銀座に現れる悪魔を、他のガイア教徒とともに討伐していたカガは、連絡を受けて教団の本殿まで戻る。
教団の本殿は魔術を豊富に用いた要塞であり迷路でもある。
深部まで辿りつくのに苦労する信徒も多く。
この中で遭難してしまう者もいる。
本殿まで戻ると、カガは跪く。
ミイとケイがいる。今日はユリコ様はいないようだが。
「武勲をまたあげたようだねカガ」
「はっ。 しかしていかなるご命令でしょうか」
「うむ。 六本木のヤクザ共が潰乱していてねえ」
聞いている。
噂によると、奴ら自慢の必殺の霊的国防兵器の一つが制御を離れて。阿修羅会を殺しまくっているそうだ。
それに伴って阿修羅会に所属していた悪魔も同じように殺しまくっていて。
それで阿修羅会を見限った悪魔がガイア教団に流れてきていると言う事である。
それだけではないそうだ。
「人外ハンターどもも動いている。 明確にサムライと手を組んで、あの塔を落としたという報告が来ていてね」
「彼処はかなりの守りが敷かれていたと聞いていますが」
「力衰えたりとはいえど、あのマンセマットがいたらしいからねえ。 それを抜いたと言う事は、ちょっとばかり侮れない。 此方としては、つまらん秩序なんか敷かれても、おもしろくない。 後は分かるねえ」
人外ハンターへの対決姿勢か。
カオスが好ましいとするガイア教団だ。
このまま人外ハンターの裏にいると噂される何者かの手によって、戦前と同じ状況が作られるのは困る。
そう考えているのかも知れない。
カガは、このままだといずれ戦いで死ぬだろうなと考えている。
それはそれでかまわない。
好きでも無い男と無理矢理子供を作らされて、その子供を育てるので一生を費やす。そんなのはいやだ。
生物としてはそれで正しいのかも知れないが。
カガは人間だ。
せめて納得が行く相手と子供を作りたいし、子供を作るならちゃんと育てたい。
それが出来ないなら、一戦士として最後までありたい。
そう考えるのがカガである。
しかしだ。
もしもそういう生き方を選ぶのであれば。
人外ハンターと連携して、もう少し東京を暮らしやすい場所にするのもありなのではないのか。
そう考えてしまうのも、否定出来ない。
顔を上げると、カガは具申する。
「以前共闘しましたが、ガイア教団の最精鋭をぶつけても、あのサムライという者達には及ばないかと思います」
「臆したか」
「いえ、単純な事実です。 作戦としても、無為な特攻は避けるべきかという話です」
「くだらんことをいいよるな。 まあいい。 お前に命じるのは、阿修羅会と人外ハンターがぶつかるように細工をすることだ。 今衰えが酷くなってきている阿修羅会だが、総力を挙げれば充分に暴れている必殺の霊的国防兵器と対抗も出来る。 それを気付かせてはならないのよ」
ひっひっひと双子の老婆が笑う。
まるで怪異だ。
はっと、カガは頭を下げる。
そんな陰険な陰謀を、ガイア教団が選ぶのかと、少し幻滅したが。続けて話を聞く。
「阿修羅会のアベは知っておるな」
「はい。 事実上の阿修羅会の指導者ですね。 タヤマの衰えが酷くなってきている今は、特にその傾向が強いようですが」
「奴に対する襲撃の案が出ている。 阿修羅会の内側からな。 阿修羅会でも目端が利く人間は、タヤマの衰えを感じ取っている。 タヤマにどうしてか絶対の忠誠を誓っているアベが邪魔で仕方がないのよ。 そいつらがこの間、野良の大物と契約したという話があってな」
阿修羅会の内紛か。
普通だったら、そんな稚拙な陰謀、アベに察知されて終わりだろう。
そこで介入するというわけか。
「具体的に何をすればよろしいでしょう」
「指定の日時に指定の場所にいき、これを使え。 それで充分。 後は戻るだけでかまわない」
「これは……」
「知らぬでいい」
なんだろう。何かの像のようだが。
ともかく、それだけであるのなら。
礼をして、本殿を出る。
考えを読まれたかも知れないが、もうそれはいい。ガイア教団に愛想を尽かせたわけではないのだ。
銀座を出ると、黙々と六本木に向かう。
途中、知り合いから連絡が来た。
ガイア教団を抜けて、人外ハンターになった戦士。今ではリッパー鹿目と名乗っている。
「貴様が連絡してくるのは久しぶりだな」
「うん。 今度六本木で潜入任務が入ってね。 私もそろそろ力が衰え始める頃合いだし、人外ハンターに手柄を立ててあのシェルターに移りたいんだよ」
極度の人見知りであるうえ。
大戦の混乱で散々な目にあった鹿目は、殆ど誰とも口を利かない。
その頃時々一緒に行動していたカガには、こうやって連絡をくれるし、メールの文面は普通だ。
一時期はガイア教団にいた鹿目だが。
男性の信者や場合によっては悪魔と子供を作るような話を持ち込まれ。それが何度か続いた後、ガイア教団を去った。
色々酷い目にあった事をカガは上層部に話していて、配慮を求めていたのだが。
弱いのは弱い方が悪いという理屈のガイア教団では、それは聞き入れられず。鹿目は弱い方が悪いという理由で、ガイア教団を離れ。そして、腕利きの悪魔使いを、教団は失ったのである。
その事が、今もカガは引っ掛かっている。
「六本木は何が起きるか分からない。 兎に角気を付けろ」
「分かってる。 そっちも気を付けなよ。 妖怪ババアをこの間見かけたけど、あの化け物どもまだ健在なんでしょ」
「そうだな。 ユリコ様の配下として権勢を振るっているよ」
「早く死ねば良いのに」
鹿目は吐き捨てると、メールを消しておきなと言い残して、それで通話をうちきった。
カガは貰った道具を見つめる。
これが何をするものなのかは分からないが、いずれにしても状況が混乱の一途を辿っているのは事実だ。
このままでいいのだろうか。
カガは歩きながら、そう思う。
東京にまだ、太陽が昇る気配はない。
(続)
原作と違い、西王母戦で生き残ったカガさん。
フリン達の影響を受けて、悩むようになっています。
これもまた、一人の生の話。
どこかでなにかに影響を与えるかも知れない、歩みの話です。
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