もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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サムライ衆や、東京の人々のその後です。

この話では、最後の戦いが終わった後すぐの話を扱っています。

復興から再生へ、全てが動き出していきます。

人と神と悪魔が力をあわせて。

既に唯一絶対の神は座を離れ、全肯定と全否定の理も崩れました。だからこそ、皆で協力していかなければならないのです。

※もう正体も明らかですのであえて章タイトルを「アキラ」王にしています。




1、アキラ王の広場で

ヨナタンが王としての正装をしている。ちなみにヨナタンの両親は、大天使達が第二次の侵攻作戦を東京に行った際に殺されたようだ。ヨナタンとしても色々複雑な相手であっただろう。

 

側に控えているのは、悪魔合体で肉体を作り出し。そして魂を霊夢が移した殿。

 

これからしばらくは、ヨナタンの治世を側で支えてくれることになった。殿は既に大なたをふるって、無駄だらけで奴隷化しか考えていなかった東のミカド国の仕組みを変革している。

 

それは知識がない僕から見ても優れた仕組みで。

 

口を出すどころか、文句のつけようがなかった。

 

それでいながらヨナタンに操り人形となる事ではなく、自分で考えて時には反論してくる事さえ殿は求めているようだ。

 

まあ東のミカド国の人前では、殿は忠実な部下を演じているようだが。

 

それだけではない。

 

サムライ衆が悪魔を使っていたのは公然の秘密だったが、大天使の内従ったもの。ラジエルなどを中心として、天使はこれから公然と姿を見せるようにとヨナタンは決めていた。これに加えて悪魔も。

 

あくまで友好的な悪魔から最初はそうしていくが。

 

それによって、唯一絶対だとか全肯定と全否定だとかの思想をまずは駆逐する所から開始する。

 

天使は普通に存在するもので、絶対的な善でもなんでもない。

 

悪魔は危険なものだが、扱い方を間違えなければともにやっていく事ができる。

 

それを東のミカド国の民が認識する事で。

 

その観測される結果は変わっていくのだ。

 

そうして急速に変わりつつある東のミカド国で、今日戴冠式が行われる。戴冠式には、東京からフジワラが代表して出る事になった。

 

場所はアキュラ王の広場。

 

ただしこれは、謁見の間が天使達の強硬派とサムライ衆との戦いで、破損したまま手をつけられていないというのが要因だ。

 

そんなものを直すくらいだったら、各地での問題解決を優先する。

 

更には。今後はカジュアリティーズとラグジュアリーズの垣根をどんどん取り払っていく。

 

それを示すために、各地の村の代表のカジュアリティーズも呼んである。

 

僕はサムライ衆の長の座を、既にホープ隊長から引き継いだ。

 

だから警備をしているが。

 

既に文句があるサムライは全員直にぶちのめした後だ。誰も、僕に文句を言う存在は既にいなかった。

 

それにホープ隊長がまだ後見人としていてくれる。

 

元、隊長だが。

 

第一分隊の精鋭が、僕の就任と実力を最初に認めてくれた事もある。

 

何よりガブリエルに無能なサムライ衆はあらかた粛正されてしまった後だったし。そういう意味でも、継承は却って楽だった。

 

ワルターとイザボーが来る。

 

久しぶり、と挨拶をする。

 

もう秀は地獄に帰ってしまったが、霊夢はまだ此方にいる。式典にも来てくれたが。かなり疲れているようだ。

 

雑談は後。

 

戴冠式が行われる。

 

王冠を持って現れたのは、司祭では無い。

 

アハズヤミカド王である。

 

殺されたと思っていたのだが。実は大天使達に放逐された後。離宮で閉じこもっていたらしい。

 

ただ一人だけ、アハズヤミカド王に忠実だった執事が、その世話をしていたそうだ。

 

大天使達は興味をなくしていたので、殺されることなく助かった。

 

それこそ虫か何か程度にしか思っていなかったから、却って殺されなかったのだろう。

 

民にはこう伝えてある。

 

東のミカド国を壟断し、多くの者を殺した天使達は闇に落ちた存在だった。

 

あの天使達は闇に落ちて、自分達の利益だけを追求した者だった。

 

その証拠に。

 

