メガテンと言えば東京がマッハで滅びるシリーズではありますが、シリーズによってダメージはそれぞれであると思います。
真シリーズでいうと、真1、真2は世界中に核が落ちたものの、TOKYOミレニアムが作られていたのを見ると、技術そのものはある程度保全されていたように思います。殺戮ロボ軍団を作る博士とか、レールガンがあったりしましたし。真3、真5は東京だけが潰れた事が分かっており、歴代で一番状態が良いかも知れません。
真4シリーズは、マサカドバリアで核の直撃は免れたものの、太陽を失い、内ゲバで散々な有様ですね。
そしてその散々な有様を作ったのは、自分らだけ良ければいいと考えて動いたメガテンシリーズでも歴代屈指のカス組織。ロウ勢力よりも更に悪辣な存在。阿修羅会でしょう。
自分だけ良ければいいという思想を全体に展開するとどうなるか。真4真4Fの破滅的な状態の東京が、示していると言えますね……
六本木のターミナルで集合。ターミナルで領域化されていた事もある。警察署の地下は意外と荒らされておらず、装備類も残っているらしい。志村が運び出していたので、僕も手伝う事にする。
ジャックランタンが灯りを照らす中、壊れてしまっている電子ロックの奧から装備を運び出す。
小型の銃がたくさん。
弾があまりないが、元々警察という組織ではこれを滅多に使う事ができず、使う度に始末書を書かされたという。
それでよく抑止力になったなと、僕は呆れてしまうが。
更には、何か服みたいなものを出す。
これは、ちゃんちゃんこと言われる服に形状が似ているが、なんだろう。小首を傾げていると、志村が教えてくれる。
「これは防弾チョッキと言って、銃弾を防ぐのに特化した服なんだ。 一時期は刃物にとても弱かったのだけれども、この型番のものは刃物にも強いんだよ」
「そういえば、銃が大戦の前では最強だったんですよね」
「そうだね。 悪魔ではなく人間が治安を乱す存在だったからね。 人間はどれだけ強くても、銃弾を受けたら死んでしまうから、どうしても銃が最強だった」
それでこんな弱そうな服に需要があったということか。
運び出すのはまだある。
棒もあった。
警棒というらしく、暴徒を鎮圧するのに使っていたらしい。こんな小型の銃と警棒では、出来る事も少なかっただろう。
そのため、警官は武道というのを習って、徒手空拳でも相手を制圧できるようにしていたらしい。
ワルターがぼやく。
「平和な国だったんだな」
「ああ、それはそうだ。 だからその程度の装備で大丈夫だった。 ただ大戦が起きる前くらいから、そうもいっていられなくなったんだけれどね。 おっと、これはとてもいいものだ。 運びだそう」
奧に並べられていたのは、半透明の盾かこれは。
ライオットシールドというらしく、これも並べて暴徒を鎮圧するのに使っていたらしい。
警察の中でも武闘派を集めて作られた機動隊という集団が装備していたらしいのだが、これが悪魔に通じるとも思えない。
ただ、警察は貧弱な装備で四苦八苦して、大戦の時は命を盾にして民を守ったらしい。
それは。
僕は責められないな。
柔軟に悪魔に対応できる装備をわたせば、もっと違ったのかも知れないのに。そうとは思ったけれど。
他にも雑多な装備類もある。パソコンもまだ手つかずのものがあるようだ。
志村はかなり詳しいらしく、次々に分解して運び出している。これらは貴重な情報を内部に入れている可能性が高いらしく、一度シェルターで解析するらしい。その後必要ないと判断したら譲ってくれるそうだ。
シェルターでも野菜などが足りていないのである。
それならば、譲ってくれるのはとても助かる。此方としても、まだガブリエルと思われるギャビーと事は構えたくないのだ。
警察署からターミナル経由で、ピストン輸送で物資を運んで行く。
