はい始まりです。真女神転生Ⅳの二次創作作品です。
真Ⅳは軽率に東京が滅ぶメガテンシリーズでも、これでもかこれでもかと東京都民を虐げまくる強烈な東京への怨念すら感じられるタイトルですね(笑)。
ゲームシステムとしてはなかなかに独創的なものが採用されており、特にHPはあっても防御力がないこともあって、レベルがなんぼあってもあっさり死ぬ上、ボスの強さは真Ⅲ以上の凄まじさで、特に序盤の壁となるミノタウルスに勝てなくてけちょんけちょんにされた人も多いではないのでしょうか。彼奴あそこにいて良い強さじゃないよ……
それはさておき。
大筋としては拙作Sストレンジジャーニーと同様、強力な助っ人の手を借りてこの過酷な世界をハッピーエンドに導くものとなります。
それでも救えない人もいます。
それでも最終的にはハッピーエンド(主観)となりますので、お楽しみに。
プロローグ、逃避行
決死の作戦だった。
闇に包まれた東京。闇に包まれて既に25年以上。此処には悪魔と呼ばれる恐ろしい存在が跋扈し、まともな秩序も都市インフラも失われた。
破滅的な事態が起こりすぎて、何が起きたのか正確に知っている者など数えるほどしか存在していない。
分かっているのは。
空がいきなり失われたこと。
全面核戦争の話があったこと。
そして、空が失われてから、悪魔という存在が大挙して現れた事。
空と同時に東京から外に出る術も失われ。
1000万都民は、25年以上続いた地獄で既に10万を割り込むほどに減ってしまっている事。
それだけではない。
元々どうしようもない三下犯罪組織だった阿修羅会等という存在が、今では東京の最大戦力であり。
こうなる前に東京に集まっていた自衛隊がどういうわけか持っていた気化爆弾などの決戦兵器を有しており。
それどころか、悪魔もある程度味方につけている事だ。
阿修羅会が有能だったらまだマシだっただろう。
だが此奴らは保身しか考えていない屑だ。
所詮は元犯罪組織。
まっとうな経営だの組織運営だの出来るわけがない。
目先の利益しか理解出来ていないクズと、手当たり次第に人間を食い荒らす悪魔のせいで。
今後人間が増える見込みもなく。
それどころか、減る一方。
更には人間の心も荒みきっており。
いわゆる淫祠邪教の類が多数蔓延り。
人間を喰らう事が分かりきっている悪魔を崇拝するものまで存在する有様だった。
そんな中、この決死の作戦は決行された。
作戦を決行しているのは、自衛隊の生き残りの一部の部隊。今は人外ハンターと呼ばれる存在だ。
現在目指しているのは、混乱の中放棄された司令部の一部。
だがこれは強力な結界が張られている上に、阿修羅会の人間と手先の悪魔が守っており、近付く事ができなかった。
阿修羅会の方でも何度か結界を破ろうとしたが、出来ずにいる。
だが連中の手には、強力な切り札と言える悪魔が幾体も存在しており、これが破られるのも時間の問題だ。
だからやるしかない。
昔は若者でも、今は老人の手前。
参加している元自衛官は僅かな人数しかいない。
殆どは「戦後」世代で。
殺し合う事と、奪うことしか知らない者達ばかり。
皆心が荒みきっている。
それでも人外ハンターは、志を持つように。
いつかきっと道が開けるようにと後続に教え続けて来た。
だが、それでもこんな状況だ。
人間では勝ち目が薄すぎる悪魔の圧倒的強さ。
それに堕落すれば楽になれる現状。
生きる事に執着する意味が見いだせない全てが閉ざされた世界。
そんな中、灯りがぽつぽつと点っている、この暗い世界で。やっとかき集めた、士気が高い精鋭がこの作戦の参加者だ。
一見すると、ただのビルに見えるが。
阿修羅会のチンピラが数名屯している。側にはとんでもない巨大な人間のようなのがいる。
髪も髭も凄まじく、手にしている巨大な棒は一薙ぎで戦車すらひっくり返しそうだ。
あれが、悪魔である。
悪魔といっても神話における魔的存在というわけではない。
神話に登場する善悪含めた人外のもの全てを悪魔と呼ぶ。後年の都市伝説に出現したような存在もひっくるめて出現した場合は悪魔と呼んでいる。このため女神などの神々しい悪魔もいる。おかしな話だが、天使も悪魔に分類されるし。善良な悪魔も性格が悪い悪魔もいる。ただ善良な悪魔は少数派だ。どうしても恐ろしい側面を持っている場合が多い。
悪魔は物理法則が通じない相手も多い。
