もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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4、混乱

「オラ歩けっ! 歩かないと此奴の餌にするぞ!」

 

わめき散らす禿頭の男。スーツを着込んでいる阿修羅会の下っ端だ。予想通り、人間の収穫を急いでいるらしい。

 

泣いている子供を急かして、無理矢理歩かせている。老人や負傷して動けなくなった者、病人まで容赦なしだ。

 

反吐が出る連中だ。

 

霊夢がいた隠れ里、「幻想郷」にもろくでもない奴はたくさんいた。

 

元々彼処に住んでいる連中はどいつもこいつも一癖あり、支配者層である大妖怪や古代神格「賢者」ですらどいつもこいつもくせ者ばかり。性根が腐っている奴も多かったし、霊夢みたいな武闘派でなければ、人間側の管理者何て務められなかっただろう。

 

あんな事になるまでは、出るつもりもなかった。

 

一度、外に出た事はあった。

 

その時は、まだ外は繁栄していたのを覚えている。

 

この荒廃ぶりは凄まじすぎる。

 

幻想郷と外では時間の流れが違っている事も知っている。

 

霊夢の他にいた巫女も、外の世界では既に何十年も経過しているようだと苦笑いしていたし。

 

それに妖怪側の管理者である賢者の一人は、外の世界の人心荒廃が末期的だと何度もぼやいていたっけ。

 

それでも、これは完全に一線を越えている。

 

阿修羅会のチンピラが従えている悪魔は、どれもそれなりに強いが、勝てない相手ではない。

 

志村が頷く。

 

よし。

 

仕掛ける。

 

志村達が、狙撃銃で一斉に阿修羅会のチンピラを撃ち抜く。一人やり損ねたが、それも即座に第二射が撃ち倒していた。

 

続いて霊夢の番だ。

 

反応した雑多な悪魔に、中空から針の雨を降らせる。

 

霊夢の主力武器の一つである針は、鍛冶が得意だけど力は弱い気が良い妖怪に散々作らせた。外では幾らでも必要だと判断したからだ。

 

実際役に立っている。

 

悪魔全てを貫き、全てを黙らせることに成功。

 

だが、これで終わりでは無い。

 

志村達の動きが明確に良くなっている。

 

すぐに泣いている子供や、腰が抜けて動けない老人を連れてその場を離脱。

 

志村達には告げてあるのだ。

 

大物が混じっていると。

 

倒れているフリをしている阿修羅会のチンピラに声を掛ける。

 

「起きなさい。 死んだふりなのは分かっているわ」

 

「ふん、どうやら話通りの実力のようだのう」

 

「手加減は無用ね。 まあ手加減なんてするつもりもないけれど」

 

「ふふふ、うまそうな娘よ。 赤玉なんて養殖品には飽きていたでな。 丸ごと喰らってくれるわ」

 

チンピラが擬態を解く。

 

側で倒れて動けない病人を、志村が迅速に担いで逃げた。それでいい。志村は軽トラというのに皆を乗せて、デュラハンに引かせて距離を取る。

 

膨れあがる悪魔。

 

まあ、想定内だ。

 

あの銀髪の娘に憑いているおっさん、的確に先を読んでいる。頭が良いことを自慢している幻想郷の住人はなんぼでもいた。そいつらでも舌を巻くだろう。

 

存在は知っていたが、噂以上だ。

 

悪魔が吠え猛る。

 

この東京の悪魔は、体が崩れていることが多い。

 

それは人間が減りすぎたからだ。

 

悪魔の事を知っていたり、神話の伝承を覚えている者が殆ど残っていない。だから、悪魔にも実体化の際に大きな影響が出る。

 

強力な悪魔でもそう。

 

事実アスモデウスも、まるで筋繊維の塊みたいな姿だった。

 

巨大な蜘蛛だか虫だかみたいなのの全身に、口や目がついている異形。大きさは小型のビルほどもある。

 

かき消えると、中空から襲いかかってくるそれ。勢いが凄まじい。体の下に、本命らしい巨大な口がついていた。

 

幻想郷で、侵略者と戦い続けて。

 

「異変」という問題を解決し続けていた頃とは比較にならない程力を上げた今の霊夢でも、簡単に勝てる相手ではない。

 

苛烈な飛びかかりを回避すると、針の雨を降らせる。

 

まずはこいつの正体を確かめてからだ。

 

針が突き刺さるが、決定打にならない。素早く動き回りながら、火焔の魔術を立て続けにぶっ放してくる。

 

あれは敢えて無差別に攻撃して来ているな。志村達を守るように動かせようと企んでいる訳か。

 

残念だったな。

 

志村達に向かった火焔魔術を、そのまま反射する。

 

正確には空間に穴を開けて、戻るようにした。

 

制御を失った魔術をもろに喰らった悪魔が、悲鳴を上げて転がり回る。印を切って、大技に行く。

 

