もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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メガテンではサタンの扱いがいいですよね。真VVではレベル150解放の条件になりましたし。

ましてや、神の監視者としての扱いをしている作品は、あまり多くはないでしょう。

本作でも、サタン様は四文字の神の変質を見続けてきた存在となっています。

人の身勝手極まりない信仰は、座についた最高の神すらをも歪めていくのです。






1、神霊の壁

突貫。

 

サタンに僕は突撃を入れる。サタンは余裕を持って受け止める。蜻蛉切りで絶技と言える技を次々と叩き込むが。

 

それでもサタンは、軽くあしらってくる。

 

とんでもない技量だな。

 

だが、それは単純なフィジカルに裏打ちされていると、僕は既に見抜いていた。故に、数々の搦め手を試す。

 

槍技は。そもそも剣術に比べると実用的だ。

 

剣はどうしても王権の象徴だったり、何より武人の魂扱いだったりしたものだ。だから世界中に様々な剣術が存在した。にもかかわらず、戦場の主力や弓と長柄だった。鉄砲が開発されてからは、それは鉄砲に切り替わった。

 

どんな英雄も、馬上で長柄を振るったものだ。

 

それが長柄、いわゆるポールウェポンが如何に実用的かを示している。そういうものなのである。

 

だから、その技術についても。

 

徹底的に研究され尽くしている。

 

サタンはあらゆる技を返してくるが、どれもこれも見た事があるが、理論上分かるものばかりだ。

 

人間は一万年……東のミカド国の千五百年はほぼ平和だったから考えなくて良いとして、それでも一万年、ずっと殺し合いばかりやってきた生物だ。それも、同族で、である。だからその槍の技は、神々の歴史とともにあると言ってもいい。

 

ドクターヘルがいったように。

 

神々は人が作り出したもの。

 

アティルト界に観測され形を持った神々は、所詮人間の映し鏡に過ぎない。だから、人間が全く知らない、接点もない神々など出現しない。

 

実際問題、人間以前に高度に発展した生物の神々など、全く姿を見せない。それらは、発展を終えた生物とともに滅び去ったのだ。

 

あのホワイトマンという平行世界の存在達は。勘違いしていた。

 

この世界は神々に好き放題玩弄されていたのではない。

 

そういう神々を人間が作り出し。そうして出現した神々が人間を玩弄した。そういう負の連鎖が起きていたのである。

 

この後人間が滅び去ったとして、その先に現れる生物がまた神々を作り出し、こういう至高天と言われるような世界をまた作り出し。座を作り出す。

 

それが分かっている以上。

 

不毛な戦いは、ここで終わらせなければならないのだ。

 

押され気味だった戦いが、徐々に拮抗していく。皆もサタンが呼びだした多数の悪魔の影を打ち砕いていく。

 

前線に躍り出たのは、アガートラームとダグザである。

 

それが、息を合わせてサタンに猛攻を加える。

 

サタンは流石に冷や汗を流し、腕を増やしそれぞれに武器を手にして攻撃を凌ごうとするが。

 

真横から突貫したギリメカラに、態勢を崩される。

 

そして、天使部隊が放った光の塊が直撃。

 

ぐっと呻いたときには、僕が真後ろに回っていた。

 

真後ろにも目がついている。

 

そしてサタンは更に腕を増やして対抗してくるが、残念だがもう体の構造上、僕の攻撃に対応できない。

 

一撃。

 

それで充分。

 

貫を入れて、ついにサタンを貫く。

 

サタンは明確に悲鳴を上げると、不意に戦意をかき消していた。

 

「降参だ。 どうやら私の見込み以上のようだ」

 

「……どうやら嘘はついていないようだね」

 

蜻蛉切りを引く。サタンは姿を縮めると、人間大程度の大きさにまでなっていた。皆で囲む。

 

消耗しすぎない程度に力試しをして来た、ということか。

 

ドクターヘルが何やら計測を続けている。

 

これも、今後に生かすのだろう。

 

「神を撃ち倒すとして、その後の展望はあると見た。 それならば、私は後方から加護だけを送ろう」

 

「あんたが四文字の神を倒すべきだったのでは無いの?」

 

霊夢が言うが。

 

サタンは苦笑い。明らかに、そうしたのがどうしてか分かった。

 

「すまぬな。 私はどちらかというと原天使とか神霊とかいわれる存在で、その役割に神への誅伐はあっても、神を滅ぼす事はないのだ。 今まで四文字の神には、変質を指摘し、誅伐を与えた事は幾度かあった。 だが既に、老いきった四文字の神には、それは無駄になってしまっている」

