゃうよ」
言うが早いか、リーシュは包装されたビスケットをパキっと半分に折って
ローレンに差し出した。
「これ食べて、今日はもう寝ちゃおう?明日になったらきっと何か進展があるよ」
おずおずとビスケットを受け取るローレンちゃん。
俺だってお腹はすいているし、このビスケットが好きじゃないというのは当然嘘だ。
しかし、俺は前世合わせれば既に30を過ぎた年齢だ、
自分に好意的に接してくれる女の子にはかっこいいところを見せなければならない。
サクサクと10円玉2つ分ほどの大きさになったビスケットを頬張り、水で流し込む、
とてもじゃないが物足りない、しかしローレンちゃんの手前文句を言うのはカッコ悪いので、
俺は空腹をごまかすように、
バッと毛布代わりにしている職員の物であろうジャケットをかぶる
鳴りそうになるお腹に鳴るな鳴るなと力を込めながら横になる。
明日には、きっと助けが来るはず...
俺を抱きしめるように抱え込むローレンちゃんの体温を感じながら、俺は深い眠りに落ちていった。
9月26日
朝を迎え、全員が起床して寝床を抜け出した頃
時間にして10時が少し過ぎたくらいだろうか?
マイルズさんとコナーさんは目を凝らすように辺りの状況や空を眺めている。
俺も女性陣と一緒に見渡してはいるが...
「…ッチ!やっぱこんなガキまったく頼りにならなかったじゃねーかよ!」
「ッツ!」
「やめろエイブリー!我々の力になろうと必死に頑張ってくれている子供に向かってなんてことを言うんだ‼‼」
ギリッと歯が軋むように音を立てる。
悔しさと情けなさで顔が真っ赤に染まるのを感じる。
母さんとローレンちゃんが必死に俺を抱きかかえるように耳を塞ぎ、エイブリーに抗議しているが、
そんな喧騒もどこか遠くで聞こえる気がする。
こちらを忌々し気に睨むエイブリーの視線は、
まるで前世での親たちの、使えないゴミでも見るような視線にそっくりだった。
「自分がなんとかこの状況を打開してやる!」
と、そう決意したプライドに、静かに罅が入ったような、そんな気がした。
街は相変わらずあちこちから黒煙が上がり、ストリートにはゾンビの姿がポツポツと見えている。
遥か遠くの方で車がクラッシュしたのか、セキュリティアラームが鳴っている気もするが、
それもビルや山で音が反響してよく聞こえない。
昨日とまったく同じ風景がそこには広がっていた。
数10分は探してはみたが、結局俺たちを救助しに来たような痕跡は見当たらず、
今から救助が来るような気配もまったくない。
救助要請は届かなかったのだ。
あれからもチラチラとこちらを時折睨むエイブリー
そんな彼の視線が少しずつ心に負担を掛けていく。
エイブリーが俺に付けた文句、
その罵倒に対して思いっきり反論してやりたい気持ちが溢れる。
エレメンタリースクールに通っているような年下相手に
なんの活躍もできていないお前が文句付けるのか!!
と、そう言ってやりたい気持ちに駆られる。
でも、俺の意思に反して俺の口はピクリとも反論しようとしない。
ふと、嫌な考えが頭をよぎった。
本当にそうか?
本当は俺が悪かったんじゃ?
いや、でも俺が何とかしないとどうしようもなかったはずだし。
この状況を変えられるのは俺しかいないはずで...
どうすればいいんだ…?
どうするべきなんだ…?
何をすればいいんで…?
俺が解決しないといけないはずなんじゃ?
俺が余計な事をしなければ上手くいくんじゃ?
俺が動いたから、こんな事態に陥ったんじゃ?
思考はグルグルグルグルと悪い方へ悪い方へと、負のスパイラルへと陥っていく。
先ほどまで事態の解決の手段を必死に考えていたはずのリシュの思考は、
ジェットコースターのように真っ逆さまに落ちていく。
ローレンに抱きすくめられたままリーシュは完全に動けなくなってしまっていた。
このときリーシュ自身は気付いていなかったが、
彼の身体はブルブルと小さく震えていた。
思考はグチャグチャになり、
目の前が怒りと羞恥で真っ赤に染まり、
思考がまとまらなくなる。
まるで対人恐怖症のような症状が現れる。
否、まるでではない。
前世での経験からくる、人間不信と失敗のコンプレックス。
人前での失敗への極端な恐れ。
リーシュは完全に対人恐怖症を患っていた。
「エイブリー!お前言いすぎだぞ!あの子だって頑張って「黙れヤブ医者が!救助が来なけりゃ俺たち全員が餓死しちまうのは確かなことだろうがよ!」...」
エイブリーを嗜めようとして言葉を遮られ、
飛び出してきた反論に何も返せなくなるマイルズ。
彼とて、理解はしていた。
このままでは自分たちはゾンビに襲われずとも、ここで全滅だと。
「まったく、あの出来損ないのチビなんか信じたせいで貴重な時間を無駄にしたぜ。おい!コナーのおっさん!」
コナーを呼びながら、「お前も来い!」とマイルズを引っ張っていくエイブリー。
コナー、マイルズ、エイブリーの大人の男性陣が揃った場で、
エイヴリーは苛立たし気に口を開いた。
「お前らも分かってるだろうが、俺たちはもう限界だ。理由はお前らも分かってんだろう?食料がねえからだ!」
そんなことは分かっている。
実際エイヴリーの話を聞いている二人の腹も今にも鳴り出しそうなくらい空腹を訴えていた。
「そこでだ、この3人で食料を確保しに行くぞ」
「…無茶だ。あんなにたくさんのゾンビがいるんだぞ?できるわけがない」
「マイルズに同感だな。あの数のゾンビが徘徊する街に降りてみろ、10分もかからずに奴らの仲間入りだ」
エイブリーの提案を速攻で却下する2人。
いくらゾンビの足が遅いからといっても、その数は尋常ではない。
チラッとストリートを見下ろすコナーの目には、人の死体を貪るゾンビの姿。
事故を起こした車を避けるように徘徊するゾンビ、
車のボンネットに突っ伏してバタバタと手を動かすゾンビ、
etc...
