もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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原作だとミノタウルスほどでは無いにしても結構な強敵であるメデューサ。

元々はこの存在もギリシャ神話に取り込まれる過程で邪神にされてしまった地方の神格であったようですね。

……フリン達が東京へ辿りつくまでの最後の壁です。






1、下衆

いる。

 

僕は気配を悟ると、ハンドサイン。皆が頷く。

 

厄介なのは、降りて来た先にはしごがあったこと。このはしごはかなり長くて、それも脆そうなのだ。

 

一辺に降りるのは得策じゃない。

 

それに、この様子からして。

 

先には悪魔の領域がある。

 

領域というのは、結界というものの内側にあるらしい。いずれにしても、極めて厄介だ。

 

ただ幸いなことに、感じる気配はミノタウルスほど危険では無い。

 

あいつに比べて楽、というだけで。どれだけ心が落ち着くか。

 

「僕が最初に入るよ。 一番この中で身軽で頑丈だから」

 

「分かった。 僕が続く」

 

「じゃあ、俺が殿軍になるぜ。 とにかく、即時に展開してくれ」

 

頷くと、僕はさっとはしごを掴んで、降りはじめる。なに、木登りに比べれば余裕も余裕。

 

すっと滑り降りていくが、それにしても長いはしごだな。

 

随分降りて、ぬちゃっと音がした。地面がこれは、何かの肉みたいになっている。

 

生き物の腹の中のようだ。

 

即時で展開。

 

手持ちの悪魔達を呼び出す。

 

即座にヨナタンが降りて来て、天使達も。イザボーも少し間が空いたが、しっかり続いていた。

 

「なんだあこりゃあ……」

 

ワルターが呻く。

 

それはそうだろう。

 

生き物の腹みたいな有様もそうだが、問題は周囲の光景だ。

 

人の石像だらけだ。

 

どれもこれも、裸になっている。それぞれ局部が露出しているから、イザボーは視線を背けていた。

 

またどの人も、顔を恐怖に歪めていたり、何かから顔を庇おうとしているようだった。

 

石になってしまって、生きている訳もない。

 

数十もあるこの石像、いずれも多分は誰かの作りあげたものじゃない。

 

恐らくは、人間が転じたものだ。

 

それも、こうやって殺された。

 

「人間はありのままの姿が美しい」

 

ずるりと音がする。

 

それは、蛇が這う音だ。

 

ぬめっているこの生々しい質感の床の上を、かなり大きな蛇が這ってくる。それは理解出来た。

 

空間の大きさからして、戦うのは大丈夫。

 

「こうする能力持ちだね。 一瞬で決めるよ」

 

「分かった」

 

小声で話している内にそれが近付いてくる。

 

それは蛇の下半身に、上半身裸の人間の上半身がついている悪魔だった。それも頭の髪の毛が全部蛇である。

 

バロウズが警告してくる。

 

「メデューサよ。 人を石化させる視線の魔術を使うわ」

 

「む、その姿、天使を従えてはいるが人間か。 下から来る人間を妾のコレクションにしていたが。 上から天使以外が来るとはな、甘露甘露。 全てコレクションに加えてくれようぞ」

 

「お前も命を弄ぶ輩か」

 

「命なんてものは、基本的に上位者のエサよ。 お前達人間は、妾の玩具ぞえ」

 

どうやら、こいつには一切加減は必要ないようだ。

 

目をまともに見るな。

 

そう告げると、僕はハンドサイン。

 

仕掛ける。

 

いきなり、猛烈な突風が吹き荒れる。風の魔術か。

 

そして、いつの間にかメデューサの気配が消える。上。

 

けたけた笑いながら、逆落としを仕掛けて来る。

 

全員が散るが、逃げ遅れた悪魔が数体、石と化す。相手が凄まじい勢いで動き回るものだから。迂闊に相手を見られない。目を見たら終わりの可能性が高いからだ。

 

だが。

 

「鏡でも持ち出すか? 鏡を使って妾を退治した逸話など、過去のもの! この速度で動く妾を捕らえられるか? 仮に捕らえられたとしても、風の魔術で……」

 

「すまない、皆、頼む!」

 

「はっ! 仰せのままに!」

 

ヨナタンが仕掛ける。

 

大量の天使達が、一斉にメデューサに躍りかかった。メデューサは鼻で笑うと、それらを即座に全部石にしてしまう。

 