大天使ガブリエルを呼び出してある。

 

大天使ガブリエルは、以前の冷酷非道なギャビーとはまるで違い、穏やかで優しい目をしていた。

 

一目で違う事が分かる。

 

顔なども違う。

 

まああの顔は、人間向けに作ったものだったのだから。違うのは当然であったのだとも言えるが。

 

立ち会いはラジエルが行う。

 

知恵を司る大天使は、完璧な儀礼に沿って、ヨナタンの王位継承を進める。

 

ヨナタンが王族かどうか何てどうでもいい。

 

実際問題、王族の血脈なんて、調べて見て分かったのだが。

 

今までに何度も途切れて交代している事が分かった。

 

それをありがたがっていたのが現実だ。

 

ラグジュアリーズの名家が時々途切れたり不意に現れたりしているのと同じ。

 

アキラの血脈は途切れたのかも知れないが。

 

アキラという人が守ろうとしたものは、どうにか苦労しながらも、此処に残った。それで良いのである。

 

「それではアハズヤミカド王。 王冠を新たなる王へ」

 

「分かった。 これでやっと終わるのだな」

 

年齢以上に年老いて見えるアハズヤミカド王が、皺だらけの手で、王冠をヨナタンに被せた。

 

大天使達は、以前のように威圧的ではなく。

 

優しい目でそれを祝福した。

 

何体かの武人然とした姿の悪魔が、銅鑼を鳴らす。人間を遙かに超える背丈の悪魔達も、それを武人らしく祝福している。

 

そして、人間の楽隊が、短くファンファーレを鳴らす。

 

それで、戴冠の儀は終わった。

 

これで少なくとも東のミカド国では、ヨナタンに気安く話しかけられなくなったが。だが、ヨナタンは何も変わっていない。

 

側で控えている殿。

 

少し太めの中年男性が、厳しく周囲を見張っている中。

 

ヨナタンは、軽く演説する。

 

「これで家畜を管理するに等しかった東のミカド国の体制は終わった。 これからは誰もが学問を出来、誰もが思想の自由を持つ国になる。 勿論自由と無法は別の事だ。 悪事をすれば悪魔が見ている。 本来の悪魔とは、そういった悪人を罰する存在のことだからだ。 誰も知らないと思って悪事をするもの。 地獄は存在している。 それは私が東京で見てきた事だ。 天知る地知る、君知る悪魔知る。 悪事は必ず見られている。 それは私も例外ではない。 これからは、例え誰であろうと、悪事から金で逃れるなんて事はできない。 悪人は必ず地獄に落ちると知れ。 逆に、善行もまた神々が見ている。 天使達が見ている。 聖者はこれからは政治の道具ではないし、実際には裏で悪行を行っている支配者の別名ではない。 心正しきものは報われる。 それを知れ」

 

努力が報われる世界。

 

客観を誰もが得る世界。

 

だから独善的な絶対善と絶対悪はなくなる。

 

それぞれがより良きを目指して動くようになる。

 

だからヨナタンが言った通り、少しずつ人間はマシになっていくだろう。

 

だが、それでも悪人は絶対に生まれ続ける。

 

いずれにしても、この星から人々が旅立つまでは。

 

座のあり方を、堅持しなければならないだろう。

 

拍手の中式典が終わる。

 

その後は、僕はサムライ衆を率いて警備を行う。軽くワルターとイザボーとも話したが。ワルターは既にサムライ衆から抜けて、人外ハンター協会だった「警備隊」との連絡役を務めている。

 

ワルターの麾下にはナバールやガストンを含めた腕自慢が集められ、まだ悪さをしている神々や悪魔を倒す事が主任務になっている。

 

イザボーは文化振興のために、東京と此方を行き来する忙しい日々だ。

 

残されている本は保全しつつ、同時に電子データとして残っていた書物を、ドクターヘルとともに復興して、次々に此方に持ち込んでいる。

 

様々な学問書から持ち込み。

 

徐々に民の全員に高度な教育を施すのが目的だ。

 

勿論最初からそれをするのは無理だろう。

 

だが。其処に不公正がないように、殿が仕組みを整える。

 

