もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

47 / 126




池袋での連携戦を通して、フリン達と人外ハンター、それに英雄達は連携出来るという信頼を構築します。

その末でそれぞれの目的を提示することに。

ただ何もかもが違っているわけでもありません。

フリンからしても、この東京の惨状を見逃せはしないからです。





1、悪鬼の行方

東のミカド国の身分制度。気候風土。土地の名前が東京と同じ。サムライ衆という制度。それに、サバトが行われて。人々が悪魔にされてしまう事件。

 

本は基本的にバイブルしか許されない。

 

持ち帰った遺物は一部の者だけが活用している。

 

それらの話を聞くと、フジワラは呻いていた。

 

「まるでディストピアだ」

 

「ディストピア?」

 

「ユートピア……楽園の逆の言葉だよ。 働く者から知恵を奪い、指導者層ですら決められたことだけしかしていない。 そんな国が本来長続きする筈がない。 ましてや1500年だって……?」

 

「それは僕達もおかしいとは思っていました」

 

ヨナタンが、ラグジュアリーズの不可解な家系についてのタブーについて話すと、フジワラは頷いていた。

 

大戦が起きる前。

 

この世界はたくさんの国と、今の何千倍に達する人間が広い世界にいたという。

 

たくさんの人間はたくさんの国を作っていて。

 

それらの中には、酷い指導者に虐げられた酷い国や。

 

図体ばかり大きくて、軍隊を使って他の国を脅してお金も財産も奪っていくような国も存在していた。

 

中には一握りの人間だけが良い思いをするためだけに、他の人間を全部家畜以下に扱っている国も存在したという。

 

ただ、そういった国も。

 

永年続いているわけではなかったそうだ。

 

「人間の作る国家というのは、どうしても堕落して、最終的に崩壊するものなんだ。 それは私が知っている万年の歴史で、ずっとそうだった。 私のいた日本という国も、一応一番上にいた人はずっと同じだったけれども、それは運が良かっただけで。 その下の権力構造はずっと変わり続けていたんだよ」

 

「だとすると、腐りきったラグジュアリーズと、何も考えてないカジュアリティーズの東のミカド国なんて、長持ちするはずもないですね」

 

ワルターも敬語で接している。

 

イザボーはずっと考え込んでいた。

 

「僕はツギハギとアキラという仲間と一緒に、天使達が攻めこんできていた岩盤の上の世界の至近まで迫ったんだ。 アキラは激しい戦いの末に傷ついた私達を帰して、一人でその先まで行った。 その先が人が生きている世界だったというのは私には朗報だったが、それでもディストピアが1500年も続いていたなんてね。 天使達がどこに行ったのか、それとも……」

 

「なんだか気になる事があるんです」

 

僕は前からの疑念を口にする。

 

そう、ギャビーだ。

 

あれは本当に人間か。

 

それに、ギャビー以外にも、おかしな気配を最近は時々感じるのだ。

 

もしもそうだとすると。

 

ギャビーは天使。それも、ヨナタンが連れている天使達が大天使と呼ぶような、天界の重鎮なのかも知れない。

 

そして天使はギャビーだけではなく、色々な場所で、東のミカド国に潜んでいるのではないのだろうか。

 

「なるほど。 そのギャビーという女性司祭には気を付けた方が良いだろう。 東のミカド国を千五百年も裏から支配し続けた黒幕かも知れない」

 

「ただ、分からない事も多いんです。 僕達に対して、ギャビーは勅命で侵略者である悪魔を撃ち払えといいました。 東京を……上ではケガレビトの里と呼んでいますが、東京を支配しろとは言いませんでした」

 

「天使達は、悪魔も人間も皆殺しにする勢いだった。 何故今更、それを止めたのかは気になる。 それに……」

 

僕は末の子から聞いた話についても説明しておく。

 

ラハムに転化した末の子が、リリムだった時代に話してくれたこと。

 

夜魔リリスは、知恵を与えるのだと言っていたという。

 

その結果悪魔化するようならそれはそれでどうでもいいと。

 

悪魔化するような弱い方が悪いのだと。

 

「リリスか。 それについても此方もある程度噂なら持っているが……本を読むだけで悪魔化するとは、どういうことだ?」

 