だが、その瞬間。

 

メデューサの背後に回ったイザボーの鬼が、メデューサに組み付いていた。

 

体格は大して変わらない。

 

それだけメデューサが巨大なのだ。

 

しかし、鬼は即座に投げ飛ばされない。それに、ワルターが連れている龍王ナーガが、同じように組み付く。

 

龍王とは、龍の一族の中でも中立的で、世界の自然の力を示す存在らしい。メデューサと同じように上半身が人間で、下半身が蛇になっているナーガだが。ワルターの荒々しい性格と気があうようで、勇敢かつ果敢だ。

 

「おのれ、雑魚どもがっ!」

 

力任せに鬼を叩き伏せ、ナーガを引きはがそうとするメデューサだが。

 

その一瞬だけで充分だった。

 

僕が、側をすり足で抜ける。

 

槍の武技、払いの一つ。

 

流れ。

 

メデューサが、一瞬止まった後、悲鳴を上げて目を覆っていた。両目を、そのまま抉り去ったのだ。

 

「今ですわ!」

 

石化を生き残った悪魔達が、一斉に魔術を叩き込む。

 

ナーガを振り払ったメデューサだが、火焔の魔術に包まれて、絶叫する。再生しているし、大暴れしているが。

 

突貫したワルターが大剣を叩き込む。

 

目が見えていなくても、腕でそれを防ぎ、刃が食い込みながらも両断されずに止めてみせるのは流石と言える。

 

だが、息を合わせたイザボーが、至近から細剣での多段突きを叩き込み。

 

ヨナタンが、気合一閃。

 

奴の血だらけになっている胸に、剣の一撃。串刺しにする。

 

「がああああっ! お、おのれ、おのれええっ!」

 

「石化が使えなければどうってことはないね」

 

「人間が! せめてお前達は、一番美しい姿でいればいい! どうせ虚飾しか口に出来ないから喋るの等無駄だ! 衣服なんてくだらないもの脱ぎ捨てろ! もっとも美しい感情である恐怖に彩られていろ! 石にしてやるのは、妾のじ……」

 

着地。

 

同時に、メデューサの首が落ちていた。

 

僕は無言でそれを、逆手に持った牙の槍で突き刺し、砕く。メデューサの巨大な体がマグネタイトに変わっていき。

 

そして、辺りが不可思議な空間へと変わっていく。

 

領域が解除されたのだ。

 

領域内でこの程度だとすると、ミノタウルスよりも何段も下の相手だったな。

 

辺りの石だった人達が、砕け。そして塵になっていった。

 

あんな姿で死んだままだったら、この方が良いかもしれない。

 

最後に彼奴は慈悲とでも言おうとしたのだろうか。

 

こんな慈悲など不要。

 

此処で命を落とした人達がどういう経緯でここに来たのかは分からない。

 

だけれども、目をつぶって黙祷していた。

 

ワルターが、周囲を見回して、呻く。

 

「なんだあこりゃあ……」

 

「建物のようだが、透明な板……これはなんだ」

 

「見て!」

 

イザボーが声を上げる。

 

僕も透明な板に区切られている所に近付くと、見えた。

 

真っ暗な世界に、彼方此方光が見えている。此処は常時夜なのか。其処に、光が点っている。

 

これは、ひょっとして。

 

僕達の国である東のミカド国は、この土地の、文字通り物理的な真上にあるのか。

 

「とんでもない巨大な建物群だ! どうやって作っているのか見当もつかない!」

 

「城よりでかいな」

 

「悪魔が飛んでいましてよ……」

 

「メデューサとか言うあの下衆は斃せたけれど、まだいるかも知れない。 仲魔の消耗が激しい。 一度戻ろう」

 

誰も反対しない。

 

少しずつ、こうやって障害を排除していくしかない。

 

それに、飛んでいる悪魔の大きさ、ちょっと尋常じゃない。あれと戦う事は、出来るだけ考えたくなかった。

 

はしごはそのままだ。

 

ターミナルまで戻る。皆、動けなくなるような傷は受けていない。それよりも、手持ちの天使を全部壁にして、勝機を作ってくれたヨナタンが今回の勝利の立役者だろう。それはいいのだが。

 

なんの躊躇もなく壁になった天使のあり方は、ちょっと問題だなと思った。

 

