原作のトラウマボス、ミノタウルス戦です。
異次元の火力に三択クイズに失敗すると弱体化と、これでもかと初見殺しに懸かってくる難敵ですね。今後のボス戦が如何に厳しいかと言う事を叩き込んでくるボスでもあります。ただ、此処で折れてしまった人も少なくは無さそうです……。
本作でもミノタウルスはかなりの難敵として立ちはだかります。
同時に誇り高い武人としても。
完成した槍を受け取る。
申し分ない。
軽く中庭で振るう。鍛冶師は僕に対して腰が低いけれど、僕の演舞を厳しい目でずっと見ていた。
本職だ。
生半可なサムライに、自分の作った武器を使わせたくないのだろう。
幾つかの技を試す。
突き技しかリリスにはたたき込めなかった。
払い技や打撃技も次に戦う時にはたたき込むつもりだ。
槍の歩先は下手な刀よりも大きく。
槍そのものは下手な子供よりも重い。
全身の筋肉を制御、姿勢を制御、重心の移動を制御。全ての力を、攻撃時に集約し。時に陽動も混ぜながら、攻撃時には一点にたたき込む。
しばらく演舞を続けて。
それで僕は満足していた。
「いいね。 ありがとう。 最高の槍だよ」
「おサムライ様、それでその槍にはなんと名付けますか」
「ええと……どうしようかな」
「武器には銘を入れてそれで魂が宿ります。 おサムライ様の武技に相応しい槍にするには、銘をいれなければなりません」
覚えがある。
リリスに殺されてしまったとんぼちゃんも、名前をつけてからぐっと馴染んだ。
そうか、名前をつけるのはそんなに大事な事なのか。
確かに僕にもそうだと思えてきた。
「僕が名前をつけないと駄目かな。 愛用の武器を失ったばかりで、ちょっと心苦しいんだ」
「それでは私めが名付けましょう」
「よろしくお願いするよ」
「それでは牙の槍と名付けさせていただきます。 悪魔を食い千切る牙という意味でございます」
牙の槍か。
まあ、僕としてはなんでもいいけれど。
確かにそれで、この槍に大きな意味が生じたように思う。
よろしくね、牙の槍。
そう呟くと、それで力が宿ったように思えた。
ここ数日で、仲魔を更に強くして、体も鍛えた。二度、領域を作っている悪魔を撃ち倒した。
それくらい、あの辺りには危険な悪魔がいるということだ。
それにも関わらず、主らしい悪魔の辺りにまでいくと、悪魔がぴたりといなくなる。
要するに、そういった悪魔でも。
その主らしき悪魔には、手を出したくないということなのだろう。
皆の所に戻る。
ごっつい槍である新しい僕の相棒を見て、ワルターがぼやく。
「まーたスゲエのを貰ったな。 前の棍棒より殺意が高いじゃねえか」
「穂先だけでもわたくしの細剣より大きいですわ」
「でも、ちゃんと使えるんだろう。 君の剛力は間近で見ている。 頼りにさせて貰うよ」
ヨナタンはちゃんとそうやって言ってくれるな。
頷くと、僕は咳払い。
今日、仕掛ける事は既に告げてある。
皆、話を聞いて、頷いていた。
「ホープ隊長の許可は貰ってある。 今日、僕達第十六分隊は奴に挑む。 気配を感じる限り、キチジョージ村で戦ったあのでかい蛇の悪魔と同等かそれ以上だと思う。 以前は相手が蛇の性質を知りもしないのに蛇になったから勝てた。 今度はそうはいかないだろうね」
「ああ、分かっている」
「流石に武者震いがしますわ」
「それで作戦はあるのか」
作戦と言える程のものはない。
そもそも相手がどんな悪魔かも分からないのだ。
ホープ隊長の話によると、奴の住処は一方通行の扉の奥にある大きな部屋らしい、ということしか分からない。
決死隊が十数年前に其処へ入って、バロウズ経由で連絡してきたことで、それが分かっているそうだ。
勿論決死隊は帰らなかった。
つまり、一度入ったら、戻れないと言う事である。
「敵がどういう悪魔かも分からない。 打撃が得意なのか、魔術が得意なのかも分からない。 今まで分かっている事は少ないからね。 だから、何でも対応できるようにしていくしかないんだ」