パッと数えただけでもその数は10を上回る。
この狭いストリートでこの数だ、当然見えていない個体もいるだろう。
あんな中を拳銃2丁で食料を探しに行くことなど不可能だ。
「いや、俺に考えがある。まずあそこの店、分かるか?」
そう言ってエイブリーが指さしたのは、階下のストリートから横にそれる道の先にある建物。
ここからでは手前の家が邪魔で、何の店なのかよくわからない建物だ。
「あそこは小さなマーケットでな、十分な食料品がある!」
「それは本当か?」
「あぁ、俺はこの辺に詳しいんだ」
エイブリーの話が確かなら、この建物の正面入り口からおよそ120mほどの距離。
食料入手のために街に降りるにしても、3ブロックか5ブロック下手すればもっと遠くに行かねばならないと考えていたコナーの予想より、ずっと近い距離だ。
「いいか?まずこの屋上から物を落として音を立ててゾンビをあの店から少しでも引き離す。そんで安全になったところを俺ら3人でパパッと食料を分捕る!どうしても排除できないゾンビは銃じゃなくてそこらの鉄パイプかなんかで、できるだけ音を立てないよう処理する。簡単な作戦だろ?」
絶対に上手くいくに違いない、と確信するかのように自身たっぷりのしたり顔でエイブリーは捲し立てる。
どうなんだ?とマイルズはコナーの表情を確認する。
マイルズはこういった荒事は縁のない人生を送ってきた為、作戦の成功率が高いのか低いのか分からなかった。
一方でコナーはしばらく考え込んでいた。
彼は元警官の肩書を持つだけあって、多少の荒事は経験がある。
ジッと、ストリートを眺めながら思案し、
やがてこっちを見てゆっくりと頷いた。
「…よし!わかったエイブリー。君の作戦に乗ろう。確かに限界が近いとは思っていた」
「そうだろう!これからは俺の言うことをきちんと聞けよ?俺に従ってりゃ上手k「ただし!」」
「これ以上グループの和を乱すような行動を取るな!お前が不安や空腹で苛立っているのは分かる。しかし、あんな子供に八つ当たりするのはよせ!女性陣もお前の態度に困っていた。俺たちもだ」
自身の意見が通りいい気分になって、ついでにこのグループのリーダーの座を要求しようとしたエイヴリーは、
しかしそう言ってこちらを戒めるマイルズに二の句を告げれなくなってしまう。
「今回はお前の作戦を採用するが、本来グループの和を乱す者の意見は通らない。お前も喧嘩腰にならないでグループに馴染めるよう努力しろ!」
何様のつもりだ!
そう言ってやりたい気持ちがエイブリーの中で瞬間湯沸かし器のように沸騰する。
だいだいこいつとコナーが毎度毎度俺の意見に反対するせいで、
俺の出す素晴らしいアイデアが毎回無駄に却下されている!
女共もこの2人にが言うから仕方なく俺に反対しているに違いないし...
こいつらがいなければ今頃はローレンだって...
いや、今はそのことはいい。
この作戦さえ成功してしまえば、このグループのリーダーは俺だ!
そうなればすべてが上手くいく
今は大人しくしておけばいい…
「わかったわかった!俺が悪かったよ!おっさん」
口ではそう謝意を述べながらも、エイブリーは内心でマイルズに中指を立てていた。
「なんですって⁉街に降りるって正気⁉」
ふと、グルグルと頭の中で渦巻く暗い感情の渦の中から引き戻される。
辺りを見回せば、どうやらマイルズさん達とクロエさんが話をしているらしい。
「君も分かっているだろう?このままでは我々はゾンビには成らずとも、ここで飢え死にしてしまう」
「…それはそうかもしれないけど」
「他のみんなも聞いてくれ。僕とコナーとエイブリーの3人で食料調達のために街に降りる計画を今立てている」
街に降りる⁉この状況で⁉
そんなことをすれば絶対に噛まれてしまうのは分かっているはずだ!
反対しないと
リーシュは抱きしめてくれているローレンの手を解こうとして、
しかし、頭をよぎった考えに手を止めてしまう。
お前が余計な事をしなければ全て上手くいくぞ
リーシュの手は動かないままだった。
はい、ということで2026年初投稿でした。
前書きでも書いた通り、かなり忙しいです。
ちょっと4月くらいまではどうなるか分からないので、
投稿遅れるかもしれませんが、お待ちいただければ幸いです。
感想や誤字脱字の指摘、
文章がおかしいとか面白くないとかの批判批評も含めて待ってまーす。
出来れば面白いっ!て言ってくれた方がうれしいけどwww
返信が遅くなったらごめんね。