原作通り、奈落からの再侵入を試みると、其処は天使の軍勢が待ち受ける場所になっています。
カオスルートでは、此処でテープレコーダーと化した天使達を見て、閣下が嘆くんですよね……
真2のように勝手に神を作りあげた大天使達もそうですが、真4の天使達も何らかの理由で決定的に壊れてしまったんでしょう。真5の大天使達が、まだ苦悩しながら人間味を持っていた事を考えると、真4の「殺戮の天使」達の有様はちょっと異常です。
小沢さんの事前調査通り、悪魔の気配はない。竜脈の復活により、少なくとも雑魚悪魔の中で邪悪な連中は、殆ど動きが取れなくなったようだ。それでも地下街などでは姿が見られるようで、完全にいなくなった訳ではない。
これは昔も同じだったようだ。
ドクターヘルによると、天使や悪魔の存在を知ったのはかなり高齢になってからというし。
闇の中の闇にしか、悪魔や天使は姿を見せてはいなかったのかも知れない。
アティルト界にひしめいていた悪魔や神も、信仰を得ていても、その程度の干渉力しかなかったのだろう。本来は。
それが地獄の釜の底が抜けてしまった。
それも閉じた。
エレベーターをドクターヘルが確認。本職だけあって、色々分かるようである。ドクターヘルもスマホを使って悪魔を呼び出す。一本ダタラを初めとする、助手の悪魔達である。一応護身用も兼ねているようだが。この人は、霊夢や秀、殿やマーメイドには到底及ばなくても。
素手で生半可な悪魔より強いので、雑魚悪魔を呼び出すくらいだったら、ステゴロでやった方が早いくらいである。
エレベーターを修理し始める。
僕には何処がまずいのかは理解出来ないが、本職には分かるのだと判断して、周囲の警戒に当たる。
先に霊夢が、巨大な三ツ目の梟を呼び出して背中に乗った秀とともに、メデューサがいた辺りを見にいってくれる。
エレベーターが動かない場合は、最悪僕らも飛行出来る悪魔に力を借りて飛んでいく必要があるが。
程なくして霊夢だけが戻ってくる。
「此処も観光名所だったらしいのに、酷い有様ね。 硝子が殆ど砕かれて残っていないわ」
「僕達が初めて来た時は驚いたよ。 山より高い建物が、一杯見えたからね」
「あたしもそれは同じかもね。 幻想郷がまだ無事だった頃、外の世界に一度出た事があったけれど、そういう印象を受けたわ」
「まるで別世界だよね」
苦笑する。
霊夢はアブディエルを倒して多少心に余裕が出来たからか、僅かに表情が柔らかくなった気がする。
霊夢は故郷では冷たい人間と言われ、去る者はどうでもいいと考える性格だったと自分で言っていたが。
こうしてみていると、やっぱり仲間をたくさん殺された事に関しては、相当に頭に来ていたのだと思う。
ドクターヘルがしばらく作業を続けて、それでエレベーターを徹底的に直した。それで、皆で乗る。
エレベーターの上移動が、驚くほどスムーズだ。殆ど加速を感じない。此処を通るサムライ衆は、皆不満を口にしていたのに。
僕も驚かされていた。
「相変わらず凄いねドクターヘル」
「エレベーターの修理なんぞなんでもないわ。 こいつは劣化していただけだったから、直すのは簡単だっただけよ。 それよりも、本当に悪魔も天使もいないな。 油断させるつもりではないのか天使共は」
「可能性はあるわね。 ただ天使の気配は、まだ遠いようよ」
「一応斥候を放っておくべきだろうな」
殿が言う。
ヨナタンは頷くと、エレベーターが止まって「展望台」に出た後、天使達を呼び出し。先行させた。
天使達の中には、奈落を通っていた頃からヨナタンに従っていた者もいる。そういう者達が先行して、奈落ですらない穴の中を逆走する。
