※霊夢について
本作のお助け英雄1です。東方Projectの主人公の一人ですね。
東京に来た経緯は後々説明しますが、本作の霊夢は原作より数年分加齢しています。現在の実年齢は18です。
戦力は原作時より増していますが、原作に登場した仲間を多数、幻想郷に攻め寄せたロウ勢力との戦闘で失っている事もあって、非常にシビアな性格に磨きが掛かっています。
元々去る者は追わないという記載がある子ですが、状況が更に彼女を荒ませた訳ですね……
壮絶な戦いの跡地。凄まじい熱気をマーメイドが鎮めると、それでようやく一息つくことが出来た。
志村は助けてくれた二人とマーメイドに礼を言う。
手だれたつもりだった。
だが、まだ若いこの二人の娘と、それが連れているのか。それもよく分からないが、この規格外のマーメイドには勝てる気がしない。
とにかく礼を言うと、自己紹介をする。
部下達にも名乗らせる。
銀髪の娘を一瞥だけすると、まとめ役らしい巫女服の女は名乗った。
「あたしは博麗霊夢。 事情あってある隠れ里からこの地に来ているわ」
「隠れ里?」
「この地は東京だった場所でしょう? 其処とはそれなりに離れた内陸の隠れ里。 外が此処まで酷い有様になっているとはね。 話には聞いていたけれど、凄惨な状況だわ」
「隠れ里……よく核ミサイルの直撃に生き延びたな。 あの大戦の後各地に色々な手段で電波などを送ったが、それで反応は一切なかった」
少し寂しそうに目を伏せる霊夢という女。
年齢は十七から十八くらいか。
神降ろしというのは、一部の悪魔ハンターが出来ると聞いているが。それにしてもアドラメレクを打ち破るほどの神を降ろして、消耗もこの程度で済むとは。
レーションを分ける事を提案したが、首を振られる。
マーメイドが魚を呼び出す。
新鮮な魚だ。
海もあるが、当然そこも悪魔の巣窟。今や釣りも命がけ。
魚も奇形だらけだ。
それに対し、マーメイドが呼び出した魚は見た感じ、とてもまっとうなものに見える。黙々と陣羽織の女がそれを焼き始め。そして無言で配り始めた。
ありがたくいただく。
焼きたての魚がこんなに美味しいとは。
志村も、ずっと忘れていて、涙が出そうになる。
ずっと下級の悪魔の肉やら、野菜屑やら、中身がおかしくなっている缶詰ばかり食べていたのだ。
人肉で餓えを凌いでいる者もいると聞く。
そんな中で、こんな贅沢が出来るのは、それだけで嬉しい。
「ええと、其方の陣羽織の方は」
そういえば、一切口を利かないなこの娘。
娘は黙々と焼き魚を頬張っていたが、話を振られると、小太刀を取りだす。
小太刀を少し開けてみせると、そこには「秀」と書かれていた。
流石に志村も小首を傾げるが。
霊夢が苦笑いする。
「その子びっくりするほど喋らないのよ。 ちょっと伝手があって、地獄の底にいたのをつれて来たんだけれどね」
「地獄の……底?」
「死人じゃないわよ。 どうにか苦労して少しずつ聞きだしたんだけれど、色々理由や償いを兼ねて、生きたまま地獄の深部で亡者と戦って、それでそれらの冥福を手伝っているのだそうよ。 閻魔公認でね」
「は、はあ……」
地獄があるのは、悪魔がいるのだから不思議ではないだろう。
ただ、其処に行ったり。
其処でずっと戦っていたり。
更には其処から誰かしらを連れてくるというのは、不可解極まりない事だ。
「そなた、その陣羽織は誰から貰った」
銀髪の娘に憑いている存在が言うと。
陣羽織女……秀の字と霊夢に言われているが。ともかく陣羽織女は無言でじっと銀髪の娘を見て。
そして、短刀で地面に文字を書く。
これ、ひょっとして昔の字か。
昔の日本語は、江戸時代の文献なんかを見ると分かるが、非常に崩されて書かれている事が多かった。
これなんかはまさにそれだ。
それを、銀髪の娘に憑いている存在は平然と読めているようである。
「なる程、恩人に一式貰ったというのだな。 盗んだわけではないと。 それも……おお、あ奴にか。 そうかそうか」
からからと笑い始める銀髪の娘に憑いている存在。
マーメイドは寂しそうに笑っているだけで、自己紹介もしない。