殿はずっと守護者としているわけにはいかない。やはり死人だ。悪魔合体で体を得たからといって、ずっと此方にいるわけにはいかないのだ。

 

僕がおばあちゃんになる頃には、いなくなりたいそうだ。

 

警備の指揮が一段落して、それで眠る。

 

横になって伸びをしていると、ガントレットからティアマトが話しかけてくる。

 

「フリンさん、全てが綺麗に収まりましたね」

 

「これからだけどね大変なのは。 人間という生き物が変わったのはとても良い事だし、それで多少はマシになるとは思うけれど。 それでも悪さをする奴はどうしてもいる。 それらをふん縛って、悪魔につきだしていかないといけないし」

 

「これだけの事があっても、人間は変わりきれない。 悲しい話です」

 

「うん、そうだね……」

 

本多平八郎忠勝の事は調べてある。

 

東国最強とまで言われた忠勝だが、子供達には恵まれなかった。軍才はなく、政治家としてもダメだった。

 

すぐにその一族は転落し、歴史に関与することはなかった。

 

よくある最強の血統だの。

 

親の能力が子に引き継がれるだの。

 

そんなのが大嘘だと、本多忠勝は知っていたのである。

 

ひょっとすると、僕が愛とかにまるで興味がないのもそれが理由だろうか。

 

いや、それはまた別の話だろう。

 

なんとなく分かるのだが。僕の場合は、戦闘に頭の機能を殆ど使っている。それで、他の欲求が極端に少ないのかも知れない。

 

「ただ、とりあえず少なくとも僕の目が黒いうちは、好き勝手をさせないよ」

 

「はい。 私も側で支えます」

 

「長い事戦ったね。 実際には、何ヶ月程度だっただろうに」

 

「これからも戦いだと考えると、あと何十年でしょうね。 フリンさん、最後まで一緒にいます」

 

有り難い話だ。頼りにもなる。

 

僕は明日もまた忙しいだろうなと思って、眠りにつく。

 

此処にもドクターヘルが復興した科学技術がどんどん来る事だろう。

 

それは悪しき変化でもなんでもない。

 

悪魔や神々の存在は実証された。

 

科学と悪魔や神々は、既に共存出来ない存在ではない。

 

これからは、科学と悪魔や神々が一緒にやっていける時代が来る。そしてそれは、人間もまた、同じであるはずだった。

 

 

 

ワルターが護衛して、ウーゴを純喫茶フロリダに連れて行く。

 

ウーゴは司祭を続けているが、大司教は生真面目なカジュアリティーズの学者に既に交代した。

 

ウーゴは逆に技術の編纂と教育用の書物の管理を命じられて、逆に生き生きとそれをやっている。

 

やがて司祭もやめるつもりらしい。

 

ヨナタンが王位に就いてから半年ほど。

 

東のミカド国と東京の関係はとても良好だ。既に人員も行き来するようになっていて。ドクターヘルを監視しつつ送ったり。こうしてウーゴなどの非戦闘員を東京に連れて来たりもしていた。

 

ちなみに空いた穴からは、次々に東京の民が外に出ていて、開拓を計画的に開始している。

 

既に東のミカド国との領域は曖昧になりつつある。

 

東京でも日本国を復興するべきではないかという声もあるようだが。

 

殿がまだ早いと一喝していた。

 

人間が少なすぎるからだ。

 

せめて東京の今の人間の百倍は欲しい。そう殿は、冷静に言うのだった。

 

「おお、素晴らしい! 美しい!」

 

純喫茶フロリダを見て、まるで子供みたいに目を輝かせるウーゴ。まあ確かに良い雰囲気の店だ。

 

前は常に銃を構えたハンターが見張りについていたが。今は幻魔ゴエモンが見張りについている。

 

店ではシルキーが仕事をしている。

 

東京の中心地となった国会議事堂シェルターにいるのとは別の個体。

 

あっちはとにかくしっかり者だが。

 

こっちのシルキーは、若干おっちょこちょいで見ていて危うい。ただし、コーヒーを淹れる腕だけは此方の方が上らしい。

 

ワルターにはよく分からないが、まあそういうものなのだろう。

 