だが、それは擬態だった。

 

地面から伸びてきた触手が、霊夢を包み込みに懸かる。

 

がっと、触手が閉じられていた。

 

「くはははは、空を飛ぼうとこれではどうにもできまい! そのまま締め潰して、肉も汁も全て飲み干してくれるわ!」

 

締め付けてくる触手。というか、すり潰しに来ている。

 

霊夢さん。志村が叫ぶが、問題ない。もっと荒っぽい攻撃を、幻想郷に侵入してきた天使とか言う侵略者どもはやってきた。

 

大勢知り合いも殺された。

 

彼奴が死ぬとはとても思えないと思っていた奴さえも。

 

誓ったのだ。

 

目の前で、二度とこんな外道共に誰か殺させるかと。

 

一瞬だけ力を緩めて、開放。

 

しなやかさを誇る触手が、内側から全部吹っ飛ぶ。

 

悪魔は驚いたようだが、一瞬だけ。形状を変えると、まるで巨大な芋虫のようになって、真上から飲み込みに懸かってくる。

 

だが既に、霊夢は術を編み終えていた。

 

炸裂。

 

奥義、夢想封印。

 

膨大な光が、四つ立て続けに炸裂。悪魔を真正面から焼き尽くす。

 

凄まじい悲鳴を上げながら、悪魔が粉々に砕けつつ、地面に叩き付けられる。その過程で、見えた。

 

正体見たり。

 

再生する前に、その本体を掴む。暴れる本体が、金切り声を上げていた。

 

「そうかそうか、貴方は水精から高じた悪神か。 どうりで触手やら。 あの虫みたいな姿も水棲昆虫というわけね。 妙に火魔術の威力が低かったのも納得いったわ。 あれ、漁り火か何かの具現化でしょう」

 

「は、離せ人間風情が!」

 

「その人間が恐れから産み出した程度の存在で、偉ぶるなっ!」

 

神降ろし。

 

雷の神を体に降ろし、そして全力で雷撃を叩き込む。

 

水中だと雷の威力は落ちるが、地上戦ではそうもいかない。しかも水棲悪魔にとって、雷は天敵だ。

 

炸裂した超高圧の雷が、悪魔を焼き尽くす。

 

断末魔すら上がらない。

 

消えていく悪魔。

 

正体はどうやら東南アジアの邪悪な水の神であったようだ。いずれにしても、その存在は、消えていったが。

 

埃を払う。

 

神降ろしで防御を上げていた事もある。触手ですり潰されそうにはなったが、ダメージは体にも衣服にもない。消耗はしたが、精神力に限る。

 

「行くわよあんたたち。 他にもさらわれた人がいるだろうし、助ける」

 

「はっ! 水島、柳、悪魔を展開してその場で待機! 俺と霊夢さんで他を救助に向かう!」

 

「イエッサ!」

 

「行きましょう。 デュラハンも残しますし、目立つ行動をしなければ短時間なら大丈夫の筈です」

 

頷くと、急ぐ。

 

そうして更に八人を救助した。

 

数人を助けるために戦闘も避けられない。

 

とにかく、日本神話の重要神格があらかた封印されてしまっているのが痛い。このままでは神降ろしの力も十全に発揮できない。

 

外に打って出るために、実戦で鍛えた神降ろしの力だが。

 

幻想郷にいたときよりも若干墜ちているほどだ。

 

とにかく、封印されている神々をどうにかして復活させないとまずいだろう。

 

それに、少しでも生きている人間を助けて、悪魔の凶刃から守らなければならない。

 

やる事が多い。

 

せめてもう一つくらい別働隊があれば話が違うのだが。

 

ただ、今は。

 

出来る事を順番にやらなければならない。

 

幻想郷のように、此処も侵略者に踏み荒らされている。

 

これ以上は、やらせてはならなかった。

 

 

 

(続)








三章は此処までになります。

本作では原作よりも数年分加齢している霊夢。その分強くなっていますが、その中でも最大の強化点が神降ろしの純粋な技量上昇です。

例えば一章の対アドラメレクでは、体術を使用するときに天手力雄神を降ろしています。日本神話の天の岩戸事件で活躍した剛力神ですね。原作の霊夢もかなりの体術の使い手なのですが、それでも強力な悪魔には流石に体術ではかなわない。本作ではそれを剛力神を降ろす事で何倍にもパワーアップさせて、強力な悪魔とやり合えるように基礎能力を補っています。

しかしながら真女神転生4の東京では、本作でも……天照大神を初めとする日本神話の主要な神が封印されてしまっているため、力を限定的にしか発揮できません。

霊夢はそもそもとして結界のスペシャリストであり、豊富な戦闘経験を積んでいる強者ではあるのですが。

本領発揮は、封印されている日本神話系の神格を封印から開放してから……になります。




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