文字通り最後の戦い開始です。
真2のカオスルートがごとく四文字の神は自身の分霊体を全部展開して待ち受けています。
それを正面から打ち破らなければなりませんが。
英雄達とサムライ衆がともにあることで、きっとやれる筈です。
序、最後の戦いへ
多神連合のクリシュナ達と、ベルゼバブ達がにらみ合っているが。咳払いして僕が前に出ると、それで両者引いた。
今は戦う時ではない。
戦う意味もない。
これから、至高天への道を開く。
元々それは何処かの決まった場所に開くものではない。本来は、三つの鍵とやらで戸を開けるものでもない。
最初座についた神は、観測出来る範囲では一番古いのがマルドゥーク。
つまりその前に、神々の主だったティアマトは座になどついていなかった。
或いはだが。
何とか理解したドクターヘルの説明によれば、あるいはその時代の人は、まだ座を認識できる程に世界を観測出来ていなかったのかもしれない。
座は巡り、やがて世界が滅びても、次の世界でまた座が作られる。
マーメイドが言っていたこのマントラの理は。
単純に様々な生物が興亡し。それらが座を認識するほどに栄え。やがて滅びていった過程を意味しているのでは無いのか。
そうドクターヘルは解釈していた。
人の前にも、世界の覇権を握った生き物はたくさんいた。
それらがそれぞれ座を認識し。
そして彼等なりの神を認識し。
それもやがて滅びていった。
それがマントラの理というのであれば、筋は通ると。
何よりも、世界全ての理を司るというのはあまりにも無理がある。たかが地球……この世界の事らしいが。地球にいる生き物ごときが、世界の全ての理を決めるのはとてもではないが無理なのだとも。
ドクターヘルにいわせると、この世界はもはや数えることすら出来ない程世界にある「星」の一つに過ぎないらしく。
世界は広ささえも、出来てから経過した年月すらも、不明なのだという。
諸説はあるが、いずれも反論が存在しているらしく。現時点で正解を割り出す科学技術は人間にはないそうだ。
平行世界が存在している事は分かったが。
それはそれとして、この世界はあくまで「この星」に限定した話。
文字通りの世界全てなど、「座」とやらが影響を及ぼすのは到底無理だろうとも、ドクターヘルは語っていた。
それほど世界は広く。
そして人間も神々も矮小なのだとすれば。
それは人間を愚民化して、真実を知らせないようにしたという天使達の行動にも納得がいく。
そうでもなければ、宇宙なんて全部支配できるわけがないだろと、子供でさえ気付く時代が来てしまう。
故に天使達は知恵を東のミカド国の民から奪った。
そういうこと、だったのだろう。
いずれにしても、その至高天にこれから赴く。
牽制し合っている二陣営に、殿が声を張り上げていた。
「これから恐らく座を狙う阿呆どもがわんさか押し寄せるであろうな。 それらを対処するようにな」
「分かっている」
「まあこやつ等に座を独占させなければそれでいい。 我等が主明けの明星は、座に興味は失ったが、ろくでもない存在が座につくことは望まれておらぬ」
「うむ……」
殿が促す。銀髪の娘……リリィが歩き出す。
座についての処置については、既に話し合いを終えている。時間を掛けて話をした。それで全員が納得するものが出来た。
後は、東京。
それに東のミカド国。
東のミカド国には、マルドゥーク達を残してきた。天使の残党が悪さをしようとしても、何もできない。それに、ラジエルを初めとする良識派の天使達も、人間を守ると誓いを立てた。
神にも悪魔にとっても契約は重要だ。
人間には契約の概念を理解出来ていない存在もいたらしいが、神や悪魔は人間よりそれはしっかりしている。
此方では、日本神話系の神々、ケルトの神々が、それぞれ市ヶ谷とシェルターを守ってくれている。
日本神話系の神々は素戔嗚尊が加わった事もある。
ほぼ主力の神々が揃った事で、戦力は充分。
もはや悪さをすることは不可能だろう。
それでも念の為に、ナナシ達は残り、守りにつく。皆を守って欲しい。そうワルターがいうと、ナナシは任せろと力強く応えていた。
さて、いよいよだ。
神田明神の近く。
天照大神が舞っている。
この国の最高神が、至高天への道を開くための切っ掛けを作る。それだけじゃない。
