原作でも黒いサムライが見せた不死性ですが。本作ではそれを更に極端にしたものを黒いサムライは持っています。
毎回しっかり殺されているのですが、それでもあっさり蘇り来る。それが黒いサムライの真の恐ろしさです。それでありながら、超絶級の武勇もその気になれば発揮できるのだからタチが悪い。
それはアダムに貶められた頃から、ずっと悪女と蔑まれてきた存在の怨念なのか。それとも。
予想通りというか、翌日にはもう異変が起きた。
ギャビーから直接連絡があって、寺院に呼び出されたのである。
居心地が悪そうなウーゴ。
ホープ隊長が不機嫌そうにしている中、数人のサムライ衆の幹部達も来ていた。僕達に、指示が降ると言う事だが。
まあ、これははっきり言って。
何が起きたか、聞かなくても分かる。
「黒いサムライが蘇生して逃亡しました」
「やはり」
「あれだけ粉々に消し飛ばしてもやっぱり駄目だったか。 この国の天使様の加護はどうなっているのかな」
ワルターがあからさま過ぎるくらいに言う。
ギャビーが人間ではなく、なんなら東京で殺戮の限りを尽くした「天使」の可能性が高い事を見据えた上で、敢えて言っているのだ。
僕もそれを止める気にはならない。
ギャビーのことは、東のミカド国をこんな場所にした元凶だと思っている。
仮に東京も焼き滅ぼしたのだとすれば。
いずれ斃さなければならない相手だ。
咳払い。ホープ隊長だ。
厳しい立場である。
「具体的に何が起きたのですか」
「奴は壺を内側から砕いて、即座に肉体を再構築しました。 ただし黒いサムライとしての姿はもはや保てず、黒い霧のような人型となっていましたが。 そのまま、私が斃す前に、すっと消えてしまいました。 防御用の結界も展開していましたが、それをくぐり抜けたというよりも、元々あった本体に吸い込んだ印象です」
なるほどな。
やはりあの体分霊体だったのか。
だとすると、本体はガイア教団にあるのか。
いずれにしても、あの不死に思えた分霊体にも限界そのものは来ていたらしい。
それに元ある所に吸い込まれたというのなら。
此奴が仮に大天使様とはいえど、追い切れないのも仕方がないのかも知れなかった。
いずれにしても、僕の関与する所じゃない。
僕達全員の、だ。
最初はサムライ衆で見張るという案もあったらしいのだが。
ホープ隊長が、提案したのだ。僕の話を聞いた上で。
相手は三百回以上殺されても再生した不死性の持ち主。
此処は神の加護を受けている自院で見張りをしてほしい。サムライ衆では手に余る、と。
そもそも凄まじい不死性を持っていたという報告を受けて、流石にギャビーも思うところがあったのだろう。
ホープ隊長の意見を意外に素直に受け入れた。
或いは、あの同じ顔。
ある程度面識がある仇敵であったのかも知れなかった。
「それで命令を新たに下します。 処刑は不要。 あの黒いサムライを以降は発見し次第殺しなさい」
「しかし三百回以上殺しても再生する奴ですが」
皮肉混じりにワルターが言うが。
ギャビーは、間近で見て仕組みを看破したという。
「これを」
渡された。
これはロザリオか。
だが、なんだか強烈な力を感じる。目を細めた僕は、ヨナタンにそれを引き渡していた。
「奴は分霊体を想像以上に多数保有していて、しかも世界を渡ってその分霊体を自由に出来るようです。 本体を探し当てても、本体から分霊体に己の核を逃がすでしょう。 それを防ぐのが、その道具です」
「これをどう使えば良いのですか」
「急あしらえですが、私が作りました。 奴の近くに持っていき、神を称える言葉を唱えれば、一時間ほどは奴の逃亡と再生を防げるでしょう。 その代わり、全力で抵抗してくるとみて良いでしょうね。 心して懸かりなさい」
頷く。
僕としてはそれについては異論はない。
それと、もう一つ。
仕事があると言う。
「情報を総合すると、新宿とケガレビトの里で呼ばれている地の近くに、塔が存在している事が分かりました。 そこに捕らわれている者が、東のミカド国にとってもっとも重要な存在です。 必ずや助け出す。 これを第二の任務とします」
