もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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原作とは違い紆余曲折はありますが、結局抵抗せず処刑に応じる黒いサムライ。

勿論その行動にはもくろみがあるわけで、更にはフリン達なりに対応を事前に練っていたこともあります。

多少は原作と展開が変わります。

しかしながら、黒いサムライの方が此処では一枚上手です。






1、処刑

ホープ隊長に、黒いサムライを引き渡す。

 

わっと喚声が上がったが、僕はとても喜ぶ気にはならなかった。ギャビーが来て、司祭達と一緒に黒いサムライをつれて行く。

 

それを見届けてから、話をする。

 

「あいつ、わざと捕まりました。 それだけじゃありません。 東のミカド国で殺した分、殺されてやるといって。 僕達に何度も殺されて。 その度に蘇りました。 全力攻撃で欠片も残さないほど消し飛ばしても、何事もなかったかのように再生しました」

 

「とんでもない怪物だな。 これから寺院の連中が首を落として処刑すると言っているが、その程度で殺せる筈もなさそうだ」

 

「相手がその気なら、ギロチンなんか刃すら通らないと思います。 その辺りは……あのギャビー「様」は何か考えているのでしょうけど」

 

「分かっている。 お前達も少し休んでこい。 こっちでは、あのキチジョージ村の事件からそろそろ一年半だ。 お前達の武勲は、もう誰も知らないものがいない」

 

そうか、一年半か。

 

向こうでは数日が、そこまで経ってしまうのは恐ろしい。

 

とりあえず隊舎で休む。

 

風呂に入ってゆっくりする。

 

黒いサムライは、何を狙っていた。

 

人殺しへの忌避を無くすことか。

 

大量に殺させることで、心の闇でも呼び覚ますつもりか。

 

獣性でも引き出すつもりか。

 

いずれもそんなもの、関係無い。

 

これでも伊達にずっと修練を重ねて来ていないのだ。その程度で揺らぐような柔な心はしていない。

 

問題はヨナタンやワルターだ。

 

明らかに途中からワルターは苛立ちを超えた感情を抱いていたようだし。

 

ヨナタンは恐怖を覚えていたように思う。

 

イザボーは遠距離戦を続けていた事もあって、ひたすら淡々と魔術戦を繰り返していたけれど。

 

それでもあの三百回以上の殺戮は。

 

良い気分でやれたとは思えなかった。

 

風呂から上がって、埃一つなく綺麗にされている寝台でしばし横になる。手紙が来ている。

 

順番に読んでいく。

 

キチジョージ村の弟分妹分達からの手紙もあった。

 

あの惨事から生き延びたチビ共もいたのだ。殺された子も多かったけれど。

 

リリスのあの、自他の命をどうとも思わない姿勢。

 

あんなあり方の奴の命が、毎日を真面目に生きている命と同等なものか。

 

そう思いながら、手紙に目を通していく。

 

新キチジョージ村を近くに作って、畑を一から作っているそうだ。一部は田にするらしい。

 

他にも色々ある。

 

誰々が結婚しただの、そういう話も。

 

その中には、イサカル兄ちゃんのものもあった。

 

イサカル兄ちゃんは、ついにこの間結婚したそうだ。新キチジョージ村に移ってから、恐らくサムライ衆が便宜を図ったのだろう。

 

体の何カ所かが失われたイサカル兄ちゃんだが、悪魔の誘惑から逃れ。民を守るために体を張って傷ついた。

 

それをホープ隊長が説明してくれたらしく。

 

それで婚約者が見つかり、結婚したらしい。

 

良かった。

 

そう心から思う。

 

イサカル兄ちゃんはサムライには向いていないかも知れないが、それでも身の丈に合った人生を送る権利がある筈だ。

 

そしていずれは。

 

この抑圧された東のミカド国も、どうにかしなければならないだろう。

 

一眠りして、起きて。

 

鶏が鳴いているのを聞きながら、顔を洗って外に。

 

朝食の前に体を動かしておく。

 

食堂に出ると、料理人が変わっていた。前の人が引退して、新しい人が来たらしい。やはり色々と、時間の流れがおかしいから、そういう違いが出てくるのは仕方がないのだと思う。

 

食事はまあ可もなく不可もない。

 

黙々と食べていると、ワルターが不機嫌そうに向かいに座る。隣にイザボーも座っていた。

 

「よう。 また残像作りながら腕立てしたのか」

 

「日課だからね。 それにしても機嫌が悪そうだけど」

 