そうすると、地獄老人……ドクターヘルが、受け取りながら喜んでくれた。
「おお、これは状態が良い! 解析をして、更に此方で作れるものを増やせそうだ。 ただ電子機器だから、悪魔が入り込んでしまっているかも知れないがな」
「見張りを立てますか」
「ああ、それなら問題はない。 フジワラもいるし、見張りように強めの悪魔を借りるさ。 このサイズのサーバであれば、最悪の事態になっても大した悪魔は入っておらんよ」
嬉しそうに一本ダタラ達と一緒に手慣れた様子で分解を始めるドクターヘル。
僕はまあ任せて良いだろうと思って、どんどん装備類も渡しておく。
ちいさな拳銃はニューナンブというそうだ。
悪魔相手にはとても対応できないので、まだ見習いの人外ハンターや、人外ハンター志望の子供達が訓練用で使うという。
それでいいと思う。
銃の恐ろしさは、使うのであれば早い段階で知っておくべきだ。
また、防弾チョッキについても、非戦闘員に着せるという。ただの服よりもずっとマシ。それが理由であるらしかった。
十何往復かして、それで六本木の警察署の地下は空になる。
他にも彼方此方に自衛隊の駐屯地などがあるらしいが、悪魔が制圧して領域にしてしまっているらしく、手が出せないそうだ。
阿修羅会もそういうものは放置しているらしい。
まあそうだろう。
連中には、厄介な武器が出回らなければそれでいいのだから。
警察署を出ると、秀がちいさな人型みたいなのを集めていた。人型とはいっても、顔も目もない。
とても小柄で、可愛らしい者達だ。
「スダマね。 地霊としてはとてもありふれた存在よ。 土木などから生じたもので、悪質なものは人を惑わせるとされているわ」
「あら、でもとても可愛いわ」
「私に取っては重要な存在だ。 物資を運んできてくれて、とにかく戦場では役に立った。 今も私に取っては小荷駄隊と同じだ。 継戦力を支えてくれる」
珍しく秀が口に出して解説してくれる。
まあ、確かに悪さはしそうにない。
イザボーが可愛いというのも、僕には分かる気がする。
ただ、物資だけ補給していたわけではないようだ。
「六本木の街の近くに、クラブミルトンという場所があるらしい。 阿修羅会が悪辣な取引に使っていた邪悪な場所だそうだ。 暴れ狂った挙げ句、甲賀三郎は、其処に貼り付いているようだと、スダマの一体が調べてきてくれた」
「ありがたい! 手当たり次第に探さなければいけないところだったが……」
「いや、どうやら行き違いみたいだね」
秀が武器を手にとり、僕も槍を構える。
この場にいるのはみな手練れだ。さっと円陣を組む。周囲に人、十人以上。全部阿修羅会とみて良いだろう。
進み出てきたのは、そこそこ地位がありそうな奴だ。
アベほどではないが、それなりに実力はありそうだ。阿修羅会というとがなりたてるだけのカスという印象しかなかったが、ごく少数だけまともなのもいるらしい。
「池袋で西王母を斃したサムライ衆の皆さんと、人外ハンターの精鋭方ですね」
「そうだけれど何?」
「タヤマさんが貴方方と話をしたいということです。 来ていただきたく」
「……どうする?」
志村がスマホを使って、即座に連絡を入れる。
そして、少し話していたが。
その間に僕は周りを観察する。
阿修羅会の連中は、それぞれかなり身なりがいいが、いずれも怯えきっている。これは相当に甲賀三郎に削り取られたのだとみて良いだろう。
自業自得だが、此奴らが必殺の霊的国防兵器という甲賀三郎と同等の切り札を多数持っている事は分かっている。
それを展開された場合、何が起きるか分からない。
憶病なタヤマはそれをやらないだろうが。
それでも恐怖が極限に達したら、どんな風に血迷うかは知れたものではないのだ。
「話がついた。 会談を行うというのなら、別にかまわないが」