 

「そうか、ご退場願う時だって事だな」

 

「そういうことだ」

 

ワルターに、サタンは分かりやすい返事をした。

 

まあいい。

 

とりあえず、天使部隊に回復の魔術を使って貰う。僕らはドクターヘルの輜重部隊から物資を受け取って、回復に努める。

 

出来るだけ急いだ方が良い。

 

どんな問題が後方で起きるか、分かったものではないのだから。

 

それにこの先の四文字の神は、当然此方の侵入を察知しているはず。それであれば、守りを固めさせるわけにもいかないだろう。

 

手当てを終えて、先に進む。

 

ダグザがうきうきしているようだ。

 

「ついにあの四文字の神めを殴れる!」

 

「……なんというか、そのためだけに来たようですわね」

 

「どれだけの迫害を他の神々が受けて来たか、知らぬからそんな反応が出来るのだ」

 

「まあ、分からなくはないわよ。 四文字の神ではないけれど、あたし達も月の都の連中に散々酷い目にあわされたからね。 ただ、それももうなくなってしまったけれど」

 

階段を行く。

 

ずっとまっすぐ続いている階段。

 

ドクターヘルによると、これは上位次元どころか下位次元の事だそうだから。或いはだが。

 

人間が思い浮かぶ、神への道というのがこういうものであるのかも知れない。

 

天使部隊を先行させる必要もないだろう。

 

程なくして、足を止める。

 

どうやら、第二の壁が登場したようだ。

 

空から……というのも変か。

 

上から降り来るそれは、どちらかというと、巨大な球体が王冠を被っているように見えた。

 

殿がぼやく。

 

「おいでなすったな」

 

「神の座に近付こうという狼藉者どもよ。 これ以上進む事はまかりならぬ」

 

「貴方は」

 

「我は神の一つ。 神が別名の一つシャダイ」

 

イザボーが皆に頷く。シャダイに、もっとも分かりやすい疑問を投げかける。

 

これは、先にそうしろと言われていたからだ。

 

「確か貴方は唯一絶対の存在だという設定でしたわね。 それなのにどうして別名が幾つもあるのかしら? 他にもエロヒムやらツァバトやら。 神が神殿にある状態を示すシェキナーという名もあるそうですわね。 これらは要するに、貴方が唯一絶対の神などではない事を示しているのではありませんの?」

 

直球である。

 

イザボーは元々聡明だ。

 

知識欲も旺盛で、何よりもっとも大きいのは何かしら思考的なタブーを持たないと言う事である。

 

神学者達は矛盾だらけのバイブルにそれっぽい説明をつけることで、更に矛盾を拡大させてきたという歴史を持っている。

 

言った者勝ち。

 

そういう世界だから、どんどん歪みは大きくなっていくのだ。

 

そもそも神が絶対で唯一なら、名前なんぞ一つで良いだろう。その姿に関しても、である。

 

汎神論という、世界そのものを回している法則が神だという考え方もあるらしいのだけれども。

 

それもそれで、結局一神教の軛から逃れられていないだけの話だとも言える。

 

ましてや、神を否定する事が禁忌だとされていたような世界では。こういう質問は、それこそしてはいけないものだったのだろう。

 

「我に疑問を投げかけるとは笑止。 我は絶対にして唯一。 唯一にして犯されざるもの。 我に逆らう事は、文字通り消滅と知れ」

 

「やってみろ」

 

「ええ、やってみなさい。 不細工なその姿、神性を示すものとはとても思えないわね。 巨大な目は魔力の象徴、球体は完全性の象徴。 そして王冠は王権の象徴かしら。 俗悪な人間の「こうすれば偉い」という思想がそのまま現されているだけの存在でしかないわ」

 

「許されざる侮辱である。 滅びよ」

 

光を放ってくるシャダイ。

 

僕はまずは飛び退くと、その光の性質を見極める。天使部隊が壁になるが、それでも耐えきれない。

 

これは、無理矢理に浄化する力か。

 

霊夢が叫ぶ。

 

「目を閉じさせて。 まともに近付くのは自殺行為よ!」

 

「分かった!」

 

槍を持つ悪魔達が、一斉にそれを投擲する。それらも途中で光に溶かされてしまうが、しかし。

 

一人、剛弓を引き。

 

それをぶっ放した悪魔がいた。

 

ヴィシュヌの化身、ラーマ。

 

羅刹王ラーヴァナを倒した存在である。

 

興味があるとかで。イザボーが作っていたのだ。

 

神話では、最初はラーマはとてもか弱くて、周りから守られるばかりの存在であったらしいのだが。

 

