一足先に新宿で戦っていたフリン達。
しかしながら入れ替わりで池袋の威力偵察を終えた霊夢が、その後を追います。
新宿に現れた神格の正体を知ったこと、池袋攻略に必要な事。
何よりも、池袋が一刻を争う状態である事が理由です。
今までは為す術なく多くの人々が食われていくのを見守る事しかできなかった人外ハンター協会。
反撃を開始するためにも、連携での作戦は必須なのです。
東のミカド国で進捗を報告。
ホープ隊長の話によると、現在五つの分隊が東京で活動していて、その中にはナバールも入っているという。
まるで別人のように変わったらしく。
今では分隊の他のサムライの足を引っ張るどころか、勇敢に最前線で戦っているという事だった。
そうか、変われたんだ。
変わる事ができる人間なんて滅多にいない。とても凄い事だし、立派なことだと思う。だから、素直に良い事だと僕は思った。
パソコンを初めとする貰った遺物を納品して、それで相応の報酬を貰う。
新鮮な肉や野菜などを受け取ったので、どうしようかと悩んだが。いっそのこと、霞ヶ関の人外ハンター本部に持ち込む方が良さそうである。彼処の方が物資が集約されていて、色々役立てるだろう。
ヨナタンがその時話を変えてくれて。生きている鶏や、植物の種に変えてくれないかと交渉していた。
それで、生きている鶏十羽ほどと、作物の種を貰って、霞ヶ関のシェルターに戻る。
勿論その間に、二日間しっかり休みを取り。
武器の整備もして貰った。
それとサムライ衆の制服についても、専門の仕立屋に直して貰った。激戦で吹っ飛ばされたりして、それなりに傷んでいたからである。
充分に準備を整えてから、霞ヶ関の……国会議事堂そばのシェルターのターミナルへと飛ぶ。
すぐにシェルターに出向くが。
生きている鶏を見て、人外ハンター達が目を剥いていた。
「鶏だ!」
「いつぶりに見るんだ!?」
「落ち着いて。 今食べてしまったら、元も子もないよ。 奥で育てられるって話があるから、この子等が産んでくれた卵とか、増えた分の肉が出回るのを待った方がいいと思う」
「ああ、分かってる。 でも、本当に有り難い! 卵は栄養の塊だ。 滋養が足りていない人間にはこれ以上もない助けになる!」
そんなに喜んでくれるのは分かるが。
だが、そのまま渡してしまったら、すぐに捌いて食べてしまっていただろう。
それでは駄目だ。
シェルターに持ち込んで、すぐに姿を見せた志村に引き渡す。志村も驚いていたが、すぐに手篤く奥へ運んでくれた。
作物の種もだ。
作物に関しても、奥で育ててはいるらしいのだが、その種類も最低限らしいのである。今回持ち込んだ作物のリストをヨナタンが渡すと、栄養士だという人と一緒に、感心して何度も頷いていた。
「これで栄養食のバリエーションを豊富に増やせますね」
「卵はすぐに全てを食用には廻せないな。 ひよこにする分を考えると、最初はあまり多くは使えないか?」
「世話は老人や子供に任せましょう。 これで更に医療の態勢を整える事ができます!」
「ああ、ありがたい話だ」
その後は、ナナシとアサヒと合流。
案の場と言うか、こっちでは殆ど時間も経過していない。
ただ、マッカを使って、悪魔合体で悪魔をかなり強く出来たらしい。それは心強い話である。
合流して、即座に新宿のターミナルに飛ぶ。
此処からだ。
まだまだ、退治しなければならない悪魔はわんさかいる。
数日がかりになるのは覚悟の上である。
ヨナタンが、幾つかのプランを立ててくれていた。
「まず地上部分に上がろう。 地上部分にもかなり厄介な悪魔が数体いて、人々を苦しめている。 それらを片付けてから、都庁と言う所にいる奴の相手をすることを考えるべきだろうな」