既に東のミカド国からマルドゥークが。
それに悪魔合体で作りあげた魔神アメン・ラーが。
そしてしぶしぶという表情で、どうにか蘇生できたらしい魔神バアルが。まあ、ダグザにぼっこぼこにされて懲りたのだろう。
それぞれ座についていた経験を持つ神が、力を送り込む。
鍵なんぞいらない。
実際問題、峻厳、均衡、慈悲だったか。そんなもの、マルドゥークは持ち合わせた覚えなどないと笑っていたし。
ラーやバアルだって、それぞれの考えは持っていただろうが、それらに慈悲があったかは極めて微妙だ。
それは四文字の神だって同じ。
こちらで残されていた旧約聖書とやらを軽く読んでみたが、四文字の神に慈悲なんぞあったか。
気にくわない人間は即座に殺し、自分以外の信仰は抹殺し、試しと称して気分次第に人間を殺して信仰を確かめる。
そんな存在に慈悲などあるか。
均衡などあるか。
どこが峻厳か。
いずれにしても、鍵はあくまで鍵。それも既にあの元大天使達と融合している。至高天への扉は、そのまま開けるだけだ。
光が迸り、それは柔らかい。
ドクターヘルが説明してくれる。
「例えば紙に書いた絵をその辺りで振り回すことが出来るように、二次元を三次元に持ち込む事は可能だ。 だが誰かの絵を描くことは簡単だが、絵の中に入る事など、とてもできない。 至高天とやらに入れないのはそれが理由だ。 下位の次元に簡単に足を踏み入れる事は極めて困難。 そういうことよ」
「大丈夫かそれ、入った途端にぺしゃんことかにならないよな」
「大丈夫だ。 一種の情報体としてこの先に臨むことになろうよ」
「生きて帰れるのかしらね」
霊夢がげんなりした様子で言う。
いずれにしても、ガツンと音がして、扉が固定化されたようだった。
さて、行くか。
もはや怖じ気づく理由などない。この先に至高天とやらがある。其処に座と、其処につく四文字の神がいて。
更には其処への到達を阻む存在がいる。
ならば、それらの全てを打ち砕いて進むだけ。
人とともに歩んでくれる神だったらいてもいいと思う。
そういう神様はむしろいてくれたら嬉しい。
人間の悪を糾弾する悪魔がいてくれればいいと思う。
法を笑って悪の限りを尽くすような人間を地獄に引きずり込んで相応の仕置きを与える存在。
そんな悪魔の存在は大歓迎だ。
だが、今いる神々は果たしてそうか。
悪魔はそうか。
ならば、変えなければならない。変える事に同意してくれている神々が主流なうちに、勝負を決める。
空間に出来た巨大な穴に、足を踏み入れる。
びりっと来て、そして内部に。
そこは、階段だった。
ただひたすら、何処までも続く階段。マーメイドが、此処には沈めないと言って、水で足場を作って、その上を進むようにしてついてくる。
「ナホビノとやらと数限りなくこれを踏破したのだろう。 案内は頼めるか」
「いえ、私の知っている至高天とは違うわ。 何が起きるか分からないから、気を付けて」
秀にそうマーメイドが応える。
凄まじい光が満ちていて。階段がただ続いている。
巨大な気配が一つや二つではない。
それらが必ずしも敵意を持っている訳ではないようだが。それでも、気を付けて進まなければならないだろう。
警戒しながら、一歩ずつ行く。
後方が見えなくなるほど階段を上ってきた。転げ落ちたら死ぬな。悪魔達にも、飛べる悪魔には気を付けるように促しておく。僕らは翼がある悪魔ほど、自在には飛ぶ事ができないのだ。
空に浮かんでいるのは、なんだろう。
球体だろうか。
いずれにしても、この奧に四文字の神がいる。この先に、昔は色々な神が、半身とともに挑んだということなのだろう。
しばし歩みを進めて。
やがて、足を止めていた。
あまりにも音もなく、気配もなく、それは現れていた。
三つの頭を持つ、赤い体の悪魔。翼を持ち、顔のそれぞれは人間だったり竜だったり。おぞましい迄の気配が感じ取れた。
「座を求めて来たか。 優れた英雄達の集まりのようだが、何を座に求める」
「貴方は」
「私はサタン。 敵対者の名を持ち、今では神の座を監視する存在」
「だとしたら仕事をしろや。 四文字の神とやらが全然仕事していないからこんな有様になっているんじゃねえのか?」
ワルターが凄む。