途中でターミナルがあるので、登録して貰う。
此処でホープ隊長と随分悪巧みをしたっけな。
それも、前回ヨナタンが話をしただけで、終わりになる筈だ。
ターミナルでの登録を済ませてから、どんどん先に進む。天使達は途中でかなりのトラップを見つけたと報告してきている。
念の為、ワルターが頑丈な悪魔を先に歩かせる。それで悪辣な罠が発動しても、悪魔達はマグネタイトで復活出来る。
いずれにしても、短時間でそんな大がかりな罠なんて作れないだろうが。
「ぎゃあっ!」
先行していたラクシャーサが、釣り天井に引っ掛かった。ただし、押し潰されはせず。他の悪魔達が釣り天井を粉々に砕いていたが。
僕も気を引き締めて、周囲を確認しながら進む。
それでトラップを幾つか見つけて。壊しながら更に先に。
今度は落とし穴か。
下には槍が一杯植えてある。すぐにドクターヘルがドワーフをたくさん呼び出して、埋めさせてしまう。
見かねたか、ドクターヘルがドワーフを展開して、罠の気配を探らせる。専門家らしく、ドワーフが先に罠をどんどん壊して行く。
僕もティターニアを呼び出すと、辺りの魔術罠を全て調べさせる。やはり電気が出る奴とか火が出る奴とかがあるので、全て壊させる。
油断している所に貰ったらひとたまりもないかも知れない。
だから、油断しない。
現在、前衛の僕達と後衛の殿達で二班に分かれているが、それで正解だった。タチの悪い罠で、一発で全滅する可能性が確かにある。
ティターニアが、何かを凍らせる。
毒ガス発生装置だと、ドクターヘルがぼやく。本当に大天使達は、見境なく罠を仕掛けていったのだと分かる。
ヨナタン麾下の天使が戻って来た。
かなり傷ついていた。
「ご注進!」
「聞かせてくれ」
「はっ! この先、奈落は消滅し、天の国で作ったと思われる領域になっております!」
「分かった。 どうやら東のミカド国……大事な牧場を傷つけさせないために、大天使達は領域で迎え撃つつもりのようだね」
ヨナタンが嘆く。
平行世界の幾つかでは、ヨナタン自身が大天使達と融合し、神の戦車と呼ばれる超存在メルカバーとなって其処で僕と戦った。
そして戦う場合は、いずれの世界でも敗れていった。
この世界では四大天使が大天使達に合流していない。メルカバーは生じようがない。だが、まだメタトロンがいる。更にはその兄弟とされるサンダルフォンも。
今の戦力であっても、油断出来る相手ではないだろう。
ミノタウルスがいた間は無事だったが。ミノタウルスの痕跡は、何もかも綺麗に消し飛ばされていた。
気高い戦士も、大天使達にとってはただの穢れた悪魔だったのだろう。それを思うと、サムライ衆をたくさん倒した相手であったとしても、なんだか苛立ってくる。そして、確かにこの先はまずい。
びりびりと気配が伝わってくる。
「どうやら残った大天使どもが、この先にいるようね」
「上等ですわ。 全て畳んで、東のミカド国を取り戻しますわよ」
「ああ、同感だ。 悪魔にも話が分かる奴はいたし、天使にもヨナタンの配下みたいに他と協力できる奴もいた。 だが、東のミカド国の大天使どもは違う。 それははっきり分かった」
「行こうか。 1500年の壟断を終わらせよう」
僕が最前衛で、足を踏み出す。
この部屋は、入ったら生か死だった。
今回は、出たら生か死か、か。
まあいい。
いずれにしても、全て叩き伏せるだけだ。
足を踏み入れた先にあったのは、どこまでも拡がる黄金の足場。それに、無数の天使達だった。
天使達は組織化されているを通り越して、まるで機械だ。
すぐに全員が手持ちを展開する。
