もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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対甲賀三郎戦開始。

甲賀三郎は原作でもかなり手強い相手ですね。そしてフリン達の手際が悪いので、もう一度いいように阿修羅会に利用されてしまうことになります。

本作ではスペシャリストがいます。

原作とは此処でも展開が変わってきます。






2、諏訪の守護神

しっかり休憩を取ってからシェルターに出向く。

 

地下から出て来た霊夢が、スポーツドリンクというのを飲んでいた。礼をすると、こくりと頷く。

 

「美味しいけれど、酒を飲みたいわね……」

 

「あんた酒好きだって聞いていたけど、本当に好きなんだな」

 

「命の水よ」

 

「……」

 

ちょっと呆れる。

 

僕のいたキチジョージ村もそうだが、基本的にカジュアリティーズはお祝いの時くらいしか酒は飲めなかった。

 

誰かが結婚したりとか。或いはめでたい事があったときとか。

 

酒は蒸留酒が基本だったけれど、ラグジュアリーズは他にも色々な酒を飲んでいたようである。

 

まあ僕としては、酒はあまり好きではない。

 

別に武人が酒好きである理由はないと思う。

 

たまたま霊夢は酒が好きなだけ。

 

そういう話だ。

 

「それで阿修羅会相手に大立ち回りをして来たって? 困った困ったと言いながら、フジワラが胸が空いた顔をしていたわよ」

 

「間近で見てきたけれど、タヤマは本当にただの雑魚だね。 どうしてあれが東京の支配者になれたのか不思議なくらい。 問題はアベで、あれは強い。 もしもやりあったら、無事では済まなかったと思う」

 

「そうね。 今の貴方たち四人ならギリギリ勝てるかという所でしょうね。 あたし単騎ではちょっと勝てるか怪しいわ」

 

「俺たちもそこまで腕を上げていたんだな……」

 

ワルターがぼやく。

 

ワルターも強さには貪欲だ。同時に強い相手は無条件で尊敬する。

 

霊夢の強さは間近で見ているし、それでそういう風に素直に感心も出来るのだろう。

 

体調は万全。

 

人外ハンターの内、今回は小沢さんが一緒に来てくれる。志村さんは、秀と一緒に大国主命の方に回るそうだ。

 

霊夢はこれでもまだ力を発揮し切れていないらしく、大国主命などのこの国の神々の力を借りられれば更に強くなるらしいから。

 

それが出来るのなら、大歓迎と言う所だろう。

 

それにこの国の神々の力が戻れば、相対的に悪さをしている連中……悪魔だけではなく、大天使の力も弱体化するらしい。

 

そうなったら。

 

東のミカド国を好き勝手にしているギャビーらに、鉄槌を下せるかも知れなかった。

 

彼奴は1500年東のミカド国の時間を止めていた元凶だ。

 

今ならそれがはっきり分かる。

 

いずれ撃ち倒す相手だ。

 

ただそれは、今すぐではないというだけの事だが。

 

軽く打ち合わせをする。

 

霊夢がまず、甲賀三郎について説明をしてくれた。

 

甲賀三郎というのは、諏訪という土地の古い神様が英雄化された存在だという。諏訪という土地は山深い場所で、前に説明された天津神の前の支配者である国津神より更に古い信仰が生きていた。

 

その信仰が英雄化した存在が甲賀三郎というそうだ。

 

「ややこしい話だな」

 

「何処の神話もこれは同じよ。 一神教ももっと古い信仰から、色々な要素をつまみ食いしてなり立った存在だし、世界の有名な信仰は他もどれもそう。 そういった信仰では、古い信仰の神を悪魔にしたり噛ませ犬にしたりして、今の信仰の神が如何に強いかという宣伝を行うものなのよ。 だから同じ神でも、時代や土地によって、悪魔になったり神になったりする。 下劣な本性を見せていた西王母も、あれは元々そういうケダモノだった存在で、それが信仰の中で持ち上げられていったから無理が出ていたという事情があるわけよ」

 

