というわけで人外ハンターのもう一つの拠点、純喫茶フロリダにフリン達も出向きます。
問題はそんなフリン達の様子を、近年では女装に凝っているあの閣下が見に来たことですね。
そして違和感があるのに、残念ながらまだ誰もあの閣下の恐ろしさに気付けていないのです。
新宿に出る。確かに悪魔の気配はまた多くなっている。地下部分では、人外ハンターが奮戦しているようで、明らかに活気が出ていた。新しい服がどんどん支給され、彼方此方で清潔な水が供給されているようで、生活空間が清潔になっている。これは上野なども同じであるらしい。
シェルターからどんどん物資が支給されているらしく。
暮らしていけない人間もシェルターにどんどん移っているようで。
阿修羅会は明らかに敵意をもった視線を向けられながら、隅の方でこそこそと話しているようだった。
今回はナナシとアサヒに加えて、銀髪の娘さんもいる。僕達七人が姿を見せると、阿修羅会の連中は舌打ちして姿を消す。
まあ、あれは放っておいてもいいだろう。
「明らかに空気が変わりましたね」
「そうなの」
「はい。 西王母をみなさんが倒したのが大きいのだと思います。 偉そうな事を言ってる阿修羅会が何の役にも立たず、危険で多くの人を殺した西王母を倒したのがみなさんと人外ハンターの精鋭、それにガイア教団。 それが、阿修羅会に対する敵意をはっきりさせたんだと思いますね」
「冷静な分析だねアサヒくん」
ヨナタンが素直に褒めると、いやあとか頭を掻きながら照れるアサヒ。ナナシが呆れながら、こいつは褒めると駄目だとかいう。
まあ、なんとなく分かる。
アサヒはこれは、どちらかというとイザボーよりヨナタンに性格が近いのかも知れない。
まず人外ハンター協会に出向く。
シェルターでも話は聞いていたのだが、リアルタイムで現地での話を聞くのが重要である。
相変わらずの音と光だが、ワルターとナナシはむしろご機嫌な様子だ。
「あんたらか。 西王母を倒してくれたって事で、みんな感謝しているぜ。 池袋は腐った街だったが、それでも今は人間が生き残る事が先なんだ」
そう話してくれる引退した人外ハンターらしいここの主は、左腕が義手になっていた。
頷いて、幾つか話をする。
話通り、クエビコが制圧した辺りから追い払われた悪魔が地上部分で悪さをしているらしく。
僅かに地上に残っていた人々が危険にさらされているそうだ。
「それだけじゃない。 人外ハンターにとって重要な施設が、行き来が難しくなってる」
「此処にもシェルターみたいな場所が?」
「比べものにならないほど規模は小さいがね。 純喫茶フロリダという。 フジワラ、ツギハギ、アキラ。 伝説の三人が集まった場所で、アキラが戻らなかった後でも、フジワラとツギハギが拠点にして、必死に抵抗を続けていた素敵な内装の店さ。 話によると、かなり重要な機器類があるらしい。 シェルターが潰された時に備えてだろうな。 幾つかの重要施設は、敢えて純喫茶フロリダから移していないそうだ」
なるほど。それは重要な場所だ。
ちょっとだけ西王母戦で見かけたツギハギという人物が、其処で今は守りについているらしいのだが。
確かに周辺の安全は確保しておきたい。
案内役として、志村さんが来てくれるらしい。ターミナルで合流する手はずが出来ているらしいので。僕は頷くと、すぐにターミナルに。
ターミナルの側には休憩所が出来ていて、常に人外ハンター数人が展開していた。
僕を見て、その中の一人が挙手する。
ライフルの野田だったか。
この間の戦いで加勢してくれた人外ハンターである。凄く髪が長くて、それが多分此処で出来る精一杯のお洒落なのだろう。
「おお、西王母を倒した英雄じゃないか」
「倒せたのは皆の力だよ。 貴方も例外じゃない」
「そう言ってくれると嬉しいねえ。 志村のおっさんだったら、もうすぐ来るはずだぜ」
「分かった、待たせて……」
と言っている間に来た。
志村は非常に険しい顔をしていて、それで一人だけだった。
僕を見て、頷くと、すぐに行こうという。
何かあったなこれは。
