もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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キチジョージ村の惨劇が終わり、東のミカド国では対策が決められました。

奈落の底にある「ケガレビトの里」に来いと言い残した「黒いサムライ」を追う事に正式に決まったのです。

こうしてフリン達は仇敵を追う事になります。

なお本作では、原作より遙かに強くフリンは「黒いサムライ」ことリリスを憎んでいます。

考えて見れば、原作でも見た瞬間に襲いかかるくらい憎んでいてもおかしくないんですよね……



それはそれとして、サムライ衆が大仕事にかかるまえに。

正体は一体誰なんだー(棒)のあの人が、大掃除します。原作でも普段から定期的にきっちり大掃除してくれよ……と思わされるあの人です。







勇猛なる門番
序、奈落の奥へ


リリスである可能性が極めて高い黒いサムライ。それを追うようにと、正式に指示が降った。

 

ただ、サムライ衆の間でも意見が分かれた。

 

バロウズはサムライ衆のガントレットの全てに住んでいて、情報を共有しているらしいのだけれども。

 

バロウズ経由でユリコと名乗ったリリスらしき黒いサムライの声を再生しても、なお反発するサムライがいたのだ。

 

特にラグジュアリーズ出身のサムライは、明確に反発を示していた。

 

アキュラ王の像が飾られた広場。

 

其処で、サムライ衆が集められて。今回の話がされている。

 

そしてその場は、荒れていた。

 

「何処の出とも知らぬサムライが、武勲を上げただの敵の首魁の言葉を聞いただの。 そのようなこと、信用できるか!」

 

声高に叫んでいるのは、かなり古株のサムライだ。

 

ホープ隊長も無視出来ない程の影響力を持っているサムライらしく、苦々しそうにしている。

 

「だいたいカジュアリティーズなど家畜も同じ! 奴らの村が焼かれたところで、再建すればいいであろう!」

 

同意の声が上がる。

 

ワルターが苛立ったようで前に出ようとするが、僕が止めた。

 

「おい、いいのか」

 

「相手にしなくていい。 大した実力もないのに地位だけ上がったサムライなんか、どうでもいいよ」

 

「……」

 

見れば分かる。

 

あれは、僕が見てきた引退サムライの誰よりも劣る。はっきりいって、今の僕でもあっさり殺せる程度のサムライだ。連れている悪魔だって大した実力ではないだろう。コネだったか。そういうので成り上がり。偉そうにしている。取り巻きがたくさんいて、それで偉い。

 

それだけの奴だ。

 

あの手の輩は、コネも実力のうちだとか言っているらしいが。

 

悪魔との戦闘も一切しないで後ろから見ているだけ。

 

酒場での仕事も、ラグジュアリーズ向けのだけやっているらしく。今から引退後のコネ作りに余念がないらしい。

 

しかもラグジュアリーズの大物や、王様の家族とかとも縁があるらしく。

 

ホープ隊長も迂闊に排除できないそうだった。

 

だが。空気が変わる。

 

白い法衣に身を包んだ女性の司祭。いや、司教だったかなんだか知らないけど、とにかくお偉いさんだ。

 

ホープ隊長が、一礼する。

 

顔を真っ赤にして扇動していたラグジュアリーズ出身のサムライも、その顔を見ると青ざめて黙り込んでいた。

 

ギャビーというらしい人である。

 

Kという酒場のマスターに聞いたのだけれど。とにかく謎が多い人物だそうだ。

 

以前気のせいかもしれないが、Kという人が……今は五十を過ぎているのだが。その人がまだ若い頃に、見た事があるのだという。今とまったく変わらない姿のギャビーを。

 

冷徹な目。

 

近寄りがたい雰囲気。

 

それでいながら、人間離れした美貌。瞳は氷のように冷たい青さ。髪の毛はどうも黒のようだが、法衣を被っているので見えない。

 

「ギャビー殿」

 

「何やら不満があるサムライがいるようですね」

 

「これは、その……」

 

「スクロールを」

 

配下らしい司祭が頷くと、ギャビーに跪いて差し出す。

 

