もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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国津神の総元締め大国主命。伊勢神宮などで祀られている人気のある神様ですね。

実際の所素戔嗚尊の娘婿だったりする逸話は、後付の可能性もありそうです。古くはもっと違う信仰があったのだとすると中々に興味深い所ではあります。

閑話休題。

前回の話で、大国主命の救助に成功。日本系神格の大規模拠点として、神田明神を解放しました。シェルターにも近い此処は、以降シェルターが人間としての拠点であるなら、人間に融和的な神的存在の拠点として機能する事になります。







東京の地下へ
序、封印されざるものへ


大国主命という神様は強かった。荒神になっている状態でもある程度知能は残っていて、それがとにかく厄介だった。

 

霊夢が消耗していたこともある。

 

僕達も総力戦を挑んでどうにか動きを止め。霊夢が大国主命の奥さんを神降ろしして、それで一喝。

 

やっとそれで正気に戻ってくれた。

 

大変な女好きの神様だと聞いていたが、別に霊夢やイザボーに粉を掛けるようなことはなかった。

 

或いは奥さんの神様が、側で見ていたから、かも知れない。

 

ともかく神社の周囲には、雑魚悪魔はこれで近寄れなくなった。すぐに人外ハンターで人手を出して、復興を開始する。

 

僕達は一度戻って休憩を入れてから、復興の手伝いをする。

 

大型の車両が動いているのを見た。

 

悪魔が引いていない。

 

どうやっているのだろうと思ったら、結局は悪魔だよりという話だった。

 

「あれはどういうものなんですか」

 

「ああ、あれはクレーンと言ってね。 本来は燃える水のようなもので動かすんだ。 今はそれを製造している最中だから、悪魔をたくさん憑依させて動かしているんだよ」

 

「へえ……」

 

現場で指揮を取るフジワラによると、グレムリンという悪魔をたくさん憑依させて、それを指示する事で動かしているらしい。

 

重い荷物などを運ぶことが出来る反面。

 

グレムリンはとても気まぐれなため、それで操作が難しいのだそうだ。そのためフジワラが直に来ている。

 

僕としては六本木の方が心配ではあるのだが。

 

先輩は既に開放されている。

 

僕を甘く見たタヤマが、隙を見て捕獲させたらしいのだが。アベも以降は控えた方が良いとタヤマにも先輩にも忠告していたらしいので。先輩がヘタを打つこともないだろうし、また誰かが人質に取られることもないだろう。

 

僕も荷物を運んで手伝う。

 

大型の悪魔も大きな木材などを片付けたり、石材を運んだりして手伝い。

 

其処にドクターヘルが「コンクリート」というのを持って来て、ドワーフや一本ダタラに使い方を教え、それで神社という場所を直していた。

 

全ては直せないようだが。

 

大国主命は、直っていく神社を見て満足しているようだった。

 

霊夢達はシェルターに戻って休憩中。

 

今回は交代で此処を守りながら、今後の状況について協議することになる。現時点では、此処を基点に日本神話系の神々を復活させていくことになるらしい。

 

そうしないと、あの封印されていた大天使三体。

 

ミカエル、ウリエル、ラファエルを、霊夢がいう安全な形に出来ないからというのが理由だそうだ。

 

僕としてはそれに異存はない。

 

東のミカド国が、東京に攻めこむ力はない。

 

それについては、既に分かっている。

 

だから僕としては、順番に問題を片付けられればいい。

 

勿論黒いサムライは、命令関係無くいずれ倒すが。

 

それにしても、貰ったロザリオが本当に効くかかなり怪しい所だと思うし。まだ準備がいる。

 

「よし、その木材は此方に運んでくれ!」

 

「属性が偏った悪魔同士で重いものを運ばせるなよ! 力に自信があっても、重いものは必ず二人で運べ!」

 

「其処は踏むな!」

 

「コンクリを流し込む! 固定のために手を貸してくれ!」

 

指示を出しているのは年配の男性だ。

 

土建業という……まあ大工みたいなものだろう。それをしていた人らしい。

 

天王洲シェルターという所で死にかけていたらしいが、救助して今は動けるようになっている。

 

生き生きと指示を出しているのは、元々それを仕事にしていたからなのだろう。

 

僕も指示を受けたので、木材をワルターと二人で運ぶ。

 

ヨナタンの天使達も、一糸乱れぬ統率で動き。

 

イザボーは力自慢系の悪魔を出して、重いものを運ばせていた。

 

時々回復魔術を天使達が掛けてくれるのでありがたい。

 

まだ天使を怖がる人もいるが、これは仕方が無い事だ。

 

柱を言われた地点に立てる。

 