それを悟ったので、僕はすぐに頷いて、この場を離れた。地上部分に出ると、悪魔の気配がかなり濃い。
これはちょっとばかり、厄介そうだ。
「何かあったんですね」
「阿修羅会との小競り合いがまた増え始めている。 池袋の件で彼奴らが役に立たなかったことが明確になってね。 彼方此方で焦った阿修羅会が、「所場代」を取り立て始めたのさ」
「所場代?」
「ようは阿修羅会が守ってやっているから、商売をするなら金を出せというような理屈だよ。 昔からあの手の輩がやっていたことさ。 金を取ることよりも、「上下関係」をはっきりさせたいのだろう」
勿論阿修羅会が悪魔から人々を守っているなんて事はない。それどころか、話を聞く限り子供や老人をさらって、悪辣な行為に手を染めているのがはっきりしている。
それでトラブルが続出している。
昔だったらそれも起きなかったのだろうが。
阿修羅会が明確に弱体化し始めている今は、次々に阿修羅会に対して拒否を突きつける街が増え始めたそうだ。
志村もさっき、出先でそんなトラブルを解決してきたらしい。血を見る寸前まで行ったが、人外ハンターが出張ってくると、舌打ちして消えたそうだ。
「次は俺を呼んでくれ。 全員まとめて畳んでやるぜ」
「そうだね、そうしよう。 それで新宿の悪魔掃討だったね。 こっちに歌舞伎町という街があった。 その先に純喫茶フロリダがある。 昔はとにかく欲望の街として知られていた場所でね。 そんな中で、純喫茶フロリダは希望の星だった。 歌舞伎町は阿修羅会なんて問題にもならない凶悪な反社が多数拠点を作っていた場所なのに、皮肉な話ではあるね」
「……」
確かに不思議な星の巡り合わせだ。
まずは、移動しながら悪魔を片付ける。
銀髪の娘さんの実力を知らないナナシとアサヒが心配そうにしていたが、雑魚をまるで寄せ付けないのを見て驚愕。特に不可視の質量攻撃で、大きな悪魔を叩き潰して以降は完全に態度を変えた。良い意味で子供なのだろう。実力を素直に認めて、それで態度を変える。悪い意味で子供だと、下とみた相手には絶対に態度を変えないが。
同時に本屋というのについても聞く。有名どころを幾つか教えてくれたので、悪魔を掃討しつつ、それらによる。
本屋があった建物が崩れてしまっていたり。
内部が全部焼けてしまっていたりと、散々な有様だ。
今の時代。本はとても貴重だろうに。
それを守る事すら、出来る状態では無かったという事なのだろう。
「此処も駄目か……」
「仮に本屋を見つけたとしても、其処で戦闘になる可能性があるんだろう。 本は、残念だが今は持ち出す余裕がないんだ。 人をどうにかするのが最優先で、それらが一段落したら、になるだろうね」
「それは分かっています」
これだけ人命が危険にさらされている状況だ。
本が優先なんて事は、僕もいうつもりはない。
大きめの悪魔もいる。楽勝とはいかない。
頭が髑髏になった巨大な鳥の悪魔が、周囲を伺いながら歩いている。背丈がとても高くて、その辺りにたくさんいる。
一体ずつ倒して行くが。
どれも楽には勝たせてくれなかった。
アサヒがいい加減に音を上げはじめるが。僕はそれを宥めて、更に先へ。
とにかく戦闘が非常に厳しい。
何度か新宿に戻って、そこからターミナル経由で東のミカド国へ。休憩を入れて、また東京へ。
ナナシが東のミカド国へ行きたいと途中で言い出すが。
そもそもスカイツリーを登り切らないといけない事を説明すると、面倒だなとぼやく。
確かに同感だ。
いちいち奈落を登ったり降ったりしていられないというのは、僕でも同意できる。
池袋駅周辺は地霊族が人間に敵対的な悪魔を駆逐してくれているが、まだまだとても手が足りていない。
少し駅から離れると、大きい悪魔や強い悪魔がウヨウヨいる。
あの巨大な蛇みたいな奴もいた。
以前建物に巻き付いていた奴だ。
バロウズによると、龍王ナーガラジャであるらしい。
ワルターが従えていたナーガの上位種であるようだ。今はワルターは、ナーガを従えていない。
力が不足してきたこともある。