あれを自主的にやるのは、勝利の布石として良いだろう。

 

だけれども。

 

あれを強要することは、絶対にあってはならないことだ。

 

ターミナルに、第一分隊とホープ隊長が来ていた。敬礼すると、下で起きた事を話す。ホープ隊長は、この辺りにサムライ用の拠点を作っているようだ。悪魔達に空いている部屋などを整備させているようである。

 

ホープ隊長はメデューサを倒した事を褒めてくれた。そして、その場で褒美をくれる。

 

「お前達にこれを渡しておく。 遺物の中でも実用的な品だ」

 

「これは?」

 

公用文字のLに似ている。なんだろうと見ていると、危ないから気を付けろと釘を刺された。

 

そして、ホープ隊長が使って見せてくれる。

 

手に持って、何かすると。

 

だんと音がして、壁にちいさな穴が開いていた。

 

「これはあのウーゴ曰く銃という品だそうだ。 こうやって此処の引き金を引くことで、弾丸と呼ばれるものを発射する。 それにて、人間くらいなら簡単に殺傷できる。 弓矢などよりも小型で、より威力がある。 弾が出ない場合がたまにあるが、この穴は絶対に覗くな。 頭に穴が開く」

 

「これはいいッスね」

 

「そうだな。 だが殺傷力が高い。 ケガレビトもこれを持っている可能性が高いから気を付けろ。 更に大きく、威力も高く、連射が効くものもあるらしい。 ただし悪魔はこれでは斃せない可能性もある。 絶対視はするな」

 

「分かりました。 受け取らせていただきます」

 

この辺りは、急速に要塞化されていっている。

 

これなら、ある程度力が落ちるサムライも、此処にたどり着けるかも知れない。それに、強力な悪魔も、易々と此処を突破は出来なくなるだろう。

 

一度ターミナルを使って戻り、悪魔達を、それに休憩を取って自分達も回復させる。

 

ヨナタンは、蘇生させた天使達に強い罪悪感を感じているようで、何度も謝罪していた。少し呆れ気味のワルターが言う。

 

「あれらはどうみても自発的にやってたぜ」

 

「ああ。 だが僕達がもっと強ければ、あんなことはさせずに済んでいた筈だ」

 

「そうだな。 ならお互い強くなろうや」

 

「分かっている」

 

意外にいい仲間だな。

 

考え方とかはかなり違うけれど。みんなが同じ考えでいる必要なんてないと思うし。それでいいだろう。

 

休憩を入れて、悪魔達の回復を待つ。

 

マグネタイトを与えるだけでは駄目で、あの石化の呪いから回復するのには時間も掛かるようだ。

 

それにしても醜悪な性格の悪魔だった。

 

悪魔と言っても色々いるのは分かっているが。

 

彼奴は二度と蘇って来ないように、粉々に打ち砕いてやりたかった。殺しはしたが、下手をすると蘇ってくる可能性もある。

 

後で、何か処理出来るなら、考えておきたいと、僕は思った。

 

 

 

メデューサがいた辺りまで戻ると、雑魚悪魔が数体いたけれど、僕達を見るだけで逃げていった。

 

まあ、無駄な戦いが避けられるなら、それでいい。

 

さて、此処からどうやって下に降りるか。透明な板には、割れてしまっている部分もいくらかある。

 

それだけじゃない。

 

下の巨大な建物を見ると、壊れているものがかなり多いようなのだ。イザボーが、冷静な観察力を働かせている。

 

「まるで大きな戦でもあったようですわ。 相手は悪魔かしら」

 

「何とも言えないが、あんなばかでかい建物をわんさか建てられるような奴らだ。 東のミカド国の技術なんか問題にもならないだろうぜ。 この銃って武器も、どうなっているのか見当もつかねえ」

 

「銃の仕組みは先にウーゴ殿に解説を受けて理解した。 火薬という爆発するものを使って、弾と呼ばれるちいさな質量体を打ちだしているらしい。 加速が凄まじいので、充分な殺傷力を持たせられるそうだ。 小石でも達人が投擲すれば充分に人を殺せるだろう? そんなのの比ではない速度で撃ち出されるから、ちいさな弾でも恐ろしい凶器になるのだそうだよ」

 

「そうか。 分かりやすく有難うよ。 分かっても作れそうにもないけどな」

 