「ありがとうございます。 タワマンにお越しいただけますか」
「……そっちが来なよ」
「タヤマさんは自衛の武力に限界があります。 それもあって、自宅であるタワマンから動けないのです」
嘘だな。
必殺の霊的国防兵器は基本的に一つは間近に置いていると、そういう話も聞いている。
タヤマがその気になれば、相応の自衛力はあるはずだ。
或いはだけれども、その必殺の霊的国防兵器も、瞬時に使えるようなものではないのかも知れない。
タヤマという奴が小物だというのは知っている。
それにしても、側で実体を見ておくのはいいだろう。
「僕達だけで行ってくる。 ええと、バロウズ。 スマホの代わりで、フジワラさんと通信を確立出来るかな」
「ええ、問題ないわ」
「じゃあ、秀さんよろしく」
「分かった。 任せておけ」
手を分けるのは、これはいざという時に備えての事だ。
阿修羅会が強硬手段を採ったり、或いは甲賀三郎が強襲してくるかも知れない。
それらの時のために、あえて一度戦力を分ける。
阿修羅会は冷や汗を流しながら、僕らを囲んで、それで案内だと言ってくる。これはこいつら、僕らの武力をもう知っているな。
とりあえず移動していく。
でかい建物は幾つもあるが、その中の一つ。
灯りが煌々と点っている大きな建物がある。
内部には少人数がいるようだが、多分阿修羅会の幹部とかその家族だろう。こんな良さそうな場所を身内だけで独占しているわけだ。しかもこの張りぼて、どう見ても見かけ倒しである。
強めの悪魔に襲われたら、多分ひとたまりもない。
赤玉というのを非道な方法で作って悪魔にばらまいているというが。
そんな事のために、非道な手段で人を殺しているのだとしたら。
此奴らに対する怒りはますますわき上がってくる。
内部にいる人間の位置は全部把握。
強い気配がある。あれは覚えがある。アベだ。
それと、知っている気配が一つ。
そういうことか。
それで有利に交渉を進められるとでも思っているのか。とんでもない浅知恵だと思い知らせるか。
エレベーターに乗る。
僕だけではなく、ワルターもそれは察知したようだ。
少し遅れて、ヨナタンとイザボーも。
イザボーが眉間に皺を寄せていくのが分かる。僕はすっと手を横に出す。僕が対応する。そういう合図だ。
やがてエレベーターが止まって。案内される。
廊下の先にあったのは、硝子張りのでかい部屋だ。あの透明な板が硝子というのは志村に聞いた。
偉そうにふんぞり返っているタヤマ。
その隣にはアベが控えている。
他に数人チンピラがいるが、そんなのはどうでもいい。問題は、チンピラが銃を突きつけている相手が、行方不明になったサムライ衆の一人だと言う事だ。
殉職したサムライももう出ていると聞いていたが、確か民を助けようとして悪魔に襲われて、それで行方不明になった人が一人出ている。
その人だろう。
ぐっと歯を噛んでいるその人の存在があるからだろう。
タヤマは余裕綽々の様子で、机に脚を投げ出していた。
「ようこそ勇敢なるサムライ衆の諸君。 人外ハンターと手を組んで、クエビコや西王母を斃したそうだな。 見事見事」
「僕はフリン。 お前は?」
「お前……ああ、失礼したね。 俺が阿修羅会の長であるタヤマだ。 今後お見知りおきを」
「お前が長ねえ。 そっちのアベの方が余程実権を握っているように見えるけど」
ひくりと、タヤマが引きつった。
実際問題、どうでもいい程度の存在だと、側にでて分かった。
そして懸念していた必殺の霊的国防兵器についても分かる。この距離だと理解出来るが、どうも耳につけている飾りがそうだ。
あれは即座に展開出来る代物でもない。
なるほど、そういうことか。
一応側においてはいるが、タヤマ自身の武力はチンピラと同等。いや、年を取って衰えた今は、並みのチンピラ以下。