順番が大事らしく、おじさんが次はこうこう、と指示を出しつつ、難しそうな地図みたいなのを見ていた。

 

ヨナタンが興味を示しているのに気付くと、おじさんが解説を入れている。

 

「なるほど、これがこうなると……凄い技術で書かれた図面ですね」

 

「CADで書かれたものだが、データが残っていて助かった。 これで宮大工でもいればもっと楽だったんだが……」

 

「大工の逸話がある神々は私から貸そう。 何名かいるから心配しなくてもかまわないよ」

 

「ありがとうございますフジワラさん」

 

ナナシもアサヒも手伝いをしている。

 

今、この場では。

 

悪魔も人間も共同して作業に当たれている。途中から銀髪の子が来て、視察していった。あの子に取り憑いている殿という存在が、後で幾つか指示を出すのだろう。銀髪の子自身も、砕くべきものをあっさり粉砕して、悪魔達が驚いたりしていた。

 

駄目になった木材などを、デュラハンが運ぶ車で移動させていく。

 

装甲バスはたくさん見たが、あれはトラックというものらしい。ただ残念ながら、重機と同じで今は動かす動力が足りなくて、悪魔だよりで動かすしかないそうだ。

 

馬の悪魔を何体か出して、それで運んでいる場合もあるが、悪魔使いが指示に四苦八苦していた。

 

「くっそ、重いな……」

 

「ナナシ、手伝うよ」

 

「おう、助かる。 いや、あんた本当に凄い力だな」

 

「まあこれだけだからね取り柄」

 

柱を苦労して運んでいたナナシを、僕とワルターで手伝う。ワルターはガタイは僕とは比べものにならないほど良いが、力は僕の方が倍くらい上だ。このため、色々と運ぶ時には工夫がいる。

 

いずれにしても大型の悪魔も加わっての作業だ。

 

少なくとも、神社の守りに当たる外壁部分は、間もなく仕上がりそうである。傷んでいた本殿という場所も、大国主命と相談しながら、修復を進めていて。これもそう時間も掛からず終わりそうだと言う事だ。

 

アサヒが回復魔術を使う悪魔がガス切れになったと、先に戻って行った。イザボーはまだ余裕がありそうだが、これは単に経験の差だろう。

 

霊夢は最後に仕上げをするらしい。

 

霊夢が来る前に、此処で見張りをしている秀が、幾つか大国主命と話をしていた。

 

「なるほど、サルタヒコとアメノウズメの夫婦が逃げ延びている可能性が高いのだな」

 

「うむ。 それと恐らくだが、アマツミカボシもだ。 ただあの者は、極めて危険な性質をもつ邪神ぞ。 契約するにしても、簡単にはいかぬし、力を示さなければならないであろうな」

 

「だが力になってくれれば心強い」

 

「そうだ。 昔大正の頃に封じられたらしいのだが、大戦のどさくさで封印が破れたと聞いている。 東京から離れても人間がいない地では消滅するだけだ。 東京に来ているのは間違いないだろう」

 

何やら知らない固有名詞が飛び交っているが、フジワラは分かっているようなので、後で説明を受ければいい。

 

大国主命は、柱を運び終えた僕に声を掛けて来る。

 

「剛力の娘よ。 そなたに頼みたい事がある」

 

「内容次第ですね」

 

「そうであるな。 現在、確定で封じられていない同胞がおる。 名はタケミカヅチ」

 

聞いたことがある。

 

確か甲賀三郎との戦いの時、その名前が出ていたと思う。

 

「恐らく六本木を彷徨いている筈だ。 これがまた武神らしい神でな。 力が有り余っていて、恐らくは戦って勝たなければ従えられない。 神田明神が落ち着いたら、此処に国津と天津の神々を集めるつもりではあるのだが、我以上の実力者であるタケミカヅチは、衰えたりとはいえど生半可な人間には従わないだろう。 戦い勝利を収めたのであれば、此処に来るように伝えて欲しい」

 

「それはかまわないですけれど、どうして僕に?」

 

「奴は相撲が好きでな。 古くは神事であった相撲を好むはず。 剛力の娘よ、そなたなら勝てるのではあるまいか」

 

「……まあ自信はないけれど、やってみます」

 

相撲、ね。

 

実は東のミカド国にも相撲はあった。

 

力が有り余ってる世代の子は、結構喜んでやっていたものだ。ただ、こっちではほぼ裸で相撲を取るらしいが。東のミカド国では普通に服を着てやるのが主流だ。

 

そういう事もあって僕も時々参加していたのだけれど、僕が出る時点で他の若者がみんな辞退してしまうので、それで出禁になったっけ。

 

