わだつみと言えば海のことですが、日本神話の海の支配者といえば大綿津見神です。
信仰されているかはともかくとして、海の支配者として日本神話での大物の中の大物。
海の関係者と言う事で、素戔嗚尊とも関係が深いかも知れませんね。
そんな大海神を救出に成功。
更に人外ハンターとサムライ達は先に進むことになります。
上野のターミナルで休憩をいれて戻ってくる。霊夢とマーメイドも、ターミナルから一度シェルターに戻り、それで休憩を入れてくるということだ。
先に僕らが秋葉原に戻る。
凄まじい戦いの跡と言う事もある。
ちなみに、僕達よりも先に、サムライ衆が来ていた。戦いは遠くで確認していたのだろう。
分隊長が言う。
「確かにこれは離れていて正解だったな。 この場にいたら、とても助からなかっただろう」
「あんな凄まじい気配を放つ悪魔を倒すとは。 皆、私の誇りの同期だ!」
「すっかりまともになりましたわね。 最初からそれであれば、婚約破棄などしなかったかも知れませんわ」
ナバールに聞こえないようにぼやくイザボー。
ワルターも、もうナバールを軽蔑している様子はなかった。
サムライ衆が悪魔を展開して、それで皆を回復してくれる。その間にも雑魚が様子見に来ていたが、それもサムライ衆が倒してくれた。
ただ、呪いがばらまかれ。
その出力があまりにも凄まじかったこともある。
悪霊や屍鬼ゾンビがそれなりの数集まって来ている。それに、砂漠の地下には、多数の人骨があるのも分かった。
いずれまとめて葬ってあげたい。
東京の地獄の中で、みんな苦しみながら死んでいったのだろうから。
回復を終えて、それからしばらく、サムライ衆と連携して悪魔の掃討を続ける。ベルフェゴール戦には連れて行けなかっただろうが、それでも皆このくらいの悪魔だったらどうにでもなるようだ。
ただ数が数だ。
悪霊インフェルノもいるし、他の悪霊もいる。
上で休んできた事もあり、天使達は既に復活し、力を取り戻している。立て続けに放たれる光の魔術で、呪いを好む悪魔も、悪霊も。まとめて消し飛ばされる。アナーヒターも出して、浄化の水で周囲を押し流して貰う。
地下から湧き出してくる無念も、それで浄化されていき。
光の中に、多数の人影が消えていくのが分かった。
あれが成仏と言う奴だろうか。
上野から人外ハンターが来る。
前は貧弱な戦力しかなかった記憶があるが、阿修羅会が追い払われ。それに僕らが強いのを片っ端から始末していることもある。
それで余裕が出てきたのか。それなりの数の人外ハンターが出て、加勢してくれた。ヨナタンが指揮を取り、冷静に確実に大量の屍鬼ゾンビや悪霊を始末していく。屍鬼ゾンビは倒した後は、ムスペルや他の炎魔術が使える悪魔が遺体を荼毘に付し。それから浄化をしていた。
しばらく無心に戦って、秋葉原付近にいる雑多な悪魔を片付ける。
前は仕事じゃなければ絶対に戦わない、くらいの集団だった筈の人外ハンターだが。
今は近場に大きめの敵がいるならという感じで、自発的に出て来て戦うくらいに士気も上がっているようだ。
ただ、それでも残っている死体から、金目のものは漁ったりしている。
それについて咎める事はしない。
流石に、今の東京では、そうしないと生きていけない人もいるのだろう。
そう考えてそれくらいなら見逃す。
程なくして、敵は掃討完了。
呪いそのものの排除に懸かる。
ラハムがまき散らされた呪いを吸収していく。浄化の水で、アナーヒターが辺りをとにかく洗い流す。
ワルターがぶちぶち言いながら、ラクシャーサを呼び出す。
以前戦った相手だが、ついに作れるようになったのだ。案の場呪いに強い耐性を持ち、荒々しい性格なのでワルターとも馬が合うようだ。
それに加えて、ワルターが縞々模様のなんだか禍々しい象を呼び出す。
以前使っていたアイラーヴァタが真っ白だったのに対して、単眼の上に非常に性質が荒そうである。
「邪神ギリメカラね。 仏教における悪魔マーラが乗る象だとされているわ。 仏教の開祖仏陀の前に出た瞬間、膝を折って降伏したそうよ」
「おお、懐かしい話じゃのう。 あの時はマーラ様も一瞬で萎えてしまってな。 それでヒンズー教でシヴァ神に虐められ続けるくらいならと、他化自在天になることを了承したのよ。 魔王と言われながらも天の国の一つを預かったのだから、マーラ様も本望じゃろうて」
「ごめん、分からない単語が多すぎる」
「仏陀様はわしらにも寛容で、降伏したらいいようにしてくれたということじゃよ」