東京に集められていた自衛隊の10式戦車は対悪魔戦で初陣を飾ったが、雑魚悪魔相手に大いに活躍はしたものの、巨大な悪魔や高位の悪魔には手が出せず、修理も出来ず。やがて全てが失われていった。
人間くらいの大きさでも対戦車ライフルが通じない奴なんてザラにいる。
見かけが可愛らしくても、人間を頭から囓って食ってしまうような奴だっている。
班長をしている志村がハンドサインを出す。
志村は下の名前もあるが。この荒んだ時代では、殆どの人間は名前か名字だけで呼ばれるようになっている。
余裕がないのだ。
志村は自衛隊であの戦争の時新兵だった。
今ではすっかり歴戦の指揮官だ。
殺すのは人間だけじゃない。悪魔を多数倒して来た。
だが同時に、人知の及ばない悪魔の強さも幾らでも見て来た。目の前で、10式戦車を素手でひっくり返された時の衝撃は忘れない。
あの巨人は恐らく霜の巨人だ。種族は邪鬼である。
霜の巨人は北欧神話に登場する、ヨトゥンヘイムと呼ばれる地に存在しているとされる神々の敵……なのだが。
実際には北欧神話におけるヴァン神族と呼ばれる神々と同一ではないかとも言われ。
北欧神話でもっとも人気がある神の一柱であるフレイはこのヴァン神族であることから、実の所元々は神だったのではないのかという話もある。それに巨人と神々が子供を作る逸話も幾らでもあることから、「野蛮で残虐」と設定されてはいるが、その言葉を額面通りには受け取れないし。
何よりも北欧神話の神々の暴虐の数々を知っていると、ヨトゥンヘイムの巨人達が、お前等に言われたくはないと嘆きたくなるかも知れない、とも思う。
ただ、悪魔として今目の前にいるあの霜の巨人は、人間の意識が介在している。
その結果、邪悪で残忍な人食い巨人以外の何者でもない。
悪魔は人の影響を大きく受けるのだ。
最初見境なしに人を殺戮しまくっていた悪魔達が、最近はある程度手心を加えている様子が見受けられるのも。
或いはだが。
人を滅ぼすと、自分達も滅ぶことを知っているから、なのかも知れない。
東京は封じられ、そして今や外がどうなっているかも分からない。電波も一切届かないからだ。
だがこうなる寸前に、軍部隊は全世界に水爆が発射された連絡を受けていた。
どこの国にも見境なく、全人類を抹殺するのに充分な量の水爆が放たれたという報告だった。
明らかに各国が自己申告している量を十倍は凌駕しているという無線もあり。
その時から。
この狂った事態は始まっていたのかも知れない。
全員配置完了。
そしてそれぞれがスマホを操作。
仕掛ける。
スマホには「悪魔召喚プログラム」というものがインストールされている。というよりも、もはや今はそれ以外の用途では使われない。
これは自分より弱い悪魔を従える事が出来るもので、これを用いて人外ハンターは悪魔を従え、悪魔と戦う。
人間だけが相食むのではない。
悪魔もまた相食む。
それがこの世界の恐ろしい現実だった。
志村が呼び出した悪魔は、膝ほどもない小柄な子供である。幻魔一寸法師という。
伝承にある一寸法師その存在だ。
何体か用途にあわせた悪魔を従えている志村だが、相手は巨人である。故にこの一寸法師を呼び出した。
一寸法師はあまり強くない悪魔だが。この攻撃には適任である。
霜の巨人を示すと、一寸法師は残像を作りながら襲いかかる。
同時に全員で仕掛ける。
「GO!」
「効力射、制圧射撃!」
貴重なタバコを吸いながらゲラゲラ笑っていた阿修羅会のチンピラを瞬時にM16アサルトライフルで始末する。在日米軍も大混乱の中、一部は自衛隊に協力してくれて、そのお下がりだ。
空軍は天井が出来たときに何もできなくなってしまい、ヘリもドローンも飛行する悪魔の好餌にしかならなかった。
巨人が立ち上がり、吠えようとしたが。
その脛が一瞬で両断され。
更に喉がざっくりやられる。
不意打ちもあるが、巨人に対する圧倒的な強さの逸話。巨大な鬼を仕留めたという逸話のある一寸法師だ。
その起源は日本神話のスクナヒコナ神にあるとも言われ、巨人殺しの特攻持ちである。
霜の巨人が、無念そうに消えていく。
「撃ち方止め。 クリア」
「マグネタイトはどうしますか」
「放置。 今回は時間勝負だ」
「イエッサ」
マグネタイト。