側で見て分かったが、とんでもなく強いぞこの人。司祭だか司教だか知らないが、リリスと同等か、それ以上じゃないのか。

 

いや、人なのか。

 

僕はちょっとだけ身構えてしまう。

 

力がついてきたから、余計に分かるのだ。これは尋常な存在ではないのだと。

 

「勅命である。 サムライ衆は東のミカド国を騒がす悪魔を倒し民を守れ。 これはカジュアリティーズであろうとラグジュアリーズであろうと関係無く守る事を意味する。 そして精鋭を募り奈落の突破を目指せ。 その下にあるケガレビトの里に向かい、黒いサムライを捕らえるのだ」

 

「はっ」

 

「それともう一つ勅命を受けている」

 

ギャビーが、数名のサムライを呼ぶ。

 

青ざめたまま呼び出されたサムライが、跪く。それらの中には、さっきまで喚いていたラグジュアリーズ出身のサムライと、その取り巻きが全員入っていた。いずれも名家だかの出身者らしい。

 

「そなた等は解任だ。 サムライとしての技量著しく低く、それでありながら蜘蛛のように権力の糸ばかりサムライ衆の中に張り巡らせ、同僚の足を引っ張り、サムライ衆にもこの国の民にも貢献しないこと甚だしい。 故にサムライとしての任を今この場で解く。 即座に装備を返上して家に戻れ。 以降の沙汰は追ってする」

 

ひっと声をラグジュアリーズ出身のサムライが上げた。

 

申し開きをしようとしたようだが、ギャビーの眼光が凄まじく、項垂れるばかりである。

 

あれは、ちょっと彼奴ら程度では逆らえないだろうな。

 

そう思って、僕は何も言えなかった。

 

ギャビーはまるで王様。

 

いや、それ以上の権力を持っているようだ。

 

ホープ隊長はとても強い人なのに、それがまるで逆らえる気すらしない。実際の戦闘力の高さも分かる。

 

一体この人は、何者なのか。

 

ギャビーは解任したサムライをつれて行かせた後、サムライ衆を見回しながら言う。

 

「悪魔がこの東のミカド国に攻めてきたのは、千五百年前のケガレビトの襲来以来の危機である。 それまでも少数が現れる事はあったが、今回のような大規模な攻撃は奴らによる極めて危険な攻勢の予兆だ。 サムライ衆には改革を行う。 あのような無能者は今後サムライ衆に居場所などないと知れ。 またラグジュアリーズの名家というものにも今後は改革の鉈を振るう。 名家であろうが名門であろうが、東のミカド国を私物化し、或いは権力を貪り豚のように肥え太る……貴族として見苦しきものは、いずれ天罰を受けると心得よ」

 

まだ、この中にはラグジュアリーズ出身のサムライだって多いのだ。

 

だから、敢えてそう釘を刺しているのだろう。

 

ギャビーが行くと、空気が露骨に変わった。

 

小役人めいたいかにもな阿諛追従している司祭も後についていたが。そんなのはどうでもいい。

 

咳払いすると、ホープが隊の再編制を始める。

 

あの追放されたラグジュアリーズのサムライはかなり高い地位にいたのだが、代わりに第一分隊のサムライが抜擢される。見るからに歴戦のサムライだ。実力はお墨付きだろうし、この方が良いはずだ。

 

更に、幾つかの分隊が指示される。

 

その中には、第十六分隊もあった。

 

「お前達は奈落の攻略に重点を置きつつ、隊舎で問題がある場合に備えよ。 更に、奈落の深層に辿りついた場合は一度戻れ。 奈落の深層には、言い伝えられているのだが主が存在している」

 

「主でありますか」

 

「ああ。 極めて強力な悪魔だ。 今までの長いサムライ衆の歴史で奴に挑んだサムライは数十名。 その全てが返り討ちにあっている。 一度は小隊単位で挑んで返り討ちにあった程だ。 そのため奴は禁忌とされていてな」

 

そうか。

 