「ええと、僕の手持ちはこんなことを言っていました。 時間を掛けて品種改良した結果、東のミカド国の民は「無垢な」状態になっているそうなんです。 そんな状態の人間に知恵を一気に与えて、悪魔が憑依しやすい状態にしていると」

 

「無垢な状態ね。 まるでエデンだな」

 

「エデン?」

 

楽園のことだと、ヨナタンが教えてくれる。

 

ヨナタンはあの退屈なバイブルを、自分で読んで内容を確認しているらしい。

 

それによると、エデンというのは神が人間のために作った楽園なのだとか。

 

フジワラが呆れ気味に言った。

 

「もしもリリスがそこで知恵を撒いたというのなら皮肉極まりない話だ。 其方のバイブルがどんなものかは知らないが、此方での一神教では、人間はエデンから知恵を得た罰で追放されるんだよ。 知恵の実といわれるものがあって、それを食べた人間は神の怒りをかったのさ」

 

「そんな逸話はバイブルにはありませんでしたね」

 

「だとすると、僕らが持っているバイブルと君らのは違うとみていい。 確か本はあったはずだ。 天使が大暴れして大量殺戮を繰り返した今でも、バイブルは残っているんだよ。 ちょっと待っていてくれ」

 

フジワラが一度席を外す。

 

色々情報交換をして、僕らもちょっと休憩を入れる。

 

此処のトイレは、前に使った仮設トイレよりも更に優れていて、本当に衛生的で驚かされる。

 

東のミカド国でも水洗トイレを使っているが、あらゆる全ての技術が違う。

 

すっきりしたので。それで戻る。

 

飲み物を配膳してくれる妖精シルキー。

 

それを見て、おっとワルターが嬉しそうに声を上げていた。

 

「これはなんだ?」

 

「インスタントですが、紅茶です。 ミルクティーにしてあります」

 

「紅茶。 知らない飲み物だ」

 

「熱いので気をつけてください」

 

シルキーは丁寧に礼をして、それでさがる。

 

部屋の監視は武人然とした悪魔がしているが、僕達に敵意も見せていない。西王母を霊夢と一緒に倒した事で、信頼を得られてはいるようだ。

 

ミルクティーという飲み物は、とにかく甘くて、それでいて熱くて、ちょっと驚かされた。

 

これは飴と同じ砂糖を使っているのか。

 

それもこんなに贅沢に。

 

技術が違うんだなと、やはり思い知らされる。うまいうまいとワルターは大喜びしている。

 

美味しいものを食べ慣れているヨナタンもイザボーも、目を丸くしていた。

 

「これは蜜水などとは比べものになりませんわね。 とても上品で素敵な味ですわ」

 

「うん。 此処まで技術に差があると、悔しいという気持ちにすらならないね。 でも、千五百年もあったんだ。 此方では二十数年程度しか経過していないと聞く。 その時間差でこういった技術を開発できなかったとは思えない。 やはり東のミカド国には何かあるんだろう」

 

フジワラが戻ってくる。

 

装丁が見た事のあるものとは違う本だった。

 

バイブルであるらしい。

 

なんでも昔は、宿泊施設にはたいがいおいてあったらしい。暇つぶし用に、だそうだ。

 

天使による大虐殺の後、誰もが生きるのに必死で、バイブルを焼き捨てようなんて運動さえ起きなかったそうだ。

 

ともかく、ヨナタンに渡す。

 

代わりに、東のミカド国のバイブルを手に入れられないかとフジワラが提案。考え込んだ後、ヨナタンが頷いていた。

 

「古いバイブルなら我が家にあります。 持ち出すことは難しくはないでしょう」

 

「それを見比べて確認して見よう。 ただ、天使が監視している可能性はあるから、くれぐれも気を付けてくれ」

 

「分かりました」

 

咳払いすると、更に話を進める。

 

ガイア教団について話してくれる。

 

やはり、その長の名前はユリコ。小耳に挟んでいたが、どうやらそうらしい。

 

ただ、東京には十万からなる人間がまだ彼方此方で生きている。女性の名前としては、必ずしも珍しいものではないという。

 

更には、その正体は人間ではないという噂についても教えてくれる。

 

ワルターが身を乗り出す。

 