手持ちの悪魔は、かなり刷新したようだった。
激しい戦いになる。
大きな蛇の悪魔との戦いでは、アサヒが狙撃で志村と一緒に支援してくれたし。ナナシはめげずに最前線で悪魔を繰り出し、それで前衛を張ってくれた。かなり短時間で力が上がっている。
それだけじゃない。
一度後方にさがると、支援魔術で前衛を強化するテクニカルな戦いを見せる。
ナーガラジャを僕とワルターが仕留めたときには、それが決定打になった。
消えていくナーガラジャ。
銀髪の娘さんは光の壁で時々攻撃を弾いてくれたが、今回は真面目にやりあうつもりもないらしい。まあこの程度の相手なら。僕らだけで充分という理由もあるのだろうが。
これで歌舞伎町は至近であるようだ。だが、歌舞伎町はまだまだ多数の悪魔が群れている。
攻略には時間が掛かる。
少しずつ安全域を拡げていくしかない。
「今のって、何処で覚えたの?」
「ああ、ナバールって人が教えてくれたんだ。 一緒に戦ってるとちょっとウザいけど、後方にさがるとすごく良い仕事をしてくれて、俺もそれで少し真似をしてる。 役に立てたかな」
「立派だったよ」
「そっか」
ナナシが少しだけ嬉しそうだ。
殆ど明るい表情は見せない子なのだけれども。
少しだけでも、表情が戻り始めている事は、悪くは無いと思った。
六度目の新宿近辺攻略戦開始。銀髪の娘さんは三度目の攻略戦を終えると、シェルターに戻った。或いは、僕らを見極めるつもりだったのかも知れない。いずれにしても、凄い使い手であることは分かった。或いはだけれども。人外ハンター達に紛れている阿修羅会の構成員に、強さを見せておくことが目的だった可能性もある。今、人外ハンターは手札が足りないらしい。そうすることで、阿修羅会を更に牽制できるだろうし、あり得ない話ではなかった。
かなり大物が減ってきているが。倒れた悪魔の代わりに、周辺から別の悪魔が新宿に入り込んで来ているようだ。
きりがない。
そんな中、無事な本屋を見つける。
内部に入って、それで圧倒された。本棚がどこまでも拡がっている。とんでもない規模である。
「これ全部が本か!」
「出来るだけ戦闘には巻き込まないでくれ。 平穏が戻ったら回収して使うんだ」
「分かってる!」
イザボーが一番興味を示したようで。奧に。
漫画ですわ、と声を上げる。
ただ、イザボーが好きらしいベルサイユがどうという作品はないようで、肩を落としていたが。
それを聞いて、志村が驚く。
「またしぶい作品が好きなんだね」
「とても恋愛模様が素敵でしてよ」
「ああ、そうだね。 僕の時代ではかなり古い作品だったのだけれども、傑作として名高かったね」
「漫画ってこんなにあったんですわね」
イザボーが幾らでもある漫画を見て、それで困惑しているようだった。
僕としては、娯楽にこれだけの力を割ける国力があったのだと、悟る他無い。
「君が探している本だと、この辺りだと……池袋のジュンク堂がいいかも知れない」
「池袋にも本屋が?」
「あれだけ荒らされた場所だ。 あるかどうかは分からないが、比較的古典に分類される漫画でもあるかも知れない。 西王母が彼処を抑える前に、その黒いサムライというのが本を持ち出したのだとすれば……其処の可能性も考慮しても良さそうだね」
「池袋は無人だ。 西王母が滅茶苦茶にした後だし、被害が出る事は気にしなくてよさそうだね」
僕の声が冷えた。
それで、明らかにアサヒが青ざめたが、ヨナタンが咳払い。
僕が仇を追っている事は、ナナシもアサヒももう知っている。
ともかく、この本屋は大丈夫か。
歌舞伎町に入る。
何度かの掃討作戦で、悪魔をどうにか我慢できる段階までは減らした。それで奧へ。奧にちんまりとしたお店があって、銃を持った人外ハンターが見張りに立っていた。志村が話をすると、通してくれる。
其処から少し狭い路地を通り。
その奥に、あった。
とても綺麗なお店だ。悪魔が数体いて、彼方此方を手入れしている。とても荒れ果てた東京にあるとは思えなかった。
「あら、貴方たち。 また会ったわね」
「!」