天使の気配は、東京に攻め寄せた連中ほどではない。数が絶対的に少ない。だが、これは。
恐らく迎撃して、撃退する自信があるのだろう。
天使達が舞い降りてくる。
目が完全に狂信者を通り越して、なんの感情も宿していなかった。
ソロネの説明を以前聞いた。
神への愛で燃え上がっていると。
だが、これらは違う。
「悪魔を粛正する。 ケガレビトを駆除する」
「総員戦闘開始」
「さながら殺戮の天使というところか」
秀がぼやく。
天使達は集まってくると、後は一斉に突撃してくる。ただ、此方の戦力を削る事だけが目的であるように。
ヨナタンの天使達は殉教するようにいつも倒れていく。
だが、それは自主意思でだ。
しかし此奴らは違う。
まるで蟻のように、全部がそれぞれ意思を共有……いやそれすらしていないようにしか思えなかった。
いずれにしても、遠慮など無用。
襲いかかってくる殺戮の天使と交戦を開始。手持ちの悪魔の中でも、それぞれの切り札は温存する。
問題は東京の方だ。
別働隊が襲撃している可能性もある。
だが彼方は、多神連合だった神々も明けの明星もいる。それらが今更、人間を滅ぼそうとするとは思えない。
背後は問題ない。
ただ前を切り開くだけだ。
僕は蜻蛉切りを振るって、最前衛で暴れ始める。天使達は全てが一体という動きをしているが、それでも機械的だ。はっきりいって大した相手じゃない。少なくとも一体ずつは、である。
ワルターの悪魔達が、縦横に暴れて道を作る。
ギリメカラが暴れ回って、天使達の壁に穴を開け。その穴を、更に悪魔達が拡げていく。
アガートラームがクラウソラスを振るって、天使達をまとめて薙ぎ払う。ワルターが展開した呪いの術が、天使達をまとめて消し飛ばす。
だが、数が数だ。
それでもまだまだ押し寄せてくる。
斬り伏せ、叩き潰し、殺して殺して殺して先に進む。そうしないと殺される。死んだ天使達は光になって消えるようなこともない。恨み事を述べることすらない。ただ同じ言葉だけを、ずっとはき続けている。
「悪魔を粛正する。 ケガレビトを駆除する」
「おいっ! お前等、少しは意思はないのか! なんか応えろよ!」
「悪魔を粛正する。 ケガレビトを駆除する」
「ワルター、無駄だ。 これは言葉ではない。 動物の鳴き声ですらない」
殿がたしなめる。
ソロネが多数、車輪として転がりながら迫ってくる。流石に上級天使も出てくるだろうな。それは分かっていた。
燃え上がっているが、あれは別に神への愛で燃えているわけでもなんでもないだろう。神への盲信を持ってはいるだろうが。
それぞれ重量級の悪魔が、轢殺に掛かって来ているソロネを食い止める。足を止めたところで、秀が一刀に斬り伏せ。殿の憑いているリリィが質量体で叩き潰し。僕が蜻蛉切りで貫き叩き潰し。マーメイドがまとめて凍り付かせる。
倒されても倒されても湧いてくる。
ドクターヘルが輜重隊を一本ダタラに守らせつれて来てくれていた。といっても、栄養食やらスポーツドリンクやらの詰め合わせだが。
殺到し続ける殺戮の天使を捌きながら、交代で休憩を入れる。
東京に攻め寄せた天使は、二回の襲撃で合計100万を超えていたようだ。大戦の時に比べるとそれでも遙かに少なかったようだが。
いずれにしても、それらの殆ど全てを倒した。
今更戦力の出し惜しみをしていたとも思えないから、それを超える数はいないだろう。
ただ、この様子。
本命戦力を出す前に、此方を出来るだけ消耗させようとしている意図が透けて見えて、はっきり言って不愉快だ。
今度はケルビムが来る。十体以上はいる。
どれも決して弱くは無いのだろうが。
上級二位。知恵を司るはずの智天使ケルビムも、同じ事を延々と言い続けていた。