「僕達の知るバイブルでは、そういうことはわかりようがなかった。 僕も文化については色々調べていたつもりではあったんだが……」

 

「これでは仕方がありませんわよ。 東のミカド国はどう成立したか分かりませんけれど、どう考えても大天使の都合がいいようにだけ文化が残されたと見て良さそうですわね」

 

嘆息するイザボー。

 

まあ、僕もその気持ちはわかる。

 

ともかく、甲賀三郎だ。

 

古い古い神だというのはよく分かった。

 

ラハムもかなり古い神だそうだけれど、それくらいなのだろうか。

 

そう聞いてみると、霊夢は苦笑する。

 

「ラハムはもっと桁外れに古い神よ。 数倍は古い存在ね」

 

「そんなに」

 

「バビロニア神話は世界でもっとも古い神話なのだけれど、ティアマトという創造神を、後から出現した暴風神マルドゥークをリーダーとした神々が斃し、世界を作ったという物語なの。 この後から出現した神々に斃されたり役割を果たすといつの間にかいなくなってしまう世界を作る祖神という存在は「始祖の巨人」と言ってね、世界中に類型が見られるのよ。 ごくごく最近でもポールバニヤンという似たものが登場しているから、人間が考えるありふれたものなのかもしれないわね。 ただ恐らくだけれども、元々あったティアマト信仰の民を、後に勃興したマルドゥークを頂点とする信仰の民が征服した。 それが概ね予想できる事でしょうね」

 

「神様は人間の影響を大きく受けるって事だけれど、その話を聞くと色々と生臭いね」

 

霊夢は頷く。

 

そして、霊夢がいた幻想郷でも、いい性格をした神々が色々悪さをして。

 

しばき倒して回っていたのだと、少し寂しそうな顔をするのだった。

 

咳払い。

 

ヨナタンが、話を戻る。

 

「それで甲賀三郎についてだが」

 

「ええ。 幻想郷に全くとまでは行かないにしても、祖が同じ存在の分霊体がいたわ。 向こうでは洩矢諏訪子と名乗っていたけれど、幻想郷でも上位に入る強者だったわね」

 

「同じ祖を持つ神とすると」

 

「ええ、話が通じるわ。 ただ崇められた時代が違うのと、諏訪の地での信仰は、最古参の祖神、それを抑え込んだ神、その神を屈服させた天津神の三段重ねになっていてね」

 

ややこしい。

 

なんだか頭が痛くなってきたが。

 

霊夢は全てこういうのを理解しているのだろう。

 

諏訪の地では、天津神を信仰するフリをして、国津神ですらない祖神を信仰していたというのだから、本当に色々と大変だ。

 

ざっと整理できないのだろうかとちょっと思ってしまうが。

 

霊夢としては、そういう訳の分からない世界に生きてきたのだ。

 

それが当たり前なのだろう。

 

ただ、人間の権力構造に置き換えると、わかり安いかも知れない。

 

確かに見栄えが良い奴をおいて権力者にして。実際の権力はその後ろにいる奴が握っているなんてのは、人間の社会では当たり前にあることだ。

 

それを考えると、其処までおかしな事ではないのかも知れない。

 

「いずれにしても、まずは屈服させる事よ。 精鋭だけで当たるわ。 あたしと、サムライ衆と、小沢、それと鹿目。 この七人だけで行くわよ」

 

「分かった」

 

「……」

 

表情を見せずに、こくりと鹿目が頷く。

 

なんとも人見知りが激しいんだな。

 

そう僕は思った。

 

 

 

六本木に戻ってから、移動を開始。なお霊夢は先に空を飛んでターミナルに移動し登録を済ませていたようで、それでスポーツドリンクで補給していたようだ。必要な移動と補給だからそれでよかったのだろう。

 

暴れ回っていた甲賀三郎は、目につく悪魔を殺し尽くして、今は悪魔が狙って来る可能性が高い赤玉を貯蔵しているクラブミルトンとやらに貼り付いているらしい。何度か目を盗んで入り込もうとした悪魔を、全て返り討ちにしているそうだ。