「ああ。 俺の師匠だった引退したサムライが、ついに大往生したとよ。 まあいつ死んでもおかしくない爺さんだったから、天命だったんだろうけどな。 死に際に会いにもいけなかったぜ」

 

「……」

 

ワルターの不機嫌はそれだけじゃなさそうだが。

 

あまり心に踏み込むものでもない。

 

しばし食事をしていると、ヨナタンが来る。報告書を出してきたというので、仕事が早いなとワルターが苦笑い。

 

それから、言われる。

 

「あの黒いサムライは、一週間ほど後に処刑するそうだ。 今は寺院の者達が幽閉しているとか」

 

「ギャビー「様」の実力はあいつ以上。 それは間近でみて分かってる。 だからおかしなことにはならないと思うけれど」

 

「ああ。 あの異常な不死性、奴の本領は戦闘力ではないのかもしれない」

 

「先を考えなければなりませんわね」

 

イザボーが提案してくる。

 

僕も頷いていた。

 

恐らく奴は、殺されても復活する。その後どうするかは分からないが。もしもガイア教団を支配しているというなら、東京にあっさり戻るような気がする。

 

幾つか提案する。

 

まず奴の死体は見張るべきだ。

 

それは僕がやりたい。

 

その話をすると、ヨナタンは頷いていた。

 

「良い考えだ。 だが、僕は避けた方が良いと思う」

 

「うん。 理由を聞かせてくれる」

 

「恐らく一対一ではまだ勝てないのが一つ。 もう一つは……寺院の者達の動きがおかしいんだ」

 

見張りにはサムライでは無く、寺院の者達がつくかも知れないというのか。

 

なるほど、それは可能性がある。

 

そもそも東京を焼き尽くした天使が寺院の者達の正体だとすると。いや、ウーゴみたいなのもいる。

 

全部がそうではないだろうが。

 

黒いサムライの正体や、奴が首を落とした程度で死ぬわけが無い事も理解している可能性が高い。

 

ならば、いっそのこと。

 

お手並み拝見と行くべきというわけか。

 

「それに見張りをしていて、どんな理不尽な能力を使われるか、知れたものじゃない。 こんな所で、君の経歴に傷をつけるわけにはいかない。 君はホープ隊長が後継と考えている逸材だ。 それについては僕も同意する。 此処はあの黒いサムライを殺したいと考えている寺院に任せて、僕達は怪物同士の化かし合いを見守るべきだ」

 

「賛成ね」

 

イザボーが言葉短く賛成する。

 

ワルターは苦虫を噛み潰した表情をしていたが。俺はどうでも良いとそっぽを向いた。

 

ちょっと気になって来た。

 

「ワルター、あまり心に踏み込むつもりはないよ。 でもどうしたの」

 

「気にくわねえんだ」

 

「何が」

 

「俺は自分の腕っ節でなんでも解決できると思って来た。 実際フリン、お前と話があうのも馬があうのも、お前の武力が問題を解決してきたのを間近で見てきたからだ。 その上お前、頭も切れる。 だからお前が頭で何の疑問もない。 ただな、それでも俺の中では、やはり力が第一にある。 それが……揺るぎ始めてる」

 

黒いサムライを際限なく殺しながら。

 

ワルターはどんどん疑念が膨らんだという。

 

叩いても叩いても平然としている化け物。

 

殺しても殺しても何とも思っていない怪物。

 

そんな奴を前に、力なんて何の意味があるのだろうと。

 

少し分かってきた。

 

ひょっとしてあの黒いサムライ。僕よりも、ワルターを狙っていたのか。いずれにしても、僕は咳払いしておく。

 

「ワルター。 一言言っておくよ」

 

「なんだよ」

 

「あいつの不死性、必ずからくりがある。 他者の影響を受けるのは、それはそれで良い事だと思う。 己の中に芯があるのはとても立派だけれども、それを守るあまり柔軟性を欠くんじゃ意味がない。 僕が教えを受けた引退サムライ達も、みんな柔軟に新しい武術を取り込めって言ってた。 それでいながら、折ってはいけないものもあるって。 だから、ワルターの芯を折らずに、新しいものを取り入れればいい。 武術や戦術ではワルターはそれをナナシに講義できるくらいまで変われてきている。 次は心でそれをやればいい。 あんなカスに芯を折られたんじゃ損だよ。 勿論変わるなんてのは簡単にできる事ではない。 でも、ワルターは、どうなんだろう」

 

しばし黙り込んでいたワルターだが。

 

いきなり立ち上がると、大剣を手に取っていた。

 

既に食べ終えている。

 

じゃあ、それはそれでいい。

 