霊夢によると、このマーメイドも途中で合流したそうだ。
最初に陣羽織女と地獄で合流。
隠れ里から出るために、戦力が必要だと言う事で、閻魔に紹介してもらったらしい。その話だけで信じがたいが、アドラメレクを圧倒した技量だ。信じざるを得ないというのが志村としても本音だ。
そして東京に来た。
そもそもこの霊夢という女、空間を跳躍することが出来るらしく。
移動はまるで苦にしていないらしい。
「貴方たちの長と合流してから本格的な話とかはしましょう。 それで、此処に何か用事があるのではないのかしら。 行きがけの駄賃だから手伝うわよ」
「それはありがたい。 此処には本来、我々が本拠にするべき拠点があるが、ずっとこの東京を牛耳ろうとしていたチンピラの群れに抑えられてしまっていたのだ」
「へえ。 それを撃退も出来なかったと。 まああたしの隠れ里も似たような有様だったし、別にいいわ」
「そ、そうなのか」
まあ、ともかくシェルターに急ぐ。
戦場に戻ると、膨大なマグネタイトがある。
部下に命令して、回収しておく。これだけあれば、かなり戦力を増すことも出来るだろうし。
こわごわ様子を窺っている悪魔もいる。
どの悪魔も人間に対して敵対的なわけでもないし、好戦的な訳でもない。
中には独自のコミュニティを作って、他の悪魔から身を守っている者達さえいる。
高位の神が指導して、そういったコミュニティを作り。人間をある程度迎え入れたりもしているようだ。
志村も情けないと思う。
本来は人間がそれをやらなければならないのに。
人間は悪魔が指を指して笑う中、相争うばかりで、数を減らすばかりだ。
シェルター付近は幸い無事で、内部に侵入することも出来た。
エレベーターで降りて、通路に。
通路は幾つかあって、奥に部屋がある。これらの部屋の更に奧には、自動で食糧を生成する設備や、物資さえあれば武器弾薬を生成する設備もある。また中央管理コンソールも存在している他、一万人程度の人間だったら暮らす事ができる空間と、医療設備や物資もある。
詳しくは知らされていないが、奥には研究施設もあるという。
此処を放棄しなければならなかったのは痛恨の事態だった。
志村が酒につきあうとき、なんどもフジワラが愚痴を言っていたほどだ。
目立っていた悪魔は駆除。まあ、このくらいなら志村達で出来る。
其処でトラブルが起きる。
重要区画につながる扉の前で。
部下の一人が、あっと声を上げていた。
「ぶ、分隊長! 結界の解除用の符が……! 物資の入っていたリュックごと!」
「あの戦いの中でか」
「お、恐らく! も、申し訳ありません!」
「仕方がない。 あの戦いから生き残れただけで儲けものだ」
シェルターの奥の扉は、当然結界で封じられている。
だから阿修羅会に内部に侵入させずにいられたのだ。この封印はかなり特殊なもので、神でも簡単には破れない。
阿修羅会に抑えられている強力な神には、日本神話系の神格も存在している。だから、封印が破られていないのは幸運だった。
阿修羅会は保身のために基本的に動いている。
だから、攻めに転じる事は滅多にない。
故に封印を破るために、奴らの根拠地である地域から戦力を動かしたくなかったのだろう。
奴らの長はタヤマという男だが。
大物ぶっているが、それは見せかけだけ。小物丸出しの性格が、こういう所からも見えている。
「見せてみなさい」
「どうにか出来るのか霊夢とやら」
「結界はあたしの専門分野よ。 ふむ……ちょっと厄介ね。 少しその辺で暇を潰していて。 開けてみせるわ」
「……凄まじいな」
志村は感嘆する。
すぐに周囲を部下達と警戒に移る。
こんな状況だ。
鉛玉の一つだって貴重なのである。自衛隊の武器庫は阿修羅会どころか、野良の悪魔が巣くっている有様。
悪魔の中には自分の領域を巣としてしまうものがいて、そういう所は空間がねじ曲げられている。文字通りのエサ場であり、踏み込むとまず生きて出られない。しかもその手の場所では、悪魔の実力も上がるようなのである。自分に適した空間だから、なのかも知れない。
弾薬などを確保する作戦で、そういうエサ場に踏み込んで、何度も同僚を失った志村としては。