聞いた話だ。
確か阿修羅会が守っている塔があると。
ただ僕は、それを素直に聞く気にはなれなかったが。
「それらの役割を果たしたら、フリン、ワルター、そなたらをラグジュアリーズとして、以降子々孫々この地の統治を任せましょう」
「それはそれは有り難きお言葉」
「ワルター。 ……指示は承りました。 一度持ち帰り、サムライ衆で作戦を練ります」
ホープ隊長も、ギャビーには色々思うところが多いと聞く。
その場で話を切り上げて、寺院から僕達を連れ出してくれた。
ワルターがぼやく。
「お頭、あの女絶対にヤバイですよ。 この国のガンは彼奴なんじゃないッスかね」
「大きな声でいうな。 ギャビー様に対する不満を口にしていた司祭が翌日不審死をしていた例が幾度もある。 国中に耳があると考えた方が良い」
「やっぱり化け物じゃないッスか」
「それについては僕も同感だけど、だからこそ気を付けた方が良いね。 相手はあの黒いサムライ以上の使い手だと判断すべきだ」
僕の言葉に、ワルターも押し黙る。
まあ、それもそうだろう。
僕としても、今はまだ戦ってどうにか出来る気はしない。
それにである。
さっき寺院に入って、色々気配を感じた。やはりギャビーに迫る力……人間のものではない……を多数検知した。
あれはヨナタンが連れている天使が気配としては近い。
やはりというかなんというか。
此処にいる大天使だかなんだかが、東京や、それ以外の世界中を焼き払ったのは間違いない。
後でホープ隊長に、奈落で話す事にする。
最悪、ホープ隊長にも協力して欲しいからだ。
作戦会議がすぐに行われる。
色々な話がされたが、まだ東のミカド国では悪魔化する人々が出ていて。寺院が司祭を派遣して、本を集めては焼き払っているという。
だが、それに対する反発も強くなってきていて。司祭達はサムライに反発するものを抑え込めと指示を出してきていた。
そのため、ホープ隊長は、東京にこれ以上のサムライを派遣できないという。
ちなみに既に今年のガントレットの儀は、僕達が東京にいる間に行ったらしい。
それによって新人のサムライは八人加わっているが。すぐには使い物にはならないだろう。
見た感じ、これはという人材もいないようだし。
「フリン、厳しい任務になるが、第十六分隊は引き続き黒いサムライを追跡してくれ。 奴の存在には色々思うところがあるだろうが、それはそれとして奴が東のミカド国に対する大きな脅威なのも確かな事実だ。 多くの民の命が脅かされている。 民を守るためにも、奴は討ち取らなければならない」
「はっ」
「では頼むぞ」
解散と、ホープ隊長が声を張り上げていた。
サムライ衆が散る。
僕達に対する不審の目が更に減っているようだが、ヨナタンがそれに気付いたらしく、教えてくれる。
「粛正の大なたがまだふるわれているらしい。 特にラグジュアリーズ出身のサムライが、更にサムライの任を解かれたそうだ。 八人の追加人員程度ではとても足りないらしく、来年以降も大規模な成人の儀を行うとか。 次からは、年齢も十六から二十まで拡大するらしく、一度ガントレットに選ばれなかった人間も、受ける資格を得るそうだ」
「なんだよそれ。 それってガントレットに一度選ばれなくても、次は選ばれる可能性があるってことなのかよ」
「ワルター」
イザボーがたしなめる。
ワルターは舌打ちすると、視線を背ける。
ともかく今は、やるべき事を決めて動くしかない。
僕は手を叩いて、皆の耳目を集める。
「ヨナタン、ホープ隊長呼んできてくれる? それらしい理屈で」
「無茶を言うなまったく。 奈落で話すと言う事だね」
「うん。 あの東京に降りるのに使ったツリーだかタワーだかの所のターミナルでなら、多分問題なく話せると思うしね」
ホープ隊長の代わりは、現時点ではいない。
直下の第一分隊のサムライ達は精鋭中の精鋭だが、隊長をやれるかというと話が別になる。
それくらいホープ隊長は優秀なのだ。
なんでもカジュアリティーズの出身なのに、ラグジュアリーズの女性の間でも人気が高いという。