「そうだな。 それもそうだ。 イザボー、ナタタイシ貸してくれないか。 ちょっと何も考えずに訓練してえんだ」

 

「あの子、言う事全然聞きませんわよ」

 

「だからいいんだよ。 そんなじゃじゃ馬だからこそ、迷いを晴らすために剣を交えるのに丁度良いだろ。 それに子供は正直だからな。 俺の武芸の何処に問題があるか、素直に教えてくれるだろうよ」

 

「そうだな。 僕もあいつの化け物ぶりに当てられていたと思う。 つきあうよ、ワルター」

 

ヨナタンも立ち上がる。

 

中庭の訓練場では、人間に近い姿の悪魔なら呼び出しても良い事になっている。事実新米サムライには、時々歴代の隊長に受け継がれてきたクーフーリンが稽古をつけているのである。

 

イザボーがナタタイシを呼び出す。

 

手足に何か不思議な装備をつけ、不思議な腰布だけを身に纏っている、いかにもわんぱくな子供という容姿の存在。

 

とても人気のある神だったそうだが。

 

まあ確かに、気持ちがいいほどのクソガキだ。

 

「修行だって? まあいいけど、そっちの一番強い奴はいいのかよ」

 

「ナタタイシ。 貴方が立派な軍神である事は分かっていますけれど、敬意くらいは払いなさい」

 

「嫌だね。 俺より弱い奴に払う敬意なんてない」

 

「もう……」

 

ワルターは笑う。

 

怒るかと思ったのだが。ワルターも心に余裕が出来ていると言うことだ。

 

「確かにターミナルでやりあった時は、この状態よりも弱体化していたもんな。 良いぜ、そのクソガキぶり、俺としても気持ちが良い。 考えも似てるし。 それに、今はまだお前に劣るのも事実だ。 鍛錬につきあってくれな、偉大な神様」

 

「同感だ。 行くぞナタタイシ。 死なない程度に鍛錬につきあって貰う!」

 

「ふん、まあ良いだろう。 だけどもあっさりおねんねするなよ!」

 

僕は側で様子を見ていたが。イザボーに軽く話して、ちょっとその場を離れる。

 

猶予としては一週間ほどある。

 

一度、顔を出したい相手がいるのだ。

 

それは、僕が稽古をつけて貰った中で、最強の引退サムライ。

 

勿論現状の戦闘力はホープ隊長には劣る。だけれども、先代の隊長にぶちのめされて武術を意識した後。

 

出会った引退サムライの中で、もっとも強い影響を受けた相手だ。

 

今、ヨヨギウエハラ村にいることが分かっている。二回引っ越しをして、今はそこにいついているらしい。

 

とにかく凄い武術の達人だった人で、衰えたとはいえ何かしら知っているかも知れない。

 

牙の槍は手入れに出し、支給品の剣だけ腰に帯びてそのまま城を出て、走る。馬なんていらない。

 

そう時間も掛からず、ヨヨギウエハラ村に到着。

 

懐かしい気配だ。

 

比較的東のミカド国の中枢に近い村だが。

 

ラグジュアリーズの住んでいる貴族街から一歩でも出ると、其処は完全に農村になる。このいびつさが、東のミカド国が楽園でもなんでもないことを示している。

 

門戸を叩く。

 

奧から入れ、と声があった。

 

入ると、門弟数人を抱えている、険しい表情の老人がいた。

 

頭を下げる。

 

「フリンです。 お久しぶりです」

 

「おう、サムライになったと聞いている。 強くなったな……」

 

「此方で言うケガレビトの里に下りてから痛感しましたが、まだまだです」

 

上がるように言われたので言葉に甘える。

 

そして、師匠の孫らしいのが茶を出してくれたので、ありがたく頂きながら、話をする。

 

黒いサムライの不死性について。

 

どうすれば斃せるのか、この人なら何かしら分かるかも知れない。

 

そう考えたからだった。

 

黒いサムライは何を目論んでいるかも、或いは何か思いつくかも知れない。

 

そうして話を終えると。

 

師匠は腕組みしたまま考え込み。

 

そして告げた。

 

「確かにその不死身ぶりには何かしらの仕掛けがあるだろうな。 或いはそなたと戦った黒いサムライは、ただの影だったのかもしれん」

 

「……分霊体と言う事ですか?」

 

「悪魔には影を自分と同じ存在として、幾らでも展開する存在がいる。 大量に出てくる悪魔は概ねその手合いでな」

 

そういえば、本来は一体しかいない筈の悪魔が、雑魚として群れて出てくる事はよくある。

 

僕自身もそれは目撃している。

 