普段ならたしなめたい所だが、ヨナタンも同意のようだ。あの有様の東京は、まだ人が生きているだけマシというほどに酷い。
四文字の神の手下の大天使達が何をしたか。
人間を家畜牧場で飼い慣らしていた東のミカド国。
それ以外は全て核兵器とやらで何もかも焼き払い吹き飛ばした。
そのような凶行、何故止めなかったのか。
誰もが神の監視者がいるなら、糾弾したい所だ。
サタンは三つの顔についている目を全て閉じて、言う。
「そうだな。 私も世界の有様は見ていた。 だが、神のあり方を監視するのであっても、神の行動を抑止するのは私の仕事では無い。 それと、大いに勘違いをしていることがある」
「何を勘違いしていると?」
霊夢の冷えた声に、サタンは驚くべき……いや想定されていたことを言う。
それは、あの砂漠の平行世界を見た今なら、納得出来る話だった。
「四文字の神……YHVHは、そもそも他の神々にも悪魔にも天使にも興味を持たない。 あの大破壊は、YHVHの狂信者となった天使達が、その手下となっていた人間を操り、起こさせたことだ」
「なんですって……!」
「YHVHはただ座にあり、悪魔と天使の戦いを傍観しているにすぎぬのだ。 それが全肯定と全否定の理の真実。 自分のところまで上がって来た人間を愛でる。 それだけが目的だ。 昔は地に降りて気に入った人間と触れあう事もあったようだが、今ではすっかりそれも止めた。 その理由は、私にはわからぬ」
「いずれにしても、とんでもない奴だって事ははっきりしたね」
僕はため息をついた。
傍観、か。
たまに、僕が師事を請うた達人の中にいた。
力は悪戯に振るうものではない。圧倒的な力を持って、それをただ抑止にだけつかうのが理想だと。そう言う者が。
理想としては分からなくもない。
だが、仮に世界を改革し、良くする力を持っているのだとしたら。それを使うのが義務というものではないのか。
四文字の神は、悪魔にも天使にも興味がなく。
タダ見ているだけだった、というのか。
既にこの時点で、座から蹴り落とす事を決めていた相手だが。怒りのボルテージが上がり続けている。
サタンはそれを、敵対者という恐ろしい異名とは裏腹に。むしろ悲しそうな目で見ていた。
「その様子だと、平行世界を見てきたのだな。 遠くの平行世界から来たものもいるようだ。 凄まじい力を持つ、圧倒的な影響力を持つ超存在が平行世界を束ねているの私も感じ取っていた。 その尖兵か。 この世界も、同じようにマシにしようというのだな」
「ええ。 それがあの人の願い」
「良いだろう。 マントラの理は必ずしも永劫の理でもなんでもない。 それに……気付いているものもいるようだが、神々の認識している「宇宙」というのは、あくまでこの星の話に過ぎない。 輪廻というのは、この星での生物の興亡に過ぎない。 恐竜とそなたらが呼ぶ生物が世界を支配していた時代には、座は別の形で認識され、神々の形もまた違っていた。 ただ……お前達が滅びたときには、もうこの世界に先はないだろうな」
「資源が既に使い切られているからな。 人間という生物が再起する最後の好機が今であろうよ」
ドクターヘルが指摘。
ふっと、サタンは笑っていた。
そして、両手を拡げる。
それだけで、全身に武者震いが走っていた。
「まずは力を見せてもらおうか。 神々も悪魔の王も退けた勇者達よ。 私は此処からそなた達の戦いを見ていた。 だからこそ、そなた達の力を私の身で確認しておきたい。 そしてそなた達がこの先に行く事が相応しい力を備え、座に干渉するに相応しい存在だと判断したのであれば。 私は、その座の変革に立ち会おう」
「ま、そうなるわな」
「文字通りの魔王の中の魔王との戦いか。 腕が鳴る」
「いいよ。 力尽くでも此処は通るつもりだった!」
僕が蜻蛉切りをふっと構えると、サタンは周囲に多数の悪魔を出現させる。恐らくサタンの眷属……いや違う。
これは恐らくだが、アティルト界にいる様々な神々の写し身だ。
それらを自在に扱う事ができると言うことなのだろう。
「悪魔を操る力を与えられている。 そんな肩書きを持つ大天使が存在している。 マンセマットの事だ。 それの本家本元がこの力だ。 観測した先にある二次元世界……アティルト界。 其処にある力の全てが、私の操る存在と知れ!」