「地元の人外ハンターでどうにかできないのかよ」
「どうにもならないんだろうぜ。 まだ来たばかりの俺らに仕事が振られるくらいだからな」
「ワルターさんがいうなら……」
ナナシは若干不満そうだが、それについては我慢して貰うしかない。
とにかく複雑な経路を通って、地上に。途中で雑魚悪魔を見かけるが、アサヒが欲しいというので交渉させる。
まあある程度ぼったくられるが、支援もあるので、不意打ちの隙は見せない。
契約成立。
悪魔をどうにか仲魔にして、それで先に。
マッカで一度仲魔にした悪魔を呼び出すよりも、どうしても野良の悪魔を捕まえ直した方が安くつく。
これについては仕組みがよく分からない。
マッカというお金は最終的には魔力みたいなものになるらしく、それを複雑な仕組みで固形化してお金にしているらしい。
東京でも東のミカド国でもそんなものが流通しているのは不思議ではあるが。
確かにこれは偽造しようがないし、偽造できないなら通貨にするのは悪くはないのかも知れない。
地上に出る。
僕達が入ってきた所とは、光景がまるで別だ。やはり巨大な建物が林立していて。その一つに大きな蛇の悪魔が巻き付いているのが見える。
だが、それはするすると這いながら、別の所へ行ってしまった。
かなり広い通りで、其処で悪魔が群れている。
この辺りの悪魔の掃討作戦が続けての仕事だ。
さっさと片付けるか。
手持ちの悪魔達を展開すると、すぐに相手もやる気になる。
襲いかかってくる悪魔達を、即座に迎撃。
片付けきるまで、少し時間が掛かる。視線がある。後ろから見ているのは、多分阿修羅会だろう。
襲いかかってきた人型の悪魔の頭を掴んで、地面に叩き付けて粉砕。マグネタイトに変わっていくのを見やりつつ、皆と話す。
「後ろにも気を付けておいて」
「ああ、阿修羅会だかだろ。 後ろでこそこそしやがって。 悪魔の群れに放り込んでやろうかな……」
「あまり上品ではありませんけれども、確かに一理ありますわ。 こんな状態で、戦える力があるのに戦わない。 恥を知らない者達ですわね」
「それはそうとして、どうやら本命が来たようだぞ」
ヨナタンが警告してくる。
奥から現れたのは、なんだろう。ちょっと形容しがたい悪魔だ。
女性の人間型なのだが、手がたくさん生えていて。非常に体がアンバランスだ。全ての手に武器を持っていて、非常に獰猛そうである。それでありながら上半身は裸で、羞恥心の欠片も見えない。
「インド神話系の神格のようだけれど、失伝してしまっている存在ね。 カーリー神の原型かもしれないわ」
「うーん、インド神話もカーリーという神様も分からない」
「ともかく弱くはないはずよ。 気を付けて」
凄まじい雄叫びを上げる上裸の女悪魔。
跳躍して、そのまま躍りかかってくる。
前に飛び出したスイキが攻撃を防ぐが、瞬く間に多数の剣撃を浴びて木っ端みじんにされてしまう。
凄まじい剣技だ。
だが。
横から、アイラーヴァタが突貫。質量差でぶっ飛ばしに懸かるが、それも踏みとどまって、地面を砕きながら耐えて見せる悪魔。
ナナシとアサヒが、それぞれ銃で乱射するが、五月蠅そうにするだけ。
だが、足を止めたのが其奴の命取りだった。
ワルターが斬りかかる。ヨナタンと、多数のパワーも。
飽和攻撃を受けて、更に押し込んでくるアイラーヴァタの力もある。凄まじい牙が生えている口を開いて喚く女悪魔だが、四方八方からの攻撃を防ぐので手一杯だ。
その間に僕は後ろに歩法を駆使して回り込むと、牙の槍を相手の後ろから通していた。
綺麗に通った。
そのまま踏み込んで、衝撃波を悪魔の体内に叩き込む。
全身に罅のように傷が入って、鮮血が噴き出す女悪魔。
離れて。