「なるほどな。 それで皆の悪魔を充実させたと」
「そうなる」
僕は、悪魔に魔術を幾つか教わっている。
どれも僕自身の継戦能力を上げるものだ。体力回復も傷を回復するものもあるし。最近になって、やっと僕自身の力を底上げするものも覚え始めた。
筋力を更に引き上げるものだ。
悪魔は信頼関係を構築すると、比較的気前よくそういう技を教えてくれる。
武技については、今の時点ではいい。
ホープ隊長が従えているクーフーリンなんかが使っている槍の技は凄いと思うけれど。今まで僕が遭遇したり、悪魔合体で作った悪魔には、僕が学べる技は存在しなかった。引退した老サムライ達の技の方が凄かったくらいだ。
ただ老サムライ達も、現役時代に従えていた悪魔から技を習った可能性はある。
それもあって、いずれはそういった悪魔に教えを請うことになるかもしれない。
「今までサムライ衆が突破出来なかった相手だよ。 出来ればホープ隊長にも来て欲しいけれど、そうもいかないね……」
「確かにあの隊長がやられちまったら、東のミカド国を守るサムライがいなくなるな。 まだサバトが行われていて、彼方此方で悪魔化する人が出ているらしいからな」
悲しい話だ。
そもそも、カジュアリティーズから知恵と本を取りあげるというのがおかしいのではないのだろうかと、僕は考えている。
そんな歪んだことをしていたから、サバトは流行るし。
それに悪魔化も起きるのではあるまいか。
実際、本が身近にあるラグジュアリーズにそんな現象は起きていないのである。
だとすれば、本をもっと普及させるべきで。
それをしていない東のミカド国の方に問題があるとしか思えない。
ただ一つ、良い事をこの間聞いた。
イサカルが、前ほどとはいかないにしても、どうにか畑仕事くらいは出来そうなのだと言う。
手当てが早かったおかげで、手足の全てを失わずに済んだのだ。ただ手足の指を合計三本失ったそうだが。それでも、畑仕事くらいなら復帰できるらしい。
以降は新キチジョージ村で、畑仕事に専念するという。
それを聞くだけで、僕は胸をなで下ろす気分だ。
頬を叩いて気合を入れる。
この面子なら、いける。
僕は、皆に号令を掛けていた。
「よし、行くよ。 サバトだかなんだか知らないけれど、キチジョージ村や真面目に暮らしている人達を弄んで殺した奴を、ぶっ潰しに。 そのためには、奈落の門番を押し通らせて貰う!」
「おおっ!」
皆の気合が入る。
そして、全員で奈落の奥へと進む。
途中までに出くわす悪魔は、既に完全に雑魚だ。だが、ここしばらく奈落で鍛えて理解したのだが。
やはり上層まで、強い悪魔が上がってくることがある。
数度そういう場違いな悪魔に遭遇し。
一度は、あの領域アルラウネと同格の悪魔に、いきなり領域に閉じ込められ、襲われた。撃退は出来たが、危なかった。
上層に戻って来て油断している所を襲いに来る。
そういう狡猾な奴はいるということだ。
元々悪魔は、契約をする時に思い知らされてはいるが、極めて狡猾な存在なのである。
だとすれば、戦術でも狡猾なのは分かりきっていた。
いずれにしても、強力な悪魔と遭遇し、消耗した場合は戻って仕切り直す。それも事前に決めてある。
門番の所にまで辿りついて、消耗が許容範囲内だったら仕掛ける。
それも事前に決めてある話だった。
慎重に悪魔を倒しながら、奥へ進む。降参したり、興味を持ってくれたりする悪魔は、仲間に加えておく。
バロウズ曰く、悪魔の情報はバロウズ全体で共有しているらしく。ただし契約したサムライの所にしか悪魔は呼び出せないそうだ。
情報生命体というのは、融通が利く反面。
そういう所では頑固だったりする。
やがて、岩が剥き出しになっている洞窟に出る。滝が凄まじい勢いで流れていて、水たまりになっている。