そういう例だったのか、あれは。

 

だが仮にだ。あの黒いサムライがリリスだったとして、そんなに豊富に影を用意できるものなのか。

 

奴には質量があった。

 

一回確認したのが、ターミナルを渡って奴を東のミカド国へ転送する事は出来なかった。ターミナルは人間と一緒にある程度の質量までしか運べない。つまりちゃんと質量があると言う事だ。

 

そんな質量がある分霊体を、三百回以上も破壊されてどうして大丈夫だったのか。

 

「それ以外にも何かしらの仕掛けがある可能性は高い。 ただ……」

 

「ただ、どうしたんですか」

 

「奴が何か企んでいるのは事実として、お前と話したかったのも事実かも知れんな」

 

「……」

 

奴は筋を通した、というわけか。

 

東のミカド国で大量殺戮をした分だけ、僕に殺された。

 

それに関する痛みもしっかりあると言っていた。

 

死が奴には安いだけ。

 

確かに、その可能性はある。

 

池袋で西王母を斃したとき、ガイア教徒達が歓声を上げていたのを思い出す。力の強い人間……僕達の事だが。

 

そういった人間を、悪魔は好む可能性はある。

 

その点では、霊夢も色々言われていたと聞いている。

 

「魔術が使える悪魔達の意見は聞いたか」

 

「はい。 何体かに話は聞きましたが、あれほどの不死性の実現は難しいだろうと答えが返ってきました」

 

「そうか。 厄介な話だ」

 

「いずれにしても、参考になりました。 ありがとうございます」

 

一礼して師匠の家を出ようとすると、最後に一言だけ付け加えてくれた。

 

黒いサムライが僕を気に入ったのは恐らく事実だが。

 

東のミカド国には悪意もあるだろうと。

 

何か処刑の時にしでかすはずだ。

 

それを注意すべきだと。

 

弟子達にも、告知されている処刑には出ないようにと師匠は言っていた。僕は立場上出なければならないが。

 

色々もどかしい話だった。

 

 

 

一週間はあっと言う間に過ぎた。

 

ホープ隊長経由で、ギャビーには話をしてある。あの冷血女は色々気にくわないが、それでも黒いサムライと同等以上の使い手だ。

 

話をしておけば、何か被害を軽減できるかも知れない。

 

アキュラ王の広場に、皆が集められる。

 

集まったのはラグジュアリーズの高官と司祭達、それにサムライ衆。苦虫を噛み潰しているのはホープ隊長だ。

 

悪趣味な処刑ごっこなど参加しなくて良いだろうと言ったら。

 

ギャビーに見せしめに必要だから参加しろと、ずばり言われたそうだ。

 

それを聞いて、ワルターも相当に苛立っているらしい。

 

後ろ手に縛られている黒いサムライが、壇上に上げられる。

 

黒い三角の頭巾を被った首切り役人が、分厚い処刑刀を手にしているが。

 

あんなもので処刑できるのか。

 

無言でそれを見ているギャビー。

 

側にいるイザボーが、声を落として告げてくる。

 

「強力な魔術の気配ですわ。 恐らく壇上全体に、光魔術の最高位のものがかかっていますわね」

 

「一応報告は聞いたと言うことなのかな」

 

「何とも言えませんけれど、対策はしているということでしょう」

 

ウーゴが何かしゃべり出す。

 

壇上に首切り役人と一緒に上がったギャビーは、それを睥睨していた。

 

今回の件を収束できたのは、有能な司祭達の活躍と、神の御心あってのこと。

 

この黒いサムライを処刑することで、一連の事件が終わるのだと。

 

僕らに言及は一切無し。

 

別に褒めろなんていうつもりはないが。

 

この手柄を寺院で独り占めするというのは、ちょっとイラッと来た。

 

僕ら以外にも、今も下におりて戦っているサムライ衆は少なくない。確か殉職者も出ている筈だ。

 

それを無視しての長広舌。

 

ワルターがキレそうになっている。

 

「お頭、あいつぶん殴ってもいいッスか」

 

「我慢しろ。 私も我慢している」

 

「それは……じゃあ我慢するッスよ」

 

「お前達には後で私から報償を出す。 サムライ衆として正式なものだから心配するな」

 

ホープ隊長がそういうので、ワルターも黙る。

 

まだまだホープ隊長は僕より強いと思う。

 

ワルターも、この人の実力は敏感に感じ取って、認めていると言う事だ。

 

やがて演説が終わると、黒いサムライに、ウーゴが話しかける。

 