僕が叫ぶと、アイラーヴァタも必死に逃れる。女悪魔が奇声を上げながら、力を溜めにかかる。
自分が出来るから知っている。
あれはチャージだ。
もし奴が何かしらの力業を繰り出したら、死者が出る可能性も高い。
だが、その瞬間。魔術担当の悪魔が、一斉に火力投射。悪魔が、断末魔の悲鳴を上げる中、数十の攻撃魔術が、その欠片の一つに至るまで焼き尽くしていた。
「人間大でも相当に手強い悪魔だった。 こんなんがワラワラいるんだな」
「さっきのビルに絡みついていた奴だって相当に強いはずだよ。 とにかく、順番に片付けて行かないと」
「そうだな……」
まだ余力はある。
手傷を受けた悪魔を、ヨナタンの天使達が回復させていく。
パワーの内一体が、光に包まれて転化する。
なんだか半透明の、より強い光に包まれた天使になったようだった。
「中級二位、ヴァーチャーよ。 力天使と言われる階級の天使ね」
「パワーが能天使なのに、ヴァーチャーが力天使なんだね……」
「その辺りは仕方がないわ」
「まあ、そういうものだと思うよ」
ただこの上からは、かなり転化に手間が掛かりそうだとバロウズが言う。
見た感じ、ヴァーチャーは魔術特化型で、今後ヨナタンの天使が強くなって行くのだとすると、それでも当面は前衛を務めるのはパワーになるのだろう。
少し新宿駅に戻って休憩を入れる。僕らは持ち込んだ保存食を口にする。これは、ただでさえ食糧事情が色々とよろしくない東京の人達の食糧を取る訳にはいかないという理由もあるし。
何よりもあわないものを食べて体調を崩したりしたら、元も子もないという理由もある。
ちなみに阿修羅会はいつの間にかいなくなっていた。
「ナナシとアサヒは、それ何食べてるの?」
「外で取った悪魔肉の串焼きだよ。 欲しいかフリンさん」
「いや、いらない。 二人でしっかり食べて。 それは東京の人達で食べるべきものだよ。 食糧が足りている僕らが、それを取っていいものじゃない」
「ふーん、真面目なんだな」
別に真面目じゃない。
僕は農家の出だ。
食べ物の大事さを理解している。
お米だって野菜だって、作るのにどれだけの手間が掛かっているか。それは実際にやってみないと分からないだろう。
それをカジュアリティーズは臭いだの不潔だの言っているラグジュアリーズが不愉快な理由につながっている。
連中が何をしていると言うのか。
実際に誰かが手を動かさない限り、服も魚もお肉も手に入らない。金を動かしているだけの輩がえらいものか。
それから数体の手強い悪魔を片付けて、一旦地下に戻って休憩する。
干し肉をかじっていると、アサヒが興味を持ったようなので、分ける。食糧はこっちが豊富に持っているのだ。
アサヒが驚いたようだった。
「悪魔の肉と全然違う……」
「ただの燻製にした豚肉だよ。 保存食用にしてあって、この造りだと一冬は余裕で越すんだ。 普通だとあんまりたくさんは食べられなくて、冬に妊婦とかのためにとってあるんだよ」
「東のミカド国って場所も、天国じゃないんですね」
「天国なものかよ」
ワルターがそれに対して即応。
僕も同感だ。
ヨナタンが咳払いして、休憩に徹するように言う。いっそ僕らだけ戻るのもありだ。一眠りしてくるくらいの時間は、此方では誤差である。
「わたくしが少し食糧を持って来ましょうか。 組織的な食糧輸送はサムライ衆が戦略として判断していますけれど、個人的な携帯食くらいなら……」
「わ、イザボー姉さん優しい! お願いします!」
「ま、まあそうですわね。 飴が良いかしら」
飴か。
僕も話にしか聞いたことがない。サトウキビそのものを扱っている村が少なくて、もの凄い高値がつくのだ。甘味は基本的に僕達は果物から取る。蜂蜜は一部の専門家だけが扱っていて、砂糖と同じくらい高いので、滅多に手に入らない。砂糖を贅沢に使って作る菓子は、ラグジュアリーズが独占している。