とにかく今後は厳しい事が嫌でも理解出来ていた。
シェルターの中にも雑魚悪魔はいる。
志村は悪魔を展開して、無害な内に雑魚を始末しておく。部下達は全員まとまって行動させる。
此処も、いずれ大人数を迎え入れて、それで。
復興のために用いるのだ。
元々は要人だけが逃げ込むために設計されていたという話も聞いている。
だが、そんなためだけにはもう使わせないし。
だいたいそんな要人なんて、大戦の時に死に果てた。
幻魔……様々な神話で英雄として知られるような悪魔をそう称するが。幻魔一寸法師は、彼方此方にあるダクトなどにも小さい体を利用して侵入し、内部を確認。悪魔などを退治してくれる。
鼠も駆除してくれる。
皮肉な話だ。
どれだけ悪魔が出ても、鼠は平気で繁殖している。同じようにゴキブリもである。
鼠もゴキブリも、人間なんかの比では無いタフさだ。
核戦争が起きても此奴らは滅びないだろうと言われていたが。
悪魔が滅ぼそうと思っても、滅ぼせないかも知れない。
「クリア。 お前達は」
「は、はい! 目につく小物はクリアしました!」
「動揺するな。 動揺した者から斃れる。 動揺したとしても、出来るだけ急いで心を落ち着かせろ」
「イ、イエッサ!」
部下達はまだまだだな。
ともかく、霊夢と、壁に背中を預けている陣羽織女。それと、霊夢の仕事を見ている銀髪の娘の所に戻る。
マーメイドは喉に手を当てて、声を抑えて歌っていた。
とても悲しい旋律だ。
マーメイドも性格が様々で。陽気な者から残忍な者まで色々いるが。このマーメイドは、とても辛気くさい雰囲気を受ける。
悲恋に破れたような。
あるいは、そうなのかも知れない。
心を壊してしまったり、哀しみでおかしくなってしまった者は志村もたくさん見てきた。大戦の前から、この国は……いやどの国もブラック企業なんてものが幅を利かせ、人間を使い潰して来た。
だから、志村が幼い頃から、そうやって心を壊してドロップアウトしてしまった大人はたくさん周囲にいた。
なんだか、そんな悲しい気分になる。
「開いた」
「ほ、本当か!」
「天津神と国津神の力を両方使っている厄介な結界ね。 何柱も降ろして結界を弄ったから、流石に疲れたわ。 後で少しでもマシな食べ物寄越しなさいよ」
「出来るだけいいものを用意する」
敬礼して、霊夢に返す。
此処からは、志村の仕事だ。
奥に入り、一つずつ調べて行く。
シェルターは流石にガチガチに結界で固められていたこともあって、悪魔に侵入されていない。
内部には少数の悪魔がいたが、それらは此処の設備を保全するために残されていた者達だ。
妖精シルキーが来る。家政婦……一時期記号化されていたメイドの格好そのものをしている。落ち着いたたたずまいの美しい女性だ。悪魔だが。
妖精というのは、西洋に存在する雑多な怪異……日本で言う妖怪のようなものだ。子供の背中に蝶の羽なんてのを想像する人もいるかも知れないが、そういう姿の者もいるというだけ。妖精の中には残忍に人を殺すものもいる。日本で言う妖怪と同じくらい多様性があり。性格もくせ者が多い。
シルキーは日本で言う座敷童に近い存在で、家について気に入った相手には福を為し、気にくわない相手には害を為す。同様の妖精はかなり種類がいる。有名なゴブリンの一部もそうだ。
此処のシルキーはフジワラの手持ちで、非常に忠誠心が高く、志村も何度も世話になっていた。
だから、シルキーが姿を見せたのを見て、志村は思わず敬礼していた。
「此処を守ってくれていて感謝する」
「戻って来たのですね志村さん。 フジワラ様は」
「無事です。 今回は頼りになる方々と運良く出会えて、ついに此処を……奪回する事ができました」
「外には何度も恐ろしい悪神が来ました。 破ろうと乱暴なことも。 怖がる子達を宥めるのが大変だったのです」
そうか、頭が下がる。
入口付近に、聖獣狛犬がいる。
聖獣というのは神の助けを得ている獣で、神話には多く存在している。狛犬もその一角である。
元は実在の動物である獅子の話が日本に伝わる過程でどんどん曲解され、最終的に守護者として神社などで祀られるようになったもので。