やがて成長し、最後は不死身とも思われたラーヴァナを弓矢で射倒す存在にまで成長するという。

 

ラーマの放った矢が、シャダイの目の至近まで迫る。それを必死に溶かそうと、光を収束させるシャダイ。

 

其処に、ワルターが叫ぶ。

 

「どうした、万能で全能なんだったら、そんな矢なんぞ怖れる必要なんてないだろう! 力を収束させなくても効かない筈だ! そんな事をしている時点で、お前は万能でも全能でもない!」

 

「黙れ」

 

ラーマの放った矢が打ち消される。

 

だが、次の瞬間。

 

突貫した天使部隊が、シャダイの被っている王冠を、体当たりして叩き落としていた。階段を外れ、奈落の底へ落ちていく王冠。

 

シャダイが、青みがかった体を振るわせる。

 

おのれ。

 

怒りの声が放たれた。

 

それだけでずり下がる程の圧迫感。消し飛んでしまう悪魔もいる。

 

だが、僕らは意外と平気だ。霊夢が印を切ると、喝と叫ぶ。それで、更に緩和される。

 

突貫。

 

殿が叫び、リリィが前に出る。僕も遅れてはいられない。ワルターとともに前衛に躍り出る。

 

シャダイは王冠を失いながらも、立て続けに光の矢を目から放ってくる。

 

それを、多数の悪魔達が矢を放ち、目を狙う。攻撃を全て防ぎながらも、攻撃を同時には出来ないらしく。シャダイは此方への攻撃が疎かになる。

 

殿ではない。

 

リリィが叫ぶ。

 

「さっきから、貴方は自分の偉さを自慢するばかり。 東京の人達をどうして救おうとしなかったの? 全能で万能であるのなら、そんなことは簡単だった筈だよ」

 

「救う価値の無いものなど救う必要などなし」

 

「だったらそんな神様いらない」

 

「なんたる侮辱か! そなたらの魂には、無限の時に苦しみが与え続けられると知れ!」

 

光が立て続けに放たれるが、既に僕もワルターも、当然リリィも見切っている。それに、霊夢の反発する力が作用しているからか、明らかに遅い。

 

マーメイドが側面に躍り出る。

 

そして、冷気魔術を叩き込む。それは、明らかにシャダイの防御障壁を貫いていた。青い体の一部が、砕ける。

 

これで、完全を示す球も失われたか。

 

明らかに形が崩れ始めるシャダイ。

 

其処に、僕が目を狙って突貫。リリィは多数の不可視の弾丸を叩き込む。それでも、防御と攻撃を同時に叩き込んでくるシャダイ。

 

だが、跳躍したワルターが。

 

マーメイドが作りあげた傷に、大剣を叩き込んでいた。

 

火花散らしながら、大剣がシャダイの球体を更に砕く。勝機。叫ぶヨナタン。悪魔達が殺到する。

 

シャダイは明確に恐怖を目に浮かべる。

 

やはりこいつ、完全でもなんでもない。繰り出される光を右左にステップして回避しつつ、僕はシャダイの至近に迫ると。

 

同じように跳躍していた殿と同時に。

 

一撃を、奴の目に叩き込んでいた。

 

全力で守りに回ったシャダイが、光の壁を展開。至近で防がれる。だが、既に攻撃の余力なし。

 

殺到する悪魔達が、シャダイに組み付き、あらゆる攻撃を至近から叩き込む。それでも、分かる。

 

此奴は強い。

 

一瞬の油断で、逆転される可能性がまだまだある。

 

押し込む。蜻蛉切りを。

 

斥力が凄まじいが。

 

僕は今まで磨きに磨いた技と、それに蜻蛉切りを信じる。いかなる敵も倒してきて。最後まで本多平八郎忠勝とともにあった最強の槍。

 

だからこそ、絶対に勝てる。

 

リリィが不可視の質量体を連続して叩き付け、ついに光の壁をこじ開ける。そして、その隙間に。

 

僕が、総力での貫を叩き込む。

 

凄まじい絶叫とともに、シャダイの体が内側から光を放つ。逃げろ。ダグザが叫んで、悪魔達が我先に逃げ出す。

 

僕も、あわてて飛び退く。マーメイドが水でクッションを作って、更にアナーヒターとティターニアも、同じようにして受け止めてくれた。

 

シャダイが内側から砕けて行く。

 

目を貫かれ。

 

三つの神を代表する「完全性」を失ったシャダイが、ぼろぼろとその場に朽ちていった。

 

呼吸を整える。

 

短期決戦にしておいて良かった。

 