 

これについては、移動中にフジワラに聞いた。

 

僕としては、ともかく甲賀三郎は仲魔に出来るかもしれないという話だから、それを期待したい。

 

今まで色々な悪魔と戦った。

 

情状酌量の余地がない西王母みたいなのもいたが、しっかり立派な神様だっていた。悪魔だって、邪悪なだけではない奴もいた。

 

あのアベって奴も多分悪魔だが、それでも単純に邪悪とは言い切れなかった。阿修羅会の主要人物なのにだ。

 

六本木の街は、地上部分は誰もいない。

 

悪魔が時々堂々と彷徨いているが、それもクラブミルトンがある方向へは絶対に近付かないようだ。

 

散々殺されたからだろう。

 

阿修羅会の者もいるが、僕達を見ると、さっと道を空けたり、姿を消す。

 

恐らくアベから伝達が行っているのだ。

 

巻き込まれるから離れろと。

 

まあそれでいい。

 

僕も此奴らが、タヤマがいなくなった後に武装解除するなら、皆殺しにするつもりはない。

 

勿論しっかり償って貰うが。

 

それはまた別の話である。

 

悪趣味なタワマンだとかが遠くに見える街の中。

 

純喫茶フロリダはとてもお洒落な雰囲気だったのに、なんだかぎらぎら光が点っていて、悪趣味の極みだ。

 

そんな場所が、クラブミルトンだった。

 

血の臭いがする。

 

それも最近のものじゃないな。

 

此処で人肉料理を出しているという話があったらしい。

 

阿修羅会が「上客」のために振る舞っているものであったらしいのだが。

 

いずれにしても不愉快極まりない。

 

見張りについていたらしい阿修羅会の男が、こそこそと伺っている。

 

あれは何か狙っているな。

 

僕はスプリガンを呼び出すと、あの男が何かしたら即座に取り押さえろと命令を出しておく。

 

スプリガンは図体は大きいが、実の所性格は幼い子供みたいで、それほど邪悪な妖精ではない。

 

特に僕と力の差が出始めてからは、とても素直な弟みたいに振る舞っている。

 

もっと力をつけて力になりたい。

 

そういうのは、ハイピクシーやラハムを見ているからだろう。

 

ただ、今は。

 

出来る範囲で、出来る事を現実的にやって貰う。

 

それだけだ。

 

「いるね」

 

「ええ、総員警戒」

 

「あれか……」

 

ワルターが呻く。

 

クラブミルトンの前に仁王立ちしているのは、全身を鱗に覆われた男だ。不思議な装束を身につけている。

 

刀を背負っているそれは、どこか今まで何度か交戦した龍を思わせた。

 

邪龍や龍王、龍神といった連中だ。

 

多分、龍神だろうか。

 

此方を見る甲賀三郎。

 

殺気がもの凄い。全身が総毛立つようである。

 

「タヤマの犬か?」

 

「おあいにく。 気配でわからないかしら」

 

「! 貴様、私の同胞と同じ気配。 諏訪の出身者か?」

 

「少し違うけれど、洩矢諏訪子って名前に覚えは」

 

おおと、甲賀三郎が懐かしそうにいう。

 

だが、それでも刀に手を掛けたままだ。

 

これは暴走状態になっていて、いわゆる荒神の状態だ。戦いは避けられないだろう。僕はハンドサイン。

 

皆、いつでも悪魔を呼び出せるように準備。

 

霊夢は大胆に間合いを詰めていく。鹿目も同じく。僕とワルターも、少し前に出る。

 

最後列は小沢に任せる。

 

「この邪悪の店で、悪徳の限りが尽くされていた。 俺は此処の見張りをずっとさせられていて、その邪悪の宴を見せつけられ続けた。 苦しみ続けていた俺の封印がいきなり緩んだのだ」

 

「封印が緩んだ?」

 