フロリダで待っていたフジワラとツギハギが、技術的な話をすぐに始める。テーブルにワルターもついて、コーヒーを貰う。

 

これもドクターヘルがなんとか再生させるのに成功した。

 

再生に成功したとき、フジワラが泣いて喜んでいるのを見た。実際に味わって見て、苦さに呆然としたのだが。

 

しかしまた、こういうのもありなのだろうと思って、ワルターは納得する事にしたのだった。

 

「此方ではアマチュアだと聞かされていましたが、毎日未熟を悟るばかりです。 あらゆる技術が違い過ぎる」

 

「伊達に一万年分の技術蓄積があるわけではないからね。 東のミカド国で足りないものについては、どんどん言って欲しい。 増設している工場から、試作品を送らせて貰うよ」

 

「有り難い事です。 それではまず幾つか……」

 

ワルターは見張る。それだけが仕事だ。

 

今の時点で、ドクターヘルは文明をとても楽しそうに復興していて、悪さをする予兆はない。

 

縮退炉が産み出す電力は、今や東のミカド国にまで限定的に引かれていて、それで灯りを作り出している。

 

今後、更に関係改善が加速するだろう。

 

殿の手腕は凄まじく、問題が起きるとしても殆どすぐに解決してしまう。ヨナタンだけではこうはいかない。

 

あいつは頭が良いが甘ちゃんだ。

 

それはワルターも、冷静に見て知っていた。

 

だけれども、ヨナタンを馬鹿にする奴は許さない。

 

あいつがどれだけ悩んで行動していたかは、今のワルターは良く知っている。天使達がずっと献身的にヨナタンに尽くしていたかも。それをされるのに相応しい行動をしていたのもだ。

 

四文字の神にさえ、天使はヨナタンとともに立ち向かった。

 

それが全てだと言える。

 

「いやはや興味深い話を聞かせて貰いました。 それでは、またすぐに参ります」

 

「道中お気をつけて」

 

「はい。 それでは」

 

帰りか。

 

幾つかの商談をまとめたようだ。ウーゴを守って帰路につく。ワルターに、帰路でウーゴは話しかけて来た。

 

「以前は失礼しましたね、ワルターどの」

 

「あん? ああ、まああんたはっきり言って不愉快だったからな。 だけど今のあんたはちゃんと仕事をしてる。 だから別に不愉快ではないさ」

 

「ありがとう。 そうそう、妻とも最近は上手く行っているのですよ。 子供が出来て、多少は丸くなったようです」

 

「それは良かったな」

 

実はワルターも近々結婚しようかと考えている。

 

相手は人外ハンターになったばかりの娘だ。年齢は少し下でまだ未熟だが、中々に根性があるいい人外ハンターである。いずれは同じ仕事をしてもらいながら、夫婦をしたいと思っている。

 

子育ては仲魔に任せる事になるかもしれない。

 

実際、今東京では、子育てのために動いている悪魔がかなりいる。特に何種類かの妖精は、子育てのエキスパートとして非常に感謝されているようだ。

 

「貴方たち四人は怖かった。 だけれども、豪傑として認めてはいました。 こうして普通に話せるときが来るとは、驚きではあります」

 

「そうだな。 俺もあんたとは殺し合う未来しか見えなかったからな」

 

「ははは、そうですね。 ガブリエル様が「元に戻った」ことで、私も憑き物が落ちました。 あのままでは、きっとろくでもない死に方をしていたことでしょう」

 

「……」

 

それは、ワルターも同じだ。

 

もしも殿に出会わなかったら。

 

英雄達に出会うことがなかったら。最悪フリンとすら決別していた。それは平行世界の記憶を見て知っている。

 

明けの明星と融合して、魔の権化とかしてしまう。

 

そんな自分にならなくて良かったと、心の底から今のワルターは思っている。

 

ターミナルにウーゴを送った後、サムライ衆と合流。ナバールとガストン。後数名のサムライ衆。

 

この部隊に、最近は人外ハンターの若手にも加わって貰っている。

 

監督役として志村さんに同行を頼むことも多い。

 

一足早く、既にニッカリさんは人外ハンターを引退した。今は若手の育成に注力している。

 

小沢さんも人外ハンターの引退をそろそろするということだ。

 

