サムライの任務をこなしながら、フリン達は自分で出来る範囲の行動を起こしていきます。
キチジョージ村を地獄に変えた黒いサムライを追うためにも、協力者の確保と情報を集めること。
それが急務なのです。
意外と本作のフリンはそう判断できるくらいには頭も回ります。普段の言動があんななので、そうは見えないかも知れませんが……
丁度要塞化の作業が終わって戻っていたホープ隊長がいたので、僕は上野駅の話をする。
ホープ隊長の周囲からは、腐れラグジュアリーズサムライがいなくなっていたこともあり、だいぶ話がしやすくなっていた。
僕が立て続けに皆と武勲を挙げていると言う事もある。
ホープ隊長も、信頼してくれているようである。
「ケガレビトの里はそのような場所なのか」
「はい。 とにかく貧しく、悪魔に苦しめられ、不衛生で水も食糧も足りていません」
実の所、衛生観念では東のミカド国と大して代わりは無いと思う。
違うのは水だ。
東のミカド国は豊富な水があって、それで体を洗うのも容易にできる。まあ風呂は沸かすのが大変だし、外で体を洗ってると覗かれたりするのはあるが。それでも汚れは洗い流せるし、汚物はすぐに蠅とかの虫が片付けてくれる。下水もしっかり汚れを流してくれる。
彼処はそれがなかった。
多分だけれども、他の里も同じだと思う。
「東のミカド国と何かしら下……ケガレビトの里であったのは確実だと思います。 ミノタウルスの言葉などからもそれは疑いがないはず。 でも、ケガレビトの里では天使を怖れていても、僕達そのものを怖れてはいませんでした。 其処に突破口があるように思います」
「ふむ、続けてくれ」
そこで、食糧と水を持ち込み。
代わりに遺物を譲って貰う話をする。
保存食は大量に蓄えている筈だ。東のミカド国の民は百万とか言われているらしいが、それでも充分すぎる位食べ物はあるのだから。
「過去に何があったかも今の時点では分かりません。 現地に協力者を作る為にも、何よりあの悲惨な人々を助けるためにも。 許可を」
「分かった。 それはそうと、一度休め。 他三人は既に休んでいるだろう」
「まあ、体力だけが取り柄ですので」
「そう卑下するな。 私は今の話を、ギャビー様に進言してくる。 確かに現地に協力者を作るのは有益だろう」
礼をすると、隊舎に戻る。
風呂に入ってさっぱりしてから、食事。いつも以上に食べる。ただ、テーブルマナーは守る。
コレは必要以上に敵を作らない為だ。
丁度食べに来ていたイザボーが既に完璧だと褒めてくれるので嬉しい。
ただイザボーは、上野駅の惨状を思い出して、食事が進まないようだが。
「家にいた頃は何の躊躇もなく残していたのですけれども。 あの有様を思い出すと、とてもそんな気にはなれませんわね」
「僕も村の出だから、食べ物の大事さは分かっていたつもりだった。 でも、あの状態は……」
「ええ、あれを見捨てるのは人倫に反しますわ」
イザボーがそういう点はとてもしっかりしていて助かる。
食事が終わった後は、体を動かそうかと思ったが。太歳星君との戦いもそうだし。濡れ女との戦いでも、体を酷使した後だ。
流石に眠くなってきたので、休む事にする。
それでもきちんと寝る時間は制御。
鶏が鳴き出す頃にはきちんと起きる。
起きて鍛錬をして、それで皆と集まる。鍛錬は、更に楽になっている。これは腕立ても懸垂も、数を増やそうかなとちょっと思っていた。
「相変わらず残像を作りながら腕立てしてるな。 どうなってんだお前の体」
「まあ、頑丈だからね僕」
「それはそれとして。 さっき、呼ばれた。 ホープ隊長の所に向かおう」
「さて、良い返事が聞けると良いのですけれど」
ヨナタンとイザボーは懸念を示している。
サムライ衆は、僕達への態度が真っ二つに割れている。特に粛正されたラグジュアリーズのサムライの関係者だった連中は、僕を恨んでいるようだが。