それに、此奴は四文字の神の分身の一つに過ぎない。まだまだこの先には、似たような奴がいると見て良い。

 

ドクターヘルが、回復を始めた皆に、声を掛ける。

 

「いいデータが測定できた」

 

「聞かせよ」

 

殿が言うと、頷くドクターヘル。

 

ドクターヘルによると、シャダイから感じ取れていた力は。イザボーの存在に対する疑問で大きく揺らぎ。

 

そして、更にはリリィによるその存在の拒絶で、更に大きく崩れたという。

 

「測定されるデータから見て、サタンに近い力だったシャダイの出力が、最初のイザボーの言葉で三分の一に、更にはリリィの言葉で更に二分の一にまでさがっておる。 これでなんとなく理解出来た事がある」

 

「分かる言葉で頼む」

 

秀がぼやく。

 

秀も戦闘中、ラーマと一緒に遠距離攻撃に徹してくれていた。次の戦闘では、前衛を張ってくれる。

 

僕だけが最前衛でつねに戦う訳にもいかないのだ。

 

まだ先は長いのだから。

 

「簡単に言うと、涜神はこの世界では大いに有効と言う事だ。 恐らく此処に以前四文字の神と一緒に来た人間は、それを知っていたのだろう。 一神教における涜神はあまりにも苛烈だが。 それが故に、他の神の力を相対的に落とし、四文字の神の力を絶対的最強へと押し上げたのであろうな」

 

「ばからしい。 そんなの自分が強くなった訳でも偉くなったわけでもないじゃんか」

 

僕の指摘に。

 

よくわかっておるではないかと、ドクターヘルが褒めてくれる。

 

あんまり良い気分はしない。

 

イザボーが持ち込まれている保存食。豚の燻製肉を上品に食べ終えると、確認する。

 

「要するに、神を否定すれば良いのかしら」

 

「そうではないな。 文句を言ったりするだけでは何の意味もなかろう。 矛盾を突け。 一神教など、所詮は他の信仰の寄せ集めであり。 多数の神の名があるのは、そのルーツが多数ある証拠に他ならぬ。 ましてや隣人愛と許しの思想だったものが、今では生まれながらに埋め込まれた原罪と罰の思想に変わり果てている。 其処を糾弾して、奴も分かっている矛盾を叩けば、奴はどんどん手が届く範囲まで力を落とすだろう」

 

座についても同じだという。

 

絶対の存在だと神々が考えているからそうなる。

 

そんなもの。ただ観測の果てにそうなると考えれば、誰でも座れるものになる。いっそのこと、何も座らないという選択肢すら出てくるだろう。

 

座につく存在については、既に議論の捨てに決めているのだが。

 

それも、誰かが生け贄にされることもなさそうである。

 

「それにしても本当に最初にここに来たとき、四文字の神はどんな存在だったんだろう」

 

ヨナタンがぼやく。

 

僕は、それについてはどうせ本人から聞けばいいと思った。

 

世界最大の信仰を集めた存在。

 

全肯定と全否定の思想を持って、世界中の人間のわかりやすさを刺激して。それで信者を集めた存在。

 

それによって救われた人だっていたのかも知れない。

 

だが結局は、それは最終的に人を支配する道具になり果てた。

 

王は国家第一の奴隷だとヨナタンは言っていた。

 

だとすれば、信仰は人間にとって、もっとも簡単に人間を支配できる道具であり。ある意味もっとも汚れた使い古しの道具であるのかも知れなかった。

 

休憩を入れてから、階段を進む。

 

後方ではフジワラが指揮をして、何が現れても対応してくれると思う。だから、後方は気にしない。

 

もしも雑多な悪魔達が乱入してきても、それはあのベルゼバブとクリシュナの防壁を抜いた連中だ。

 

戦力なんて残っていないだろう。

 

先に進む。

 

今度は大量の顔が連なった、光り輝く存在が降りて来た。

 

神霊ツァバト。

 

軍神としての四文字の神の側面。つまり、元々四文字の神は全知全能でもないし、唯一の存在でもない。

 

それを無理矢理まとめたから、こういう分霊体が出現する。

 

秀が前衛に、ワルターも。此奴の相手は二人が前衛になって、僕は後衛から支援する。こうやって少しずつ消耗を抑える。

 

「神の座を侵そうと近付く不届き者が。 この地をこれ以上進む事ができると思うな」

 