ちょっとした洞窟だ。
下から風が吹いてきている。
下には大穴が開いていて、底が見えない。手をかざしていると、ヨナタンが言う。
「縄で下に降りるのは無謀だ。 いくら君でも、悪魔に襲われたら助からないぞ」
「うん、分かってる。 この辺りは、板かなにか敷いた方がいいかな。 落ちたら危ないし」
「そういうのは悪魔を一掃して、安全を確保してからになるんじゃねえのかな。 そもそも悪魔が減る気配もないけどな」
「そうね。 一体この悪魔達、どこから湧いて出ているのかしらね」
足場が悪い。滑る。
所々に、先達が作ってくれたらしい縄橋がある。勿論足場は悪く、そこでの戦闘は避けなければならない。
空を飛べる悪魔を多数常に展開して、転落事故に備えるしかない。
何度か足を滑らせかける皆。
イザボーはヒールという踵が高い靴を最初の内は履いていたのだが。最近はそれを止めている。
それくらい、余裕がなくなってきているのだ。
とりあえず、気配の至近までの道を確保。
帰り道までを考えると、相手の実力を測りたいところだけれども、まあそうもいかないだろう。
無言で頷きあう。
幸い、此処まで、領域を張って来るような悪魔とは遭遇していない。少なくとも、持ち込んだ傷薬で対処できる範囲内だ。
扉がある。
僕が手を掛けると、簡単すぎるほどに開いた。
内部には広い空洞だ。そして、いつの間にか、内部にいた。魔術によるトラップだな。いや、領域に閉じ込められたのだ。
ヨナタンが冷静に連絡を入れている。
「ホープ隊長、奈落最深部に到達。 接敵しました。 扉は罠で、触ると相手領域に閉じ込められるようです」
「了解した。 悪魔は」
「今だ姿を見せていません。 いや、これは……」
僕も気付いた。
これは、石造りの迷宮だ。
岩肌が剥き出しになったと思ったら、また石造りの迷宮。これは、一体どういう事なのだろう。
奥から、足音がする。
ヨナタンが連絡を入れている。
奥から現れたのは、牛頭の毛むくじゃらの巨体だ。手には巨大な斧を手にしていて、髑髏で作ったネックレスをぶら下げている。
それだけじゃない。
鼻から口に掛けてが、髑髏を思わせる造詣だ。
「天使どもかと思ったら、サムライか。 この先はお前達の領域ではない。 足を踏み入れるべきではないとだけ言っておく」
「喋った!」
「我は邪鬼ミノタウルス。 そなたらがアキュラと今は呼んでいる者に、此処の守護を任された存在だ。 つまりはここから先に誰も通すなと言われている。 何故、禁忌となっているここに来た」
意外に話が出来る奴かも知れないが。
こっちまでビリビリ来る殺気も本物だ。
こいつ、あの不完全体のエキドナとかいう奴より強い。
まだ感じ取れていた気配は、抑えていたと言う事だ。
それに、アキュラ王の手持ちだって。
ちょっとその辺りは詳しく聞きたいが、今はそれも厳しいか。
咳払いすると、一つずつ話す。
「僕の故郷のキチジョージ村を、悪魔が滅ぼした。 人が悪魔になって、周りを襲ったんだ」
「なんだと。 そうか、此処を経由せずに上へ行き来する能力を持つ輩の仕業か。 最低でも魔王かそれに近い実力の悪魔の仕業であろうな」
「僕は其奴に、ケガレビトの里まで来いって言われた。 僕は彼奴をブッ殺さないといけない。 それを防ごうというなら、僕はお前を倒さなければならない」
「剛毅な奴よ。 それほどのことをしでかす高位悪魔となると、上を守っている天使どもの目をかいくぐるほどの凶悪な悪魔であろうに、それに対して心折れておらぬか。 ……この下は、何重にも虐げられ、今も悪魔に貪り喰われる者達が、身を寄せ合って暮らしている地獄よ。 そなたは其処に、己のやり方を持ち込み、更に乱そうとしてはいまいな」
首を横に振る。
何処でも郷には入れば郷に従うのが当たり前だ。
勿論どんなところにも悪党はいる。