ただ、武勲についても話を聞いているからだろう。
手を出そうにも出せない。
そういう雰囲気を感じた。
一方で、カジュアリティーズ出身のサムライは好意的だ。
戦いについて話してくれと言ってくる者もいる。
ワルターがそういうときは、色々と恐ろしい悪魔についての話をする。
まあ、今となっては、奈落にいた悪魔なんて、ミノタウルスみたいな例外を除けば雑魚も雑魚なのだとよく分かる。
サムライ衆は護国の戦士として、強くならないといけない。
それは正しかったのだ。
ホープ隊長の所に行くと、先に来ていたらしいギャビーが出てくる所だった。ギャビーは氷のような目で僕達を一瞥すると戻っていく。
隊長の部屋では、あのウーゴがいて。
隊長が苦虫を噛み潰していた。
「ああ貴方たち。 待っていましたよ。 なんとケガレビトの里にもう辿りついたとか。 一目見た時から、きっとやると思っていました」
「良く言うぜ……」
ワルターがぼやくが、しっとイザボーが言う。
確かにギャビーがサムライ衆との交渉役に据えている相手だ。ギャビーが王以上の権力を持っている可能性が高い以上、無碍にも出来ない。
虎の威を借る狐なのは分かっている。
だが此奴は、虎が仕事を任せるくらい、頭が良いのも事実なのだ。
「まず貴方たちには、幾つかの司令がギャビー様から出ています。 追加でね」
「黒いサムライをブッ殺すだけでもかなりの難事なんですけれど」
「いや、出来るだけ捕獲して戻りなさい。 殺したといっても、それを皆の前で証明できなくては、不安を払拭できないでしょう」
明らかに恐怖で声が上擦るウーゴ。
そういえば小耳に挟んだのだが、此奴十も年下の奥さんがいるらしいのだけれども。その奥さんの尻に完全に家では敷かれていて、面罵されている様子が目撃されているらしい。
此奴を嫌っているサムライは多く、それを笑っているのを何度か見かけた。
まあ、それ自体をどうこういうつもりはない。
豪傑が恐妻家であることは珍しく無いのだから。此奴は豪傑には程遠いが。
「まずは、こういうものを見つけたら持ち帰ってください」
「これは……?」
「パソコンと言います。 原理的にはそのガントレットと同じです。 遺物の中でも、もっとも重要度が上です。 とても壊れやすいので、とにかく気を付けて扱ってください」
「奈落でも幾つか見つかったのだが、どれも壊れてしまっていてな。 特にターミナルはあんな感じで空間を渡る。 その時壊さないように注意してくれ」
ホープ隊長の話なら、そういうものかと分かる。
頷くと、更に言われる。
「それと、ターミナルの開放は出来るだけやってください。 それと同時に、精鋭の分隊を幾つかケガレビトの里に派遣します。 貴方たちとは違う方向で動いて貰いますので、まずは貴方たちは、上野駅でしたか。 そこへ彼等を案内してください。 ターミナルには、直接登録しないと使えない事は既に確認しています」
「それについては想定していました。 すぐにやります」
いいですねえいいですねえ。
そんな風にウーゴは言うが。
目は笑っていないな此奴。
とにかくいちいち勘に障るらしく、ワルターの怒りが徐々に蓄積しているのが分かるが。まあ、我慢してもらうしかない。
怒りは下で敵対的な悪魔にぶつけて貰うだけだ。
咳払いしたのはヨナタンだ。
それだけで、小心なウーゴはびくりと身をすくめていた。
「それで、フリンからの提案についてはいかがか、ウーゴ殿」
「え、ああ。 それについてですが、指定した分の水、食糧、医薬品、後は衣類を提供しましょう」
「リストを見せてください。 ……たったこれだけ?」
「ギャビー様のご意向です。 ケガレビトは、相応の事をしているからケガレビトと呼ばれているのです」
ちょっと待て。思わずそう声に出す。