その変遷の過程に有名な沖縄のシーサーなどもいる。
シーサーも扱いやすい悪魔なので、駆け出しの人外ハンターなどに良く相棒として貸与され。
そして中には、とても強力に育つ個体もいるそうだ。
シーサーは神そのものの獣である神獣に分類されている。
霊格としては聖獣より上そうに見えるが、実際にはそんなこともない。
高位の神の使いとしての聖獣の方が、下位の神獣より力が上なんてザラにあることなのだから。
奥から、雑多な悪魔が出てくる。
邪鬼一本ダタラ。片目片足の、鍛冶師の格好をした恐ろしい姿の悪魔。
鍛冶の神が妖怪化したものだ。片目の鍛冶神は世界中に存在していて、あの有名なサイクロプスもその一角である。これは古くには、鍛冶師は片目を鍛冶の光で潰してしまう事が多かったから、だと言われている。また本邦では古くは無理な体勢で鍛冶をしなければならず、鍛冶師は片足を駄目にしてしまう事が多かったのだ。それがこの妖怪の姿の所以である。
一本ダタラは知恵すらなくただ暴れる邪鬼に分類されているが。
しかし鍛冶が好きな性格は変わっておらず、このシェルターではツギハギに管理を任されていた。
堕天使メルコム。
地獄の会計係と言われる、小柄な猿顔の堕天使だ。
これはいい性格をしている堕天使らしい悪魔だが。堕天使というのは契約に強く縛られる性質を持っている。
このため、フジワラが複雑な契約をして、此処の管理を任せた一体だ。
不服そうだが、それでも仕事はしていたようである。
これらの悪魔を、シルキーがまとめていた。
シルキーはフジワラが多くの戦いに伴った悪魔で、実力は生半可な悪神程度だったら凌いでいる程だ。
「内部を確認してくる。 皆、入口付近を守って欲しい。 安全と内部が荒らされていない事を確認できたら、人外ハンターの本部を此処に移す作戦に移行する」
「イエッサ!」
「あたし達はこの辺を見張ってるわよ」
「頼む」
霊夢にも敬礼を返しておく。
霊夢はため息をつくと、「秀」を連れて外に見回りに行くようだった。
敵対的な悪魔だったら、どれだけでも始末してくれれば有り難い。
下級でも人間を簡単に捻り殺す事が出来る悪魔は多いのだ。
それに、外には終末を象徴するように、死人が歩き回ってもいる。
あまりにもたくさん死にすぎたからではないか、等とも言われているが。
責任感がある自衛官や警官から先に死んでいった。
そういった死人が土に帰る事も許されず、死人となって歩き回って人を襲っているというのは、志村にはとても悲しい事だった。
志村は順番に確認をする。
武器庫、問題なし。おおと声が漏れるほど、状態がいい銃火器が残されている。黒い背戦闘用スーツもある。
スマホを弄って確認。
これだ。
自衛隊が米軍と共同で開発していたものらしい。フジワラが探していた。あったら是非報告してくれと言われている。
残念ながらプロトタイプが僅かだけしか存在していないらしく、精鋭を募って見つけたら渡そうという話をしていたのだが。
四着しか無事なものはないか。
少なくとも志村が着ることはないだろう。
プラントは無事だ。
これは有り難い。新鮮な野菜なんてまともにとれず、業務用だったライトを用いて痩せた土地で無理矢理野菜を育てているのだ。
此処にはみずみずしい野菜がたくさんある。
衣服などもあるし、水も豊富にあるようだ。設備は殆ど無事だ。
此処での決戦をフジワラが選ばず、温存する事を選択した。それは正しかったのだと、よく分かる。
コンソールも無事だが、こっちは電源から入れないといけないだろう。
志村は技術仕官ではない。
というか、パソコンなんてまともに扱える奴はいないだろうし。どうにか技師を探し出さないと。
「武器庫、水、食糧、いずれも手つかずだ。 機械類も古くはなっているが無事なものが多い。 シルキーがしっかり音頭を取って、此処を管理してくれていたんだ」
「し、志村分隊長、たた、食べてもいいッスか」
「調べた後でだ。 生のトマトなんて、俺もいつぶりに見るのかわからん。 果物なんて、大戦以降見た事もない。 ……フジワラから言われている。 完成品を我々の分だけなら食べて良いそうだ」
