天界の猛将アブディエルを討ち取り、天使の第一陣を撃退に成功する東京の人間と神々、悪魔の混成軍。
しかしまだ大天使達は戦力を残しています。
すぐに第二次攻撃が開始されます。
伝令が来る。霊夢がアブディエルを倒した。つまり敵は先鋒の指揮官を失った。算を乱す天使達。大天使がまだたくさんいるだろうが。それらが態勢を整える前に、戦力を可能な限り削らなければならない。
神田明神でも戦いが始まっている。市ヶ谷に攻めこんできた天使の軍勢を総力で迎え撃ちながら、僕はそれを聞かされる。
神田明神にはナナシ達と秀が向かった。
ガイア教団の戦闘部隊も、其方に向かうようだ。
僕は次々に襲ってくる炎の車輪。上級三位ソロネを、右に左に斬り倒す。弱い相手じゃない。
だが、それでも蜻蛉切りがあまりにも手に馴染む。
次々倒しながら、顔を上げる。
上空に飛ぶ火線の火力が、天使達も閉口するレベルになっている。ワルターとイザボーが呼んだ悪魔達の展開する火力も、雑魚天使をまとめて薙ぎ払っていて。いずれにしても損害を許容できる範囲ではないはずだ。
大天使がまた降りてくる。
ハニエルもアブディエルも失っても、全く動じていないようだ。やはりなんというか、ヨナタンの天使部隊と根は同じなのだ。
まるで殉教するように仕掛けて来る。
僕に向けて突っ込んできたのは、荒々しい鎧姿をした大天使だ。名前はわからない。いずれにしても、僕を脅威認定したのだろう。
槍を構えて、高速で突貫してくる。
それを弾きながら、さがる。ずり下がりつつも、一撃を受け止めきる。
乱戦の中で、どうしても味方にも被害が出る。
だが突破されたら、市ヶ谷の地下に避難している一般人にも大きな被害が出るのだ。
させるか。
激しく撃ちあう。
こいつも決して弱くない。だが、皆総力でやりあっている状況だ。一体でも多く倒さないと。
雄叫びを上げて、相手が突っ込んで来る。
見える。
突きを乱打してくる。槍使いとして、確実に勝てるという自信があるのだろう。悪いが、その根拠のない自信。
実力差を見誤るだけだ。
全ての突きを紙一重で交わす。かわしきれないのは柄を回して弾く。そして蹴りを叩き込んで、吹っ飛んだところに、突貫。
相手は恐らくだが、突き技に対して魔術的な防御……大天使達のいうところである神のご加護でも受けているのだろう。
だが、槍技は突きだけじゃない。
そのまま薙をたたき込み、横腹を砕く。鎧がへし砕ける音がして、精悍な顔つきが歪む。
更に回転しつつ石突きを振るい、横から顎を砕く。
ぐらついた大天使を。頭上から叩き割る。
それで、大天使は塵になって消えていった。
次。
群がってくる天使どもを、片っ端から斬り伏せ、貫き、打ち砕く。僕が手強いと認識したようで、上級天使が次々に来る。ソロネだけじゃない。バロウズがいうところの、ケルビムというのもくる。上級二位、智天使。
天界の最上位天使である大天使達や、その中の精鋭中の精鋭である上級一位熾天使の次に強い者達。
椅子に座り、獣を従えているそれらは、生半可な大天使以上のプレッシャーを放っているが。
逆に言うとそれを倒しきれば、それだけ戦いが優位になるということだ。
ソロネが一斉に懸かってくる。
だが、散らばって戦っていたサルタヒコ、ティターニア、クベーラ、ムスペルが此方に集まってくる。
ソロネを食い止めてくれる様子からして、何となく理解する。
これは恐らく、周囲の戦況が好転しつつある。
ケルビムが凄まじい光の魔術を放ってくる。恐らく闇に属する悪魔を、まとめて消し飛ばすほどの火力があるのだろう。
だが。
ヨナタンの天使部隊が、壁になってそれを防いでくれる。そして、その壁を飛び越えて、僕はケルビムに襲いかかってきた。
直衛を失ったケルビムの横を通り過ぎる。
数発、槍技を入れていた。
所詮は近衛か。
ぼっと抉れさったケルビムが、塵になって消えていく。呼吸を整えながら周囲の様子を見る。
どうやら、天使部隊を退けたようだった。
「医療班急げ! 負傷者を後送!」
「回復班!」
「被害状況をまとめろ!」