これが神が手下にすることか。愛はどうした愛は。
やはり全肯定と全否定の行き着く先の世界はこれなのか。これは恐らく神に対する全肯定と他に対する全否定の結果。
だとすると、平行世界で見たような、明けの明星に協力した世界は。
神に対する全否定と、他全てに対する全肯定。
どっちもどっちだ。
やはり、それらを選ばなくてよかったのだと言える。
ましてや、僕が絶望した平行世界における、全てに対する全否定なんてあってはならないのだ。
ケルビムは流石に強い。
ただ、これほどの高位天使となると、そうそう数はいないだろう。渡り合いながら、周囲を確認。
スルトを呼び出して、それで焼き払っているうちに、気配を感じる。
大天使だ。
それも、生半可な気配じゃない。
降り立つ巨大な影。それは、恐らく間違いない。
全身が機械で出来ているようなそれは、人間味どころか。動きも機械じみていた。
「浄化粛正する」
「大天使メタトロンよ」
「おいでなすったか!」
ワルターが呻く。
更にもう一つ。
メタトロンよりも更に背が高い巨大な天使が降り立つ。
「浄化粛正する」
「やれやれ、自我を捨ててしまっているようだな」
「可哀想」
殿がいうと、リリィが呟く。
此方は大天使サンダルフォン。メタトロンの双子の兄弟であり、同じくらい強力とされる天の国の切り札。
そして降り立つ。
ギャビーだった。
「血迷った挙げ句に攻め上がって来ましたか。 ガントレットの儀など行うのではなかった。 天の使いだけでこの国を守るべきだった。 アキラとやらの提案に乗るべきではなかった」
「ギャビーどの。 貴方は元は一神教では良心的な天使であったはずだ。 それが今や民を奴隷化し愚民化し、支配する邪悪の者となり果てている。 それを恥ずかしいとは思わないのか!」
ヨナタンの痛烈な弾劾に、ギャビー、いや既に背中に翼を現しているガブリエルは、鼻で笑っていた。
そして手を拡げて言う。
「農民は畑を耕し、漁師は魚を捕る。 貴族は管理をし、商人は適切にものを売る。 その秩序こそが至高。 余計な事など考えるから人は間違える。 神の定めた秩序の元、天使も人間もあればいいのだ」
「大天使ガブリエル。 知っている?」
「何をだ」
「僕は数多の平行世界を見た。 大天使達が完全に勝利した世界もあった。 その世界では、貴方たちは神に用済みとして処分されていたよ」
僕が事実を告げる。
あの世界では、天使すら必要なくなり、神の指示をそのまま代行する機械だけが世界の管理をしていた。
意思を持つ天使など不要。
四文字の神はそう考え。
天使が今後明けの明星のように反逆する事。意思を持って、勝手な事をすること。それらを防ぐために、天使を駆除してしまったのだろう。
その事実を告げると、ガブリエルは言う。
「その時は我等はアティルト界にて偉大なる父と一つになるだけ」
「多分あの四文字の神は、それすらさせないと思うけどな……」
「あの御方の何を知っているというのか。 例え平行世界を見たとしても、貴様ら人間ごときが真理に辿りつくなど万年早い!」
「……そう」
ガブリエルの言葉に四文字の神を疑う様子は一切ない。疑う事自体が罪だと考えているのだとしたら。
それは完全に盲信だ。
そんな輩が東のミカド国を支配し続けていたのなら。それは何もかもがおかしくなるのも当然だろう。
更に天使が多数降りてくる。いずれもが、防衛のために残されていた大天使達だろう。姿が人間とはどれもかけ離れてしまっている。恐らくは、だが。原始的な信仰の大天使や。話に聞いているゾロアスター教の天使達かも知れない。