僕の声が冷えたのを感じたのか、ウーゴが青ざめて固まる。
あの上野駅の惨状については、僕がホープ隊長に伝えた。ホープ隊長も、それをギャビーに伝えたはずだ。
それで、こんな数人がすぐに消費するような量だけだと。
「ひっ! わ、私の意向ではありません! す、全てギャビー様の」
「ホープ隊長」
「私からも伝えた。 本当の事だ。 遺物の価値を考えると、この程度しか出せないとにべもなかった」
あの冷血女。
そう言いたくなるが、我慢する。
流石に東のミカド国全てを敵に回したいとは思わない。
ギャビーに逆らうのは、そういうことだ。
仮にギャビーと戦うにしても、あれはあのリリスと思われる黒いサムライと同等かそれ以上の実力者である。
それは間近で見て知っている。
今はやりあうには、あらゆる意味で力が足りないのだ。
下には強い奴が幾らでもいることは、太歳星君を呼び出した謎の男との戦闘でもよく分かった。
今は力を蓄えるしかない。
ヨナタンが咳払いして、代案を出してくれる。
「それでは僕達がこれらの物資を遺物と交換しきったら、追加を出して貰うという案はどうでしょうか」
「ふむ……」
「恐らくギャビー様は、遺物がそれほど回収出来るとは思っていないのだと思います。 僕達が下で成果を上げれば、慈悲深いギャビー様が、苦境に喘ぐ民を見捨てるなどという非道をなさるとは思えません」
「そうだな。 そう思うなウーゴ殿」
完全に漏らしそうな顔をしているウーゴは、五つの視線を浴びて、それで失神しかけたが。
やがて相談してみますと、肩を落としていた。
ウーゴが行った後、ワルターが吐き捨てる。
「豚野郎が」
「豚にしては上等すぎましてよ」
「おほん。 それはいい。 お前達はまず、第三、第七、第九の分隊をそれぞれ上野駅のターミナルまで案内してくれ。 彼等は周囲の探索と、悪魔の調査、ケガレビトとの接触に加え、遺物の回収とサムライ衆そのものの質の向上に努めて貰う。 サバトは禁止したが、まだ彼方此方で悪魔化する民が出ていてな。 私は精鋭を連れての監視にしばらくは注力する」
「はっ!」
その後くらいは、物資の準備が終わるらしいので、上野駅の民と交渉を自身の裁量でやってくれという事だった。
さて、此処からだ。
まずは少しずつ、東のミカド国の状態も、東京と彼等が呼んでいたケガレビトの里の状況も、改善していかなければならない。
分からない事が多すぎるのだ。
今はともかく、一つずつやるべき事を片付けなければならなかった。
まずは三つの分隊と、スカイツリーの内部のターミナルで合流。其処から上野駅ターミナルまで案内する。
エレベーターを見てどのサムライも驚き。
下の惨状を見て、誰もが息を呑んでいた。
巨大な建物。
凶悪な悪魔。
いずれも奈落が如何に安全な場所だったのか思い知らされるばかり。今連れているサムライの分隊もいずれも優れた精鋭の筈だが、此処ではいつ誰が倒されてもおかしくはないだろう。
上野駅に案内して、人外ハンターに登録して貰う。
凄まじい音と光に、目を回しそうになっているサムライも多い。此方を見ている人外ハンター達は、明らかに値踏みしているが。
あのターミナルにいた悪魔を退けた事は既に伝わっているようで、少なくとも舐めて掛かってくる事は無さそうだ。
その後はターミナルまで案内し、帰路を確保しておく。
三つの分隊はそれぞれに仕事があるので、一度に三分隊を連れて行く訳にもいかなかった。
順番に時間を見ながらつれて行く。
こうして下の……ケガレビトの里で活動するサムライが増えれば、それだけ情報も集めやすくなる。
短時間で強力な悪魔と交戦する事で、力だって上がりやすくなる筈だ。ただし悪魔に殺される危険も大きい。
ただいずれもが実戦経験者だ。
わざわざ僕達がそう指摘しなくても、此処の危険さは一目で分かったようだし。軽率な事はしないだろう。