「ガイア教団ってのは、随分統率が取れている集団に見えました。 カガって女も、強い闘志を持つ熱い奴に見えました。 悪魔が指導しているんですか?」

 

「あくまで噂だがね。 ガイア教団は古くから存在していて、今回の一連の大戦では、裏で大きく動いていたという話もある。 元より力を貴び欲望を肯定する組織だ。 最強の存在が長であればなんの文句もないのだろう。 それが悪魔であってもね」

 

「……」

 

「ワルター、もう少し情報を集めよう。 今の時点では、限りなく黒に近い灰だよ。 いきなりガイア教団に敵対するのは得策じゃない」

 

一番あのユリコだかいう奴に大きな恨みがある僕が言うと、ワルターは分かったと言って引き下がる。

 

僕がそう冷静でいるのだ。

 

自分が先走るのは良くないと考えたのだろう。

 

「それでまずはどうするべきか。 ガイア教団の本部に足を運んで、情報を集めるべきかな」

 

「いや、実はそのガイア教団の長だが、目撃情報がある。 此方からの依頼があるんだ。 様子見がてらに足を運んでくれないか」

 

「承りましょう。 どんな話ですか」

 

「現在新宿の街で悪魔の掃討作業を行っている。 都庁周辺が安全になり、地霊族が人間の味方として振る舞いはじめてはくれたが、彼処は阿修羅会の大規模拠点で、暮らしている人々もまだまだ厳しい状態だ。 阿修羅会は人間の値段をつり上げて、人間を売るように仕向け始めている。 特に子供に対しては、とんでもない高値を出しているようだ」

 

許せない。

 

僕が呟くと、ヨナタンも頷いていた。ワルターも、好戦的な笑みを浮かべる。

 

「全員ぶっ潰してくればいいんですかね」

 

「いや、阿修羅会の押さえ込みは私達でやる。 君達には、新宿で徘徊している強力な悪魔を排除して、一帯の安全を確保して欲しい。 クエビコが少し前までは最大の脅威だったが、今では逆に都庁周辺はもっとも安全になっている。 逆に、周辺の街などは、都庁近辺から追い立てられた悪魔が、その辺りに巣くっていた大物の麾下に入って、戦力を増している状態だ。 今、阿修羅会の本部である六本木に秀さんが。 ガイア教団の本部である銀座に霊夢さんがそれぞれ威力偵察に出てくれている。 彼女と一緒に、新宿にいるこれらの悪魔を倒して、人々の危険を排除して欲しい」

 

そういうと、部屋に入ってきたのは。

 

あの無口な銀髪の娘だ。

 

まだ幼いようだが、凄まじい使い手なのは見て分かっている。表情も殆ど変わらないようである。

 

ただ、どうしてだろう。

 

この子は随分と綺麗な女の子であるのは確かだが。なんでだか、知り合いのようにしか思えないし。

 

女の子というのにも、何処か違和感があるのだ。

 

「此処の守りはマーメイドがやってくれる。 今は苦しんでいる人を、少しでも多く救うときだ。 そして、新宿の一角に大きな本屋があってね」

 

「本屋?」

 

「そうか、本はバイブルくらいしかないんだったね。 昔は……大戦の前は、本を売る店がたくさんあったんだよ」

 

本を売る店。

 

それはまた、驚きだな。

 

一度ヨナタンが挙手。一旦戻って、バイブルを回収してくるという。僕もつきあう事にする。イザボーも。

 

ワルターは、このシェルターを見て回るという。興味が刺激されて仕方がないそうなのだ。

 

まあ、多少の別行動くらいはかまわないだろう。

 

ともかく一度戻る事にする。

 

これから少しばかり、やる事を整理しなければならない。それには、時間の流れが違う東のミカド国でやるのが適切だ。

 

そしてもしも本をそう言った場所であの黒いサムライが仕入れているのだとしたら。

 

いきなりかち合う可能性もある。

 

それは、覚悟しておかなければならなかった。僕としてもあいつとかち合った場合、自制心に自信が持てないのだ。

 

 

 

ヨナタンの家に案内して貰う。ラグジュアリーズの中では、名門ではあるらしいのだが。ヨナタンを周囲が見る目が明らかにおかしい。同期のサムライだと言って僕とイザボーを連れて屋敷に入ると、ヨナタンの家族らしいのが、じろじろ見てきた。

