炎に包まれ、悪魔によるバイキング会場と化したキチジョージ村。
フリンは同期の三人とともに(ナバールはまだ修行中です)、家族や友のために炎の中に踊り込みます。
その先には今までとは比較にならない悪魔の姿。
それを操る邪悪の姿も。
キチジョージ村の森が燃えている。
そして暴れ狂っているのは間違いなく悪魔だ。その巨大な人型の悪魔を、跳躍したホープ隊長が、真っ二つに断ち割っていた。
水を出す悪魔が数体、森の消火に当たっている。
悪魔は数が多く、それらに対して、第一分隊以外は防戦一方のようだった。
「第十六分隊、現着っ!」
「よし、森の近くは我等でどうにかする! 村全域が燃えている状態だ! 一人でも救助して回るぞ!」
「僕に土地勘があります!」
「分かった、先行しろ! 奈落の中層なみの悪魔がいる! 気を付けろ!」
ホープ隊長の懐刀をしているサムライに指示を受けて、それで有り難い指示を貰った。
とんぼちゃんを振るう。
バロウズが、アドバイスしてくれる。
「マスター。 此処はまずいわ。 アティルト界とつながっていて、完全に魔界化してしまっているわ。 死んだ人間や家畜のマグネタイトを利用して、次々に悪魔が実体化しているわよ」
「どうやら出し惜しみはしていられないようね」
「そのようだ。 出ろ!」
皆が悪魔を呼び出す。
僕も続けて悪魔を呼び出していた。
イザボーは腕力に優れた悪魔を数体。特に巨大な赤い肌を持った大男の悪魔は、頭に角が生えていて大迫力だ。
妖鬼オニだという。
あれがオニか。僕はあれと同じに扱われていたのだと思うと、ちょっと複雑な気分である。
ヨナタンは背中に翼がある武装した悪魔を数体召喚していた。
いずれもが天使のようだ。
天使。
バイブルに記述がある光の国の尖兵か。
一方ワルターが出現させたのはどれもこれも雑多で、下半身が蛇になっている男や、いかにも獰猛そうな獣だ。
僕が魔術支援を行う、どちらかというと弱々しそうな悪魔ばかりを呼ぶのを見て、ワルターが驚く。
「お前の悪魔にしてはなよっとしているな」
「魔術を教えて貰ったんだけれど、特に攻撃系の魔術は僕に相性が悪いみたいだからね。 だから魔術は悪魔に任せる」
「よし、先導してくれ。 全力で左右と背後を守る」
「ありがとうヨナタン! 行くよ!」
辺りの空気がヤバイが、それでもとにかく行く。
末の子は出さない。
いきなりこの状況で、信頼性がない悪魔を出すほど、僕は大胆じゃない。森を突っ切る途中で、子供に襲いかかろうとしている巨大な蛇を見つけた。
僕が連れている悪魔よりも先に天使が躍りかかって、槍で串刺しに。
それでも動いていた蛇を。僕がとんぼちゃんで頭を粉砕して、粉々に打ち砕いていた。
知っている子だ。
わっと僕に飛びついてくる。
「キキーモラ!」
「あいよ」
ヨナタンが呼び出したのは、使用人みたいな格好をした悪魔だ。顔がちょっと鳥みたいになっている。
ヨナタンの指示で、子供をキキーモラが連れて行く。
悪魔に追い回されている男。誰だあいつ。
即座に天使達が、悪魔を貫くが。その男が、いきなり巨大な悪魔に変じて、ヨナタンの天使にかぶりつくと、左右に引きちぎってしまった。
「アークエンジェル!」
「知らない奴は全部悪魔が化けていると見て良さそうだね……」
「くそ、あの鎧の天使、結構強いのにな!」
巨大な口をちいさな手足が支えているという雰囲気のその悪魔が吠え猛る。周囲の悪魔が集まってくる。
僕は深呼吸をすると、「入る」。
集中すると、戦士としての深い領域に到達出来る。
この状態をサムライの間では色々呼んでいるらしいが。僕は単に入るとだけ称する。
後は、ひたすら暴れ狂うだけだ。
でかい奴は右に左にヨナタンとワルターの悪魔を薙ぎ払ったが、その隙に接近した僕が、頭を全力でのとんぼちゃんで粉々に打ち砕いていた。そうなると、すぐにマグネタイトになって消えてしまう。