既に失った奥さん以外の女性には見向きもしないそうだが。
「それと、僕達は黒いサムライを追うよ。 あいつがリリスの可能性は高いし、殺した分は殺されてやったなんて言っていたけれど、結局今も東のミカド国に……恐らく東京にも、禍いを及ぼしている。 それは間違いのない事実だからね」
「ああ、それは同感だな。 奴を殺すことだけは異論はねえ」
「本をあんなことに使った事は許せませんわ」
皆の意見は一致しているか。
ワルターも、奴の不死性に興味を持つより先に、奴のやり口に怒りを覚えてくれた。それはそれでかまわない。
さて、問題は此処からだ。
ホープ隊長が来たので、一緒にターミナルで転移する。上野のターミナルに登録するかと聞くが、首を横に振られた。
奈落の最下層の更に下、ターミナルの辺りは既に要塞化されている。
その一角で、ホープ隊長と話す。
まず、ホープ隊長が音が漏れないように、自力で結界を展開する。
悪魔に習ったのだろう。
こういう小技も使える、ということだ。
「此方で流れる時間の差を考えると、私は東京に降りるわけにはいかん。 それで話というのは」
「はい。 ……ラハム」
「分かりました」
ラハムを呼び出すと、結界を張って貰う。
光ではなく闇、呪いの力による結界だ。ヨナタンはちょっと不愉快そうにしたが、我慢してもらうしかない。
これにワルターが呼び出した悪魔も結界を重ね掛けする。
これで、特に天使には会話の内容は拾えないはずだ。
更に悪魔を展開して、電子機器がないことも確認する。電子機器の防御は、悪魔の前には紙の盾同然。
それは既に東京で聞かされている。
だからこうして、念入りに対策するのだ。
「話は、ギャビーの事です。 あいつが東京で殺戮と破壊の限りを尽くした、東京の人々が怖れている「天使」だと僕は睨んでいます」
「可能性はあるだろうな。 今のお前達と私が、総力で挑んでも奴に勝てない可能性が高そうだと、私は判断している」
「ええ。 しかし、何もしないわけにはいかない。 僕は力を整え次第、今の東のミカド国を変えるべきだと思っています。 秩序と法は確かに大事です。 しかし今の東のミカド国の……ラグジュアリーズは血統だけで地位を得て、カジュアリティーズは本すら読めない。 こんな状態を作り出す法は許せないし、その法を作ったのが天使だとすれば、その存在に異議を唱えるべきです」
ヨナタンは僕の言葉に反発しない。
東京の惨状を見ているからだろう。
勿論これは東のミカド国への反逆に近い言葉だと言う事も、僕は理解している。
「世界が滅ぶ前に何が起きていたか東京で聞きました。 色々な法や思想や国があって、それで世界は平和でもなんでもなかったそうです。 だからといって、こんな一つの法と仕組みしか許されないなんてのはおかしい。 勿論強引に事を進めれば、大きな問題が起きて、多くの血が流れます。 でも、東のミカド国の今の体制だって、人の数を保つために色々無茶をやっている。 それを隊長は知っている筈です」
「ああ、そうだな。 それで私に何を求めている」
「僕は力を蓄え準備を整え次第、ギャビーを場合によっては討ちます」
「!」
これはあの黒いサムライが、敢えてやったことを見て気付かされた。
ギャビーと同じ顔。
奴がそんなものを作ったのは、無論だが東のミカド国の人々に、呪いを植え付けるためのものだ。
此処でいう呪いとは、悪魔が使うものとは違って、心に植え付ける言葉や恐怖やらで相手を縛る技術の事。
そしてギャビーは効果を認めた。
黒いサムライの首を、瞬時に刎ねたのは。混乱が起きるのがまずいと判断したからである。
更に言えば、黒いサムライの死体を自ら見張ったのも、奴の存在を許せなかったからだろう。
それが善良な目的のためだと考えるのには。
今までのギャビーの言動は、色々と無理がありすぎるのだ。
「まだ討つと決めたわけではないです。 しかしながら、もしも東京にこれ以上害を為すのが目的であるのなら。 東のミカド国の人々を、今後も支配して奴隷にするのが目的であるのなら」