引退後は、此方は東のミカド国との中継役をするつもりらしい。

 

いずれにしても、ワルターはまだまだ。

 

後続を引率する役割にはなったが、これからがワルターの仕事だ。

 

今日はこれから東京を出て、東の開拓地に作られている神殿に向かう。順番に様々な神の神殿を作って、其処に神々を祀っているのだ。今日は確か、ケツアルコアトル達の神殿だったか。

 

古くは人間の生け贄を要求する神だったらしいが。

 

それは絶対に禁止。

 

以降は、太陽神として祀る事だけを許す。

 

そしてケツアルコアトルもそれを了承している。太陽の恵みを喜ぶ農民達が祀るだろう。

 

司祭と権力は切り離す。

 

これは殿が進めている試作で、ワルターも納得出来る。

 

神殿に出向く。

 

神社とか教会とはまた随分違う造りだ。南米の神々が指導して、土盛りみたいなのを作っている。

 

人々も働いてはいるが、強制労働ではない。神々や悪魔とともに、笑顔も浮かべて働いていた。

 

霊夢と合流。

 

相変わらず厳しい目をした女だ。かわいげのかけらも無い。

 

あれから何回か幻想郷とやらに戻ったようだが、それはそれとして。此方でしばらくは手伝ってくれると明言している。

 

何人か、千早とやらを着込んだ少し年下の女がいる。

 

巫女としての経験を積ませているらしい。

 

霊夢も後続の育成を始めていると言う訳だ。

 

「よう。 数日ぶりだな」

 

「人員をつれて来てくれたわね。 じゃあ、そろそろ分祀をするから、周囲の護衛をよろしく」

 

「任せておきな」

 

神殿がとりあえず形になったので、まずは人員を神殿の領域から出す。

 

そして、人外ハンターとサムライ衆で、悪魔と神々を展開。神殿の領域に、不届きものが入らないように見張りを立てる。立体的にだ。

 

霊夢が大艸というのを護摩段の前で振るう。

 

魔法の言語……日本語で詠唱しているが、これは此処が日本だからだ。

 

空から舞い降りてくるのは、多神連合で何回か見かけたケツアルコアトル。今は、翼ある蛇の姿になっている。

 

それが土盛りに巻き付くと、穏やかな目で其処に鎮座した。

 

昔と違って。

 

今は、神が人の前に姿を見せる。

 

前は恐らくだが、四文字の神の法もあって、神々が人の前に姿を見せることは控えるようにしていたのだろう。

 

それは色々聞く限り。信仰を支配の道具にするためにはそれが都合が良いから。

 

人間が産み出した神々が、人々の前に姿を見せることで。

 

観測されることを避ける為。

 

おかしな話だ。

 

結果、一神教の神が、急速に老いて衰えることにも。

 

その存在が不公正極まりない残忍な統治に便利な道具になり果てることにも。

 

それぞれつながって行ったのだから。

 

ばっと霊夢が大艸を振るう度に、神殿の力が強くなるようだ。勿論、人が集まるように、此処で祈るとどういう利益があるのかを後で説く。

 

それは後付けでもかまわない。

 

ただし、生け贄は禁止だ。

 

今は一人でも人間が必要。どんな人間でも。

 

それなのに、生け贄などで人を消耗するわけにはいかない。それは、ワルターみたいなならず者に一歩踏み込み掛けた人間だからこそ、余計に感じている事だった。

 

霊夢の作業が終わる。

 

以前ほど消耗は小さくないようだ。相変わらず鋭い目をしていて、そして神殿から出てくる。

 

ケツアルコアトルは満足げにその背中を見つめていた。

 

巫女達に、説明をしている。

 

この祝詞はこう言う意味がある。

 

此処でこう舞って、こうする。

 

巫女達は真剣に聞いている。

 

特定の神に狂信を持たなくても良いという信仰の形態は、滅びる前の世界ではとても珍しいものだったらしい。

 

神職達は、今後は何処の神に頼まれても出かけていき。

 

神殿を作り、其処に分祀だとか合祀だとかして。神の家を作る。

 

そこでは、狂信は強要されない。

 

人は神に祈り。

 

それで神は人に応えるだけでいい。

 