三つの分隊をケガレビトの里……いや、この言い方は良くない。
この土地の人達にあわせて、東京と呼ぼう。
古くは「東京都」と呼んでいたらしいが、今は都もなにもない。だから東京で問題ないだろう。
ともかく人外ハンターの受付で話をして、物資の交換についての正式な依頼を申し込む。
交渉についてはヨナタンがやってくれる。
やはりヨナタンはかなりしっかりお金の管理をしてくれるだけではなく、足下を見るような態度も即座に見抜いているようだった。
「それでは調理済みの即座に食べられる料理という形で納品してくれるんだな」
「そうだな。 ただし長くはもたない。 今、食が足りなくて苦しんでいる人々に届けられることを直接確認させて貰う」
「オーケイ。 サムライというだけあってとてもしっかりしているな。 こっちとしても、助けられる人間は一人でも多く助けたい。 食い物が足りないからって、阿修羅会に子供を売り飛ばす親が出る現状は、俺も良く思っていない」
「最低の連中ね。 捕まえたあの二人、しっかり報いを受けたのならいいのだけれど」
イザボーがぼやくが。僕としてはあらゆる意味で複雑な気分だ。側を見ると、ワルターも同じのようである。
僕の生まれたキチジョージ村ではなかったが、カジュアリティーズの一部の村では子供を死産といいながら生まれた時点で殺してしまうことを良くやっていた。
産婆がそう判断したという事だけれど。
多くの場合は、経済的な問題での子殺しだ。
それを考えると、此処で行われている事は、切実なのだと分かる。それに、こんな状況では、食べ物だけ渡しても解決にならないだろう。
今はそれしかできない。
だがいずれは、東のミカド国ともっと大々的に交流を持ち。この土地から悪魔を撃ち払って、作物や家畜を育てられるようにするべきだ。もしそれの障害になるのなら、あのギャビーをどうにかしなければならない。
それは分かるのだけれど、どうやってそれをやっていくのかが僕には分からない。多分分かるとしたらヨナタンか。
いや、頼ってばかりでは駄目だ。
何かしら勉強する方法を見つけないと。
とにかく依頼についてはしっかり決めた。人外ハンターの方でも、飢えて困っている人間を選抜することを約束してくれる。
その代わりに遺物を提供して貰う。
その話を終えた後、人外ハンターの受付は言う。
「実はな、これでも少し前よりかなりマシになって来ているんだ」
「どういうことですか?」
「ああ、人外ハンターの本部が強力なシェルターだかを奪還して、其処を本部にしたんだがな。 其処で食うに困ってる困窮者を引き取って、更には余っているらしい食糧を配布してくれている。 阿修羅会の連中が邪魔してなかなか大々的にはいかないようだが、もしも阿修羅会と悪魔を片付ければ、一気に食糧問題が解決する可能性もある。 人外ハンターのトップはフジワラって御仁だが、ここ最近急に行動がアクティブになってな。 誰かブレインがついたって話もある」
「……妙な横文字はありますが、概ね理解は出来ます」
咳払いする受けつけ。
多分此処にも阿修羅会の人間や、それに通じている者もいるからなのだろう。
周りを見回して、それから声を落とした。
周りにガンガンもの凄い音が響いているが、どうにか聞き取れる。
「そういうわけで、あんたらには悪魔の退治を優先的にやってほしいんだ。 阿修羅会は今人外ハンターの新しいボスと思われる存在を探し当てる事に躍起になっているし、小競り合いで武闘派の部下を立て続けに失って混乱している。 むしろあんたらには、野良で動き回っている危険な悪魔を退治して貰う方が、状況が良くなると思う」
「分かりました。 ただし、此方でも遺物を集めて来いと言う任務を受けています。 それと並行になります」