あのリリスと思われる黒いサムライが、下を支配していて。その法則で下が動いているというのなら。
一度全て叩きのめして、なんとかしなければならないだろうが。
そうでないなら。
奴の魔の手から、人々を救わなければならないだろう。
そう話すと、ミノタウルスは斧を構えた。
「ならば良し。 この先には、我など歯牙にも掛けぬ悪魔がひしめいておる。 せめて我を斃せなければ、この先になどはいけぬし、行ったところで死ぬだけだ! 来い若きサムライどもよ! アキュラに此処を任された我が相手になろう!」
「相手は肉弾型だね。 僕とワルターが前衛になる。 ヨナタン、イザボー、後衛から攻撃魔術で支援を!」
「任させた!」
「よおし、いくぜええっ!」
ワルターが、大剣で斬りかかる。
ミノタウルスが吠えると、凄まじい爆風が、ワルターを吹っ飛ばす。僕は身を低くしてミノタウルスに迫ると、下から牙の槍で抉りあげに懸かる。
発止と、ミノタウルスが斧を回し、柄で受ける。
巨大な斧をそのまま旋回させ、そのついている鎖さえ利用して、僕の体を粉砕しに来る。飛びさがる。
見切りを通してさえ。
風圧で、体が砕けそうだ。それでも飛び退き、跳躍したミノタウルスが来るのを見る。
風魔術、火魔術、雷撃魔術、いずれも効果無し。
空中で組み付きに懸かったヨナタンの天使数体を一瞬で赤い塵に変えると、ミノタウルスは大斧を振り下ろしてきた。
爆裂。
いや、本当の意味でだ。
破壊力がありすぎて、斧を叩き付けた床が、超高熱を発し。更にはその熱で爆発を引き起こしたのである。
とんでもないパワーだ。僕も背筋にぞくぞくと来るのを感じた。
後方に回り込んだワルターが、大剣で必殺の一撃を入れるが。頭を振っただけで、ミノタウルスは角で受け止めて見せる。大剣が角とぶつかりあい、火花を散らすが。明らかにワルターのパワーを凌いでいる。
此奴より強い悪魔が、下にはわんさかいるのか。
ぞっとしない話だが、それでもやるしかない。
実際、僕の渾身をリリスと思われる黒いサムライは、指一本で余裕で止めて見せたのである。
それどころか、とんぼちゃんを砕いた一撃に至っては、何をしたかさえ見えなかった。
突貫したのは、角がある羊のような悪魔。カイチというらしい。
カイチの突貫を、斧を振るって塵に変えつつ、更に組み付いた鬼を手もなく捻って、床にたたきつけつつミンチにする。
どっちもイザボーの仲魔だったが。
その瞬間、イザボーが必殺の気合とともに、魔術を放っていた。
ミノタウルスに、冷気が降りかかり。足下を凍らせる。
初めてミノタウルスが顔を歪ませた。
「弱点は冷気!」
「よっしゃオラア! 冷気で攻め立てろ!」
ワルターが突っ込む。僕もタイミングを敢えて外して攻めかかる。
ミノタウルスが吠える。それだけで、押し返されるようだが。それでも僕は更に加速して、ワルターが斬りかかった次の瞬間、渾身の突きを叩き込む。ワルターの一撃はなんと筋肉で防ぐミノタウルス。僕の突きに対して、渾身の切りあげで対応して来る。だが、ワルターが叫ぶ。
「舐めるな牛野郎っ!」
ワルターの大剣が、ミノタウルスに突き刺さる。
同時に、上空から舞い降りたヨナタンの天使数体が、一斉にミノタウルスに槍を突き刺していた。
激しい火花を散らす僕の牙の槍と、ミノタウルスの大斧。
辺りを粉々にするほどの衝撃波を、ミノタウルスが踏み込みながら、大斧を振るってぶっ放す。
ワルターも、集っていた天使達も、まとめて吹っ飛ばされるが。
ワルターを、無事だった天使が空中で受け止める。
ミノタウルスが、続けて冷気魔術を放っているイザボーを見る。そして、大斧を振るって、衝撃波をたたきこもうとした瞬間。
足下に、ヨナタン。
ずぶりと、大きな音がした。
ヨナタンの剣が、完璧にあばらの間を通して、ミノタウルスの体を貫いていたのだ。
ミノタウルスが、動きを止めた瞬間。