なんだか随分多弁な象だな。
ともかくこのギリメカラも、辺りの呪いを吸収して回ってくれる。僕はやっと手が空いたので、オテギネを確認。
そろそろ整備がいるか。
霊夢とマーメイドが戻ってくる。
二人も休憩を終えたようだった。
「お疲れ様。 辺りを綺麗にしてくれたようね」
「たくさん悪魔が来たからね。 それでどうするの?」
「まずは人外ハンターとサムライ衆には離れて貰おうかしら。 それと、日本神話系の神々以外はしまって」
「了解、と」
ワルターがなまはげを、イザボーがコノハナサクヤビメを呼び出す。
僕はいずれタケミカヅチを呼び出したいと思っているのだが。その前に、呼び出せるようになった存在がいる。
分霊体だが。
「国津神サルタヒコ、此処に」
「お、神田明神にいる鼻の高いおっさんか」
「分霊体だがな。 呼び出してくれて感謝する。 皆の剣として働かせて貰うぞ」
頷くと、とりあえず皆には離れて貰う。
強力な海神の封印を解くという話をすると、危険を察知したのか人外ハンター達はさっと逃げていく。
サムライ衆も、後は別の地点を警邏するといって、僕らの武勲を祈ると去って行った。
後は霊夢の護衛だが、その前にマーメイドが詠唱を開始。周囲の気配が代わっていく。
既に膨大な怨念を浄化した後だが、それでも辺りが海になったかのようだ。ワルターがぼやく。
「凪の海か、これは……」
「静かに。 集中しないと失敗するかも知れないから」
「おっと、分かった」
辺りに満ちる潮の気配。
更に霊夢がてきぱきとなにかを組み立て始める。確か護摩段だったか。僕もそれを手伝う。ヨナタンとワルターも無言でそれに加わる。
その間もマーメイドは詠唱を続け、海を丁寧に整備し続けていた。
ほどなくして、辺りに海を幻視できるほどの状態になる。
その時には護摩段が完成。
霊夢が火を入れて。そして紙がついた棒を取りだすと、儀式を開始する。封印の解除とか結界の解除とかはいいのかなと思ったのだが。
まあこれは専門家の仕事だ。
僕が横から口を出すことじゃない。
魔法の言葉で難しい事を詠唱する霊夢。その間、祈るようにしてマーメイドが辺りを海にし続ける。
僕達は四方に散って、霊夢の護衛だ。
その間、呼び出したサルタヒコとコノハナサクヤビメとなまはげは、なにやら不可思議な舞いを続けていた。
此処に封じられているのは大綿津見神。海そのものという超大物神格だ。
海の神が邪魔をする可能性はあるが。
ただ、ベルフェゴールが倒れてそれほど時間も経過していない。
だとすれば、すぐに来る事はないとみて良い。
霊夢がかっと叫ぶと、棒を振るう。
護摩段の火が更に激しく燃え上がる。
凪の海が乱れるのが分かった。
海が渦巻く。
マーメイドは祈り続けている。その祈りは、とても貴いもののように僕には思えた。茶化す事があってはならない祈り。
だから、周囲に警戒を続ける。
霊夢が棒を振るう。詠唱を続ける。
やがて、海の渦が、不意にぴたりと止まると。
海そのものから、世界を振るわすような声がしていた。
「我目覚めたり。 封印は我が破りたり」
「大綿津見神、きませい」
「大いなる神の力を感じるぞ。 外来の神々に蹂躙されたこの土地に、我等の仲間が戻りつつあるようだな。 巫女よ、我を解放せしものよ。 必要とあれば呼べ。 力になろうぞ」
ふっと、海が消える。
マーメイドがふうと嘆息すると同時に、辺りの海が砂漠に戻っていた。
霊夢もどっと疲れたようである。
見ていて分かったが、とんでもない神だ。
姿そのものは見えなかったが。いや、違う。
海そのものが神そのものなのか。だとすると、海にある神性そのものが、大綿津見神と言う事なのか。
それはまた、凄いスケールだな。
とりあえず、一度戻る。
これから、忙しくなる。
精神の均衡を崩しているタヤマと阿修羅会を屠るために、必殺の霊的国防兵器二柱の、味方としての再編制再構築が必要だ。
材料になる悪魔と資金は揃っているとフジワラは言っていた。
霊夢の疲労が大きいが、それでも事前にいわれていた事。
霊夢が大綿津見神を神降ろしすることで、必殺の霊的国防兵器を従える事が可能になる。
それだけじゃない。
塔から連れ出したミカエル、ウリエル、ラファエルの大天使達を、元とは違う形に再構築できる。
そうすれば、一気に事態を変えることが可能だ。
ただ、あの大綿津見神の気配、凄まじかった。
上野のターミナルに戻りながら、霊夢に確認はする。