「だとすれば、古いパソコンなんかも此方で出す。 その代わり、周辺にいる危険な悪魔の駆除をしてくれ。 更に遺物集めなんかも速くなる。 それについてはお仲間にも打診しておくよ」
ヨナタンが頷くと、幾つかの依頼をバロウズが先にピックアップしてくれた。
それにしても、さわりもしないのに適切に集めてくれるバロウズはすごいな。
とりあえずイザボーがいい加減頭が痛そうにしているので、人外ハンター協会を出る。その後、皆で話し合う。
僕が挙手。
こう言うときは、まずは僕が話を始めた方が良い。リーダーとして認めて貰っているからだ。
「幾つか話をまとめておこう」
「ええ、よろしくてよ」
「俺は考えるのが苦手だ。 頼むぜ」
「うん。 まず第一に、僕達は此処だけじゃない。 出来るだけ、目につく範囲、手が届く範囲にいる困っている人は助ける。 これは僕達にそれが出来る能力があって、僕達がサムライだからだ」
護国の戦士ではあるが。
僕達はそれ以前に、悪魔召喚を使いこなせる力の持ち主だ。
牙も爪もない人は不要か。
そんな筈がない。
僕はキチジョージ村で、豊富な知識を持つ老人が、どれだけ村に役立ってくれていたかを見てきている。
また、どれだけ元気な赤子だって、生まれて数年は何もできないのだ。
この環境では。
幼子も生き残れないし、老人だってそう。
強い奴だけが生きる資格があるなんて言葉は論外である。
どんな強くなる生物だって、生まれたばかりは惰弱そのもの。
一人で生き抜いてきたとか自負する奴も。
最初は乳飲み子だったのだ。
乳飲み子が一人で生き抜けるものか。
親がいない生き物、つまり虫とかでも同じ。卵の時代はどれだけタフな虫でも襲われればひとたまりもない。
その後も、運がなければ絶対に生き残れない。
強くない奴は生きる資格が無いなんて言葉は、そういった現実を無視している愚論に過ぎない。
僕はキチジョージ村で生きてきた。
僕自身は体力も力も有り余っていたけれども、そうでない人が畑に詳しくて、虫の害を即座に見抜いたり。作物の病気に詳しくて、被害を減らす判断が出来るのを何度も見ている。
そういう人は僕よりずっと弱かったかも知れないけれど。
だからといって、僕より社会の役に立たないかといえばノーだ。
偉そうに人を顎で使ってふんぞり返っているだけの奴だけでは、社会なんか動かない。たくさんの人が少しずつ出来る事をやって、それで社会は動く。
僕は農村で見てきたから、それを知っている。
此処、東京では。
それすら出来る環境にない。
その環境をただせるなら、するべきだ。勿論僕らも全能でも万能でもないから、出来る範囲からやっていくしかないが。
「なるほどな、理路整然と言う奴だ。 お前が見た目と行動と裏腹に頭が切れる事は分かっていたが、俺にも納得が行くぜ」
「問題は、具体的にどうするべきかがよく分からない事だね。 とりあえず、この上野周辺で被害を出している悪魔を率先して狩ろう。 阿修羅会というのと本格的に対決する事になるかも知れないけれど、それは人外ハンターという人達が今は引き受けているから、任せるしかない。 悪魔退治が一段落したら、食事を運ぼう。 それで効率よく遺物を集められる。 遺物の価値なんて僕達には分からないから、まずはパソコンとか言うものを回収しよう。 それ以外のものでも、ここのは技術からしてまるで違うのは一目で分かる。 持ち帰れば、此処ではゴミにしかならないものでも、東のミカド国では宝になる筈だよ」
「その通りだ。 何か問題があるようなら僕が口出ししようと思ったが、流石だフリン。 君は聡明だよ充分にね。 僕の方から、後で帝王学の本を貸すよ。 何か参考になるかもしれない」
「ありがとう。 助かる」
帝王学、ね。
ヨナタンやイザボーみたいな例もたまにはいるが、ラグジュアリーズの腐敗と無能を近くで見ていると、それが役に立つかは疑問だ。
それよりもだ。
こっちで本が手に入るかもしれない。