僕の視線を見て、咳払いするイザボー。
「皆の分も持って来ますわ。 家から持ち出すことになるから、戻ってから、ですけれどもね」
「飴か。 死に際の爺さんが、一度食べて見たかったとか言っていたな。 俺の分もくれな。 爺さんにあの世でどんな味だったか説明しないといけないし」
「分かっていますわよ」
「僕の家からも保存食は持ってくるよ。 皆には常に戦闘で世話になっているからね」
ヨナタンもこの辺りは発想が柔軟か。
ともかく少し休んだので、すぐに悪魔退治に戻る。
銃の扱いについては、アサヒはかなり上手いようだ。今は拳銃という、僕らも貰っている銃を使っているが。ある程度経験を積んだら、アサルトライフルというのを持たせてもらうらしい。
大量の弾をばらまける強力な銃で、大戦が起きる前の世界に限れば圧倒的な制圧力を持つ当時の戦士のお供だったそうだ。
一方ナナシは連戦で接近戦の技量が増している。
ワルターがアドバイスをして、それを柔軟に取り入れて、アクロバティックな動きをして悪魔と戦えないか試しているようだ。
僕はちょっとまだ危ういから、前線には出ないようにと言ってはいるが。
手持ちの悪魔も順当に強くなっている。
肩を並べて戦えるようになる日は、そう遠くないはずだ。
地上に出て、廃墟になった新宿の街の中を行き、指定されている悪魔を片付けて回る。阿修羅会の奴らが後方からつけてきているが、放っておく。
あれはこっちに仕掛けて来る度胸なんてない輩だ。
見張っておけとだけ言われているのだろう。
新宿の地上部分にある建物に入ると、貧しい身なりの人と、悪魔が一緒にいた。悪魔を使役している様子はない。
ただこれは、どうみても共存出来ている様子もない。
悪魔が怖れている人間をエサとしているだけ。ただ肉を喰らっていないだけだ。
両手に剣を持ち、全身にカラフルな刺青をした角のある男の悪魔は、此方を見て鼻を鳴らす。
かなり強い悪魔だ。
僕としても、慎重に行動するしかない。
「邪鬼ラクシャーサね。 インド神話における神の敵対者の一角。 日本では羅刹として知られているけれども、天部の眷属になっている事も多いわ」
「ほう、詳しいじゃねえか。 俺は生憎そんなんは御免だがな。 此奴を痛めつけて恐怖を喰らっているのが一番だ。 エサも適当に与えてるんだぜ? 感謝してほしいくらいだが……」
「畜産農家みたいな言い分だね。 畜産農家の人間が、家畜を虐げているとでも思っているの?」
「なんだこんな場所にそんなものいねえってのに、知った風な口を利きやがって」
苛立つラクシャーサ。
それで完全に注意が僕に向く。
その間に、ナナシとアサヒが忍び足で行く。
ラクシャーサが気付いた時には、二人が捕らえられた物乞いみたいな格好のおばさんを担いで、逃げ出していた。
「てめえら、俺のエサを!」
「あのねえ。 最終的に出荷したり食べたりするにしても、畜産農家の人間は家畜を可愛がるのが当たり前なんだよ。 肉も乳も出が悪くなるし、次の世代も生まれなくなる。 だから優しい人には向いていない。 可愛がると食べるを切り替えなければならないからね。 あいにくだけれど僕はそういう事情を実際に知ってる。 だから君の事は色々許せない」
「てめ……この東京の者じゃねえな!」
「天使ではないよあいにくだけど。 だけれど、正解かな」
わめき散らすラクシャーサに、そのまま牙の槍での連続突きを叩き込む。二刀を振るって弾き返すラクシャーサ。流石だ。確かに強い。
だが、僕も切り札を使えるようになって来ている。
既に出現していたアナーヒターが、ラクシャーサの足下を凍らせる。足捌きで立ち回ろうとしたラクシャーサが、あわてた瞬間。