「分かった。 私としても思うところはある。 少なくとも、いざという時に私はそれを邪魔しない」
「隊長!」
「ただし、その時には、私に何故そうするかの説明をしろ。 それ次第では、私もサムライ衆とともにお前に加勢する。 東のミカド国には、成り立ちからして分からない事が多すぎるのだ。 東京でそれを掴んでくれ。 何があったのかを調べ尽くしてくれ。 このまま、化け物の腹の中で消化される肉のままで良い筈がない。 お前達、期待しているぞ」
ホープ隊長は、嘘をついていないな。
頷くと、僕は敬礼する。
さて、これで後顧の憂いはなくなった。
後は、東京でやるべき事をやるだけだ。
皆もそれは意見が同じであるようだ。一旦、シェルターのターミナルに出る。なんだか騒がしい音がしていた。
「うん?」
「お前さん達、丁度良いところに来たな」
地獄老人が来る。
人外ハンターがばたばたとエレベーターに向かっていると言う事は、敵襲か。
「外に久々に悪魔が押しかけてきておる。 今人魚の嬢ちゃん以外は出払っていてな。 手伝ってやってくれるか」
「勿論です」
「それと。 工場長!」
ドワーフが来る。
そして、差し出されたのは。新しい槍だ。
鈍色に輝いている、穂先が極めて巨大な槍。手にしてみると、じんわりと熱い。僕の力にも、ぴったりあっている。
「実物と形状は違うが、この国の名槍の一つの魂を受け継いだものよ。 オテギネと言う。 今のお前さんなら、使いこなせる筈だ」
「……ありがとう。 大事にするよ」
ワルター、ヨナタン、イザボーにもそれぞれ武具が渡される。
ワルターには今までよりも更に大きく分厚い大剣。これについては名前はない、だが戦場で実際に使われた大剣を再現したものだという。
ヨナタンはレプリカであるそうだが、グラムという剣を受け取っていた。
ワルターの大剣ほどでは無いが、僕の背丈くらいはある大きな剣だ。それでいて、ヨナタンが重さを全く感じていないらしい。
イザボーにも杖が渡される。
杖と言ってもごくちいさなものだ。剣は今のままでいい。イザボーは魔術の増幅媒体が欲しいと言っていたので、これでいいのだろう。
「あら素敵。 この杖の名前は」
「ないよ。 まだ魔術の増幅媒体というだけよ」
「そう、ではオスカルと名付けようかしら」
「ん?」
うっとりした様子でイザボーがいうので、僕はちょっと違和感を感じたが。ともかく、反論を許さない圧みたいなものを感じたので、とりあえず黙ることにした。ドワーフの親方も同じだったようだが、まあイザボーが喜んでいるのならそれでいいだろう。
ともかくエレベーターを経由して外に。
急激に冷え込んでいた。
辺りには、粉々に砕けた悪魔が多数散らばっている。
あの穏やかそうな性格のマーメイドに、たくさんの悪魔が集っていて。人外ハンター達が繰り出す悪魔も含めて乱戦を繰り広げているが。
なんだろう、こいつら。
ちょっと違和感がある。
強いのは確かだ。僕は号令を掛けて、手近な奴。鎧姿の……以前西王母の周囲にいた連中に近い武人然とした奴に、新しく手にしたオテギネを振るって突きかかる。其奴が頭だと判断したからだ。
即応。
刃を抜いて、即時で弾いてくる。
手応えが重い。
そのまま、数合斬り合う。ワルターもヨナタンも加勢。イザボーが、大規模魔術を展開。火力が数段上がっていた。
「ただものじゃないね。 僕はサムライ衆のフリン。 貴方は?」
「ほう、名乗るか。 面白い。 わしは鬼神ショウキ。 病を為す悪鬼を喰らうものよ」
「へえ。 それが多くの人が命をつないでいる此処に何の用?」
「それが本当か、此処に守るに相応しい力が備わっているのかを見に来た! 邪魔だ雑魚共!」
かっと叫ぶと。
人外ハンターが放った悪魔達が、瞬時に砕け散る。
なるほど、どちらかというとヨナタンの天使達みたいな、邪悪に対する存在と言う訳か。
根っからの悪党ではなさそうだが、それでも。
試しだかなんだか知らないが、そんなことで人をたくさん殺すのは看過できない。
ラハムを呼び出す。