周囲で殺気だった声がしている。
僕に出来る事はない。座り込むと、ヨナタンが来て、回復の魔術を天使部隊に使わせる。ワルターも来た。イザボーも。
みんな生きて、猛攻を凌ぎきった。
それに、だ。
神田明神の方だろう。もの凄い気配が地下からわき上がったのがわかる。多分明けの明星の軍勢だ。
天使達を蹴散らしているのだろう。
約定を果たしてくれていると言う訳だ。
「お前の力、俺たちの中でも最強だな」
「いい師匠達についたからだよ」
「そうだな。 俺の師匠はじいさんただ一人だけだったな。 今思えば、あれで強くなったつもりになって、貪欲さが足りなかったんだ。 お前みたいに、色々な師匠を探して足を動かすべきだった」
「良いから休憩していなさい」
イザボーが回復に集中する。
カガが来た。かなり手傷を受けているが、それでも最前線で戦い続けていたようだ。神田明神の状態が落ち着いたので、戻って来たらしい。
それに上空を見る。
大天使達は当然、あのおぞましい数の天使達がいない。
撤退したか、全滅したか。
いずれにしても、第一陣は退けたのだ。
「此方に来た天使達は、例のCIWSというので薙ぎ払われて足を止められているところに、地下から溢れてきた悪魔達にやられて皆蹴散らされていた。 巨大な悪魔……恐らく明けの明星だろう。 それが吠え猛るだけで、天使は消し飛んでしまっていたよ」
「ひゅう、すげえな」
「ああ、だが複雑な気分だ。 あれは明らかに良くない力だ。 あんなものを貴んでいたのだな」
それが理解できたのなら。
それで良いのだろう。そう僕は告げて、一旦横になる。まずは休憩して、状況の推移を待つ。
第二陣が来るかも知れない。
いずれにしても、この程度で終わるとはとても思えない。
それに、この状態では役に立てない。今は体力を回復することに務めなければならなかった。
シェルターで休んで、被害状況を確認する。
このシェルターもかなり拡張したらしいのだが、それでも以前とは明らかに人の密度が違っている。
かなりの数の悪魔が巡回していて、悪さをする人間を掣肘している。池袋の者達や、元阿修羅会の者。銀座でやりたい放題をしていた連中。
そういう連中が、隙を見せると何をするか分からないからだ。
作戦会議をしていると、また天使達が現れ始めたという。
第二陣か。
同時に、サムライ衆が来たと言われる。
今東京にいるサムライ衆は、シェルターに全員で集まっている。
天使と戦う事に懸念を見せるサムライ衆もいたのだが。
しかし、天使達のあの無機質な有様。
見境なく殺しに懸かってくる様子を見て。
戦う事に疑問を呈する者は、もういなかった。
来たのは二人だけ。
丁度作戦会議を切り上げて、様子を見に来た僕は、ナバールが驚いているのを見た。
「まさかガストンか!」
「兄上、お久しぶりです」
「立派になって! そんなに背も伸びたのか!」
「はい。 兄上は私の誇りです。 ホープ隊長が此方で戦うようにと、気を利かせてくださいました」
敬礼をかわす二人。
ナバールの弟。
そうか、上では数年が過ぎているはずと思っていたが、こんなに立派になっていたのか。それに手にしているのは牙の槍だ。あれから手を入れて更に調整したらしいが。僕の使っていた武器が、後輩に渡ったのは驚きである。
丁度フジワラが来たので、敬礼してくるもう一人。
見覚えがある。
ホープ隊長と一緒にいた人だ。第一分隊の精鋭の一人だろう。書状ですと言って、フジワラに渡している。フジワラもそれを受け取ると、さっと目を通していた。
「なるほど、了解した。 第二陣を退け次第、どうやら東のミカド国に攻め上がる事になりそうだな。 故国と戦う事になるだろうが、かまわないだろうか」
「かまいません。 その書状にも記載しましたが、今東のミカド国では本性を現した大天使達が壟断の限りを尽くしています。 空に舞っている天使達も、人々を守ろうとするよりも、囲い込んだ家畜が逃げないように監視しているという有様で」
「そうか、アキラも頑張っただろうに、限界があったんだな」
嘆息。