この様子だとヨナタンはウーゴに頭を下げて、銃の仕組みを聞いて来てくれたのか。

 

あの横柄なウーゴだし、多分色々と邪険な対応もされただろうに。それでも皆の生命線になりうる武器だから、調べてくれたのだろう。

 

ヨナタンは本当に僕が知っているラグジュアリーズとは随分違うなと感心してしまう。こう言う人が王様だったら良かったのに。

 

今のアハズヤミカド王の無能さは、僕らにも知れ渡っているほどなのだ。

 

サムライ衆に入ってから、王の話は更に具体的に聞くようになったが。

 

正直その権威を利用しているラグジュアリーズの間ですら、いい評判はないようである。

 

さてどうしたものか。歩き回って調べていると、バロウズが提案してきた。

 

「マスター、良いかしら」

 

「うん。 どうしたの」

 

「この建物のシステムを先ほどまでに分析し終えたわ。 エレベーターが生きているから、それを使って下まで降りられそうよ」

 

「えれべーたー? 何それ」

 

バロウズが解説してくれる。

 

簡単に言うと、滑車の仕組みを利用して、ものを上下に輸送する仕組みだという。ものには人間や、もっと重いものも含まれるとか。殆どは箱の形状をしているそうである。

 

井戸の仕組みを思い出す。

 

滑車を回して水をくみ出すときの桶と同じか。

 

でも、透明な板の下の地面は、ずっと遠くに思えるけれど、大丈夫だろうか。

 

「最悪の場合、建物の外壁にはしごがあるけれど、悪魔の数からいってお勧めは出来ないわね。 飛行出来る悪魔に支えて貰って降りる手もあるけれど、それほど大きな悪魔はまだ皆使役できていないわ」

 

「うん。 わかった、そのエレベーターというのを試してみよう」

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

「最悪の場合は悪魔の力も借りてどうにか上に戻ろう。 今は、誰かが道を切り開くしかないよ」

 

たまたまそれが僕達なだけだ。

 

機会があったら多分ホープ隊長がそうだったんだろうなと思う。だけれど、ホープ隊長には守るものが多い。

 

特に東のミカド国の民を守らなければならないのだ。あの人には、この下に行く余裕がないだろう。

 

バロウズのナビに従って、壁の近くのボタンを触る。これがボタンだというのも、さわり方、操作の仕方も懇切丁寧に教えてくれるバロウズ。

 

押してしばらく待つと、壁の向こうで音がして。

 

そして壁そのものが空いていた。

 

がこんと内部にある空間。本当に箱だ。

 

「本来は観光用のもう少しお洒落なものがあったのだけれども、今動いているのは業務用のこれだけのようね」

 

「意味がよく分からないけれど、後で説明はしてくれる」

 

「ええ、時間がある時に」

 

「入って入って」

 

皆を急かす。

 

イザボーが特に困惑していたけれども。最終的に僕が手を引いて乗って貰う。イザボーは結構大胆な行動に出るときもあるけれど、いざという時は結構勇気が足りないんだなとも思う。

 

この様子だと、あの漫画を読むときも、最初はなかなか勇気が出なくて苦労したのかもしれない。

 

エレベーターの内部でボタンを押すと、壁が閉じて。

 

すっとエレベーターが降りていくのが分かった。

 

ワルターが困惑しながら左右を見ている。

 

「だ、大丈夫なのかこれ……」

 

「問題は今の時点ではないわ。 スカイツリータワーの電力そのものは問題なし。 このエレベーターもそこまでの回数使われていなくて、部品の劣化も許容範囲内。 ただしこれからサムライ衆が何千回と往復したら、壊れるかも知れないわ」

 

「おいおい……」

 

「下にターミナルはあるのかしら?」

 

イザボーが面白い事を聞く。

 

バロウズは検索中と呟いて。それから答えてくれた。

 

「あるにはあるのだけれど、どれも経路が遮断されているわ。 どうも悪魔が物理的に抑えているらしいの」

 

「そうか、面倒だが其奴を倒すのが一番だとみた」

 

「ええ、そうでしょうね。 そうすれば、奈落を経由しなくても、そのターミナルに行く事も可能よ」

 

「しかしまだ落ちるのか……」

 

ヨナタンも少しそわそわしている。

 

僕もそれは同じだけれど。

 