次。
襲いかかってくる悪魔の中に、僕の知っているおじさんの頭巾を被ったのがいる。多分悪魔化してしまったのだ。
全身が筋肉化していて、おなかの辺りまで口が縦に裂けている。それでも、知っている人間の慣れの果てだと分かってしまう。
「フリン……お前……なのか……」
「ジョシュアおじさん!」
「もう制御が効かない……子供達逃がした……それで精一杯……こ、殺して……」
「……分かった」
横殴りの一撃で、頭を一瞬で粉砕する。
それでももがいているが、僕の悪魔達が火焔魔術を立て続けに叩きこんで、とどめを刺していた。
次。
飛びかかってきた蜘蛛みたいな悪魔。しかも逆さになった赤ん坊が体になっている。そいつの飛びかかりを紙一重で受け流しつつ、そのままフルスイングでとんぼちゃんを叩き込んでやる。
粉々に打ち砕く。
その悪魔が喰らったのか、元はそうだったのか。
ともかく、知っている子の服の切れ端をつけていた。
冷静になれ。
怒りを武にして、悪魔にぶつけろ。
左右後方を、みんなが守ってくれている。僕の悪魔達も、後を考えずに魔術を放って支援してくれている。
どの家も燃えている。
僕の家も。
けらけら笑っているのは、吃驚するほど巨大な悪魔だ。体が蛇で、頭だけが人間の女である。
それが、嘘みたいな遠近感で襲いかかってくる。
森の方で、悪魔の拡散と生存者の保護で、他のサムライ衆は必死の筈。とても手助けになんて来られないだろう。
女の顔が迫ってくるのを、ヨナタンの天使と、イザボーのオニが、総掛かりで防ぐが。文字通り蹴散らされていた。
とんでもない力だ。
ヨナタンとイザボーが、悪魔に習ったらしい魔術を放つが、それでも効いているようには見えない。
だが、その隙に脇に回ったワルターが、悪魔の耳に槍を突っ込む。
それも五月蠅そうに払うと、蛇女は尻尾を振るって、辺りを。
村を丸ごと薙ぎ払って来る。
「カカカー! 此処をあたくしの領土にするのさ! それからどんどん領土を拡げて、この辺りの人間全部食い尽くしてやる!」
「そ」
びっくりするほど、僕も冷たい声が出ていた。
女悪魔が、こめかみを砕かれて、一瞬何が起きたか分からなかっただろう。
こいつには、加減をする気はない。
此奴の歯に、たくさんの人間の肉がこびりついているのを見た。
だから、容赦なんかしない。
薙ぎ払いに来た尻尾を皆の悪魔が総出で止めて。それで、悪魔が痛烈な一撃に悲鳴を上げながらのけぞる。
僕の得意分野は槍、体術、そして剣。
槍の武技というのは、一に突き、二に叩き、そして払う。
一の突き、迅雷。
とんぼちゃんの破壊力を乗せた、渾身速度の突きだ。
人間には使うな。
これを見た時、教えてくれた引退サムライは言った。
人間に使うと、跡形も残らないと。
流石に巨大な女悪魔だ。
それでも死なない。だが、今の打撃、頭蓋骨まで通った。
反撃だとばかりに、ヨナタンとイザボー、ワルターも揃って攻撃魔術を叩き込む。巨体に次々に着弾するが。それでも蛇は体をうねらせ。女の顔が爆ぜ割れて、徐々に蛇そのものになっていく。
かあっと口を開けて、襲いかかってくる。
僕は前に出る。僕を明らかに狙っている蛇。
だが、蛇の悪魔となったということは。
蛇の性質に引きずられる。
これはバロウズに聞いている。
動物を模した悪魔は、動物の性質にどうしても引きずられるのだと。
至近まで蛇の攻撃を引きつけつつ、噛みつきから横殴りの払いに移行した蛇の猛攻を、最初は回避し、次弾はとんぼちゃんを盾にしつつ、受け流す。それでも吹っ飛ばされるが。跳ばされた先は毎日耕していた畑だ。即座に起き上がる。勿論酷く痛いが、動けなくなるほどでもない。
凄まじい叫びとともに、蛇が襲いかかってくる。
多数の魔術を浴びているのに、全然動じている様子がない。