衝撃波を凌ぎきった僕が、天井を蹴っていた。
今の衝撃波も利用して壁まで飛び、壁を蹴って天井に。
そして天井から、必殺の一撃を叩き込む。
槍の技は、突き、払い、打撃が基本となる。
その内突きと打撃をあわせ、更に頭上から相手を断ち割る秘技。
「槍滝、兜砕きっ!」
ガツンと凄まじい手応えがあったが。
ミノタウルスの角もろとも、頭を完全に叩き割っていた。
数歩蹈鞴を踏んでさがるミノタウルス。其処にイザボーが、肩で息をつきながら、連続で冷気魔術を叩き込む。
僕の手持ちの悪魔の生き残りも、冷気魔術をありったけたたき込み。ミノタウルスの全身が、更に凍り付いていく。
だが、それでもなおミノタウルスが、叫びとともに体の氷を吹き飛ばす。
それが、最後の頑張りだった。
僕はその間に、タルカジャと言われる火力強化魔術を使い。更には回復魔術も済ませていた。
そして残りの力を全て掛け、跳ぶ。
ミノタウルスは、それを悟るが。
大斧を振るおうとした腕に、ワルターが、大きな蛇の下半身を持つ手持ちの悪魔と一緒に組み付いていた。
「おおおおおおおおおっ!」
ミノタウルスが地面を激しく踏みつける。
それは震脚だ。
地面を踏みつけることで、力を伝える秘技。攻撃を受け流したり、逆に相手に攻撃を伝えたりするのに使う技。
それで、ワルターと巨大な蛇の下半身を持つ悪魔を、吹っ飛ばしてみせるが。
その瞬間、僕の牙の槍が、ミノタウルスの体の真ん中に突き刺さり。一瞬の虚脱の後。
その胴体を吹き飛ばしていた。
呼吸を整える。
ヨナタンは倒れて動けないでいるし、イザボーは魔術を使いすぎて完全に気力切れ。ワルターも壁に叩き付けられて、それで動けずにいる。
僕は牙の槍を杖に立ち上がる。
消えつつあるミノタウルスの首が、感慨深そうに言う。
「アキュラに此処を任させて幾星霜。 ついに我を越える者が出たか。 若きサムライよ、この下は地獄だ。 今も多くの民が塗炭の苦しみに喘いでおる。 悪魔や、それにも劣る邪悪で卑劣な者が、それらの者達を苦しめておる。 アキュラは仲魔と仲間とともに此処をこえ、上に向かい、そして仲間だけが下に戻っていった。 何があったのかは分からぬが、下の……そなた等がケガレビトなどと呼ぶ民を……アキュラが望んでいたように、救ってやってくれ」
「……僕に出来る範囲の事をするよ」
「そうか。 やっと我も、これでアキュラの元へ……いやアキュラは既に転生しているようだ。 ならば静かに地獄で待つとしよう」
ミノタウルスが消え。
辺りが岩が剥き出しの空間へと変わっていく。
ヨナタンがフラフラのまま身を起こすと、天使達に皆の手当てを指示。生き残っていた天使達が、回復の魔術を掛けて回る。
僕は、ミノタウルスの言葉を噛みしめていた。
下はケガレビトの里なんて言われているが。本当にその言葉は正しいのだろうか。
ミノタウルスは多数のサムライを殺した存在だが、その戦い方は極めてまっすぐで、迷いがないように見えた。
あれはひとかどの武人のものだった。
それに、アキュラとずっと口にしていた。それは信頼する存在にたいする言葉だった。ミノタウルスは、邪悪な悪魔だったのだろうか。悪魔というと悪の権化のように思える言葉だが。
しかし、手持ちの仲魔は必ずしもそうではない。
恐ろしい側面も持つが。
人とともに歩むことを選んでくれる悪魔だっている。
大量のマグネタイトが体に吸収されていくのが分かる。まだ力が上がるようだ。
一度休憩を入れてから、僕はホープ隊長にバロウズ経由で連絡を入れる。ホープ隊長は、そうかとだけ言った。
これ以上もない歓喜が、その穏やかな声に篭もっているのを、僕は理解していた。
新たな武器とともに、勇敢たる門番を撃ち倒し、ついに奈落の底への道を開いたフリン。
史実のそれとは違えど、そのあり方は既にサムライといっても侍といっても間違いないものとなっています。