皆が不安にならないように黙って、じっとしていた。

 

やがて、エレベーターが止まり、壁が開く。開いた先にあったのは、上よりも広い、素材も分からない壁床で出来た空間だが。

 

見た瞬間に分かるくらい、戦闘の跡が彼方此方にあるし。

 

悪魔もたくさん群れていた。

 

こうなると実戦経験がものをいう。

 

即座に戦闘態勢に入る。幸い、奈落にいた悪魔と質は大して変わらないようだ。皆で悪魔を展開し、この辺りの制圧にかかる。

 

最悪の場合は撤退も視野に入れる。

 

メデューサよりも強い奴が控えていてもおかしくないからだ。

 

豚みたいな片目の悪魔が、連続して突貫してくる。

 

「魔獣カタキラウワよ。 股の下をくぐられると死んでしまうから気を付けて。 倒せば低質とは言え肉を手に入れられるくらい密度が高いことを確認」

 

「低質ね。 とにかく近寄らせなければ良いんだな!」

 

ワルターがさっそく銃と言うので射撃。僕は牙の槍を振るって、間合いに入ったのから確実に討ち取っていく。

 

数体が瞬く間に倒れる。

 

銃はこの程度の悪魔には有効打になるようだ。

 

ヨナタンの天使達が前に出て壁を作る。

 

威圧的な槍と盾の壁を見て、それでもカタキラウワは突っ込んでくるが、力の差は歴然で弾きかえされる。

 

だが、即死魔術持ちだ。

 

侮らない方が良いだろう。

 

顔が人間の鳥が、多数飛び込んでくる。

 

妖鳥ハーピーだという。

 

本来は三ないし四人の姉妹の悪魔らしいが、ハーピーという種族だと勘違いされている存在だとか。

 

鳥の悪魔は珍しく無いし、顔が人間になっているものもしかり。

 

順番に片付けながら、少しずつ安全圏を拡げていく。

 

イザボーが連続して魔術を放って、次々に悪魔を撃破していく。火力が根本的に上がっているようだ。

 

悪魔に熱心に魔術を習っているのだろう。

 

かといって剣術を疎かにしている様子もない。接近された場合は、細剣の華麗な剣技でしっかり撃破している。

 

突貫してくる大きな人型の悪魔。

 

名前を聞く前に、僕が首から上を牙の槍の穂先で吹っ飛ばしていた。マグネタイトになって消えていく。

 

それが最後だった。

 

天使を展開して、皆の回復と偵察を指示するヨナタン。

 

僕は傷薬を取りだすと、さっさと自分の浅めの傷はそれで治してしまう。しばらく周囲を偵察して、天使が戻ってくる。

 

「外は荒廃していて悲惨な有様です」

 

「そうか。 一体この地と東のミカド国の間に何があったんだ。 此処はサバトとやらが行われたキチジョージ村以上に悪魔だらけじゃないか」

 

「とりあえず、捜索範囲を拡げましょう。 生きている人間と出会うことが出来れば良いのだけれど」

 

イザボーの言う通りだ。

 

僕は率先して、建物から出る。

 

スカイツリーとやらから出ると、ぬちゃりと嫌な音を地面が立てていた。これは、腐敗している土。

 

それだけじゃない。

 

地面が地震でもあったかのように滅茶苦茶になっているし、彼方此方に見た事がないものだらけだ。

 

周囲を見回していると、なんか見た事がない服を着たのが来る。人間だ。二人組。だが、どう見ても好意的な様子ではなかった。

 

「なんだゴルァ! 此処が阿修羅会の縄張りだと知ってて入ってきたのかテメエら!」

 

「見た事がねえカッコウしやがって! 祭りかああん?」

 

「君達、この辺りは悪魔だらけだ。 そうがなり立てると危ないぞ」

 

「ん? お、おう。 それは知ってるけどよ」

 

ヨナタンがあからさまに失礼な相手にも、丁寧に話す。それを受けて、禿頭のと、頭を刈り上げているのと。

 

変な服を着た二人組は、毒気を抜かれたように黙り込んだ。

 

ヨナタンが視線を送ってくるので、僕は咳払いして話を試みる。

 

今の感じだと、魔法の言語は確かに通じている。

 

クーフーリンの言っていた事は正しかったのだ。

 