だから到達までしたら一度戻れと。

 

更にホープ隊長は言う。

 

ケガレビトについて。

 

アキュラ王の石像の下にある石碑。それに記載があるという。

 

古くに悪魔が攻めてきた。

 

悪魔を率いていたのはケガレビトだった。

 

それを勇敢なるアキュラ王が退け、封印した。

 

そう記載されている。

 

そうなると、奈落の下にはケガレビトの里があるという話だったが。その奈落の奥にいる悪魔は、ケガレビトの里を守っているのだろうか。

 

だとすると、ケガレビトとは何者だ。

 

「危険な任務になる。 質問はあるか」

 

「はい」

 

僕は挙手。

 

他のサムライがあまり好意的ではない視線を向けてくる。あのギャビーという恐ろしい女司祭だか司教だかを怖れてはいても、不満はあるということなのだろう。

 

だが、ホープ隊長は頷く。

 

「何か」

 

「ケガレビトって一体何なんですか。 奈落の下の世界って何なんでしょう」

 

「それは分かっていない。 悪魔に話を聞いても、どうにも要領を得なくてな」

 

「要領を得ない、ですか」

 

頷くホープ隊長。

 

優れた悪魔の中には、若手のサムライに稽古をつけるような者がいる。例えばホープ隊長が従えている幻魔クーフーリンは、若手のサムライに優れた武芸を仕込んでいて、何代にも渡ってサムライ衆の長に引き継がれているそうだ。

 

クーフーリンの話によると、奈落の下には「トウキョウ」と呼ばれる「地獄」があり、其処にはケガレビトと呼ばれる古き時代の人々が暮らしているという。

 

今度はヨナタンが挙手する。

 

「古き時代、ですか」

 

「そうらしい。 少ない情報を総合すると、魔法の言葉を用いて会話が可能ではあるらしい。 また我々と生物的にも同じ人だそうだ」

 

「そうなると、悪魔を従える力を持っているのですか」

 

「恐らくはな。 ただアキュラ王の伝承は、細かい部分で誤魔化されている箇所が多く、特にケガレビトについては謎が多い。 何故にこの東のミカド国に攻め上がって来たのかも良く分からん」

 

それは確かにそうだ。

 

余程貧しい土地で生活しているのか、それとも。

 

更に分からない事があるという。

 

ホープ隊長が案内してくれたのは、ターミナルという施設だ。

 

そこはあまりにも異質だ。

 

広い空間で、ドーム状になっている。中央にはなんだかよく分からない台があって、バロウズが登録すると言ってくれるが。

 

何を登録しているのか、よく分からない。

 

他にもこういう場所はあるのだろうか。バロウズに聞いても、他を登録したら機能を説明するというだけだ。

 

それから装備の支給が行われる。

 

僕には槍が渡された。かなり鋭い、良い感じの槍だ。ただちょっと僕には軽いかも知れない。

 

「良い槍ですね」

 

「だが少し軽いか」

 

流石隊長だ。言わなくても即座に見抜く。

 

こう言う人を、達人と言う。僕は達人は尊敬する。相手がどんな俗物でもそれは同じだし。ホープ隊長みたいな立派な人はなおさらだ。

 

「はい。 長さ的には丁度良いんですけれど」

 

「鍛冶師を紹介する。 しばらくはそれで凌げ。 あの棍棒のような槍を気に入っていたのなら、それに近い重さの槍が良いだろうな」

 

ホープ隊長は話が分かるな。

 

ともかく、此処からは奈落への挑戦だ。

 

皆で一度集まる。

 

ワルターはもうサムライの隊服を着崩して筋肉を見せているが。

 

それはそれとして、任務達成については真面目なので、サムライ衆の中でもワルターに対する単なる悪口は聞いても低評価は聞かない。そんなワルターは、かなり重厚な大剣を貰ったようだ。確かにワルターにはあっていそうだ。

 

ヨナタンはかなりの名剣と分かる鋭そうな剣を。イザボーは白鳥のような優雅な細剣を支給されたようである。

 