「ああ。 俺を封じ込んだ連中は、俺を必殺の霊的国防兵器などといって、人間の戦争の道具にしたてようとしていたようだがな。 ともかく誰にも扱えるように、封じ込んだのだ。 それが禍となり、ろくでもないげすの手に俺の制御装置が渡り、封印もされて思うように動けなくなっていた。 それがなぜだか、不意に緩んでな」

 

「……」

 

なんだかおかしな話だ。

 

あの憶病そうなタヤマが、そう言ったことの管理を欠かすとは思えない。

 

あれは憶病だから、逆にその手のことはしっかりする輩だ。組織の長になると際限なく災厄をまき散らすが、逆に村の会計をする役人とかだと、それなりに有能だったのだと思う。

 

そういう意味でも、甲賀三郎が開放されたのはおかしい。

 

「何か心当たりは」

 

「分からない。 ただ、俺の力は今制御出来る状態にはない。 押さえ込めるのであれば、タケミカヅチか何かの力でも借りられないか。 諏訪に威光を轟かせたあの天津の武神であれば……」

 

「残念ながらタケミカヅチは行方が分からない状態でね。 ただ、これは持って来ている」

 

すっと霊夢が出すのは、何かの札か。

 

頷く甲賀三郎。

 

「それでいい。 俺の邪気を戦って祓った後は、それを遠慮無く使ってくれ。 制御装置はまだ奴らが抑えている。 その札で、制御を上書きしてくれ。 それは、祖神を倒したタケミナカタの力だろう」

 

「ええ」

 

「加減はできんぞ。 かなりの使い手が揃っているようだが、それでも斬ってしまったら許せ」

 

「大丈夫、そこまで柔じゃない」

 

頷く甲賀三郎。

 

そして、一瞬で間合いを詰めて、霊夢に斬りかかる。

 

霊夢はすっとそれを避けるが、ギリギリだ。一瞬の間に、僕が間合いに入り、オテギネを突き込む。刃でそれを避けつつ、逆方向から斬りかかった鹿目の大太刀をいなしつつ、背後に回ろうとするワルターを、回し蹴りで吹っ飛ばす甲賀三郎。

 

これは、強いな。

 

立て続けに槍技を叩き込むが、いずれも凄まじい剣術で弾き返される。鹿目の変幻自在の剣術も。

 

僕と鹿目を同時に相手にして、まだ余裕がある。

 

それだけじゃない。

 

展開した天使達が、僕達が飛び離れると同時に、わっと一斉に甲賀三郎を包み込むが、盾ごと一刀両断にされる。パワー達も強くなっている筈なのに。

 

それでも体ごとぶつかっていくパワー達。

 

いつもながら、凄惨な戦い方だ。

 

そして、それが時間稼ぎになる。

 

イザボーがコンセントレイトまでかけて、大魔術を叩き込む。甲賀三郎は、灼熱の炎に包まれて、ぐうっとだけ呻く。そして、剣を振るって、炎を吹っ飛ばす。

 

霊夢が投擲した符が、その足下に着弾。

 

凄まじい光を放ち、甲賀三郎を拘束。だが、それでもなお、僕と鹿目の同時攻撃を、一刀だけで凌いで見せる。

 

足を封じられて、なおこの立ち回りか。

 

舌なめずりしつつ、相手の背後背後へと回る。

 

クラブミルトンを吹っ飛ばしながら、上空にワルターが。

 

渾身の一撃を、頭上から叩き込む。

 

流石に足が止まった状態で、ワルターの大剣を受けたのだ。甲賀三郎が、気合の声とともに、魔力を放つ。

 

霊夢以外の全員が吹っ飛ばされて、僕は地面を叩いて跳ね起きる。霊夢は激しい力比べを甲賀三郎としていて、全身から煌々と光を放っているが、あれは複雑な動きはできないだろう。

 

小沢が仕掛ける。

 

射撃。

 

隠れながらの狙撃。

 

「鉛玉……ただの鉛玉ではないな!」

 

甲賀三郎が弾丸を弾き返す。大した手練れで驚かされる。ただ、その間に、僕は状況を確認。

 