どんなものでも、勝ち負けが決まっているものほど面白くないものはない。

 

「しかし六本木でそんな気配は感じませんでしたけど」

 

「可能性としては地下だな」

 

「地下?」

 

「この国の地下は道や虚空が張り巡らされ深淵となっている」

 

そういえば。

 

確か地下を通る電車があると聞いている。いや、あったというべきか。

 

彼方此方の地下道でも、それが朽ちているのを見かけた。

 

それらがまるで蜘蛛の巣のように、東京の地下では張り巡らされているのだと。

 

それだけではない。

 

なんでも雨が降る(今はそれももうないのだが)時には、雨を吸い込んで洪水を起こさないようにするための地下空間や。

 

色々な家から流れる汚水を流すための管。

 

逆に井戸のように、家に水を流すための管。

 

そういったものまであって、地下を縦横無尽に走り回っていたのだそうだ。

 

今は生きていないそれらは。

 

考えて見れば、悪魔の巣窟になっていても不思議ではないか。

 

新宿駅の地下は凄かったが、あれですらごく一部。

 

それが現実なのかも知れない。

 

だとすると、どう調べるべきか。

 

いずれにしても、相談してみるといってその場を離れる。一度集まって、東のミカド国へ戻る。

 

そこでホープ隊長と、軽く進捗について話をしておいた。

 

塔の攻略については、報告書を誤魔化す。

 

内部にはミイラだけがあったという話だけをしておくことで決めた。

 

ただ、他のサムライも東京に降りている。

 

塔の関連の話が、悪意なくそれらのサムライから漏れる可能性もあるので、この国の本来の神々の救出は急がなければならないだろう。

 

ホープ隊長だって、こうやって話しているのを怪しまれる可能性がある。

 

東京で話を聞けば聞くほど、千五百年も年を止めているというのはおかしいのだ。それが出来ていると言うことは、ギャビーは無能ではない。

 

サムライ衆そのものを解体、などということは起きないだろうが。

 

それでも、ホープ隊長が危険になる事は、今は避けなければならない。

 

「東京で戦ったマンセマットという大天使は、恐らく四大天使と比べると格下の相手だったのだと思います。 それでも隙を突いてやっとという印象でした。 まだ四大天使を相手にするのは、少し実力が足りないというのが素直な言葉です」

 

「自分の力量と相手の力量を素直に分析出来るのはいいことだ。 いずれにしても、まだ無理は禁物だな……」

 

「今は互いに怪しまれないように行動しましょう」

 

「うむ、そうだな」

 

話を切り上げて、それで東京に戻る。

 

神田明神は完成すると、内部に雑多な細かい神らしいのが彷徨き始めているのが分かった。

 

色々な姿をしていて、どれもが神のようである。

 

霊夢が来て、じっとそれらを見ていた。

 

軽く挨拶する。

 

霊夢は鬱陶しそうに頷く。これは機嫌が悪そうだ。

 

「どうしたの?」

 

「疲れが溜まってるのよ。 しかもこの神事はちょっと力がいるわ。 後で酒でも出なけりゃやってられないわよ」

 

「しばらくは動けない感じ?」

 

「ええ。 その間、何かあったら頼むわよ。 はー、面倒。 幻想郷から助っ人でも連れ出せればいいんだけれど、あっちは守りで手一杯なのよね……」

 

本当にこれは機嫌が悪いな。

 

フジワラも距離を取りながら、説明してくれる。

 

この国には元々八百万の神がいたと言う伝承があるそうだ。

 

ヨナタンが、八百万と声を上げていたが。

 

それくらい、バイブルとは神の定義が違うと言う事なのだろう。

 

復旧した神田明神に集っているのは、力が弱い雑多な神様達。それらでも、数が揃えば話も変わってくる、というわけだ。

 

そして大国主命という大物が復活した今。

 

それも更に加速度的に状況が変わるというわけだ。

 

確かに堕天使オリアスが見張りについていたのも分かる。此処の陥落は、それだけ大きな事だったというわけだ。

 

遠くから霊夢が護摩段というのに火をくべて、なんか棒を振りながら何やら唱えているのを見守る。

 

日本系の神々以外の手持ちは、此処から出すように。

 

そう事前に通達があった。

 

それで、人外ハンターも手持ちをしまって、遠めに様子を見ている。

 

神社の外まで僕も一度出て、様子を見ていると。ドクターヘルが来ていた。

 

「相変わらずこの国の信仰はわからんな。 多神教というのはそういうものなのであろうが、一神教文化圏で育った人間には理解出来ん光景よ」

 

「僕にはそもそも信仰というのがよく分かりません」

 