それも出来れば手に入れて読んでしまいたい。
だがその前に。
悪魔退治だ。
上野駅を出て、指定された場所に行く。上野駅の外でも、身を寄せ合って生きている人々がいる。
そういう人達を嘲笑うようにして闊歩している悪魔を一瞥して追い払う。雑魚も雑魚は、もう視線だけで追い払える。
町外れに、大きい気配がある。
足を運ぶと、其処には水が……酷く汚れているけれど。水が溜まっている池があった。酷い水だ。これは湧かしてもすぐには飲めないだろう。
池には不可思議な形をした塔があって、其処には此処が縄張りだといわんばかりに、何だか不可思議な形をした悪魔がいた。
目があう。
即座に跳んできた。
近くに着地したそれは、四つ足獣の態勢を取るが。顔は人間、体は緑色で、尻尾に有害そうな棘を持っている。背中にも翼があって、口の中は鋭い牙だらけだ。大きさは背中だけでも、ワルターの背よりも高い。
「ひひひ、うまそうなのが四匹も。 しばらく人間は喰らっていなかったでな。 逃がさぬぞ」
「妖獣マンティコアよ。 砂漠に住み、人を率先して喰らう危険な悪魔よ。 サソリの尾を持ち、猛毒を持っているわ」
「さそりってなんだろ」
「分からんが、尻尾に毒があるのは分かった」
とりあえずは此奴からだ。此奴は此処を縄張りにするだけではなく、近場の人間を食い荒らしている被害が大きい悪魔だ。
上野駅の中にすら悪魔がいて、それらを駆除するので上野の人外ハンターは手一杯。だったら僕らがやるしかない。
ハンドサイン。
散開。
躍りかかってきたマンティコアの突貫を、スプリガンが受け止め。
即座に鬼とナーガがそれぞれ襲いかかる。
驚くべき俊敏さで鬼とナーガが抑え込もうとしたのを回避するマンティコアの背後に回り込んだワルターが、大剣を一薙ぎ。
空中に逃れたマンティコアが、尻尾を振るうと、大量の毒針が放たれ、辺りを一斉に串刺しにする。
鬼とナーガがひとたまりもなく倒され、スプリガンも倒れる中。
空中に逃れたマンティコアを、ヨナタンの天使達が一斉に串刺しに。
更にはイザボーと僕が呼び出した魔術戦担当の悪魔達が、魔術を一斉射撃。綺麗に連携して離れた天使達が、翼をばたばた動かして逃れようとしたマンティコアを、魔術が放たれてきた方へと蹴り飛ばす。
直撃。
炸裂した魔術の雨に打たれて落ちてくるマンティコア。
僕は真下で踏み込むと。
直上に向けて、牙の槍を突き出していた。鬼相を浮かべて、凄まじい口を開いて僕を呑もうとしたマンティコアが。
渾身の上突き、月落としを叩き込まれ。
その場でぶくぶくと膨れあがると、衝撃に耐えきれずに爆発四散していた。
肉塊や赤い血が降り注ぐが、それもすぐマグネタイトに変わっていく。
「きたねえ野郎だ」
「でも、マグネタイトにはなったね。 この水も何処かに流すか、新しい水を入れれば、飲料水はすぐには無理でも、農業用水なんかには使えそう。 水を浄化できる悪魔はいないかな」
「いるにはいるけれど、それなりに高位の悪魔になるわよ。 作り出すのは手間が掛かりそうね」
「だとしてもやっておくべきだろうね」
バロウズに現実的な案を出して貰う。
その後は、上野に戻る。まずは一体、厄介者を始末した。
これから数日は、上野駅周辺の悪魔を、こうやって始末する必要があるだろう。僕達が更に先に進むための、力を得るためにも。
上野周辺の雑魚悪魔でも結構どいつもこいつも強いです。
真4を最初にやっていたころは、一戦ごとに反射とか喰らってしなないか不安で仕方がなかったですね。交渉でも足下を見て来る悪魔も多いですし、体力ごっそり吸われた上に襲われたりすると最悪。
いずれにしても、確実に橋頭堡を構築するフリン達です。
まだ先は長いとしても。
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