大ぶりからの渾身の一撃をワルターが叩き込む。それすらも二刀で防ぎ切るラクシャーサだが。
僕の速度特化の突きが、体を数カ所抉る。
更に僕ら二人が飛び退くと同時に、ヨナタンとイザボーが雷撃魔術を叩き込む。悲鳴を上げるラクシャーサだが、タフだ。
天使達が前衛になって、暴れるラクシャーサの攻撃を全て受け止める。足下の氷を無理矢理砕いて暴れ回るラクシャーサだが、足捌きが明確に落ちている。息も。
その間に僕は、支援魔術を全力でかけ続ける。
それに気付いたラクシャーサが、凄まじい怒りの声を上げた。
「この、数で押しきりに来やがって……っ!」
「いつもはそうされる立場だけどなー」
「うるせえっ! ずたずたに切り裂いてやる!」
飛びかかってくるラクシャーサだが、その動きが空中で止まる。全身に横殴りに針が叩き込まれたのだ。
間近で見ると、もの凄い鋭さと太さだ。
ぎゃあっと哀れっぽい悲鳴を上げるラクシャーサ。
僕は勿論、そのまま全力でラクシャーサを串刺しにする。それでも刀を振るおうとするラクシャーサだが。
ワルターとヨナタンが、同時に両の刀を手首から切りおとし。
更にはイザボーが、渾身の冷気魔術を、僕が飛び退くと同時に叩きこんでいた。
「ち、畜生っ! あ、あのババアは、俺が戯れに助けてやらなければ、もう他の悪魔に食われていた……んだぞ!」
「そう。 ならば滅ぼさないでおいてあげる。 今度はその人等に呼び出されて、使役でもされなさい」
「……くそっ」
消えていくラクシャーサ。
この針の使い手には覚えがある。
建物の入口で、ナナシとアサヒが手を振っている。ちゃんと人質を開放した。二人ともちゃんとやれている。
そして、針の使い手が、降り立っていた。
「想像以上に出来るわね」
「全く気配がなかったけれど、どうやってここに入ったんですか?」
「ああ、空間を跳べるのよ。 制限も多いけれどね」
「空だけではなく空間もか。 凄まじい」
降り立った使い手、霊夢に、ヨナタンが素直に賛辞を述べる。
さっきの暴れまくったラクシャーサに捕らわれているあのおばさんの救出が依頼だった。これくらいやればある程度この地での信頼は得られただろう。
本当はもっと色々やるつもりだったのだが、この人が来たと言う事は、何かあったということだ。
「それで、何かあったんですね」
「ため口で良いわよ。 同じくらいの年だし」
「……どうかしたの?」
「素直でよろしい。 此処に巣くっている悪魔の正体が分かってね。 ちょっと此方の関係者だから、連携して行動したいと思っていて。 ここに来る前に話を聞いたけれど、地下でも地上でも悪魔をかなり退治してくれているって話で、特に地下では誰もどうしようも出来なかった死者の群れをまとめて浄化してくれたそうね。 此方としては、試すのはもう充分。 それよりも、協力を頼むわ。 この後に控えているおおいくさの下準備に、此処の悪魔を仕留める事が必須なのよ」
この人が助けを頼んでくるほどの相手か。
ちょっと笑い話にもならないな。
ともかく、新宿駅に降りる。おばさんはうわごとをブツブツ呟いていた。話を聞く限り、あの捕まっていた場所が自分のお店だったらしい。体が悪くなってきて、もう最後だと考えて、懐かしいお店に行ってみたら、あの悪魔に捕まったそうだ。
ただ、死なないように回復の魔術を使える手下を呼んで手当てをさせたり、なんだか分からない食べ物も食べさせられていたのも事実らしい。
やり方を良く理解出来ていないだけで、クズというわけではなかったようだ。
一瞬だけだが、戦闘でアナーヒターも活用出来た。まだまだ戦闘で恒常的に呼ぶには力が足りないが、それでも大きな進歩だと言える。
