僕はまた夢を見た。
やはり僕は背の高い武人になっていた。そして、戦いに勝ち、三人の優れた仲間と一緒に馬上で凱旋の途についていた。
少し年上のまとめ役。髭を蓄えた男性。先頭の馬に乗っている。
酒井忠次といわれている。
この男性が、ヨナタンに雰囲気が似ている。勿論似ても似つかないのだが、どうしてか同じ存在に思えるのだ。
少し遅れて続いているのは、榊原康政。
寡黙だが、あらゆる事に長け、政治でも軍事でも器用にこなす男だ。書物の作成から都市計画までなんでもやってみせる。
この男が、どこかイザボーに似ていると思った。
そして最後に続いているのが、皆より一回り若い勇士。
常に最前線に立ち、自分も部下も極限まで酷使する。戦場では常に深手を負いながらも戦い続け、武田の赤備えを任された最強の若き武士。
井伊直政。
悍馬のごとき気性で、部下に嫌われているが。それでも圧倒的な成果をたたき出す井伊の赤鬼。
この者が、どうしてかワルターに似ていると思うのだった。
目が覚める。
僕はじっと手を見る。
激しい戦いの後、意識を手放しで。その後も疲れが取れるまで、寝たり起きたりを繰り返していた。
そうか、殿を知っていたような気がするわけだ。
あくまで僕とは別人。
だけれども、多分魂が同じ存在であったのだろう。
輪廻転生というやつなのか。
本多平八郎忠勝。
それが、僕だった者。
だけれども、それはあくまで魂の縁という奴。その人生はその人生。僕にまで影響が出るのは妙だ。
或いはだけれども。
これほどの危機的な状態だからこそ、過去の生のあり方が僕に影響を与えているのだろうか。
可能性はある。
思い出してくる。
東国最強といわれていた。
西国無双と呼ばれる若者と並び称されていたように思う。その西国無双もまた素晴らしい戦士だったような気がするが。
それでも、最後まで殿とともにあり。
その苦しい戦いだらけの人生をともに支えた存在だった。
殿を知っているような気がしていたのは、それが故だろう。だけれども、前世なんてしょせん前世。
それに、本多忠勝だった事が、なんだというのか。
今の僕は、人間として。
この神と悪魔に弄ばれる世界をどうにかしたいと思っている。
気付くと、オテギネがない。
ガントレットから声がした。
ラハムからティアマトに変わっても、性格は変わっていない。ティアマトの声だ。
「フリンさん。 オテギネだったら、今ドワーフたちが打ち直しています」
「ありがとう。 取りに行くよ」
「私はついに母の……母として最悪の存在となったあの人の呪縛から逃れられました。 全て貴方のおかげです。 ずっと貴方の側にいて、貴方とともにあります。 世界の全てが敵に回ったとしても、貴方の味方です」
「大丈夫。 世界の全てなんて、敵に回さない」
平行世界の話をマーメイドがしていた。
あるいはそういう世界もあるのかも知れない。
僕が女性ですらなく男性だったりして。
英雄達もいなくて。
苛烈な運命と滅び行く人々を見て絶望して。全てを無に帰してしまうような世界だって、あっても不思議じゃない。
工場に出向くと、ドワーフの親方が来たか、と言って。
巨大な槍を手渡してくれた。
手に馴染む。
これ以上、手に馴染む武器はないだろう。
ありがとうオテギネ。
今まで、勝ってこられたのは君のおかげだ。
そして君から作られたこの槍は。輪廻を経て、僕の手に戻って来たという事だ。
前の生は前の生。
本多忠勝としての人生は、僕とは関係がない。
僕はフリンで、フリンは僕。
だが、それでも。
縁が残ったのは、今はとても良い事だと喜ぶべきなのかも知れない。
「帰ってきてくれたね、蜻蛉切り」
「何。 どうしてその槍の名を……」
「どうしてだろうね。 分かるんだ。 この穂先に止まった蜻蛉が真っ二つになってしまうほど鋭い最高の槍。 僕の相棒。 これが手にある限り、僕は誰にだって負ける気はしない」
ドワーフの親方に礼を言うと、外に出る。
幾つかの型を試すが、完璧に馴染む。
恐らく体格が違うから、本多平八郎忠勝が使っていた蜻蛉切りとは色々違っている筈だ。
それはドワーフの親方が僕の体のサイズから調整してくれたのだろう。
いずれにしても、これで僕は傲慢な四文字の神とやらに挑み。
この地に集まってくれた英雄達だけじゃない。
この地の人々。
東のミカド国の人々。
全てのために、四文字の神を撃ち倒す。
(続)
※みなの正体について
原作ではそんなことは別にないでしょうが、本作ではこれがサムライ衆の転生元です。ただし、あくまで転生元と今は別。
フリンと転生前から縁はありますが、ただそれだけです。本多忠勝の転生だから強いというよりも、フリンが元々強いのと、本多忠勝の転生というのが合わさっているだけです。
なお、将門公を召喚したのもフリンの一つ前に本多忠勝の転生体だった青年だったりします。
家康公が呼ぶつもりだったというのは、部下として最高の存在だったいわゆる徳川四天王だったわけですね。そして最初の方の話で、「四つは駄目だった」というのは。家康公と似たようなやり方で無理矢理呼び出そうとして失敗したためです。
いずれにしても転生を経て東京の守護者と主従が集い。そして人間を真に脅かす相手に、挑む事になります。
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