「やった……!」
部下達が目の色を変えているのも当然だ。
此処が阿修羅会に抑えられたらどうなったか。
分かっている。
焼き払われていただろう。
水産業は反社のシノギだった。これは古くからずっとそうだった。
反社は例えばウナギやチョウザメ(キャビアはチョウザメの卵である)などの金になる魚は、絶滅しようと関係無く狩りつくした。それは何故か。
希少価値が高いほど、金になるからだ。
それが自然にどんな悪影響を与えようとどうでもいい。
自分達だけ金が儲かれば、他の人間どころか、地球ごと死に絶えてもかなわない。それが反社の考え方である。
阿修羅会はその反社の思考方法を今の時代まで引き継いでしまっている。
だから東京は地獄のままだ。
奥へ。
地下には幾つかの設備がある。
地下の動力炉は、確か今東京に電力供給している何かとは別系統で動いているという話である。
それの無事を確認しなければならない。
ジャックランタンを呼び出し、階段を下りていく。
この辺りも確か悪魔が配置されている筈だが。
いた。
階段を塞ぐようにして座り込んでいる武人が一人。幻魔ゴエモン。
伝説の石川五右衛門が幻魔となったものだ。
史実の石川五右衛門は、豊臣秀吉に釜ゆでにされたことだけが分かっている凶賊に過ぎない。これについては複数の一次資料が残されており、当時の人々は石川五右衛門に同情などしておらず、高級品の油を使った贅沢な処刑だなどと言い残している程だ。つまり史実の石川五右衛門は、ただの悪辣な賊だったのである。
それが何故か死後に伝承で尾ひれがついて、散々暴走した挙げ句に、義賊だの元忍者だのと色々な設定が付け加えられて今に至る。
この幻魔ゴエモンは、そう言った伝承が神格化した結果出現したもの。
悪魔なんてそんなものだ。
事実都市伝説の妖怪なども、悪魔として出現している。どれもが大した実力ではないのだが。
「フジワラの部下か。 奥には誰も通しておらぬ。 少しかび臭いかも知れぬが、許せ」
「はっ。 奥を確認させていただきます」
「うむ、行け」
ゴエモンは若干性格が尊大で、敬意を払わないと怒る。
その代わり、フジワラの切り札として幾つもの戦いで武勲を上げて来た優れた悪魔である。
今もこうして、最重要地点を守っているのだ。
その信頼がよく分かる。
奥は確かに埃が積もっていたが、ともかく最深部へ。灯りはうっすらついているが、非常用電源で目には優しくない。
巨大なあれは、確か小型原子炉だ。それも核融合である。
大戦の原因となった幾つかの事件の中に、日本での新技術開発があったという噂を聞いたことがある。
核分裂炉は一度火を入れるととめる事が出来ず、ずっと核廃棄物を出すものだが。
核融合炉は強烈な放射線をどうにかクリア出来れば、凄まじい電力を産み出すことが出来る非常に有能な発電システムだ。
すぐに指定されているメモ通りに確認する。
問題なし。
どっと汗が流れた。
「よし、これでいけるぞ! 後は……」
突然、ドゴンと凄い音がして。
皆が一斉に銃を向けると、並んでいる装置の一つの扉が、内側から吹っ飛んでいた。
手が出て来て、そして続いて体が出てくる。
頭が真っ白な、豊富な髭を蓄えた老人だ。目つきが異常に鋭く、体つきも恐ろしく逞しかった。肌の色が人外じみているが、人間でいいのだろうか。あまり考えたくない。なんというか、悪魔より怖い。
「最後に冷凍睡眠装置に入って、誰かが戻ってきたら起きるように設定しておいたんだがな。 やっとか」
「だ、誰だっ!」
「若造、今は西暦何年だ」
「こ、答えろ、撃つぞ!」
老人は動じる様子もない。老人は、向けられているM16の銃口複数を、怖れてもいない。
そして、手慣れた様子で手元の時計を操作。
「閉じ込められてから25年か。 この様子だと西暦2050年前後だな」
「き、貴様は……」
「色々縁あって此処の設計を手伝ったものだ。 お前等は自衛隊の生き残りか。 ならば主に伝えろ。 「地獄」が戻って来たとな」
笑う老人。
志村は、背筋に冷たいものが流れるのを感じていた。