色々噂を聞くが、悪魔が実体化するために用いる物質だ。実際はただの蛋白質とかアミノ酸という噂もあるのだが、志村もその辺りは詳しくは聞かされていない。
悪魔が死ぬと、そのマグネタイトになってしまう。今も霜の巨人がいた辺りに積もっていた。
また、悪魔はマッカという独自のエネルギーが結晶化した通貨を用いており、これは今や円に代わって東京で通貨として流通している。
悪魔の中にはマッカを差し出せば見逃してくれる者もいるためだ。
ビルの中に急ぐ。後方を任せ、志村は最前衛で警戒しながら行く。人間に比較的友好的な一寸法師だが、それでも呼び出しているとマグネタイトを食う。こういうのは基本的に先払いしておくものなのだが。それでも実体化させているだけでマグネタイトを消耗するため、普段は非実体化させていて、戦闘時だけ実体化させるのが基本だ。そうしないと悪魔によっては使役者を襲いかねないのである。
低級の悪魔の中には、死ぬと普通に肉になるものもいる。
こういう悪魔が、今や東京の人間の主食だったりする。
情けない話だ。
たくましいと言う事も出来るが。
実際には、文明をかなぐり捨て。人間の強みを全て捨てた生活をしているとしか思えなかった。
暗いビルの中には、僅かな灯りが点っている。
この電気が来ている仕組みもよく分からない。
東京で開発された何かがまだ生きていて、電気を供給してくれているという噂もあるのだが。
志村もその辺りは、上司であるツギハギに聞かされていなかった。
ツーマンセルで急いで地下通路を行く。
比較的早い段階で、扉に結界が張られていた。扉は淡く輝いていて、曼荼羅を思わせる図が浮かんでいる。何度も突破を試みたようだが、びくともしていないようである。
この結界は元々東京に存在していた風水の陣を利用したものとされているが。
どうせ後付だろう。
魔術なんて、それっぽければ意外と発動する。
今の時代、人間でも魔術を使う者は珍しく無いが、それは悪魔に教わるとあっさり出来るようになったりするし。
それどころか、魔術の使い方なんてそれぞれ違っている。
多分世界の法則が壊れてしまったのだろう。
この結界はどうやって張ったのかは分からないが。とにかく何かしら高位の悪魔か、それに力を借りた存在がやったのだと思う。
取りだす符。
敵意がない事を示すものだ。
それを扉に貼り付ける。
すると、嘘のように扉が開いていた。
そのままの陣形で、奧へ。
後列の若い者達は緊張しているようだ。
私語は禁止。
入る前にハンドサインは出してある。
此処は曰く付きの場所で、何かしらの事態を打開する実験をしていたが、結局上手く行かず。
最終的に放棄して、逃げ出すことになったという因縁の地。
呪われているなんて噂まで流れている。
志村は今の悪魔まみれの時代を思うと、それを笑い飛ばせなかったし。笑い飛ばせないことが悔しかった。
灯りが弱くなってきたので、悪魔を一体召喚する。
妖精ジャックランタン。
英国の伝承に登場する、日本で言う人魂だ。ジャックという男がランタンを持って彷徨っている亡霊だという伝承もあるが。今の時代呼び出せるジャックランタンは、カボチャ頭の可愛い妖精である。勿論従えられない場合は、焼き殺される事もある危険な相手であるが。
「ヒーホー! 志村、照らすだけでいいんだホ?」
「静かに。 今作戦中だ」
「分かったホ!」
愛くるしいものだが。
和むには状況が悪すぎる。
軍用装備でもライトは今や貴重品だし、何より誰かの手が塞がっている状態は避けなければならない。
それにジャックランタンはこう見えてそれなりの自衛力がある。
対巨人以外は殆ど役に立てない一寸法師よりは、だいぶ使い路もあるというのが実情である。
通路を事前に教わっている通りに行くと。
やがて、カプセルがいつつ並んでいる、複雑な機械が多数立ち並んだ施設に出ていた。
ナンバーがふられているが、2から5までは既にダメだと聞いている。
制御に失敗した。
そういう話だ。
床には巨大な魔法円が描かれている。
ハンドサインを出して、周囲警戒を指示。
預かっているメモを確認しながら、1と記載されている横倒しになっているカプセルを確認。
1のカプセルには電力も供給されている。
そして中には、銀髪のまだ幼い娘の姿が見えた。
以前は拒否された。
そういう話だ。
そして計画を聞きつけて来た阿修羅会の襲撃もあって、此処を放棄して逃げるしかなかった。