そして、フジワラに促されて、会議室に戻る。
そこで、皆を見回して、フジワラが言う。
「25年前に何が起きたのか、話しておこうと思う」
「お願いするわ」
霊夢としても、決戦前に話しておく話だ。聞いておくべきだと思ったのだろう。僕も同感である。
そのまま、フジワラが全て話してくれる。
25年前。
四大天使を撃ち倒し、その中のガブリエルを追い払ったフジワラ達三英傑は、スカイツリーの頂上から上に更に掘り進めていき、東のミカド国に辿りついた。その過程で大天使達を更に退け。時に東京に戻って暴れる悪魔達も撃ち倒した。
最盛期のアキラとフジワラとツギハギの戦闘力は凄まじく、魔王だろうが邪神だろうが、全てを打ち倒して行った。
ただし完全に滅ぼす事は難しかったという。
それもあって、時間も掛かったが。
どうにか東のミカド国に辿りついた。
正確には、今そう呼ばれている場所だったが。
其処で見たのは。
まさに地獄だったという。
「其処で見たのは、裸の人々だった。 何も知恵も与えられず、天使達のいうままに動かされているだけの、ね」
「裸……?」
「そうさ。 バイブルでエデンに暮らしていた人々のようにね。 気候は裸で暮らしていけるように調整されていたが、それでもあまりにも。 人に対するものじゃなかった。 遠くに見えていたのは、大戦の直前に飛んでいったあの繭だったと思う。 繭に子供がさらわれていたという話は聞いていた。 その慣れの果てだと、すぐに分かった」
天使達を盲目的に崇め、与えられる餌を豚のように貪る。
そして全ての欲求を管理され、天使の指示通りに繁殖し。不要と判断された個体はその場で去勢されたり、場合によっては殺される。
文字通りの牧場だった。
「アキラは大天使達を倒そうとする僕らに対して、相応の数の人々がいることを冷静に指摘した。 このまま大天使達を倒しても、それでは意味がないと。 それである程度の数の大天使達を倒した後、これ以上の出血を望まないと考えた様子のガブリエルと交渉をしたんだ」
「それが東のミカド国の祖、なのですね」
「鋭いねヨナタン。 そうさ。 アキラは自身が人々を導き、王となる。 こんな有様は見ていられないと思ったのだろうね。 人として生き、文化をはぐくみ、少なくとも家畜ではない存在となる。 そうさせたかったのだろう。 どういうつもりか、ガブリエルもそれを受けた。 僕達はアキラと約束した。 いずれまた来る。 東のミカド国の大天使達を抑えて国を仕上げてくれ。 こっちは悪魔達を掃討する。 どちらかが先に全てを終えたら、また会おうと」
だが、その願いが叶うことはなかったわけだ。
ドクターヘルがなるほどと呟いていた。
「時間の流れが60倍も違う事など、想定はできんだろうな」
「そうさ。 それにアキラを欠いたことが、致命的になった。 阿修羅会が這い出てきて、必殺の霊的国防兵器を用いて東京の主導権を握ったんだ。 私達が、人々を食い荒らす強力な魔王や邪神と戦っているのを尻目にね。 残っている人外ハンターも、次々に倒れていった。 僕達は、もっとも危険で邪悪な悪魔や邪神だけは斃せたが、それで止まらざるを得なくなった。 新人達を育て上げ、またあの東のミカド国へ攻め上がる事を画策したが、阿修羅会の支配は知っての通りだ。 それどころではなくなってしまったのさ」
幸いというべきか。
ガイア教団の中でももっとも悪辣だったファントムソサエティといわれるような組織はどうにか潰したし。
人々を見境なくくらうような悪魔は、だいたい斃せていたらしい。
その頃斃した悪魔に比べれば、アドラメレクなんて雑魚も雑魚だったという話だから、なんとなく僕には理解できた。
それらの戦いで、フジワラとツギハギは可能性を使い果たしてしまったのだ。
だから動きも鈍かった。
それに、心も折れてしまったのだろう。
「でも、アキラは約束を果たしてくれた。 どう大天使達と渡り合ったかは分からないが、文明を育て、ある程度の国を作ってくれた。 それが大天使達に壟断されていて、ばかげた身分制度があるものだとしてもね」