他の神を信じることを悪徳とする時代は既に終わった。好きなように、必要な神に祈れば良いし。

 

それで何かしらの利益を受ければ、同じように祈ればいい。

 

自分とは違う神を祈る人間を悪人だとか哀れな存在だとか考える悪しき時代が終わったことで。

 

それが許される時代が来たのだ。

 

日本の信仰の珍しいところであるそうだが。

 

サムライ衆が、戻る巫女達と霊夢を護衛して、東京に戻る。軽く話をしながら、幾つか確認をしておく。

 

「それで有望そうなのはいるのか?」

 

「残念ながらまだまだ最低限の実力しか皆持たないわね。 これから修行して力をつけて貰うしかないわ」

 

「そうか。 巫女というと、あのケルトの……」

 

「あのノゾミって人はかなり凄いけれど、既にダヌー神と半分一体化してる。 そうなると、他の神も祀る事は厳しいわね」

 

そういうものか。

 

とりあえず、東京も少しずつ機能を移し始めている。

 

古くはこの国の機能をあまりにも東京に集中しすぎて、色々と問題を起こしていたともいう。

 

今後は天蓋がどうしてもある東京から、少しずつ移設して。板東全体にその機能を分散することにするのだとフジワラは言っていた。

 

途中で雑多な悪魔が出るが、襲いかかってくる様な奴はほぼいないし。

 

仮にいても、霊夢が一睨みするだけで逃げていく。

 

霊夢は此方に来てから、力を何倍も上げたという。

 

まあそれならば。

 

天照大神が蘇ったことで、何倍も力を落としている悪魔達が、人間に害を為す事は厳しいし。

 

ましてや霊夢を倒すのは無理だろう。

 

シェルターに戻る。

 

霊夢達と別れて、人外ハンターともサムライ衆とも一旦解散。

 

酒を嗜むようになったワルターは、軽くいただく。あまり美味しいものではない。かなり美味しい部類になる酒らしいのだけれども。

 

美味しいとは思えず。

 

ワルターは酔うために飲んでいた。

 

ぼんやりと行き交う人々を見やる。

 

工場では自動化というのが進んでいて、ドクターヘルが作った機械が、作業の一部を代行している。

 

それはそれとして、阿修羅会にいたり、池袋でたくさんの人を西王母のエサにしていたような輩は、工場での単純労働をずっとさせられている。

 

見張りをしているのは、鬼や一本ダタラ達。

 

逆らう事ができようがないので、チンピラどもは不平を言う事も出来ず。残りの一生をああして単純労働をして過ごすしかないと言う事だ。

 

それもまた、良いだろう。

 

悪夢の時代は終わったのだ。

 

今では、工場は彼方此方に増え。

 

環境への影響なども考慮しながら、東京の外にも作る計画が始まっているらしい。

 

幸いそういった影響を抑える仕組みについては、「公害の時代」と言われた頃に散々ノウハウが開発されているらしく。

 

それを利用して、充分に影響を抑えながら作る事が出来るらしい。

 

しばらく酒に酔って、様子をワルターは見る。

 

いずれ、ワルターがこう彼方此方足を運んで、護衛をしなくてもよい時代が来る。悪魔はもっと数を減らす。

 

ただ、悪魔はそれでも一定数が姿を見せて、人に威を示さなければならない。

 

特に悪人は悪魔の手によって無惨な最期を遂げ、更には地獄で罰を受けると言う事を周知しなければならないという話もあった。

 

まあ、それくらいしないと、タヤマみたいなカス野郎がまた出る事になるだろう。

 

そして、そう言った行動を逸脱する悪魔や。更に言うと、それよりもっと厄介な悪人を取り締まるためにも。

 

ワルターの仕事はなくならないだろう。

 

それでかまわない。

 

自室で休む事にする。ガントレットに婚約者から連絡が来ていた。目を細めてその連絡を見やると。ワルターは眠る事にした。








サムライ衆の四人は、それぞれの人生を送り始めます。

その全ての生き方が違うのは、それぞれの多様性というものです。

仲間達が、みな同じ生き方を選ぶ必要などありませんからね。むしろこれから、フリンたち四人には人としての未来があるのだと言えます。








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