いずれにしても、対話は不可能だ。残念だが、斬るしかないだろう。
「ガブリエルは僕が倒す。 他はお願いして良いかな」
「任せなさい。 此奴らの言動には、いい加減反吐が出るわ」
霊夢が吐き捨てる。まあ、それについては僕も同じ。ただ今では、此奴らも犠牲者に思えていたが。
霊夢は既に気力充溢、戦闘にバリバリ出られる。霊夢と殿が組んでメタトロンに当たるようだ。
またマーメイドと秀が組んで、同じくサンダルフォンに当たるようである。
そしてワルター、イザボー、ヨナタンが、それぞれドクターヘルを守りながら、他の大天使達と戦う。
だがドクターヘルだって無抵抗な訳じゃない。
レールガンを更に小型化して、持ち込んできている。ふっと笑う様子からして、足手まといになるつもりは無さそうだ。
殺到してくる大天使達。
僕はガブリエルへと直進する。
文字通り、槍で貫きにいくが。人の姿を捨てたガブリエルは、即座に多数の翼を展開。やはり、その姿は筋繊維の塊。
何となく理由はわかる。
あんなバイブルで盲信だけを強いて、具体的な姿を示さなかった。
確か神の像を造るだけで罪なのだったか。
だとしたら天使だってそれは同じなのだろう。
あの退屈なバイブルだけを聞かされていたカジュアリティーズが、具体的な天使の姿をイメージできたとは思えない。
ある程度力を割けば美しい天使の姿もとれるのだろうが。
ガブリエルは今、僕との戦闘に全力投球してきている。そんな余裕はないということである。
がっと音がして、蜻蛉切りとガブリエルの手刀がぶつかり合う。
分かってはいたが、体術という観点ではリリスより更に上だ。その場で即座に数十合渡り合う。
仲魔は既に展開済み。
まだマルドゥークやティアマトは出さない。それらは切り札だ。特にティアマトは、何かしらの鬼札を大天使達が保っていたときのために温存する。それくらい、重要な存在である。
地面が砕ける。
何カ所か肌を割かれる。
同時にガブリエルの翼も抉れ、体がえぐれる。まるで腕が何十もあるように見える程の速度で、ガブリエルが手刀を振るって来る。
光が迸る。
斥力で押される。
その一瞬で、手刀をねじ込みに来る。なるほど、達人同士のやりとりが拮抗した瞬間、こう言う僅かな隙を強引に造りに来る戦い方か。それに、ガブリエル自身は多少傷を受けても何でも無いのだろう。
故に、強気に出られると言う訳だ。
だが。
踏み込むと同時に、手刀を弾き返す。鋭い刃物そのものの手応え。ガブリエルも手刀を弾かれても、まるで痛がっている様子もない。手に傷も出来ていない。
ガブリエルの体は、まるで水のように柔軟だ。
確か霊夢に事前に聞いたが、ガブリエルは水の大天使だとか。だとすれば、それを攻防に生かしてくるのは当然だろう。
不意に、回り込むようにして、後ろから手刀が来る。
体を柔軟にしならせて、自在に体術を叩きこんでくると言う訳だ。人間では対応できない武術。
ガブリエルは、これでも人間の武術を研究し尽くしていると言う訳か。
だけれども、それは。
あくまでガブリエルに劣る人間の武術だ。
跳躍。
手刀を弾きつつ、包囲を抜ける。僕が立っていた場所を滅茶苦茶に手刀が抉り抜いていた。即座に顔を上げるガブリエルだが、もう其処に僕はいない。
向いていなくても攻撃魔術くらいは使える。
それを使って、空中機動した。
ガブリエルくらいの相手に痛打を与える攻撃力は出せないが、それでも空中機動には充分。
既に着地した僕が、水平に跳んで襲いかかる。薙。跳躍してガブリエルはかわすと、頭上から無数の手刀を放ってくる。
「ミカエル、ウリエル、ラファエルの気配がなくなりましたね。 一体どのようにして」