ただ、いずれも支給品で、必要がなくなったら返さなければならない。

 

幾つかの説明を受けるが、奈落の最深層までは、悪魔がかなりの宝物を蓄えているらしい。

 

それらを見つけたら、自分のものにして良いそうだが。

 

勿論宝をエサに罠を張っている悪魔も多いそうだ。

 

「とりあえず隊長はフリンでいいか」

 

「別に僕でも良いけど、意外だな。 ワルター、やりたがると思ったよ」

 

「いや、俺はそういうのはガラじゃなくてな。 単に暴れるのがいい」

 

「まあ。 別に良いですけれど、少々野蛮でしてよ」

 

イザボーがたしなめるが、嫌悪はない。

 

ラグジュアリーズのサムライ……特に先ほどギャビーという女司祭だかにつれて行かれた連中は、僕やワルターに嫌悪と侮蔑混じりの悪口を半ば堂々と吐き散らしていたから。差がはっきり分かる。

 

「僕もフリンがリーダーで異存はない。 実力的にも現時点ではフリンが良いだろう。 それに、戦闘時は冷静に頭が回るのも、ずっと側で見ているしね」

 

「わたくしも異議なしですわ。 それでは、リーダー。 どうしまして?」

 

「……とりあえず鍛冶師の所に行ってから、すぐに奈落に潜る。 鍛冶師はこのお城の中の専属の人らしいから、僕一人で行ってくるよ。 皆は他の消耗品を整えるなり、準備を進めておいて」

 

「任せておきな。 何、着服なんてしねえよ」

 

悪そうにワルターが笑って、洒落になっていないとイザボーがたしなめる。

 

他の班は、それぞれ行動を開始。

 

実際問題、権力闘争を悪魔討伐より熱心にやっていた連中が消えたことで、随分とサムライ全体の士気が上がったようである。

 

ああいう連中は実力があればまだ良いのだろうが。それもないとなると、確かに害にしかならない。

 

だがギャビーというあの冷徹そうな女司祭、どうして今まであれらを放置しておいたのだろうと疑問は浮かぶ。

 

あれほどの権力があり、実力もあるのなら。

 

あんな連中が蔓延る前に、駆除してくれれば良かったのに。

 

鍛冶師の所には、数人の逞しい男が出入りしていて。そして、鍛冶師の長は、意外にも温厚そうな初老の男性だった。

 

槍について話をする。

 

重くて破壊力が出る短槍がいい。

 

そういう話をすると、幾つかの槍を見せてくれる。振るってみて欲しいと言われたので、外で槍を使ってみせる。

 

本職だ。

 

すぐに僕が欲しがっている要件を、それで見抜いたらしかった。

 

「おサムライ様。 それではこの槍の長さで、この刃をつけ、この重さで如何でしょうか」

 

「どれ、お……」

 

さっと鍛冶師が、幾つかの部品を組みあわせて槍を作ってくれる。

 

装飾が施された華美な剣や、刀といわれる作成難易度が高い剣の一種を好むサムライが多いらしいのだが。槍の実用性についてもこの人は理解している。

 

勿論僕も剣は仕込まれている。だが今は槍がいい。

 

僕が渡された槍は、急あしらえで実戦では使えないが。刃は下手な剣以上にあり、重しが何カ所かについていて。

 

それが故に破壊力も出るし。

 

僕の無駄にある剛力でも、簡単には壊れないし、振るいやすい。

 

「いいね。 これを完成させてくれる?」

 

「分かりました。 しかしおサムライ様の私有物ではなく、隊全体の持ち物としてお作りいたします」

 

「それでかまわないよ。 出世したら、僕専属の武器って事に出来るのかな」

 

「それはもちろんでございます。 これほどの剛槍、恐らく現時点では隊長のホープ様と、第一分隊にいる数名のおサムライ様、そしてあなた様以外には振るう事も出来ますまい」

 

そうか、それは嬉しい言葉だな。

 

槍は一週間ほどで出来るそうだ。

 