ヒカリだったか。いやヒカルだったか。
純喫茶フロリダからひょいと顔を出す。
やはり非武装のままだ。
志村が見張りに視線を向けるが、見張りが志村に耳打ち。舌打ちすると、志村は銃を下ろしていた。
志村によると、此処は人外ハンターでも一部の一部にしか流通していない会員証が必要で。
それはフジワラが発行しているそうだ。
色々手管を尽くして悪魔でも偽装できないようにしているらしいのだが。このヒカルという女。
間違いなく本物の会員証を持っていたとか。
それどころか最近は時々ここに来て、それでフジワラやツギハギとも会っているそうである。
「フジワラさんによると、手練れが返り討ちにされていた幾つかの案件を解決してくれたそうです。 それで会員証を発行したとか。 此方でも調べましたが、確かに人外ハンターの記録に残っています」
「……」
なんだろう。
やはり、どうしても妙だ。
そんな強さを持っているとはとても思えない。
それでいながら、びりびりと勘が告げてくる。此奴はヤバイと。
「このお店、気に入っちゃった。 今度見つけて来たお茶っ葉持ってくるから、よろしくね」
「ああ、フジワラさんも喜ぶだろう」
「それにしても、君達やるね。 新宿にはいま結構な悪魔が集まっていると思ったのだけれど」
「君、何者?」
ペースにはのらない。
僕はずばり、そのまま聞く。
絶対に見かけ通りの存在じゃない。それはこの場にいる全員が理解している筈だ。
いや、アサヒはなんだか普通の人がいて良かったみたいな顔をしているし、ナナシは弱そうな奴みたいに見ているが。
志村も警戒している。
どう考えても、普通じゃない。
ヒカルはふふっと笑うと、店の中に。僕も追って店の中に入る。
店の中では感じが良い穏やかな曲が流れているが、誰かが演奏している雰囲気はない。これも自動で音楽が流れる仕組みであるようだ。
奧の席にはツギハギが座っていて、何か飲んでいる。
僕達が顔を見せると、こくりと頷いた。
席を勧められたので、座る。
僕としても、多数の悪魔を倒して来て少し疲れたし、休憩を取れるのは、とてもありがたくはあるのだが。
「今の東京にこんな感じの良いお店があるなんてね。 昔は彼方此方のお店で、とても優れたサービスを受けて、感心していたものなのだけれど」
「まるで大戦前から生きているみたいだね」
「ふふっ」
さらりと流される。
イザボーはなんというか、相手の雰囲気に対する嫌悪感ばかり感じているようで、こいつに対する危険性を今一正確に認識出来ていないようだ。
ちょっとばかり、これはまずい。
まだ皆の力量が足りていないのか。
僕も、こいつは危険だと肌で感じてはいるが、それでもどう危険なのか、具体的に言語化出来ないのだ。
得体が知れないもの。
此方に来てから、鬼という概念を学んだ。
悪魔にいる鬼という存在。種族でも「鬼」とついているものがたくさんいる。なぜ鬼というのをそんなにたくさんつけるのか。
実は「鬼」というのは、元々よそから伝わって来た概念で、「なんだかよく分からないもの」みたいな意味だったようなのだ。
それで考えると、悪魔と言うのはその鬼と言う言葉に親和性がこれ以上もないほど確かにある。
何々鬼という悪魔の種族がわんさかいるのも納得が行く。
こいつは、その「鬼」そのものだ。
得体が知れない存在の究極である。
黙々と飲んでいるツギハギに、ヒカルが話しかける。
どういう技術か、ふっとヒカルから意識が外された。
それだけで、ヒカルがいなくなったかのように、感覚がおかしくなる。
「それはそうと、ちょっと例の塔を見てきたんだけどね。 守りが弱体化している代わりに、鴉がいるよ」
「……分かった。 俺が少し様子を見てくる」
「そうしてね。 彼処を落とせれば、面白い事になると思う。 鴉は狡猾だから、騙されないように気を付けなさい」
マッカをおくと、ヒカルが出ていく。
アサヒは視線で追っていたが、僕がずっと険しい顔で見ていた事に気付いていただろうか。
「綺麗な人だね。 後何年かしたら、私もイザボー姉さんやあんな人みたいになれるかな」