だが、僕は立ち上がると、即座にとんぼちゃんを畑に突き刺して跳躍。畑に蛇が突っ込み、激しく土をはじけ飛ばせる。
これ耕すのに、どれだけの年月がかかり。
みんなが苦労してきたと思っている。
それを後から来て、成果だけむしっていく奴なんぞ、ほんの僅かでも偉いものか。
中空で僕は悪魔を呼び出す。大きな鳥の悪魔だが。その悪魔と足をあわせて、地面に僕を蹴り出す。
襲いかかった僕が、第二の技。
二の突き、驟雨を叩き込む。
これは第一の突きと違い、多段に特化した突きだ。
蛇の首から背中に掛けてを乱打する驟雨。
ぎゃっと、蛇が凄まじい悲鳴を上げて。僕を振り払おうとするが。一瞬早く飛び退く。
そろそろだな。
「みんな、力で此奴を押さえつけて」
「分かりましたわ!」
「このままではじり貧だ、やってやる!」
「おのれ! 何故だ、力が出ぬ!」
喚く蛇の悪魔。
当たり前だ。蛇という動物は、瞬発力に全力を投じている生物だ。持久力は驚くほどない。
こいつが女の頭のままだったら、苦戦したかも知れない。
だけれども、此奴はより力を求めて、全身を蛇にした。その時点で、蛇という生物の特徴である、速度は出ても体力はないという宿痾に掴まれたのだ。
如何に悪魔だろうが。
自然の動物を模した時点で、その動物に引きずられる。
悪魔がどれくらいの昔からいる生物かは分からない。
だが、動物たちは。
おそらく悪魔なんかよりずっと古くからいて。決まった戦略のもと、自然の世界で生きている。
どっちが優れていて、どっちがより修羅場を潜ってきたかなんていうまでもない。
だから悪魔は動物の姿を借りるし。
その力にも引きずられるのだ。
喚く蛇に、僕は渾身の力を込めて、突貫。
まずいと判断したのか、蛇は形態を変えようとしたようだが、遅い。
ごめんね。
畑を大事にしていた、おじさん。さっき死んでしまったジョシュアおじさんに、僕は謝りながら。総力を挙げて、槍の奥義を叩き込む。
三の突き、穿孔。
一撃の破壊力と多段突きをあわせ、一箇所を抉り抜く。
そうすることで、致命傷を与えるのだ。
蛇の体に大穴が開く。
凄まじい断末魔を上げながら、巨体が横倒しになる。
膨大なマグネタイト。そして、消えていく奴の腹の中から、人間だっただろう肉塊が、山のように出てくる。
その中には、見覚えのある。
母ちゃんの手と。父ちゃんの髪の毛の一部があった。
「フリン、すまない。 焼かせて貰うよ」
ヨナタンが指示を出して、肉塊を即座に焼却する。分かっている。そのままにすると、悪魔がマグネタイトを用いてまた実体化する。
僕が連れているピクシーが、全力を振り絞って回復の魔術を掛けてくれる。ヨナタンの天使も同じ事をしてくれる。
マグネタイトもガントレットが吸収。
だけれども、周囲の気配は消えない。
むしろ、どすんと、一気に重くなっていた。
びりびりと来るこの気配。
僕が感じた威圧の中でも最大級のものだ。
武術を覚えようと思った時、先代のサムライ衆の長に鍛錬をつけて貰ったとき以上の凄まじい代物。
悪魔達が明らかに怯えている。
それくらいの凄まじさだ。
「実体化したてでマグネタイトも足りなかった、その上伝承も残っていない異邦の地の出現とはいえ、あのエキドナを倒すとはなかなか大したものねえ」
妖艶な声。
姿を見せたのは、黒い服……いや服なのか。よく分からないが、全身真っ黒の何かに身を包み。
顔さえも黒い兜……だろうか。
よく分からないが、それに身を包んでいる女だ。
イザボーもかなり女らしい(僕との比較)体をしているが、こいつは。
体つきといい声といい、異様な妖艶さで、むせそうである。
何となく、サムライのように感じる。
黒い女サムライとでもいうべきか。
「あんたがリリス?」
「あら、面白い事をいうのね。 どうしてそう思ったのかしら?」