後は近接戦用に小刀も欲しいが、それについては別に良いか。小刀なんぞ使うよりは、僕は無手のが得意だ。別にわざわざ用意するまでもない。インファイト用の武器だったら刀でいい。

 

集合地点に行く。

 

「おうフリン。 どうだった、槍は」

 

「凄腕の鍛冶師だね。 いいの作ってくれそう」

 

「よかったじゃねえか!」

 

「君の腕は本物だ。 それに見合った武器が加われば、奈落の奥にいる恐ろしい悪魔にも、手が届くかも知れないね」

 

ヨナタンはそう言ってくれるが。

 

僕は自分が歴代最強のサムライだなんて思っていない。

 

現時点でもホープ隊長は、僕ら四人を一人で相手出来るくらい強いし。

 

今までにもその恐ろしい悪魔に挑んだサムライに、今の僕より強い奴がいなかったとは思えないのだ。

 

だから、奈落を潜りながら、力をつける。

 

それに、である。

 

非好意的な視線。

 

それにひそひそ話しているサムライ。

 

あれは悪巧みの声だ。

 

項垂れている様子なのは、ナバールか。まだ新米として鍛えられていると聞いていたけれども。

 

成長速度は人それぞれ。

 

僕も槍の技の幾つかを覚えるとき、随分と苦労させられた記憶がある。

 

だから中々芽が出ない相手のことを、馬鹿にするつもりはさらさらない。

 

「ナバールも誘って良い?」

 

「どうしたんだフリン。 あんな奴を誘うのか」

 

「あれ。 悪い奴に色々吹き込まれてる。 きっとそのままにしておくと、足を踏み外すと思う」

 

「そうね。 昔からナバールは、意思が弱くてよ。 貴族の権威にすがらないと、何もできない殿方でしたわ。 自分と同格以上のラグジュアリーズの家のサムライに悪さを誘われたら、断れないでしょうし。 それにフリンやワルターへの嫉妬心もありましてよ」

 

浅層の安全確保くらいだったら良いだろう。

 

ヨナタンが頷くと、ホープ隊長に話をつけに行ってくれる。ラグジュアリーズの出なのに、まるでそういうのを嫌がらない。

 

与太者の思考だと。率先して何か動く人間は、自分より格下というのがあるらしい。皮肉な話だが、ラグジュアリーズの上層部も多分それと同じ思考回路を持っている。

 

ヨナタンは違う。

 

それだけで立派だ。

 

ヨナタンが話をつけてきてくれると、イザボーがナバールを引っ張って来てくれた。

 

ナバールは奈落で一緒に鍛錬だと聞くと、震え上がったが。

 

イザボーが一喝する。

 

「何を吹き込まれていたかわかりませんけれど、そのままだと貴方は一生意気地なしでしてよ。 フリンにも絶対に勝てませんわ。 それにあんな殿方達と一緒にいても、足を踏み外して、要領が悪い貴方なんて地獄に落ちる未来しかありませんわ。 それでよろしくて?」

 

「うっ……」

 

内心では分かっていたのだろう。

 

ナバールは唇を噛みしめて、悲しそうに俯く。

 

成人の儀でナバールを見ていたちいさな子。あれは弟ではないかと思うが。きっと、家族への期待にも応えたいのだ。

 

それはそれと、僕の方も恨めしそうにナバールは見る。

 

きっと此処が転換点なんだ。

 

「わ、分かった。 でも私は、あんまり力にはなれない……と思う」

 

「それを理解していれば十分だ。 俺たちが手伝う。 悪魔を倒すと、なんだか力が上がるんだ。 強い悪魔ほど顕著でな。 俺たちが守ってやるから、勇気出して強い悪魔と戦ってれば、あんなにやついているひょろっちいラグジュアリーズなんかすぐに越えられるさ」

 

ナバールは本当だろうかという目で見ていたが。しかし、此処で腐るよりはマシだろうと思ったのだろう。

 

やがて、頷いていた。

 

かくして奈落に僕達は向かう。

 

あれだけの事をしでかした外道を追い詰め、叩き伏せるために。

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