多数の神々、天使、悪魔。それぞれが、文字通り驟雨の如く襲いかかってくる。これは、最初から全力でやらないとダメだな。
僕はティアマトを呼び出すと、総力でのブレスを真っ向から叩き込んで貰う。それがサタンが召喚した悪魔や神々を消し飛ばす中、突貫。ワルターもそれに続く。秀は少し離れた。
戦いが、始まった。
至高天への道の周囲には、多数の魔的存在が集まり始めていた。
死者に取り憑いているような下等な悪魔から。
それこそ、明けの明星に不満を抱えていた大物の魔王まで。
それらとの戦いが始まっていた。
どけ。
座は私のものだ。
座を奪い取るのだ。
呻きながら、凄まじい数の悪魔が来る。多神連合とベルゼバブら明けの明星の側近達は、それら全てを相手取り、総力戦を開始する。
多神連合には結局行き場がなくなったトールも、嫌々ながら参加しているバアルもいる。
ベルゼバブ等の側には、ルキフグスや蚩尤を初めとする魔界の大重鎮達がいて、それぞれ接近する有象無象を薙ぎ払う。
クリシュナが舞うように迫る雑多な神々を斬り伏せながら、軽口を叩く。
「あの者達、サタンに勝てると思うかい? 蠅の王」
「勝てるだろうよ。 まあサタンが認めるかどうか、という戦いでならな」
「やれやれ。 それにしてもサタンごときが出世したものだな」
「よくある極大解釈だ。 ものごとを曲解し最大限まで都合良く解釈するのは人間の得意技であるからな。 皆、そうして得体が知れない能力を与えられ、そして人間に振り回されて来たのであろうが」
ベルゼバブの凄まじい呪い魔術が、殺到する悪魔を消し去る。呪いに耐性があろうが知った事ではない。
トールがミヨニヨルを投擲し、多数の神を打ち砕いた。
弥勒菩薩が光を放つと、浄化された悪魔がまとめて消え失せる。
ショウキは黙々とその剣腕を振るい。
ケツアルコアトルは太陽の光で、雑多な悪魔を寄せ付けもしない。
とにかく何処に潜んでいたのかと言う程の数の悪魔が寄せてくるが、それらはどれもこれも哀れな有様。
此処にいるような神々には、とても歯が立たない。
それでも無数に寄せてくるのは、座にそれだけ希望を見ているのだろう。
アティルト界からもはや簡単にアッシャー界には来られない。
天照大神が復活した事により、この国で魔が形を持つのは極めてハードルが高くなったからだ。
それに、である。
全肯定と全否定の理。
バカを支配するための最高の理屈をあの四文字の神が独占して。
それでこれほど世界を好きかって出来るというのであれば。
自分だって。
そう零落した神々は、考えるのかも知れない。
だが、それはもはや神々ではない。悪魔と言うのに相応しい。
古くは誇り高き神々だったのかも知れない。
だが、零落させられたにしても。
今、こうして至高天に向けて殺到してきている様子は、もはや悪魔と言う存在以外の何者でもありえなかった。
クリシュナに、ベルゼバブは皮肉混じりに言う。
「一歩間違えれば貴様もこうだったな。 特にあのフリンというものを自分の神殺しに仕立てようとでもしていれば、確定でこれらの同類となっていたであろうよ」
「ちっ……」
「お前もそもそもヴィシュヌではない別の神格であっただろうが。 それをヒンズーなどと言うカーストを肯定する愚かしい信仰に取り込まれ、ヴィシュヌのアバターとされて、それでいいのか」
「黙れ。 今はそれどころではない」
不愉快そうにベルゼバブの揶揄に、クリシュナが吐き捨てる。
実際、押し寄せる悪魔の群れは、まだまだ多数。
そこへ、横殴りに射撃が来る。
「ほう?」
つるべ打ちという奴だ。
並んだ戦車隊が、一斉に砲火を浴びせている。10式戦車とM1エイブラムスの連合部隊だ。
それが対悪魔用の榴弾を搭載して、そして一斉射撃を行っている。多数の悪魔が、見る間に撃ち減らされていく。
戦車隊に向かおうとした悪魔達は、人外ハンターが放った悪魔とぶつかり合うが、質が違う。
「どうやら、市ヶ谷やシェルターはもう守りが盤石なようだな」
「此方志村。 加勢する」
「おう、頼むぞ。 まあ加勢されなくても勝てるが、楽に勝てるならそれに越したことはないからな」
ベルゼバブが悪魔の群れを薙ぎ払う。
もう一度、クリシュナが舌打ち。大きく嘆息すると、クリシュナも意識を切り替えて。この場の死守に努めるのだった。