まだ生き残っているパワーが陣列を再編している。ヴァーチャーがまとめて光の魔術を叩き込むが、一喝するだけで甲賀三郎はそれを吹っ飛ばした。

 

みしみしと足下が音を立てている。

 

あれが機動力を取り戻したら、瞬く間に何人か殺されるだろう。勝負を急がないと極めてまずい。

 

「急げ! 俺もどうにか自制を試みるが、もしも拘束が外れたら……!」

 

「分かっている! 急いで皆!」

 

突貫。

 

ラハムとアナーヒターを呼び出す。アナーヒターの冷気魔術を、甲賀三郎は一刀で両断する。

 

だが、その瞬間、左右に別れて僕とラハムが接近。

 

ラハムが髪を多数の蛇に変えて、全方位からの猛攻を仕掛け。それを斬り払った瞬間。僕が甲賀三郎に上段からの一撃を叩き込む。

 

ぐっと呻いた甲賀三郎が、わずかに態勢を崩した瞬間。

 

まっすぐに突入したヨナタンが、グラムという剣で、完璧な刺突を胸に突き込んでいた。

 

鱗が爆ぜ飛んで、甲賀三郎が吐血する。

 

即座に離れるヨナタン。

 

この剣、或いは龍に大きな打撃を与えられるのか。

 

その一瞬の隙を突いて、ヴァーチャー数体が、甲賀三郎に組み付いていた。

 

ガンと音がした。

 

狙撃。

 

それを防ぎきれず、甲賀三郎の頭に大穴があく。

 

更に、イザボーがごめんなさいと叫んで、二度目の大火力魔術。コンセントレイトをかけた上に、これは恐らく残りの力全部つぎ込んだものだ。

 

僕は飛び退くと、チャージを掛ける。

 

僕も渾身で行かせて貰う。

 

甲賀三郎は、これは恐らく全力の状態じゃない。

 

僕達を殺さないように、特に最初は力を抑えていたし。今も霊夢が、その力を拘束してくれている。

 

霊夢が視線を送ってきて、頷く。

 

分かった。総力でやらせて貰う。

 

突貫。

 

炎に灼かれ消えたヴァーチャー達の中から、ボロボロの甲賀三郎が姿を見せる。だが、手にしている剣はまだ健在。

 

地面を吹っ飛ばしつつ迫る僕に、甲賀三郎は大上段に構え、斬り降ろしてくる。

 

だが、その剣を、横から突っ込んだ鹿目が一瞬だけ、切り上げて防ぐ。

 

それで充分だった。

 

貫。

 

槍の突き技の奥義が、甲賀三郎の体を突き抜く。

 

一瞬の硬直の後、霊夢がすっと側に歩み寄ると。凄まじい雄叫びとともに、甲賀三郎を放り投げて、地面に叩き付けていた。

 

しんと、音が消える。

 

「これまでよ」

 

「ああ。 タケミカヅチではなくとも、タケミナカタに放り投げられたのであれば、古代の神事である相撲に敗れたのと同じである。 まさか神降ろしを介して、タケミナカタの分霊体を降ろしてくるとは思わなかったが」

 

「故郷での知り合いでね。 まさかあたしがこいつを降ろすことになるとは思わなかったわ。 故郷ではこいつと散々やりあったのだけれどね」

 

大人しくなる甲賀三郎。

 

霊夢が札を貼ると、その姿が消えていく。

 

「力を蓄えたとき、俺を呼べ。 今度は俺は制御も封印もなく、皆の力になろう。 この国の行く末を担うますらお達よ。 俺であれば、幾らでも助けになろうぞ」

 

「うん。 その時は、よろしくね」

 

僕はそれだけ言うと、流石に座り込んでしまう。

 

短い攻防だったが、何度もひやひやした。

 

手強い相手だった、間違いなく。

 

これでも相当に力を抑えていたようだったし、本気で殺すつもりで襲いかかってきていたら、かなわなかっただろう。

 