 

ヨナタンに対する視線もおかしい。

 

家族に対するというよりも。

 

信心深い人間が、ロザリオを見つめるようなものだ。

 

「前から気になってたんだけど、ヨナタンってちょっと周囲の接し方がおかしいよね」

 

「それは後で話しましょう」

 

イザボーが即座に釘を刺してくる。

 

ヨナタンも頷いていた。

 

つまりイザボーも知っている事だと言う訳だ。

 

大きな書斎……とはいってもあくまで比較だ。東京の巨大な建設物や建物をみた後だと、小屋にしか見えないが。

 

そこから、古いバイブルを取りだすヨナタン。廃棄されたものを、貰い受けたそうである。

 

とにかく司祭がこれを持って周り、カジュアリティーズに読み聞かせるので、どうしても傷むのだ。そういった傷んだバイブルはラグジュアリーズが引き取ることもあるらしいが、殆どの場合は司祭が「聖なる火」にくべて処分するのだという。

 

もっとたくさん作ってばらまいておけば、その有り難い内容とやらに人々が触れやすいのではないのかとも思うが。

 

ただ、意図的に分かりづらく人々の前で説法しているという話がある。

 

流通数を絞っているのも、意図しての事なのだと思う。

 

「現物を持ち出すのはリスクが高いのではありませんこと」

 

「確かにそれはそうだ。 もしも……東京の人達が怖れているように、一部の天使達が悪さをして、大きな被害を出したのだとすれば。 バイブルにも何かしらの仕掛けをしている可能性はある」

 

「どうする?」

 

「僕は内容をあらかた覚えている。 東京で暗誦してもいいのだが……」

 

それはまた。

 

ただヨナタンの場合は、信心深くてそうしているようには思えない。ヨナタンは周囲の接し方も妙だし、何かあるのだろう。

 

ともかく、少し考えた後、ヨナタンは軽くメモを取り始める。

 

話の要所だけを書き写している感じだ。

 

なる程。それで東京にあるバイブルと差異を調べられる訳か。細かい所を聞かれても、ヨナタンはあらかた内容を覚えているから、そのまま諳んじられると。ただ、口頭では相手に伝え辛いかも知れない。

 

ヨナタンらしい配慮で作業を終えると、屋敷を出る。

 

ちなみにヨナタンと一緒にいる間、ずっと屋敷の召使いが監視していた。

 

恐らく僕やイザボーを愛人か何かと勘違いし。

 

お手つきがあるかどうかでも見ていたのだろう。

 

ばからしい話だ。

 

まあヨナタンがどう女性を見ているかは知らないが。

 

ここまで来ると病気ではないのか。

 

少しずつ僕は勘が鋭くなってきている。

 

前も鋭かったが、実戦を経て力を増している。それで分かってきているのだが。

 

どうも王城の中には、あのギャビー以外にも強い気配があるようだ。

 

そしてそれらは、ラグジュアリーズではない。

 

どれも巧妙に気配を隠しているが、明らかに東京にいる悪魔達に力負けしていない。やはり、これが東京で怖れられる天使ではないのだろうかと思う。

 

軽く食堂で話をした後、ターミナルから東京へ向かう。

 

その途中、ずっと僕達三人に監視が続いていたようだった。

 

サムライ衆の詰め所まで監視か。

 

色々妙な話ではあった。

 

ターミナルを経て、シェルターに。そこで、ヨナタンがやっと咳払いしていた。

 

「イザボー、もういいよ」

 

「フリン。 ヨナタンは、先王の側室の子なのですわ」

 

「へえ。 ご落胤って奴?」

 

「違うんだよ。 王は側室を何人か抱えるものなのだけれども。 側室は年齢が三十を超えるとお役御免となって、基本的にはラグジュアリーズに下げ渡されるんだ。 僕の母は、そういう仕事を終えて僕の父の妻になった。 こういうことはとても名誉な事とされるんだよ。 僕の父は王室に対する敬意もあるのか、それとも母が美貌の持ち主で、三十を過ぎても子供がいなかったからか容色が衰えていないこともあって溺愛してね。 或いは先妻が早くに亡くなったからかも知れないけれど。 それで僕が出来たのさ。 ちなみに僕は先王の子ではないよ。 計算があわないんだ」