使うにしてももたついて、すぐには使えないと言う事だ。
動きを見て理解するが、手足にちゃんと血が通っていない。
あれは何かの病気だろう。
贅沢をするラグジュアリーズは色々な病気になると聞いている。
食べ物も住む場所もなくて誰もが困っている東京で。
こいつは美食を独占して、自分だけ贅沢するとかかるような病気になっているということだ。
僕の怒りがどんどんうなぎ登りになっている事を、多分タヤマは気付けていない。
「ま、まあいい。 今日は同盟を申し込みたくてね。 凶暴な悪魔が暴れて少しばかり困っている。 君達の手を借りたいんだよ。 手をね」
「わ、私にかまうな! こんな連中の言う事を聞くんじゃない!」
「てめえ、タヤマさんが喋ってるだ……」
捕まっている先輩を殴ろうとしたチンピラが、天井近くまで跳んで、床でぐしゃっと潰れる。
殺さないように加減はしたが。アベ以外の阿修羅会は何が起きたか分からなかっただろう。
軽くオテギネで払って、風圧で飛ばしただけだ。
此奴ら程度が相手だったら、視認できない速度で動く事くらいは出来る。
「今の見えたか? そこのアベ以外には見る事も出来なかっただろう。 まさか人質でも取っているつもりか?」
苛立ちが噴き上がってくる。さらにさらに。
僕はいつになく好戦的な気分になっていた。東京で見てきた非道の原因の半分くらいが此奴にある。そう思うと、怒りが抑えきれない。
タヤマが慌てた様子で立ち上がり、アベが盾になるように前に出る。僕は銃を先輩のサムライ衆に突きつけているもう一人のチンピラ近くの硝子窓を消し飛ばす。勿論アベ以外には視認すら出来なかったはずだ。
風が入り込んでくる。
正円系の巨大な穴を見て、ひっとチンピラが呻いて銃を取り落とす。
僕は、煮えたぎる怒りを、言葉にして吐き出していた。
僕は激高すると一人称が俺になる。
昔は一人称が俺だった名残だ。
「この悪趣味な建物に入ってから、およそ200回。 タヤマ、お前を俺が殺す事が出来た回数だ。 その気になれば今の俺だったら、六本木のどこからでもお前を打ち抜けるぞ。 お前の薄汚い気配は覚えた。 今後、貴様に安息の時などないと知れ!」
「ひっ! ま、待て! まずは話をしよう!」
「フリンさん、そこまでにしましょう。 今暴れている甲賀三郎は極めて危険な悪魔で、争っている場合ではありません。 放置しておけば、無辜の民も牙にかかるでしょうね」
「私からも提案する。 一度怒りを収めてくれないか」
フジワラの声だ。ガントレット経由で、バロウズが届けてくれたのだ。
僕はふうと息を吐くと、一旦気持ちを落ち着かせる。
まあいい。
これくらい脅しておけば、それで問題は起こらないだろう。
実際問題、近くで見て確認出来た。
此奴は権力にしがみついている病人に過ぎない。
最悪の性格でカスみたいな人格で。
それでも、その気になればいつでも殺せる。それが確認出来ただけで充分だ。
「タヤマ、見かけで判断したな。 フリンさんは今私に協力してくれている英傑達とそろそろ力量でも並ぶ存在だ。 いずれ四大天使とやり合った頃の私達と並ぶだろうな。 お前なんかで手に負える相手では無い」
「ぐっ……」
「それで甲賀三郎は何処にいる。 同盟なんぞ組むつもりはないが、其奴の脅威については同意する。 居場所を先に言え。 勿論人質なんか通じる相手では無い事は、もうお前が分かっている筈だ」
「……クラブミルトンだ。 赤玉の在庫を取られて、こっちは身動きが取れなくなってる。 こっちで従えていた悪魔達が、それで無差別に暴れ出しかねない状態だ」
話がスダマのものと一致する。それと、赤玉か。
現物を見たが、ろくでもない代物である事は分かっている。
今ドクターヘルが解析しているらしいが。
そんなもので悪魔と共存するなんて事は、あってはならなかった。