「この出来事を起こしたのはお前だ。 それはすぐに分かった。 さっきのでっかい蛇なんか問題にならない気配。 そんな奴が、わざわざ人間のフリをしてる。 それ以外の可能性なんてない」
「ふふ、可愛いものね。 ちなみに私の人としての名前はユリコよ。 ……貴方は女という以前に戦士なのね。 それも脳筋ってこともなくてクレバーに頭もちゃんと回る。 原始的な快楽に縛られる事を人間らしいと勘違いしているアホが多いのが自称万物の霊長人間なのに。 男に都合がいい女になることを否とした私とは、少し気があいそうだわ」
お前が、それを、僕に言うか。
僕が即座に叩きこんだ渾身の突きを、女は指一本で止めてみせる。
女の後方の地面が、ドカンと吹っ飛んでいた。
くそ。
これほどに力の差があるのか。
今のは、僕の正真正銘、全てを叩き込んだ技だった。それを棒立ちのまま、体の制御だけで破壊力を足から後方の地面へと伝えたのだ。
間違いない、こいつはリリスかどうかはともかくとして。
高位の悪魔だ。
今の僕では、とても勝ち目なんかない相手だ。
それでも僕は引くわけにはいかない。
つづけて払いに行く。
とにかく、一本調子の攻撃は避けろ。誰にもそれは言われている。僕の払い技は、剣術の要素も取り込んでいる。
今の一撃を軽く流されたからって、諦める訳には。
だが、次の瞬間。
女が無粋と言い。
とんぼちゃんが、木っ端みじんに打ち砕かれていた。
何をされたかさえ見えなかった。
払い技に移行できず、地面に落ちる僕。立ち上がる。とんぼちゃんを失っても、僕にはまだ徒手空拳が。
だが、女は僕を、面白そうに腰をかがめて見ていた。
黒い兜の奥に、冷酷そうな目が確かにあった。
「面白いわ貴方。 強くなれば出現したてのエキドナなんかの比じゃない、じっくり力を蓄えて大量のマグネタイトを得ている高位の悪魔とやりあえるかもね」
「……っ」
「其処の三人も見込みありよ。 いいわ、今日は帰ってあげる。 もしも私と戦うつもりなら、奈落を越えて地下にきなさい。 地下にあるケガレビトの里……そこで待っているわ」
辺りに、大量の人影。
分かる、全てがリリムだ。十や二十じゃない。
「ただ、このまま帰るのも芸がないわね。 貴方たち、エサよ。 面白い子達、せめてこのくらいの試練は乗り切ってみせなさい。 ふふふ」
「……っ!」
「凄まじい数だ」
「疲弊しきっているのに!」
僕は立ち上がる。
とんぼちゃんの破片を一瞥。ありがとうとんぼちゃん。絶対に仇は取るからね。そう呟く。
あの女はもういない。
それだけで、どれだけ気が楽か分からない。
それにだ。
あのエキドナと呼ばれていた巨大な悪魔を撃ち倒したことで、力が満ちている。今ならやれそうだ。
無手で構える僕を見て、リリム達がケラケラ笑う。黒い髪の、美しい女だが。末の子とは、まるで違う。
こっちをエサとしか見ていないのが丸わかりである。
笑っているその顔面に、出会い頭に拳を叩き込む。
顔が爆ぜ割れ、消し飛ぶリリムを見て、他のが動揺する中。
好機とみたのだろう。
態勢を立て直した皆が、一斉にリリム達に襲いかかっていた。
奥でイサカルを見つけた。イサカルは全身ぼろぼろで、もう武芸も出来そうにないし、畑仕事も出来そうになかった。
ヨナタンが肩を貸す。イサカルは、涙を流していた。
「何もできなかった。 これからも何もできない」
「回復の魔術を使う。 だから、諦めるな」
「……俺が逃がした子供達、無事かな。 サバトに参加してたんだ。 サバトに毎日人が集まってて、それで俺も参加してたんだけど。 フリンの両親に言われたんだ。 何だか様子がおかしいって。 俺も、サムライになれなくて、どうにかしたいって焦ってた。 だから焦ってて。 でも……焦らなくていいって言って貰って、目が覚めたんだ」