 

それでも噂が流れたそうだ。

 

そもそも世継ぎの現王……アハズヤミカド王が無能と言う事もあって、他に期待する声は大きかったらしい。

 

如何に発展が止まった停滞した国とは言え、国王に側近達は色々と求めるのだ。

 

例えば気前よく権力をくれる、とか。

 

アハズヤミカド王は無能な上にケチであって、そういった周囲の欲望にはまったく見向きもしなかったし。

 

そもそも政治にも何の興味も見せなかった。

 

庭にある花……アハズヤミカド王しか興味を持たない花だが。それに毎日話しかけているそうで。

 

正室にも一切手をつけていないらしい。

 

頭が悪いとかそういう事もないらしく。単に若い頃から見続けた王室の闇に辟易していて、アハズヤミカド王なりの反抗であるようなのだが。

 

いずれにしても、「有能で気前がいい」「先王の血を引くかも知れない」ヨナタンへの信望が、自然に集まったのだそうだ。

 

「今では虚名が完全に一人歩きしていてね。 しかも僕の父は、それを利用した。 僕に徹底的な帝王教育をしただけではなく、裏で噂の拡散に力を貸したそうだ」

 

その結果、ヨナタンはサムライ衆になった後も、他のサムライ衆が明らかに一歩置いて接しているとか。

 

なるほど、合点がいった。

 

それなら、まったく遠慮なく接する僕らに対しては、信頼を置くのも分かる。周りは「先王の子かも知れない」ヨナタンに期待していると言いながら、実際には近くにいれば得られるかもしれない権力に舌なめずりしている。

 

それをヨナタンはずっと感じながら生きていたのだろう。

 

「くだらね。 いっそこっちに骨を埋めるのもありじゃないの?」

 

「そうだね。 だけれども、まずは状況を安定させてからだよ。 この地は多くの人々が苦しみ続けている。 それにそれは、東のミカド国だって例外じゃない」

 

本をくれる。

 

以前言っていた帝王学の本であるらしい。

 

受け取ってはおく。

 

僕としても、色々知識は得ておきたかったからだ。

 

そのまま、シェルターを移動して、フジワラの所に。フジワラは何か機械と話し込んでいた。

 

それを側で地獄老人が調整を続けていて。

 

銀髪の娘が、椅子に行儀良く座って二人の様子を見つめている。

 

ヨナタンに気付くと、咳払いしてフジワラが顔を上げる。

 

そして、ヨナタンが差し出した紙片を見て、頷くと。バイブルを手渡してきていた。

 

凄い速度でヨナタンが読み進めて行く。

 

話によると、ヨナタンの母は別に頭が良いわけでもなく、容姿だけが優れているらしいし。

 

父は貪欲で、こちらも悪知恵しか働かないらしい。

 

親と子が似ないこと何て幾らでもある。

 

ヨナタンは明らかに両親のどちらにも似ておらず、それがご落胤説につながってもいるようだった。

 

「なるほど、理解しました。 僕が知っているバイブルとはかなり違っていますね。 相違点を書き出しますが、紙はありますか?」

 

「いや、言ってくれれば音声で記録するよ」

 

「そんな事まで出来るんですか!」

 

「色々準備してきたのに無駄になっちゃったね」

 

まあ、バロウズとかの性能を見ると、ないとはいえないか。

 

地獄老人が、記録用のソフトというのを出してきて。それでヨナタンの説明を全て記録してくれる。言うだけで全て記録してくれるようなので。テクノロジーが本当にまるで違うことが分かる。

 

悔しいがこれは。

 

テクノロジーで東のミカド国が勝てる点は一つもない。

 

「以上です。 一応、紙にも要所は記載しておきました。 受け取ってください」

 

「なるほどな。 ノアの方舟のエピソードはすべて削られているのか。 それどころか、一神教の神に都合が悪い話も全て。 悪魔はもとの聖書とは比較にならない邪悪な存在になり果てているし、あの悪辣な事で知られるヨハネ黙示録はその内容が全て神にとって都合良く美化されているのか」

 

「僕も驚きました。 これほど変化しているとは……」

 