「東のミカド国はそもそも大天使共が愚民化をしているのだろう? それもまた妙な話だな。 民の全てを熱心な一神教徒にでもしておけば、奴らも安泰だったのではないのだろうか」

 

「なんででしょうね」

 

ヨナタンが咳払い。

 

そして見解を述べる。

 

こう言うときは、ヨナタンがとても分かりやすく意見を述べてくれて。それを取り入れやすい。

 

「特にカジュアリティーズにバイブルを聞かせるときに、司祭達は意図的に退屈な話にしている節があります。 これはラグジュアリーズ相手でも同じで、司祭達はただバイブルしか物語を与えない……そう民に接しているようなんです」

 

「ふむ……?」

 

「東京に降りて来て、多様な価値観を知って分かりました。 恐らくですが……大天使達がやろうとしているのは、議論そのものを起こさないことです。 技術的な試行錯誤すら東のミカド国では封じ、千五百年も歴史を動かしませんでした。 退屈なバイブルを敢えて作り、民が疑問すら持たないようにする。 彼等の目的が何となく今では分かります。 崇めさせるのではなく、なんとなくすり込んだ思想をそのまま盲信だけさせる。 教えについて思考させず、思考そのものをさせない。 それが狙いなんだと思います」

 

「ほう、面白い分析だな」

 

ドクターヘルがヨナタンに対して感心している。

 

この人がもの凄く頭が良いことは分かっている。だから、ヨナタンの発言を面白がっている事も、認めている事も分かった。

 

イザボーも言う。

 

「そういえば幾つもの漫画を読んで、熱量に圧倒されましたわね。 司祭の読み聞かせるバイブルは、明らかに眠くなるようにしている節すらあって、それで漫画には驚かされましたわ」

 

「この国の漫画は凄まじい競争の末に技法が工夫され、独自の文化として確立されたものであったからな。 それはそうであろうよ」

 

「漫画には考えさせられるものも多かったですわ。 恐らくは、大天使達は考えるということ自体をさせたくなかったのでしょうね」

 

「反吐が出る。 わしにとっては最悪の世界だ」

 

確かに、考える事そのものが仕事であったらしいドクターヘルにとっては、そうなるだろうなと思う。

 

ワルターはちょっと退屈そうだったが。

 

お、と声を上げていた。

 

パンと手を叩いた霊夢が、呪文みたいなのを終えていた。

 

そのままくるくると舞い始める。

 

神楽舞だかいうのだろうか。

 

大国主命が、目を細めてその様子を見守っていた。

 

わいわいと、雑多なちいさな神々がその様子を見ている。

 

それも終わると、明確に神田明神の様子が変わっていた。確かにこれは、日本系の神以外の手持ちは遠ざけた方が良いだろう。

 

霊夢が来る。

 

汗だくになっていた。

 

元々疲れが溜まっている所にこれをやったのだ。無理もない。

 

フジワラがスポーツドリンクを出す。霊夢も文句一つ言わずそれを飲み干すと、シェルターに戻っていく。

 

僕らと話す余裕さえ無さそうだった。

 

「この様子だと、此処を起点にして、東京の状態を戻していく事ができそうだね」

 

「霊的云々は今でもわからんことだらけだ。 だが、此処を調査する許可をあの大国主命に貰って、必ず解明してやるぞ。 オカルトというのはインチキであることがほぼ全てだが、一部はただ解明できていないものもある。 悪魔が実際に現れて人を殺しているのであれば、それは科学で説明できて、オカルトではないはずだ。 わしはオカルトで止まっているものを、きちんと科学で証明してくれるぞ」

 

ドクターヘルが、「鳥居」というのを潜って、堂々と大国主命に会いに行く。

 

大国主命はぎょっとしたようだが。

 

熱量が高いドクターヘルの発言を聞いて、苦笑いして。それで神々に迷惑を掛けない範囲なら、実験をして良いと言っていた。

 

まあ大国主命も、荒神の状態から元に戻る事ができたのだ。

 

恩義は感じているのだろう。

 

フジワラに礼を言われた。

 

そういえば、僕達で大国主命を元に戻したのだ。礼を言われるのも、それはそうなのだとは言える。

 

礼は素直に受け取ると、一度シェルターに戻る。

 

確実に勢力圏が広がって来ている。

 

僕達の力は、まだ借りたいらしいし。

 

僕達も、黒いサムライとの決戦に備えて、やれることがあるのならやっておきたい。

 

人外ハンター達と連携するのは必須だ。

 

それに、出来れば。

 

東京に降りて来ているサムライ達と、もっと緊密にやっていけるようになっておきたかった。

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