サバトに行くのを止めた。
でも、サバトで悲鳴が上がって。
それで、悪魔がたくさん出てきて。後は地獄だった。そうイサカルは言う。
悪魔から子供を守るだけで精一杯。悪魔には一発でやられてしまった。悪魔がイサカルを殺さなかったのは、後で食べれば良いと思っているのが一目で分かった。そうイサカルは泣く。
泣いていい。
男は泣いてはいけないなんて言葉はあるらしいが、泣いていいんだ。
森にまで戻る。
途中で、彼方此方に隠れていた村の人を、何人か助けられた。でも、僕の両親も、近所のおじさんも。他にもたくさんたくさん死んだ。
イサカルを見て、すぐにホープ隊長が動く。
凄い翼を持つ天使をガントレットから呼び出すと、惜しみなく回復の魔術を使ってくれる。
それで僕は力が抜けた。
へたり込んでしまう。
「凄まじい気配が二度出現したな」
「はい。 フリンがそんな状態なので、僕が報告をします」
「分かった。 手短に聞かせてくれ」
ピクシーと、ワルターの悪魔数体が回復を掛けてくれるが、ちょっとこれはすぐには立ち直れないかも知れない。
でも、立ち直らないと。
ぐっと歯を噛む。
ワルターはどう声を掛けていいのか分からないようだった。イザボーは泣いてくれている。
僕の代わりに泣いてくれているのかも知れない。
「ケガレビトの里か……」
「確かにそう言っていました。 しかしあの武術、もはや人間の歯が立つ領域ではないように思えます」
「そうだな。 気配からしても、私と第一分隊で総力を挙げてもかなわなかっただろう」
応急手当が終わったらしい。
生き残ったキチジョージ村の皆を、森から離れさせるホープ隊長。僕は馬に乗せて貰う。他のサムライが厳しい視線を向けてくるが、あの巨大な悪魔を倒した一番槍だと鋭く叱責すると、不満を隠しながらも黙っていた。
子供達はある程度生き残っている。
だけれども、弟分も妹分も、かなりいなくなっていた。
涙は出てこない。
父ちゃんと母ちゃんの仇は討つことが出来たからだろうか。
安全圏まで出向くと、司祭が何人か来ていた。また、サムライ衆の増援もだ。
「キチジョージ村は魔界になってしまっているわ。 もう人が住むのは、当面は不可能でしょうね」
「分かった。 これから俺……私は司祭達と協議して、生き残りの民が新しく暮らす場所を見繕う。 負傷者にも最大限の保証を約束する。 今回の戦闘で矢面にたった部隊には後で報償も出す。 解散。 城に戻って休むように」
「はっ!」
そのまま解散となった。
僕は、流石に走って城に戻る気にはなれなかった。
助けられた人もたくさんいる。
それでも、皆は助けられなかった。
父ちゃんと母ちゃんもそうだ。
「フリン、後ろに乗って。 隊舎まで送りますわ」
「うん。 ごめん」
「いいのですのよ。 ちょ、苦しい苦しい! いたいいたいいたい! し、死にますわ!」
「ごめん」
イザボーにしがみついたら、ちょっと力が強すぎたみたいだ。
苦笑いすると、力を加減し直す。
こりゃ、もし誰かと結婚しても、そいつが抱き潰されそうだな。ワルターがそんな事をぼやいているのが聞こえた。
ヨナタンが強めに咳払いしたが、僕はいいよと答えておく。
今は軽口でも叩いて貰った方が気が楽だ。
イサカルは怪我をかなり治して貰ったようだが、其処から復帰できるのだろうか。
僕にはなんともいえない。
ただはっきりしているのは。
今は立ち直り。
皆の仇と。
とんぼちゃんの仇を討ち。
そして、あの黒いサムライだかなんだか。恐らくリリスだろう奴を、倒さなければならないという事実だった。
原作だとこれだけやられても、フリンがリリスに対して個人的な怒りをぶつける描写がないんですよね……
あまり原作フリンは周囲と上手く行っていなかったのかも知れませんね。
それはそれとして、イサカルは生存です。大きな犠牲の末に、ですが。