「まさかアキュラ王というのは」
「アキラのことだね。 名前がなまって伝わったんだろう」
イザボーがどんな漫画よりも凄いとぼやくと。
フジワラが苦笑する。
「真実は小説より奇なりという言葉があってね。 僕の時代にも、天才少年が活躍する作品が人気だったんだが。 現実にはあり得ないと言われていたのに、その少年よりも年少のもっとすごい天才少年が、賞を総なめにするような事件もおきていた。 そういうものなのさ」
「いずれにしても、アキラの奮闘は無駄にはできぬな」
殿の言葉に、皆が頷く。
テレビ会議で参加しているツギハギとドクターヘルも同意していた。
通信。
外からだ。
「天使の第二陣、今度は神田明神を狙っているようです! 天使達の中に、黙示録の騎士と思われる存在を確認! トランペットを持っている存在もいます!」
「確かそれって、アマツミカボシにやられた……」
「いや、あれは恐らく分霊体よ。 何しろ世界でもっとも有名な終焉の使者。 あの程度で死ぬと思うのは楽観が過ぎるわ」
霊夢がばっさり。いずれにしても、天使共は天界のダークサイドを投入して本気で潰しに来たというわけだ。
市ヶ谷からも連絡が来る。
「市ヶ谷は防衛設備の調整に時間がいる。 それに奇襲を受けると面倒だ。 わしがここに残って機械類の整備と、対空防衛網の調整をしておくよ。 出来るだけ急いで、弾薬を運んでくれるか」
「分かりました、ドクター。 ツギハギ、市ヶ谷の指揮を人外ハンター達ととってくれ。 ケルトの戦士達も其方に回す。 他の皆は神田明神だ。 急いでくれ」
「よし」
秀が立ち上がる。
マーメイドは頷くと、とぷんと音を立て床に沈んでいた。
先行してくれるのだろう。
僕達はすぐに外に。サムライ衆も今回は全員が参戦してくれる。ガストンも、である。
ガイア教団の戦士達も、負傷者以外は全員が出るようだ。その中には、トキという暗殺者の子もいた。
それだけじゃない。
「俺も戦わせて欲しい」
シェルターから出て来たのは、ハレルヤだ。
僕はその目を見て、一皮剥けたなと思った。
勿論僕を恨んでいるはずだ。
それは逆恨みと斬って捨てるのは難しい。だが、それでも。アベが不器用に守ろうとしていたこの世界。
消し去られるのは許しがたいと思ったのだろう。
フジワラが言う。
「戦えるね?」
「はい。 兄貴のために戦います。 あんた達のためじゃない」
「……ナナシくん」
「おう!」
ナナシが応える。
ナナシとアサヒと連携してくれと、フジワラはハレルヤに言う。これは流石に僕達との連携は難しいだろうと判断したからだろう。
ナナシも皮肉を言うのではなく、フジワラが言うのならと、すぐに指示を受け入れていた。短時間で成長しているなと、僕は微笑ましく思う。
装甲バスと、出来たばかりの歩兵戦闘車で神田明神に急ぐ。
森の辺りに既に天使達が降下し始めていて、ケルトの戦士達との戦闘が始まっていた。ケルトの神であるアガートラームが四文字の神への恨み節を口にしていた。その話は後からバロウズや霊夢に細かく聞いている。
ケルトの地は、偉大な国だったというローマという国に大きな影響を受けた。それまでは、本当に蛮族以下の人々が暮らすだけの辺境も辺境だったそうだ。
其処にローマは色々な文化や宗教を持ち込んだ。
ローマはギリシャという土地から更に影響を受けていたらしいが。いずれにしても、ローマの神々の影響を受けて、ケルトには神話が出来上がっていった。正確には、色々な神々が、行儀が良いローマ神話の話を参考に、まとめ上げられていったのだろう。ただし、荒々しい民の性格を反映しながら。
だからこそ、ローマを後から乗っ取り。
全否定と全肯定の思想を広め始めた一神教には、怒りが隠せないのかも知れない。
まだ天使達はそれほどの規模で降下してきていない。
森の中でムスペルを使うのはまずいか。そう思ったが、ムスペルが話しかけてくる。喋れるのかと、ちょっと驚いていた。
「膨大なマグネタイトを得て、私は転化出来そうだ。 そうすれば、炎を扱う事は自在に出来よう。 この温かい森を焼かずに戦える筈だ」