ヨナタンの天使達も壊滅してしまっているし、ちょっと状況は良くない。

 

小沢が悪魔を呼び出して、回復術を使ってくれる。

 

相性が悪いらしく、ラハムは回復魔術が使えない。アナーヒターも、壊すのは得意でも回復は余り得意ではないようだ。

 

問題は此処が阿修羅会の領地のど真ん中、ということ。

 

出来るだけ急いで回復しないと危ないだろう。

 

「いやー、みなさん。 よくやってくれた」

 

そしてゴキブリが姿を現す。

 

にやついている阿修羅会の面々。十数人はいるだろう。

 

甲賀三郎と相討ちになるのを狙っていたか。霊夢ですら疲れきっている今、まともに戦えそうなのは小沢しかいない。

 

ヨナタンが前に出ようとするが、すっと降り立ったのは、残っていたヴァーチャーだ。

 

「ヨナタン様。 お任せを」

 

「大丈夫なのか」

 

「はい」

 

阿修羅会のような連中は、弱っている相手を敏感に見抜く。

 

傷だらけのヴァーチャーを見て、ただ嘲笑っていたが。

 

そのヴァーチャーが転化する。

 

あいつ、ひょっとして最初にヴァーチャーになった。だとすると、甲賀三郎との戦いで放出されたマグネタイトを得て。それで。

 

光が収まると、其処には天秤を持った威厳のある天使の姿があった。

 

降り立った天使を見て、ひっと阿修羅会の雑魚共が呻く。

 

バロウズが解説してくれる。

 

「中級一位、主天使ドミニオンよ。 天使達の統率をする、指揮官級の天使にあたるわ」

 

「邪悪なるものどもよ。 苦悩していた荒神を鎮め、この地に降り注いでいた禍を収めた者達に不敬を為そうとする愚か者共! 信仰は違うとしても、我はこの者達の貴き姿を確かにみた! だからこそ、この者達は我の主である! さがれ! さがらなければ、我が相手になる!」

 

「や、やべえ! 天使だ! それも結構高位の奴だぞ!」

 

「塩の柱になんかなりたくねえっ!」

 

我先に逃げ出す阿修羅会。最後まで踏みとどまっていた奴も、畜生とか言いながら逃げていった。

 

ワルターがぼやく。

 

「あんがとよ。 もう動ける気がしなかったんでな。 助かるぜ」

 

「今、残りの力で回復します。 この汚らわしい場所の浄化は主達の力でお願いします」

 

「ええ、任せておきなさい。 複雑な気分だわ。 アブディエルとかいう大天使に連れられたあんたの同類が一番厄介で、たくさん仲間も殺されたのにね」

 

霊夢が大きく嘆息する。

 

ともかく、展開された回復の魔術は凄まじい出力で、一気に力が戻っていく。余力が出来たイザボーも、パールバティという女神を呼び出して、更に回復を促進。

 

これで、どうにか身を守ることは出来るだろう。

 

後は。この腐った店をぶっ壊すだけだ。

 

完膚無きまで壊す。

 

そう、僕は血の臭いがしている其処を見て、呟いていた。







※お酒について

実の所、古い時代はお酒はかなりの貴重品で、特に農村などではお祭りの時くらいしか口にすることが出来ませんでした。逆に言うと、お祭りの時とかにはお酒が振る舞われ、別に子供だろうと口にすることが出来た訳ですね。

本作の東のミカド国はこれとだいたい同じ状態です。特にカジュアリティーズの村は。

お祝いがあるときとかにはお酒をみんな口にする事が出来ます。

だから子供が飲んでいても中毒になるとかそういう事は滅多にない訳です。そもそも酒がないので。

ただしラグジュアリーズは話が別。

若い頃から酒に手を出して、身を持ち崩すアホが一定数でます。



※霊夢が神降ろしした存在について

察しの通り神奈子様です。早苗さんがいたらむくれていたかも知れませんね。

霊夢も守矢神社勢は因縁の相手だったので、神降ろしするのは複雑だったと思います。




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