「元に戻って貰った」
「何ですって……!」
「元々余所から強引に取り込んだ信仰でしょあれは。 元に戻して、何か問題でもあるのかな!」
上を取って攻撃すればそれは人間には勝てるだろう。
だがそういう事を考える悪魔とは散々やりあってきた。その程度で圧倒される程度の腕前じゃない。
火花を散らしながら、蛇のようにうねって凄まじい勢いで繰り出される手刀を弾き続ける。
此奴はなんというか、剛の拳の使い手なのだなと分かる。
四大天使では女性の姿をしているとされる事が多い例外的存在。天使は基本的に男性型であることが多いのに。
一見しなやかな水の大天使であれば、柔軟な戦いを選びそうだが。
しかし、此奴はあくまでこういう戦い方を極めていると言うことか。
徐々に押し返す。
あらゆる武技を叩き込んでくるガブリエルだが、支援魔術によって速度には追いついて来られている。
更には此奴が使っている技。
どれもこれも見覚えがある。それらを組み合わせて来ているだけだ。
数多の戦いで見てきた。
達人達に教わってきた。
それらの経験が力になっている。
踏み込む。
手刀を一つ、叩き落とす。即座に腕を回復させるガブリエルだが、その隙に距離を取り、態勢を低くする。
まずいと判断したガブリエルが、距離を取って翼を盾にし、更に水の盾を複数枚展開して壁にする。
それは水魔術も使えるよな。
分かっているから、だからこそそうさせる。僕の全力の攻撃を警戒したガブリエルがそう動く事を、読んでいたからだ。
突貫。
大天使ガブリエルが、重ねに重ねた盾の内側から、氷の杭を乱射してくる。全て蜻蛉切りで弾き返す。
そして、盾の直前で横っ飛び。
そのまま地面に蜻蛉切りを突き刺しながら、火花を散らす。ブレーキという奴だ。勿論氷の杭は追撃してくるが、一手遅い。
再加速。
ぐるっとガブリエルの背後に回る。既にその速度に、ガブリエルはついてこられていない。こいつの動きは、既に見切った。
それでも翼を盾にするのはたいしたものだ。ずっと悪魔達とやり合ってきた大古豪なだけはある。
だが、その翼を横薙ぎに切り裂き。
更に、振るってきたもう一本の手刀を串刺しにして、振るい上げるようにして引っ張り込む。
ガブリエルが凄まじい絶叫を挙げる中。僕は蜻蛉切りを手放すと。ガブリエルの顔面を両手で掴んで、飛び膝を全力で叩き込んでいた。
僕は体術も出来るんだよ。
そう呟きながら、クロスレンジから拳を今度は乱射して叩き込む。ガブリエルの全身が見る間に拉げていく。
踏み込むと同時に、フルパワーでの前蹴りを打ち込む。
ガブリエルは必死に再生途上の両腕で防ごうとしたが、守りごとブチ抜き。吹っ飛んだガブリエルは、地面を砕きながら煙に消えていた。
飛び退くと、蜻蛉切りを手に。チャージを掛ける。
ガブリエルが煙から飛び出して、突っ込んでくる。流石は四大天使。凄まじい闘志である。だが、貰った。
一瞬の勝負。
全身を杭にしたガブリエルの一撃を、僕は貫でわずかに逸らし。そして、蜻蛉切りを回転させつつ、ガブリエルの体を両断していた。
絶叫とともに、四大天使最後の一体が消えていく。
呼吸を整える。
手強い相手だった。
ガブリエル……撃沈。
原作だとDLCでそれぞれ四大天使と戦えるんですが、それらが明確にメルカバー単独より強いのは何故か(笑)
合体して弱くなってどうするねん。
まあ、いずれにしてもついに武人としてのフリンは、四大天使の一角を単騎で破る存在にまで成長した訳ですね。
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