人外ハンターが、すぐに志村に連絡を入れてくれる。
これから迎えに来るそうだ。
このおばさん、どうせ此処では生きていけないだろう。それならば、あのシェルターで助けて貰った方が良いはずだ。
ナナシとアサヒも、此処で一度離れるという。
志村が連れて行くそうだ。
「ええ、もっと戦いたかった!」
「ナナシ、私達後方支援しか出来ていなかったでしょ。 やっぱりもう少し、身の丈に合った任務からだよ」
「それもあるけれど、護衛が一番任務としては実戦性が高いよ。 どうせ行き来するときに悪魔が出るでしょ。 護衛対象を守りきるのは、自分一人を守るよりもずっと難易度が高いんだよ」
僕が諭すと、ナナシはそんなもんかと頭を掻く。
ワルターが、どうせすぐに会えるし、また任務を一緒にやろうと声を掛けると、ぱっとナナシの顔が明るくなる。
分かりやすいことだ。
でも、この子の年頃だったら、多分それでいいのだと思う。
そして次にあった時は、きっともっと強くなっている筈だ。
霊夢におばさんとナナシとアサヒを預けて、僕達は一度ターミナルから戻って、休憩を入れる。
これから厳しい戦いになるという話だ。それなら万全の態勢を整えておいた方がいいだろう。
風呂と一眠りくらいは、まるで問題にもならない。
後依頼をこなした結果貰った遺物も納品しておく。僕としては全く分からないものばかりだけれど、ウーゴは或いは正体を見抜くかも知れないし。それでやはり貴重品があったようで、それなりにマッカを貰えた。これで更に手持ちの悪魔を調整出来るだろう。
風呂に入って一眠りする。
その間にヨナタンはせっせと報告書を書いてくれていたようだ。
既に他のサムライの班も移動範囲を拡げていて、彼方此方で人外ハンターと連携して悪魔と交戦しているらしい。
すっかり心を入れ替えたナバールもその中にいて、この間はかなり大きな悪魔を倒して武勲を上げたそうだ。
無能だった父親とは偉い違いだとホープ隊長が言っていたと言う。
それを聞いて僕は自分の事のように嬉しかった。
ナバールは変わったのだ。それで変わった事が報われた。
変わる事で報われることは、絶対では無い。世の中には完全な因果応報なんてないんだから。
だけれども、今回はそれが働いてくれたのである。
神様がどんな存在かはしらない。少なくともいたとしたら、東京の有様について一言でも二言でも面罵してやりたいと思うけれど。
それでも今回だけは感謝してやる。
皆で集まる。僕としても整備して貰った牙の槍を受け取って、状態は万全だ。手持ちの悪魔達も少し調整して、更に戦力を挙げている。ヨナタンも手持ちの戦力について話してくれたが、パワーに転化する天使が更に増えているそうだ。
「パワーのままでありたいという天使も少なくない。 悪魔との最前線で戦う盾であり矛でもあるからだそうだ」
「随分慕われているな。 俺も悪魔を数体入れ替えたが、俺は実力がある奴だけつれて行くつもりだ」
「別にそれでいいのではなくて? わたくしも魔術戦に特化するべく、悪魔の編成を常に考えていますわ」
皆も考えて、力をどんどん上げている。
僕も負けてはいられないな。少なくともアナーヒターを前線で常に戦えさせられるくらいにならないと。
そう僕は考えながら、新宿に向かう事を告げていた。
力が充溢し、少しずつ出来る事が増えてきているフリン。
強力な手札アナーヒターも手に入れ、限定的に使えるようになって来ていますが、まだその実力は絶対でも圧倒的でもありません。
東京はそれだけの魔郷。
そこで仇を追うためには、様々な存在の助けが必要なのです。
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