「あんなにはならなくていい」
「同感ですわ」
「あれ、どうしたのフリンさんもイザボー姉さんも。 二人とも、相手が綺麗だから嫉妬するような人じゃないでしょ」
ツギハギがため息をつく。
志村も、困惑してヒカルが出ていった扉を見ていた。
「俺は例の封魔塔を調べる。 志村、此処を頼んで良いか」
「イエッサ。 それにしても、信じても問題ないんですか」
「少なくともあれは、力が強い相手には有益な情報を渡している。 弱者にも時々手を貸しているようだ。 正体は分からないが、少なくとも人間ではなさそうだな。 此処を無差別で破壊しているわけでもないし、天使でもなさそうだが。 ただ俺が側にいても、まるで相手の底が見えない。 四大天使とやりあった時でも、こんなことはなかったんだが」
わざわざ来て貰ったのに、相手を出来ずにすまない。
そういうと、ツギハギも店を出て行った。
店の中を、何体かの悪魔が常に掃除している。志村は。ため息をついていた。
「すまないな、皆。 私はしばらく此処で留守番だ。 先に封魔塔と言っていたのは、この近くにある新宿御苑という場所にあるものでな。 色々と曰く付きの場所なんだ。 大戦の際に、彼処で三人の英雄が、天使の大物とやりあったって話がある。 それに……」
「他にもあるんですか」
「大戦の前から、あそこに不可解な繭みたいなものがあったんだ。 その前くらいから、多数の子供が失踪する事件が起きていてね。 それで大戦が起きて、東京から太陽が失われる直前……繭みたいなものが、天に飛んでいったなんて話もある」
不思議な話だ。
ワルターは咳払いすると、土産だといって、東のミカド国から持ち込んだワインを渡す。今回こういう店に来るという話だったので、持ち込んできていたのだが。それを渡す暇がなかった。
志村はワインを見て、目を細めると。此処で大事に扱わせて貰うと言ってくれた。
それだけで充分に嬉しい。
さて、目的を整理するか。
新宿での戦闘はこれでいい。
というか、新宿駅からそれほど離れなければ、ナナシとアサヒだけである程度どうにか出来るだろう。
「池袋に出向こう」
「ジュンク堂とやらですわね。 実はわたくしも、手持ちの漫画の続きは気になっているんですのよ」
「ベルサイユの何とかという作品だったな。 志村のおっさんも名作だっていうけど、そんな面白いのかよ」
「面白いですわ」
即答するイザボー。
ワルターがちょっと押され気味だ。というか、圧が凄い。
咳払い。
ともかく今は、他にやる事がある。池袋の本屋が無事かどうかよりも、そもそも黒いサムライの存在をおわなければならない。
ガイア教団のボスと特徴が一致しているようだが、其処へ行くのは後だ。
新宿の本屋が駄目だった以上、次は池袋。それでも駄目なら、他にも探していくしかない。
本屋の他にも図書館というのもあるらしく、なんでも国会図書館というのはあらゆる本が集う場所であったらしいのだが。
それは天使に焼き滅ぼされてしまったらしく、今では残っていないそうだ。
バイブルの内容を好き勝手に書き換えたのが誰だか分からないが、或いは天使や、それに指示された人間だとすると。
いや、過程に過程を重ねるのはまだ早い。
ともかく今は、事実を積み上げるべき段階だ。
すぐに新宿に戻り、そこで一旦解散する。
ナナシはかなり戦えるようになっているし。アサヒの銃の腕も相当に上がっている。地元の人外ハンターが、かなり安全になって来たのを見て、丁度良いので手持ちを強くして、悪魔も掃討するために出るらしい。それに混ざって貰う。
「此処で今回は解散か。 次はもっと強くなってるからな。 楽しみにしてくれよ」
「おう。 とにかく周りの技とかやり方を貪欲に取り込むんだ。 強い弱いで考えてると、強みを見逃すぞ」
「分かった! ワルターさん、またな!」
ワルターがそんな風に言ったので、僕はちょっと驚いたが。
それもいい。
人はあまり変わることがない。だが、ワルターは確実に変わってきている。それならば、周りは背を押し。
歓迎するべきなのだから。