もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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4、東京に光を

銀座にある巨大な岩の塊の前で、霊夢が護摩段を作って、祈りの言葉を捧げている。

 

凄まじい力を感じる。

 

日本神話系の神々が出張してきていて、霊夢の手伝いをしていた。

 

今や将門公は、日本神話系の重鎮達がそれだけのことをする程の存在にまで昇華していると言う事だ。

 

ばっと、霊夢が棒を振って、その度に汗が飛ぶ。

 

そして、程なくして。

 

威厳のある声が響いていた。地面の下から、全てを揺らすほどの迫力をそれは持っていた。

 

「我は平将門。 我を目覚めさせたのはそなた等か。 おお、この国の神々がおる。 それに、おお! 座の仕組みが変わっておる!」

 

「平将門公。 東京は救われたわ。 貴方に一つ。お願いがあるの」

 

「何か。 これほどの事を為してくれた存在に、何の文句を言おうか。 なんなりといってみるがいい」

 

「最早東京を守る必要はない。 しかし今、貴方の上で暮らしている人々もまたいる。 だから、貴方の一部を崩して、太陽の光を東京に入れたいの。 そして、望む者達を、東京の外へ出してあげたい」

 

しばし黙っていた将門公。

 

跪いていた僕は、ちょっとひやりとした。

 

この感じる凄まじい力。

 

明けの明星以上かも知れないからだ。

 

だが、将門公は、世界を揺らすほどの笑いを挙げていた。それが嘲笑でも怒りから来る笑いでもないことは、すぐに分かった。

 

「そのような事か。 良いだろう。 そもそもこの体は、危機に際して擬似的に構築した物に過ぎぬ。 勿論許可なく壊されたら我も怒りを覚えただろうが、そなた等ほどの英雄が、これほど丁寧に頼む上に、妥当な話だ。 なんなりと穴を開けるがいい。 ただし、上で暮らす者達、東京で暮らす者達。 ともに不幸にならぬように、細心の注意を払うようにな」

 

「ありがとうございます。 東京の守護者」

 

「我はまた眠りにつく。 それと、くれぐれも、戦などのために我を再び呼び起こすことなかれ。 我の制御札を焼き切ってしまってくれるか」

 

「はい」

 

霊夢はさっと手を動かすと、岩の塊の中にあったらしい札を手元に引き寄せ。そして、術で燃やしてしまった。

 

将門公の声が、それだけでぐっと穏やかになった。

 

「おお。 これで我は板東の守護に戻れる。 そなたとともにある、徳川家康に告げてくれ。 そなたこそ、もう一人の東京守護者。 見ていたぞその活躍。 今後も、しばらくは人を支えてくれるようにとな」

 

「ははっ」

 

それだけで、将門公は黙り込んだ。

 

二度と起こさないように気を付けなければならないだろう。

 

すぐに、先に調べておいた地点に出向く。

 

フジワラが。測量というのをやっていた人を連れてくる。それらの人と共同して、東京の東端の一角に出向く。

 

東のミカド国とも連携して、その場所から人を遠ざけて。

 

後は大型の悪魔を呼び出して、穴を掘っていく。

 

ティアマトのブレスは過剰すぎるだろう。

 

或いはだが。

 

クリシュナが使おうと思っていたらしいシェーシャという存在であったら、大穴を容易く開けられたかも知れない。

 

だが、そんな乱暴なことをすれば、大きな被害がまた出るだろう。

 

それはやってはいけないことだ。

 

スルトとティアマト、それに秀のだいだらぼっちなど、大型の悪魔達がそれぞれ力を振るう。

 

巨人達……ドクターヘルの使うサイクロプスや、ヨトゥンヘイムの霜の巨人。他にも様々な巨人の悪魔も、手伝いをする。それでも天蓋に比べると小人のようなサイズなのだから、将門公の凄まじい巨大さがよく分かる。

 

ホープ隊長は、東のミカド国の状態が安定したこともある。此方に既に何度か降りて来ていて、ターミナルに登録も済ませていた。

 

そして、此方と上を行き来しながら、それぞれで監督を続けてくれていた。

 

三日ほどの作業の末に。

 

ついに穴が開く。

 

東京の空を覆っていた天蓋が、破れたのだ。

 

光が入り込んでくる。

 

太陽光だ。

 

勿論、天蓋の全てを砕くわけにはいかない。

 

それに、視界の果てまで見えている森と原野を、以前の文明の時のように、考え無しに焼き払う事も避けた方が良いだろう。

 

座の仕組みが変わっても、悪人は出る。

 

それらを取り締まらなければならない。

 

だが。東京に光が差し込んだことによって。僕らがやるべき仕事は。概ねこれでかたがついたと見て良さそうだった。

 

「陽の光だ。 25年前に、アキラとともに見て以来だな、ツギハギ」

 

「ああ……」

 

フジワラとツギハギが、歓喜の涙を流している。

 

穴を巨人や巨大な悪魔達が慎重に拡げていく。土建屋の人達が指導して、大規模な崩落が起きないように、補強工事をはじめていた。将門公の体だ。安易に崩れるようなこともないだろうが。

 

それでも、穴を開けた以上、どんな風に崩落が波及するかは分からない。気を付けて、穴を維持しなければならないだろう。

 

光を見て、人々が市ヶ谷やシェルターで喚声を挙げている。

 

そうナナシから連絡が入った。

 

僕も目を細めて、光を見る。

 

太陽はこれで、誰もが浴びる権利を得たのだ。それは今後奪ってはいけないものだろう。

 

後は、殿のために悪魔合体で体を作って。

 

それで、東のミカド国を統治しながら、人々との交流を進めていく。

 

僕はサムライ衆の長になることが決まっているけれど。これからホープ隊長に引き継ぎを受けなければならない。

 

それとヨナタンは今までのような強権的な王になるつもりはないようだが。

 

それでも気軽に話せなくなるだろう。

 

隣でイザボーが涙を拭っている。

 

気丈な彼女でも、これほど感情を揺さぶられるのは、初めてなのかも知れない。

 

僕も、終わったんだと思うと。

 

たくさんの失われていった命を思って。ただ静かに、光を見つめるだけだった。

 

やがて雨が降り出す。

 

今、丁度外は梅雨であるらしい。

 

でも、雨すら東京にはなかったのだ。

 

それすらフジワラとツギハギは喜んでいる。

 

ドクターヘルが、空の動きを観測しながら言う。

 

「時間の流れの差はなくなったようじゃな。 これで、もはや東京と東のミカド国は、一つの地続きの場所であろうよ。 あらゆる意味でな」

 

全てが終わった。

 

そして。

 

全てがこれから始まる。

 

 

 

(続)








将門公に祈り、人々が働き、ついに天蓋に穴が開いたことで。

東京は未来に向けて進み始めました。

東のミカド国もそれは同じ。

世界に文字通り太陽の光が差し込んだのです。







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