阿修羅会は身勝手なエゴそのもので動く集団だ。
自分達だけ良ければいいと考えて、自衛能力になりうる悪魔召喚プログラムが入ったスマホを、自分達だけ独占するような行動を取っている。人外ハンターの集団である「人外ハンター協会」にも堕落するような薬物だのをまき散らし、仲間内で殺し合ったり、堕落するように仕向けている程だ。
ここで行われたのは、この終わりを迎えつつある東京を救うための希望。
希望なんてものは、阿修羅会にとってはあっては邪魔なのである。
自分達だけが楽をして、残った時間だけ過ごせればいい。
そう考えているような連中には。
自衛官になってすぐに「大戦」に巻き込まれ。
全てを失った最後の世代である志村には、それは受け入れられない。
あの「大戦」前の時代は、確かにろくでもなかったが、それでも此処まで酷くはなかった。
今の若い世代は、希望なんて知らない。
上司であるツギハギは寡黙すぎて何も語らない。
阿修羅会が唯一怖れるとさえ言われている人外ハンターの長であり、天井を越えて先に進んだとも言われているフジワラは、今では半隠棲を決め込んでいる。
それでも時々若い人外ハンターに志を語る。
希望は自分達で掴まないといけないのだと。
志村はそれを若い世代にしめしたい。
もうそろそろ体だって満足に動かなくなるのだ。
「よし。 皆、警戒を続けろ。 もう一度……呼びかけてみる」
志村はカプセルを開ける。パスコードを入れるだけだ。
カプセルは自動で開いた。
内側に眠っている子供は、しばらくぼんやりしていたようだが。やがて強い意思の光が目に宿る。
口を閉じたままだが。
不意に、声が響いてきていた。
「まーたきよったか。 ちょっとまっとれ。 お前達にあわせて言葉を調整する」
「!」
「……よし調整した。 それで何か。 この娘を利用して御輿にしようてか。 ばからしい。 そんなだから、この娘は拒否した。 今度はこの娘を兵器にでもするつもりか。 悪魔だかなんだか知らんが、お前達が最初にやるのは、そのようなものを撃ち払う前に。 人間同士のばからしい争いの収束ではないのか」
娘は口を動かしていない。
ただ、じっと志村を見ている。
穏やかそうな表情だが、目には強い意思の力がある。
喋っているのは、娘ではない。
もしも何か言われた場合は、志を説け。そして敬意を忘れるな。そう指示されている。
相手は偉大なる存在だ。
大戦の時、この東京を核ミサイル多数の直撃から守り抜いてくれた、あの守護神に匹敵するほどの。
跪くと、志村は言う。
「自分は志村。 自衛官をしていました。 この地を守るため、貴方の力をお借りしたいのです」
「人間同士のばからしい争いをまず収めろ」
「仰せの通りにございます。 しかしながら、今はもはや強大すぎる悪魔の前に誰もが希望を失っているのです。 だから阿修羅会等というその場さえ良ければどうでもいい連中が幅を利かせ、東京は乗っ取られつつある! 残念ながら私達には、その絶望に身をゆだねる誘惑から、人々を救うほどの力がありません!」
「たわけがっ! そのような他人行儀であるから、カスに好き放題されるのだっ!」
一喝が飛んでくる。
凄まじい気迫に、思わず首をすくめていた。
これは、確かにとんでもない偉大な存在が側にいる。それがよく分かる。
「まあいい。 ともかく行くぞ。 こんな状態になっているとはいえ、わしが愛した世界よ。 それに、二度目も悪くはないでな。 どうにかしてやる」
「来てくれるのですか」
「実は自力で行くつもりであったがな、無理矢理この世界に呼び出されたらしいこの娘が、力の調整がまだ出来ていないらしいのだ。 お前等がいう悪魔召喚とやらとも違うらしいしな。 未知の技術であるのだろうからやむを得まい?」
「おお……感謝します」
志村は思わず、地面を頭にすりつけていた。
娘は多少もたつきながらも、冷凍睡眠カプセルから出る。
素足のままだが、瓦礫やガラスの破片もあるからと説明しても、首を横に振られた。なんでもある程度は魔術にちかいもので体を守られているらしくて、そんなものは苦にはしていないらしい。
帰路を急ぐ。
阿修羅会がいつ来てもおかしくない。
奴らは愚連隊そのもので、東京を乗っ取れたのもおかしいほどの連中だが。
それでも過剰な武力を手にしているというだけで、今では充分過ぎる程の脅威なのだった。