頭は良いのかも知れないが、勝ち誇って見えていないのだろう。黒いサムライは、何の焦りも感じている様子がない。

 

彼奴、やっぱり。

 

処刑なんてされて、ダメージが入るとは思えない。

 

「何か言い残すことがあるのなら聞きましょう。 望みがあるなら美味なども支給しましょうか」

 

「それならば兜を外してくれるかしら。 首の後ろのボタンを押せば、勝手に解除されるわ」

 

「それでいいのならやりましょう」

 

ウーゴは何の警戒もせず、そうした。ギャビーも止めなかった。

 

兜がシュッと音を立てて、そのまま縮む。

 

どういう仕組みなのかは分からないが。それで、黒いサムライの素顔が明らかになっていた。

 

そこには。

 

ギャビーと全く同じ顔があった。

 

どよめきの声が上がる。

 

鉄面皮のギャビーと違って、悪意の笑顔に歪んでいる顔。サムライ衆にも、後ずさる者がいた。

 

なるほど、狙いはコレだったのか。

 

「家畜として飼い慣らされた東のミカド国の民草よ。 私は処刑されてもすぐに蘇る。 そして知るがいい。 この国には、私がもたらした災厄など、問題にならない災厄がすぐに訪れる。 その日を楽しみに待つのだな」

 

「ひっ! ギャ、ギャビー様!」

 

「殺せ」

 

黒いサムライが笑う。

 

首切り役人すら気圧されているのが分かった。

 

僕もびりびりと威圧を感じていた。

 

最初にこいつと遭遇した時に感じた、圧倒的な強さを。やはりギャビーには若干劣るが。今の僕より上だ。

 

やはり此奴は、わざとここに来たのであって。

 

殺される事など、殺す事も。最初からなんとも思っていなかったのだ。

 

「ハハッ! 無様だな! この戯れに作った顔がそれほど気にくわないかギャビー! そう名乗っているだけで、実際のお前の名は……」

 

気圧されている首切り役人よりの処刑刀より早く、すっと音がして。ギャビーが動いた。その場から動いていないように見える程早かった。

 

黒いサムライの首が落ちていた。

 

手刀か。

 

動きをぼんやりとしか追えなかった。

 

「死体を片付けろ。 此処で起きた事は他言無用とする」

 

「た、他言無用! みなさん、お引き取りください! 処刑は終わりです! 終わりです!」

 

ギャビーはそうそうにさがる。

 

あわてながらウーゴが叫んでいて、司祭達が無言のまま広場から出るように促す。

 

これは、まずいな。

 

「ホープ隊長、死体を即座に始末して、灰を監視するべきです」

 

「そうだな。 お前達の話を聞く限り、奴の不死性は尋常ではない。 私はギャビー様にこれから掛け合って、ギャビー様自身での監視を頼む。 お前達は、死体の処理をすぐにやってくれ」

 

「分かりました」

 

ヨナタンとイザボーが出る。

 

ヨナタンは天使達を呼び出し、イザボーは支援魔術とコンセントレイト。

 

そして僕とワルターも悪魔を呼び出す。それを見て、ラグジュアリーズ達は、困惑していた。

 

「サムライ衆は悪魔を呼び出せるというが、あんなたくさんを呼べるのか!」

 

「静かに。 あの死体は即座に処理します。 人間の手には余るので、悪魔で対処します」

 

「天使様もいるぞ!」

 

「神々しいお姿だ!」

 

勝手に感動しているラグジュアリーズもいるなか、ホープ隊長が群衆を遠ざける。サムライ衆はホープ隊長に言われ、その整理を手伝っていた。

 

一斉に光の魔術で死体を消し飛ばす。

 

それに、塵も残らないレベルで魔術を叩き込む。

 

だが、この程度で殺せるとは思えない。わずかに残った灰を壺に入れて、それで厳重な警備の部屋に入れる。

 

封印の魔術が使える悪魔に、魔法陣を作ってもらうが。

 

こんなもの、あの力の前に役立つかどうか。

 

ギャビーが来る。残骸を収めた壺を一瞥すると、帰って良いという。

 

じゃ、あとはあんたの責任だ。

 

僕は一礼すると、皆と一緒に部屋を出る。

 

奴は多分これでも復活して逃げるだろうなと思う。あの不死性を解析しないと、恐らくは斃せない。

 

ギャビーの方があらゆる実力が上のようだが、それでもあの自信。

 

また追う事になるだろうな。

 

そう僕は確信していた。








原作とは少し違う処刑……

死体を雑にサムライに見張って逃げられた原作とも違う警戒度。

それでも問題は、根幹で解決していないのです。






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