もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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4、蠢動

タヤマは六本木に存在していた「タワマン」の一つを丸ごと奪い取って、自分のオフィスにしている。

 

実体はタヤマの個人的な家のようなものだ。

 

ただ電気はともかく、水がとにかく不足している。

 

水道局なんて今や動いていない。

 

其処で屋上にある貯水タンクに、水を作り出す事ができる悪魔と、それを使役する人間を配置し。

 

水を提供させ、自分と幹部。

 

その家族くらいにだけは使えるようにさせていた。

 

呆れた話である。

 

「誰よりも東京を悪魔から守りたい」なんて、時々幹部に零しているらしいが。実際はこれだ。

 

どこまでいっても反社は反社。

 

チンピラはチンピラだ。

 

タワマンを見上げていた帽子を被った青年は、タヤマとその部下の底の浅さを一瞬で把握。論ずるに足らないと判断していた。

 

その場を離れる。

 

誰も青年には気付かなかった。

 

この東京は、今や空白地だ。

 

元々領土にしていた神々は、半分以上封印され、残りは走狗にされている有様である。

 

だから力も弱まっていて、帽子の青年のような……イレギュラーが好きかって出来る状態にある。

 

しかも都合が良い事に、この地に攻め寄せた天使どもは敗北した。

 

あの忌々しい一神教の神の手下どもが撃ち払われたことで、極めて動きやすい状態が作られているのだ。

 

地下にある拠点に、空間を跳んで移動。

 

まだ賛同してくれている者は多くは無いが。

 

何名かの高位神格は既に動き始めている。

 

通称、多神教連合。

 

世界を好き勝手に動かしてきた一神教の支配をひっくり返すべく、各地の神話で同盟を組む。

 

そんな大それた事を考えられたのは、帽子の青年が神話における屈指の知恵者であり。

 

多くの悪魔を知恵ととんちで屠ってきた存在だからに他ならなかった。

 

地下空間深くへ降りて行く。

 

やがて物理的な地下ではなく、アティルト界へ移行。

 

其処は様々な情報だけが行き交う異界だ。

 

勘違いされているが、アティルト界は上位世界などではない。

 

むしろアッシャー界の下位世界だ。

 

情報だけがそこにあり。

 

アッシャー界のマグネタイトを介さなければ、アティルト界の生物は具現化することすら出来ない。

 

それどころかあり方すらアッシャー界の生物……今は最大存在である人間。これだけ痛めつけられてもなおも最大存在であるが。

 

その人間の思想や信仰に左右されるのが、アティルト界の生物。

 

神々や悪魔だ。

 

アティルト界で燻っている神々は多い。

 

何しろあの大戦で、東京を除く全ての地域にいた人間は皆殺しにされたのだ。

 

しかも東京の外では、以前から企画されていた「穢れのない人間だけを選抜する」とかいう巫山戯た一神教の計画の元、管理できる数の人間だけが愚民化され生かされている。

 

このような世界を許してはおけない。

 

勿論帽子の青年は人間の純粋な味方などでは無い。

 

必要があれば人間を間引くことも考えるし。

 

自分達に都合が良い存在に躾けることも考える。

 

それに、もしも神々の玉座にいるあの四文字たる存在に肉薄できるのであれば。

 

世界の人間全てを犠牲にして、それで道を開くのもありだとさえ思っていた。

 

その場合は、アッシャー界からの力の供給がなくなるから、一か八かの勝負になってしまうだろうが。

 

それもまた一興である。

 

だから、今は幾つもの手を練っていた。

 

アティルト界の深部。

 

其処には巨大な卵があった。

 

これを使わずに済ませられればいいのだが。

 

「クリシュナ様」

 

声が掛かる。

 

振り向くと、跪いているのはインド神話における龍王。コブラを神格化した存在ナーガの更に王。ナーガラージャの一柱。

 

仏陀を修行の際に守ったと言われる、ムチャリンダだった。

 

今は美しい聡明な娘の姿をしている。

 

仏陀はヒンズー教ではクリシュナの同類とされることがあり。

 

その縁もあって、今は仕えてくれている。

 

ただムチャリンダは基本的には人間寄りの存在だ。それにヒンズー教で歪曲され改悪されている仏陀の扱いを良く思っていない。

 

行動次第では、即座にクリシュナを裏切るだろう。

 

「仏教側の勢力の内弥勒菩薩様が……大乗仏教としての側面のみですが、協力をしてくださるそうです」

 

「まあそうであろうな。 出来れば如来級の仏の支援が欲しかったが、菩薩が限界か」

 

「クリシュナ様の計画はあまりにも多くの人柱を必要とします。 多くの如来は、それを快く思っておられません」

 

「犠牲なくして大義はならぬ。 西洋文明圏で仏教が邪教としてしか思われていないように、四文字の神が完全に思い通りに事を進めたら、人を救うことに特化したあの者達も、悪魔として貶められるだけであるのにな」

 

くつくつとクリシュナは笑う。

 

そして、ムチャリンダに続けて同志を集めるように依頼した。

 

目の前にある卵は、原初の龍王の一体。

 

此奴を使うときは、文字通り世界への反逆を行うときだ。

 

ただ、あの四文字たる神……法を司る一神教の首魁は、それすら見越しているかも知れないが。

 

ともかく、あらゆる手札を今のうちに準備しておかなければならなかった。

 

 

 

(続)







真ⅣFで台風の目になったあの人もちゃんと存在しています。

既に動き始めているのはまあ当然の事として。

ただ本作では、最初から真ⅣFと同じ行動を目論んでいるわけでは無い、ということは先に言っておきます。

元々あの人は邪神ではない、維持神の化身ですからね。

カルキみたいな破壊神の側面も持っている存在ではありますが、本来は彼処まで乱暴な手段を好んで採る神様ではない、とだけフォローをしておきます。




此処までで一章です。感想評価などよろしくお願いいたします。
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