「それに旧約、新訳、コーランの内容まで混ぜられている。 上から攻めこんできた天使の中には、一神教のもの全て……イスラム教のものや、一神教が天使の設定を取り込んだゾロアスター教のものまでいたことが分かっている。 ともかく一神教に都合良く改変された聖書というわけだ。 これは恐らくだが、悪魔が人間の思念に影響を受けるからだろう。 天使達もその例外ではない、ということだな」

 

そういうものか。

 

この東京では、伝承が失われ、姿が壊れてしまっている悪魔が多いとフジワラは言う。

 

僕も伝承が失われて弱体化している、と明言されている悪魔とは実際遭遇している。天使達は、弱体化がおきないように、こういう所でも手を回しているということか。

 

しかしそれをやっているのはギャビーだけなのか。

 

あの城でも感じる気配を思うと、どうにも妙だとしか思えなかった。

 

ワルターが来る。

 

ナナシとアサヒを連れていた。

 

ナナシはワルターがいると機嫌が良さそうだ。今日は時間的な余裕もあったし、稽古をつけて貰ったのかも知れない。

 

「こっちは準備万端だ。 それと、ドワーフたちが、俺等のために武器を作ってくれるそうだぜ。 後でいこう」

 

「こっちも今話が終わった所だよ。 問題は、武器が良くなったとして、それで黒いサムライが姿を見せた場合、勝てるかだけれど」

 

「君が弱気になってどうする。 ただ、冷静に判断するのは確かにただしい。 あの強さ、今でも簡単にはいかないだろう。 霊夢さんや秀さんの助力があってもどうにかなるかどうか」

 

「そんなにスゲエ奴なんだな……」

 

ナナシが素直に驚いている。

 

ずっと斜に構えている子だと思ったが。

 

少しずつ、本来の年齢相応に変わり始めているのかも知れない。

 

それはとても良い事では無いかと思う。

 

ともかく、フジワラに礼をして、この場を離れる。

 

シェルターの下の方の階層には工場があって、そこでドワーフがずっと金属を叩いていた。彼方此方には見た事もない機械があって、危ないから触らないようにと釘を刺された。

 

ドワーフも親方がいて、かなり貫禄がある。

 

元々ドワーフというのはドヴェルグと言われていたらしく。神々の武器すら作る程の種族であったらしい。

 

そういった鍛冶の神様というのは世界中にいるそうで。ドワーフの他に、奧で背を丸めて金槌を振るっているサイクロプスもそうらしい。サイクロプスは野良の奴と交戦した事があるから、色々複雑だ。

 

その後、東のミカド国の鍛冶師と接したときのように、装備について色々と聞かれ。それで僕は、牙の槍を見せて。

 

それから、幾つかの棒や刃物を組み合わせて、それで軽く演舞した。

 

ドワーフの親方は頷くと、更に大胆に刃物を大きくした槍を渡してくれる。これは、凄い。

 

重さも適切で、刃物が大胆すぎるほど大きくて、相手を貫き、叩き、払うその全ての動作で、致命傷を与えられる。槍は棒術とも通じていて、叩くや払うは相手に対する牽制を兼ねる事も多いのだが。

 

これはその全ての動作が必殺になりうる。

 

「凄い槍だ……」

 

「あんたの剛力なら、こいつを全力で使いこなせるだろう。 ただし作るのに少し時間が掛かる。 その間、しばらくはその槍で我慢をしてくれ」

 

「分かった。 出来るの、楽しみにしているね」

 

「誰でも使えるものをとずっと言われていてな。 やっと業物が打てる。 そう思うと、わしも嬉しいよ」

 

ふっとドワーフの親方が笑う。

 

そして、ヨナタンとイザボーとワルターにも、それぞれ武器を作ってくれると約束してくれた。

 

材料とか簡単に揃わないので時間が掛かるらしいが。

 

それでも、新しく武器を刷新できるなら、僕に不満はなかった。








文化の違い、文明の違い。それでも構築できる交友関係。

フリン達と人外ハンターと英雄は、今の時点では問題なくやれる状況です。

そして情報を整理する間に、互いに有益な行動を取ります。

事実東京では手が足りておらず。

東のミカド国も、悪魔に国を脅かされている状況に代わりは無いのです。





感想評価などよろしくお願いします。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。