「分かった。 頼むよ。 この森は、人間だけじゃない。 色々な生物のためにも、神々のためにも、未来の為にも、必要な森なんだ」
「分かっている! 今こそみせよう!」
召喚したムスペルが、空に向けて吠え猛る。
天使達がビリビリと来る凄まじい衝撃波に、明らかに動きを止める中。ムスペルは、燃え上がる炎の剣を手にした、巨人へと転化していた。
「すっげえ……!」
ナナシが歓喜の声を上げる。
それはそうだろう。
四角い頭を持つその巨人は、あまりにも威圧的な存在だった。それでいながら、約束通りに森に被害を出していない。
炎の剣を振るって、逃げ腰になった天使達をまとめて薙ぎ払う。
その名は。
北欧神話の終焉の巨人。数多のムスペルを率いアスガルドの神々を焼き滅ぼした魔王スルト。
スルトは炎の剣を振り回して、辺りの天使達をばったばったとなぎ倒していく。それを見て、大天使達が、神田明神への降下を指示したようだ。竜脈の力が戻り始めているとしても、まだあれは守りきれないだろう。僕はすぐに動く。此処はケルトの戦士達と、スルトだけで大丈夫だ。
ワルターが呼び出す。
「俺も負けてはいられねえな! じゃ、活躍して貰うぜ! 来な、アガートラーム!」
「まさか本当に私を呼び出すとはな。 良いだろう。 お前達が悪神の加護を得ているわけではないことは充分に理解した! 手を貸そう!」
煌々と光を放つアガートラームが、その場に具現化する。
そして、神田明神に飛び込んでいくと。神田明神をまもる結界に群がっていた天使達を、その光り輝く剣で右左に切り裂いていた。あの剣は「クラウソラス」というものすごく有名な剣らしい。
ナナシ達の方に、大天使がいった。
だが、心配はしていない。
勝てそうにないなら、こっちに救援を求めてくるはずだ。今は、僕は強そうなのを削る。
視界の隅で、二体の大天使を、立て続けに秀が切り裂くのが見える。今だから分かるが、剣の腕前だとちょっとこれは今の僕でも勝ち目がないな。本当にもの凄く強い人なのだと分かる。
マーメイドが空に向けて、氷の竜巻を叩き込む。天使の方陣がまるごと一つそれで消し飛んでいた。
だが、天使達も黙っていない。黙示録の四騎士が、まとまって降りてくる。ペイルライダーもいる。
ということは、霊夢が言った通り、これが本体。アマツミカボシに倒された奴は、分霊体に過ぎなかったと言う事だ。
トランペットを持った奴が、凄まじい音を吹き鳴らす。
天使がかなりの数巻き添えで吹き飛ぶが、どうでもいいようである。霊夢が神田明神に飛び込み、結界の防御を支援。僕が叩くのは、あのトランペット野郎だな。そう判断すると、召喚。
呼び出したのは、ティアマトだ。
消耗が激しいが、ブレスをぶっ放さなければ多分大丈夫。背中に跨がると、ティアマトは口を動かさずに意思を伝えてくる。
「あの空にいる魔人ですね」
「うん。 彼奴は真っ先に仕留めないとまずい。 いける?」
「貴方のためなら、世界の果てまでも。 私の翼が折れるまで」
「分かった。 頼むよ!」
皆を信頼している。
勿論倒される人もいるかもしれない。だが、それでも一方的にやられるわけではないはずだ。
ティアマトが空に飛び立つだけで、天使達が悲鳴を上げる。無機的な連中なのに、恐怖の感情があるのか。
それらを翼の一凪だけで吹っ飛ばしながら、ティアマトが加速。
もう一撃殺戮の音波を叩き込もうとしていたトランペット野郎。バロウズが解説してくれる。
「あれは魔人トランペッター。 世界の終焉を告げるトランペットを吹くとされている存在よ。 似たような存在が北欧神話にいるヘイムダルね。 或いは影響を何らかの形で受けているのかも知れないわ。 ヘイムダルが善神であるのに対して、トランペッターはただ殺戮を行うだけとされているけれど」
「そう。 そんなものは、生かしておくわけにはいかないね」
加速。
ティアマトが更に速度を上げる。
下では、アマツミカボシが戦いはじめたようである。人間を巻き込まないでくれよと、一瞬だけ思った。