「貴方は全知全能の筈だ。 それならば何故多数の名前があり、多数の側面を持つ。 そもそも軍神としての側面など、全知全能であるのなら必要ないはずだ。 全知全能なら居ながらに勝利できるはず。 それが出来ないのは人間を試すつもりだとでもいうつもりか? 貴方はそうやって、結局自分が全知などではなく全能などではないことを煙に巻いているだけではないか」

 

ヨナタンの糾弾が入る。

 

イザボーの糾弾よりずっと苛烈だったので、僕はちょっと驚いていた。

 

恐らく法にもっとも忠実で、秩序のために身を削ろうと考えていたのはヨナタンだろう。そのあり方は極めて高潔であると僕も思う。

 

だとすれば、ヨナタンを裏切ったのは大天使達。

 

そしてその大天使達をしっかり教育しなかった神の責任だ。

 

試しなどと言うのはいいわけに過ぎない。

 

それは説得力のある糾弾だった。

 

「我に不遜なる物言い、許しがたし。 その身を千々に砕き、魂を全て焼き滅ぼしてくれようぞ」

 

「くだらんな。 世界の全てを敵にした私の叔父は、己の正義を暴走させた結果世界を地獄と化してしまった。 だがそれは最初は善意からだった。 貴様はただ盲目的に従い、盲目的に尽くす事だけを求めている。 慈悲、峻厳、公正はどこへやった。 もう貴様の中にはないのか」

 

秀が更に一喝。

 

なるほど、分かる。

 

シャダイと同等と思われた力が、更に衰えていく。うめき声を上げる連なった顔に、頷くと。

 

秀とワルターが、躍りかかる。

 

勿論凄まじい戦闘になる。

 

ツァバトの直衛とおもわれる多数の異形が襲いかかってくる。これらは恐らく、原初の信仰の天使達だろう。

 

軍神の兵というわけだ。

 

一体ずつがそれぞれかなり強いが、しかしながら大天使ほどではない。ただ数がとんでもなく多い。

 

これも短期決戦だな。

 

僕はティアマトを呼び出す。負担は予想よりもずっと小さい。

 

ワルターは召喚する。インドラジットを。

 

インドラジットが多数の矢を番え、一斉にツァバトに放つ。ティアマトが雄叫びとともに、光のブレスを叩き込む。

 

それでも砕けないのは流石だが。

 

ワルターが、更にとどめの一撃を入れる。

 

「そもそもなんだその顔たくさん連ねている有様。 全知全能だったら、そんな姿にしないで、もっとしゅっとした形にまとめられるんじゃねえのか!?」

 

ぎりぎりと、ワルターの大剣が頭の一つに食い込んでいく。

 

やはり、そうだ。

 

一神教はバイブルをとにかく全肯定することを続けて来た。これに関しては一神教の分派の聖典に関しても同じであるらしい。

 

古くはバイブルに書かれている神の所業は明らかに邪神のものではないのかと疑念を呈する人々もいたそうだ。

 

まあ実際問題、東京で見せられたバイブルに書かれている神の所業は、お世辞にも人間の味方などではあり得ないものばかりだった。

 

だが、それらは。

 

異端の名の下に抹殺された。

 

全知全能なら、異端すら許してこその全知全能ではないのか。

 

ワルターの言葉が、ツァバトを更に砕く。

 

其処に、秀が大上段から、顔を複数、まとめて両断すると。とんでもない悲鳴とともに、ツァバトの構造が根元から崩壊していく。

 

「わ、我は、神の力、神の軍勢……!」

 

「だったら大天使達に加勢してやれば良かっただろうが! あれらはあんたが指示しなかったからおかしくなったんだろう!」

 

ツァバトの放った直衛を片付ける。ツァバトは恨み事を述べ、崩壊しながらもまだ抗ってくる。

 

その凄まじい力だけは本物だ。

 

ずっと信仰を受け続けたのだから当たり前だと言える。

 

だが、信仰する人間を家畜化した時点で。

 

その信仰には、柔軟性などなくなった。だから老いたのだ。きっとこの神は、ずっと前から。

 

取り返しがつかないほどに老いていたのだと思う。

 

崩れ果てたツァバトの残骸を一瞥だけする。この神を老いさせたのは、統治に都合が良いから利用し果てた聖職者達だ。

 

屁理屈をこね回して、その言動全てを正当化した存在だ。

 

客観を失い、自己正当化をするようになると、神だろうが人だろうがこう成りはてる。

 

悲しい話だった。











真2ではカオスルートで戦う事になる四文字神の分霊達。それ以降、あまり出てくる事はないですね。

シャダイは別のゲームでちょっと有名になりました。また、エロヒムについては「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」という呪文で知っている人もいるかも知れないですね。これのエロイムがエロヒムの事です。










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