頷いたラハムとともに、連携して戦いに入る。ラハムに支援魔術を掛けて貰いながら、僕は立て続けに突き技を叩き込む。
余裕を持ってそれを捌き続けるショウキ。
かなりの使い手で、ひりつく。牙の槍以上の性能を持つこのオテギネは、体にすごく馴染むが、それでもまだまだ。ただ、激しい戦いの中で、急速に僕と一体化しつつある。だが、なおも相手の近接戦の技量が上。
本来なら、皆と連携すべきだが。皆もそれぞれ戦っている。かなり手強い相手と。
だから屈する訳にも、さがるわけにもいかない。気合の一声とともに、懐に潜り込むと、掌底を叩き込む。近接戦では、柔軟に体術に移行するのが重要だ。さがりつつ、ショウキも回し蹴りを叩き込んでくる。態勢を低く、ぐおんと空気を抉り取るような一撃を回避しつつ。
そのまま体のバネを生かして、オテギネで地面を抉りつつ、加速させて切り上げる。
払いの技の一つ。地擦り虹。
ショウキは剣でそれを受けたが、吹っ飛んで、地面で態勢を立て直す。かっと笑ったのは、楽しんでいるからか。
強烈な気配。
飛び退くと同時に、白い炎が僕がいた地点を強襲。
それだけじゃない。
立て続けに炎が、彼方此方を襲っていた。
「頃合いだ。 さがるぞショウキ」
「ちっ、楽しみすぎたか。 まあいい。 此処は確かに充分な守りがある。 それを確かめられただけで充分よ」
ショウキの隣に降り立ったのは、ショウキ以上に強い気配を感じる悪魔だ。
体に羽を多数つけている、浅黒い肌に色々と模様を描いている男性の悪魔だ。けばけばしい色の服を身に纏っているが、あれは蛇神の系譜だな。
それは見てすぐに理解できた。
側の地面に、マーメイドが浮き上がってくる。
かなり手傷を受けている。
あの霊夢が自分より強いと言っていた彼女が。恐らくだが、やったのはショウキではなく、こっちの男性の神の方だろう。
「フリンと言ったな。 我は太陽の神ケツアルコアトル。 この地の人間が、己の身を守れるかどうかの試しがどうしても必要だった。 そなた等の加勢があったとはいえ、この地の人間は我が思っていた以上に逞しいようだ。 それに冷静に迎撃を行って来た。 それを見届けただけで我等の目的は達成出来た。 これ以上戦火を拡大するつもりはない。 安心せよ」
「そう。 それで、一体何を目論んでいるの?」
「それは流石に話すわけにもいかぬ。 いずれ機があったら会おう」
周囲で戦っていた悪魔達が、かき消える。
凄まじい強さを感じた。
バロウズが解説してくれる。
「龍神ケツアルコアトル。 南米に存在した文明の主神にて太陽神よ、 生け贄を求める神でもあるけれど、それは太陽を失わないため。 慈悲を持つ神であり、生け贄を必ずしも必要とはしないこともあったそうだわ」
「主神となると、西王母より格上の神様って事だね」
「ええ。 それに本来は蛇に翼がある姿が示されているわ。 あの人型は、あれでも力を抑えている状態と見て良さそうね」
色々と厄介な話だ。
ともかく、怪我人の手当てをする。
奧から出て来た、医療班に怪我人を引き渡す。マーメイドには、イザボーが呼び出した凄い女神様が回復の魔術を掛けていた。パールバティというらしい。
「ありがとう、助かったわ」
「貴方が此処までやられるなんて」
「うん……。 流石に色々あって、力を発揮しきれない状態だし。 相手が相性も最悪だったし。 仕方がないわ」
そうか。いずれにしても何とかなりそうでよかった。
奧からフジワラさんが出てくるので、礼をする。
フジワラさんも、此方に対して礼を返してくれた。
さて、色々とややこしい事になったし、順番に話をしないといけないだろう。
放たれた矢のように黒いサムライを追うわけには、どうやらいかないようだった。
フリン達に新装備支給です。
ちなみにオテギネですが、これは日本の天下三名槍の一つですね。それをドワーフの技術で再現したものです。
残念ながら現物は戦禍で消失してしまっています。
牙の槍もいい槍だったのですが、これには流石に劣ります。
役割を終えて引退した牙の槍は、以降はサムライ衆の誰かに引き継がれることとなります。