そんなことをしているから、東京は此処まで悲惨な事になったのだ。
自分さえ良ければいい。
そういう思想の果てが、この状態だ。
此奴の罪は万死に値する。
「フリンさん、いいかい。 場所を転送しておく。 私の方で後はタヤマと話そう。 人質には指一本触れさせない。 それは心配しなくていいよ」
「分かりました、お願いしますフジワラさん。 僕としても、ちょっとこの外道の前では冷静を保てそうにありません。 クズの相手をさせてしまうことになりますけれど、ごめんなさい」
「いいんだよ。 霊夢君に近々其方に向かって貰う。 甲賀三郎に対して、対策の札を持っているそうだ。 合流して、対応して欲しい」
こくりと頷くと、先に捕まっている先輩に近寄る。
怯えきった阿修羅会の雑魚は、さっと逃げ散った。
腰を落とすと、唖然としている先輩に、笑顔を作る。
「後は交渉を引き継ぎますので、しばらくはゆっくりしていてください。 何かあったら言ってくださいね。 この土地にいる阿修羅会とかいうダニの群れは僕が皆殺しにしますので」
「……君の噂は聞いていたが、想像以上に凄まじいな」
「まだまだですよ。 僕より強い奴なんて幾らでもいます」
これは本音だ。
東京に来てから、それは何度も思った。
タヤマには一瞥もせず、悪趣味な部屋を出る。アベが追ってきて、エレベーターで送ってくれた。
不思議と、アベには其処まで嫌悪感を感じない。
此奴が阿修羅会を動かしているのはだいたいわかるのだが。
非道をしているのとは、どうも結びつかないのだ。
様子をにやにや見守っていたワルターが、アベに言う。
「あんた、よくあんなのの下についているな」
「恩がありますので」
「恩を返すにしても、あれだけの非道をしている輩だ。 多少は諌めたらどうだ」
「あの方は苦労して今の地位について、其処に必死にしがみついているのです。 俺としても、その苦労は見て知っている。 非道をしている事は分かっています。 ただ俺からは、その非道があまりにも度を過ぎない方向で進むように助言することしかできません」
ヨナタンが冷静に指摘するが、アベは案外頑迷だ。
イザボーが嘆息する。
「きらびやかな建物だと思ったのに、内部は腐り果てているのね」
「これは戦前からです。 これらのタワマンには、ずっと性根が腐った人間達ばかりが住み着いていました。 金持ちの富と権力の象徴であり、其処に住んでいる人間が腐りきっていた……それだけで、だいたい戦前の状態が理解出来るかと思います」
「情けない話だ。 僕の国でも、ラグジュアリーズの大半はそうだ。 どこでも同じなんだね」
「……そうでしょうね」
エレベーターが止まり、外に。
礼をするアベに、僕も礼を返す。
此奴は其処まで嫌いになれない。
俗悪なだけのタヤマとは、決定的に違うと分かったからだろう。
秀と志村さんと合流する。
それで少し話すのだが、秀が片手をあげていた。
「悪いが霊夢と代わる」
「ひょっとして」
「今ニッカリとともに行動しているナナシやアサヒが、大国主命の手がかりを見つけたようだ。 大国主命は穏やかな性格の神として知られているが、荒神となっているのなら、近付くだけで危険があるだろう。 護衛につく必要がある」
「分かりました。 此処は僕達だけで大丈夫です。 行ってください」
警察署に移動。
タヤマは今頃震え上がっているだろう。
それだけでいい。
先輩を連れ出さなかったのは、簡単である。
しばらくはタヤマの物資を無駄に消費させるためだ。
それで後で聞いておく。
奴は今、誰もが苦しんでいる東京で、一人贅沢をしている。あの様子だともう男性機能もろくに機能していないだろうし、女を抱えて好き勝手しているということもなさそうだ。僕もまだまだ武の頂きには遠いが、それでも間近で見れば相手の体の状態くらい分かる程度にはなっている。