「僕達は東のミカド国のサムライ衆。 貴方たちはあしゅらかいというの?」

 

「阿修羅会を知らない……」

 

「お、おい! 此奴らスカイツリーから出てこなかったか!?」

 

「まさか天使かよ!」

 

いきなり青ざめる二人組。

 

天使だったら、ヨナタンが使役しているが。天使を見た事がないのか此奴ら。

 

逃げだそうとした二人の背後にワルターが回り込む。

 

そして、見かけ倒しの二人を、あっさり威圧していた。力の差を悟ったのか、即座に黙り込む二人組。

 

「詳しい話を聞かせて貰おうか、威勢が良いおじさん達?」

 

「ま、まて! 俺たちはこの辺りの顔役だ! 話だったらする!」

 

「だから殺さないでくれ! 塩の柱になんかなりたくない!」

 

「だそうだ。 どうする」

 

溜息。

 

ワルターは場合によっては即座に斬るだろう。

 

此奴らがどう見てもまっとうな人間ではないことは分かる。

 

たまに僕も港町の方まで行ったとき、道を踏み外した人間は見た。絡まれたこともあったので、海に全部放り込んだりしたっけ。

 

それと同じ臭いが此奴らにはする。

 

「バロウズ、会話の内容を解析して」

 

「分かったわ」

 

「スマホじゃない!」

 

「なんだよそれ! 未来アイテムかよ!」

 

訳が分からないことをいうなあ。バロウズを見てスマホだとかそうじゃないとか言っているが、聞いたこともない単語だ。

 

どんと僕が牙の槍の石突きで地面を叩くと、それだけで二人は腰砕けになっていた。どうか殺さないでくれと、涙目になる始末だが。

 

明らかに隙を見せれば襲いかかってくるだろう。

 

手慣れた様子でワルターが武装解除していく。やっぱり刃物と銃を持っていた。銃に関しては、僕達に支給されたものより性能が良さそうだ。なんか見た事がない板。それはと男達が懇願してくるが、だからこそ取りあげなければならない。

 

「スマホね。 携帯用の情報端末よ」

 

「要するにガントレットと同じようなものか」

 

「ええ。 私ほどの機能はないようだけれど、それでも……やはり。 悪魔召喚プログラムが仕込まれているわね」

 

なるほどな。こんなのが二人で出歩ける訳だ。

 

縛り上げるまでワルターが手際良くやって、完全に萎えている二人をさっき安全を確保したスカイツリーの中に引っ張り込む。

 

それから、順番に聴取していく。

 

まずは情報収集からだ。

 

これはサムライになった時でも講習を受けたが、確かに未知の土地では必須である。

 

見かけ倒しの二人から、順番に話を聞いていく。

 

この辺りが上野と呼ばれている事は分かった。辺りの地位について聞いていくが、気になる事が幾つも出てくる。

 

「新宿に吉祥寺……?」

 

「ど、どどど、どうかしたんですかい?」

 

「ヨナタン、どう思う?」

 

「今聞いた地名だけれど、どれも東のミカド国で集落だったり道だったり、地名として存在しているものばかりだ。 此処がケガレビトの里だというのはほぼ間違いないだろうが、偶然だろうか」

 

それは僕も思った。

 

ワルターは監視に注力。イザボーは拷問なんか嫌らしくて、周囲の警戒に徹してくれている。

 

僕は時々威しを交えながら、情報を集めていく。

 

此奴ら、弱い相手には徹底的に強く出るタイプのカスだ。それはすぐに分かったから。むしろ話を聞き出すのは簡単だったし。

 

更に言えば、ある程度乱暴に接しても、罪悪感もなかった。

 

此奴ら、虐げ慣れている。それは少し接してみて即座に分かった。

 

後は、近くの集落に連れて行って、様子見だな。集落の人間の反応次第では、首を落としてしまっても良いだろう。

 

僕が冷たい目で見ているのをみて、二人組が震え上がる。

 

僕もくだらない理由で故郷を滅ぼされた身だ。悪党に対してかける情けは。あまり残っていないのだ。







ついに東京に到達するフリン達。

そこには荒廃しきった未来都市が待っていました。

当然元は此処の住民だった存在の子孫達だなんて、フリンが知るわけもありません。異世界にしか見えないでしょうね。

しかも本作ではフリン達四人にもう一つ大きな秘密が隠されているのです。






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