もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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4、第二次東京大戦は終わりて

小沢はずっとスカウトを続けていた。それで、情報を丁寧に収集し、本部である国会議事堂シェルターに送り続けていた。

 

総力戦が続いた。

 

だから、小沢がそれをやらなければならなかった。

 

誰かがやらなければならない事だ。

 

ドクターヘルが育成したオペレーター達がフジワラにそれを伝え。そして全体に適切な戦力の供給と支援を続けていた。

 

「天使達が……!」

 

小沢は見た。

 

市ヶ谷で多神連合とまともにぶつかった天使達が、次々と打ち砕かれるのを。

 

雷神トールが特に苛烈に活躍していた。オーディンの姿は最後まで見られなかったが。鬼神ショウキや龍神ケツアルコアトル。邪神テスカポリトカ。それに弥勒菩薩も、いずれもが縦横無尽の活躍で、天使達を撃ち倒していた。そして形勢不利とみたか、天使達は逃げ散る。空に向けて。空の中央、スカイツリーに向けて。

 

それだけじゃない。

 

シェルターと神田明神を襲っていた天使達もまた。逃げに徹し始めていた。

 

明けの明星の麾下の悪魔達と、人外ハンターの主力、サムライ衆。全員の力闘の結果だ。特にフリン等の四人は、恐ろしい黙示録の魔人達をことごとく屠ったようだった。以前現れたと言われる分霊体ではなく本体を。

 

通信で聞いていたが、ナナシ達はなんと大天使イスラフィールを撃ち倒したようである。イスラム教でも大重鎮とされる大天使を。

 

それを聞いて、小沢はうれし涙が出そうになった。

 

もう小沢より強い。

 

小沢とニッカリと志村が、まだ前線に立たなければならなかった時代はこれでついに終わった。

 

頼りになる若者達が、育って来たからだ。

 

周囲にいる人外ハンター達に告げる。

 

「よし、敵の撤収を確認した。 二度の敵の攻勢で、敵は80体を超える大天使を失い、100万に近い天使を失い、黙示録の魔人達すらも失った。 大天使メタトロンなどの最高戦力はまだ確認されていないが、それでも敵の被害は甚大の筈だ。 それに対して此方の被害は……」

 

人外ハンターは被害を出した。それは、これだけの乱戦だ。仕方がない。だが、それでも。

 

大戦の時のような、それで半身不随になるような被害ではなく。壊滅でも全滅でもない。

 

特にフリン達英雄が全員無事なのは大きい。

 

市ヶ谷に展開していた対空兵器や戦車、歩兵戦闘車はかなりの被害を受けたようではあるのだが。

 

そんなものは、また造れば良い。

 

いまは造れるだけの設備が、ドクターヘルの手によって復旧しつつあるのだから。

 

「此方の被害は軽微! つまり勝ったぞ!」

 

「おおっ!」

 

「大天使どもを国に蹴り返してやったぜ!」

 

「俺たちの勝利だ!」

 

無線の向こうから喚声が上がる。

 

小沢も、何度も複雑な感情からわき上がってきた涙を拭っていた。

 

さあ戻ろう。シェルターに戻った後、サムライ衆と英雄達が。東のミカド国に攻め上がるのを助けなければならない。

 

東のミカド国を解放した後は、四文字の神とやらを叩きのめすことになるが。

 

それはもう、小沢が出来る事など何も無い。

 

後は、東京の治安維持。

 

それに出現する悪魔の撃破だろう。

 

大天使達を倒すまでは、シェルターと市ヶ谷から一般市民を出すわけにもいかない。それだけ危険だからだ。

 

「まだ野良の悪魔はいる。 こんな所で死んだらバカみたいだ。 油断だけは絶対にするな!」

 

「イエッサ!」

 

「帰るぞ。 俺たちの仕事はまだまだある。 英雄達が安心して戦えるように、隙を見せたら暴れるような奴らを掣肘することだ! 気合いを入れろ! まだ俺たちは、あのクソ大天使どもと唯一神には勝ってはいないんだ!」

 

皆にそう言い聞かせると、小沢は戻る。

 

大戦の時。

 

司令部からの通信が切れて。

 

負けたのだと悟った。

 

小沢が生きているのは、たまたま任務で出ていたから。それだけに過ぎない。ニッカリと志村もそれは同じだ。

 

それから東京は終わった。

 

第一空挺団の精鋭さえ倒れていく中、小沢が生き残ったのはただ運が良かったからだ。それ以外に理由なんてない。

 

だからこそ、小沢はその運を使う。

 

他の誰かが、運を使い果たさなくていいように。

 

もういつ死んでも良い身だ。

 

後続は育った。

 

それに、これだけ無理を続けて、不健康な食事を続けた。体の中は、良い状態だとは思えない。

 

だからこそ、最後の最後まで、英雄の背中を守る。

 

それだけが、老兵に残された仕事だ。

 

フジワラの指示で、国会議事堂のシェルターに戻る。疲れ果てた英雄達は、全員眠っているらしい。

 

だったら、もう少し無理をしなければならないな。

 

フジワラに歩哨をすると買って出て、まだ余力がある人外ハンター達と一緒に出る。

 

誰々が死んだ。

 

でも立派な最期だった。

 

そういう声が聞こえる。

 

友が死んだらしい奴が泣いている。

 

熱狂に水を差すなとも言えない。あれだけの大勝利でも、それでも無事で済むわけが無い規模の敵が相手だったのだ。

 

小沢は何も言わない。

 

男らしくないとか、そういう頓珍漢な暴言を吐くつもりもない。

 

勝利の裏には影もある。

 

そんな事は、分かりきっているのだから。

 

外で関聖帝君が護衛についていた。頷くと、別の方の警戒に当たる。

 

英雄達が起きて体力を充足させたら。

 

ついに、あの天蓋の上にある東のミカド国に攻めこむ時。

 

そしてその時に、やっと。

 

大天使の脅威から、東京。

 

いや、生きている人間全てが解放されるのだった。

 

 

 

(続)








苛烈極まりない大天使達の侵攻は失敗に終わりました。ガブリエル以外の四大天使がいないことがその大きな要因ではありますね。

それに東京の人々は、今回は最初から悪魔の存在を知っていました。

だから混乱することもなく。更に一丸となった事で、迎撃を冷静に行う事ができたのです。

そしてついに来る反撃の時。

東のミカド国を家畜牧場にしている大天使達に、ついに一矢を報いる時が来ました。







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