後は取り巻きが少し住んでいるようだが、タヤマほどの贅沢は出来てはいないだろう。
フジワラがこれからタヤマを更に詰める事が分かっているし。
先輩のサムライが人質から賓客として扱いが変わる事も目に見えている。
つまり貴重な物資を消耗させてやるための嫌がらせだ。
六本木に入り込まれていて。
更には甲賀三郎をどうにもできない時点で、阿修羅会の実力については分かった。
勿論奴が身に付けていた強力な悪魔の制御装置や、他の必殺の霊的国防兵器の事もある。
それらを十全に使えない事は分かっているが。
少なくとも、ガイア教団と手を組まれない限りは問題は無い筈だ。
ガイア教団にいるユリコ……100中99はあの黒いサムライだが。
奴との接触は、今フジワラが交渉してくれているらしい。だから、それの結果を待つことにする。
僕としては、東京のガンも。
東のミカド国のガンも。
除けるなら除いてしまいたいのだ。
警察署で一旦解散して、秀も僕達も、ついでに志村さんと他のハンター達も一度戻る。ターミナルはそういう事が出来るから便利だ。
東のミカド国に戻ると、もう秋になっていた。
そして、僕達がいない間に、ガントレットの儀が行われ。
それで十五人、新人が入ったらしい。
僕がガントレットの儀を受けた時に、何年も新人が出ていないという状態だった。それはラグジュアリーズが儀を独占していた良い証拠だ。こうやって門戸を拡げればサムライになれる人間は出る。その気になれば、まだまだ増やせるだろう。
持ち帰った遺物を納品して、野菜やら家畜やらに変える。
子豚を貰えたので、有り難くいただいておく。親豚はターミナルを超えられないが、子豚ならどうにでもなる。
そして子豚は凄い勢いで大きくなる。
人外ハンター本拠のシェルターで。そう時間をおかず、お肉に変える事が出来るはずだ。数もどんどん増えるだろう。
シェルターで物資の引き渡しを行う。
それでホープ隊長とも話をしておく。
サムライが一人捕まっているという話。それもすぐに開放させるという話をすると、頷いていた。
「危険な土地での任務だ。 犠牲が出る事は仕方がない。 だが、それでも救えるなら救ってくれ。 誰もが貴重な戦力だ」
「はい。 それと……ギャビーは」
「ああ。 どうやら何か近々大きな動きを起こすようだな。 ラグジュアリーズの要人が、立て続けに姿を消している。 ラグジュアリーズは大混乱だが、国政には全く影響が出ていない」
「とんだでくの坊ですね。 それでカジュアリティーズを家畜呼ばわりしているんだから、何様のつもりなんだか」
僕もちょっと口が悪くなったか。
ホープ隊長は苦笑いすると、私も同じ気分だと言ったので。ワルターが遠慮無く笑った。
勿論ヨナタンやイザボーみたいにしっかりしたラグジュアリーズもいると、その場で僕もフォローしておく。
分かっていると、少し寂しそうにヨナタンは笑っていた。
「危険な相手との連戦が続いているようだし、とにかく気を付けろ。 戻る度に腕を上げているお前達は、サムライ衆の次の星だ。 私が引退するまでに、問題を全て片付けられるかも知れないな」
「努力します」
「ああ、頼むぞ」
さて、片付けなければならない問題はまだまだ幾つもある。
だけれども、全権を任せて貰っている今、責任を持って一つずつ潰して行かなければならない。
ヨナタンとワルターとイザボーと頷きあう。
役割が違うこの四人で、連携している限り。困難が起きても、対応は難しくない。僕はそう、信じている。
タヤマに対し一歩も引かないフリン。
この作品を構想した時に、書くと決めていたシーンです。
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