「大丈夫? とんでもなく消耗したみたいだけれど」
「どうにかね。 それよりも、ちょっと預かっていて」
「……鏡?」
「古い時代のものよ。 あんたたちの感覚でいうと三千年以上前のものね」
普通鏡というと、持ち手とかついているものだが。
この鏡は全体が鏡になっていて、裏側にだけ色々と装飾がされていた。
何より触っていてじんわりと温かい。
これは凄まじい品だ。
「これが三種の神器の一つ、鏡よ。 あとは剣だけれども、もしも持っているとしたら素戔嗚尊か日本武尊でしょうね」
「素戔嗚尊は確か三人いる偉い神の末っ子だったね」
「ええ、典型的な暴風神で、この国で最強の武神よ。 日本武尊はこの国が形を為すとき、人として各地を平定した伝説的な英雄よ。 色々な逸話があるのだけれど、ある時は横暴な人物、ある時はとんちを使って獰猛な敵を制圧する知恵者、ある時は悲劇の英雄と、人物像が一定しないわ。 恐らく多数の英雄の逸話を集めて、一人にした存在なのでしょうね」
なるほどね。
ともかく、ターミナルを経由してシェルターに。
霊夢が言った通り、神田明神に、勾玉と一緒に鏡を奉納する。
タケミカヅチ神が、大喜びしていた。
「これで更に我等の力も増す。 何より大綿津見神の力を感じるぞ。 これなら滅多な事では、もう此処は墜ちぬ」
「後は滅多な事が起きた時に備えないといけないのかな」
「そうだな。 この国の神々が封じられたときも、全面的な攻撃を受けて、それで対応できなかった。 だが、世界そのものは焼き滅ぼされた今、同じ規模の攻撃を大天使どもは出来ぬだろう。 懸念するべきは外来種の悪魔や神どもだが……」
「それについては、利害の調整をするしかないわね。 恐らくだけれど、四文字の神を倒すという同じ目的で団結できるはずよ。 それについては、皆に手分けしてやってもらうしかないわ」
霊夢が疲れているのを見て、僕は話を切り上げて貰う。
さて、もう一休みしてもらってから。
次の段階に移る。
必殺の霊的国防兵器の再構築と、味方になって貰う事。
そして。
大天使三体の無力化だ。
シェルターに戻る。
フジワラがスポーツドリンクを差し入れてくれたので、ありがたくいただく。霊夢は酒瓶を掴むと、自室に消えた。
しばらく休憩しながら、フジワラの話を聞く。
ナナシとアサヒが彼方此方で悪魔を退治して回っているとか。悪魔退治の依頼を片っ端から受けて、力をつけているらしい。
それだけじゃない。
神々の力が増したことで、四天王寺の結界をどうにかできそうという話が出ているそうだった。
「ただ、四天王寺は後回しだ。 今はとにかく、まっさきに市ヶ谷を抑えなければいけないだろうね」
「それほど危険な状態なんですね」
「ああ。 そろそろ話しておくべきだろうね。 私達もずっと調査をしていて、そしてこの間、ドクターヘルと話をした。 それで、詳細がわかったんだ。 まず最初に、この東京でなぜ電気が生きているのか。 それは、市ヶ谷に電力源があるからなんだよ」
電気。
雷を使って、色々に役立てる技術。
それについては、仕組みを習った。
習ったけれど、専門用語が多くてわからない事の方が多いくらいだった。ヨナタンは素直に理解できているようなので凄い。
「専門的な話は後でするとして、ともかく霊夢に回復して貰って、それからなんですよね」
「ああ、そうなるね。 タヤマが籠城している市ヶ谷にはそれなりに物資はあるはずだけれども、それでもそもそもタヤマがいつおかしくなるか分からない。 元々追い詰められていたし、気が弱い男だ。 錯乱したら、どんなことをしでかすか」
ワルターに返すと、順番に市ヶ谷攻略の説明がされる。
まず大前提として、必殺の霊的国防兵器二体の復活が大前提。そしてそれをやると、霊夢はダウンしてしまうだろうから、今回の作戦に霊夢は出られない。いや、確か三体の内一体を無力化する事ができるとか言っていたか。だとしたら、霊夢を守りながら作戦を進めなければいけない訳だ。
その代わり、此処と純喫茶フロリダ、此処から近い神田明神を守るフジワラとツギハギ、他の人外ハンター達を除く全戦力を市ヶ谷に投入する。
市ヶ谷には色々とこの国の軍が残した兵器があるらしいが。それもまともに使える代物ではない。
近代兵器というのは、誰もがその場で使えるような品ではない、ということだった。
「そうなると総力戦ですね」
「ああ。 僕とツギハギはここを何があっても守る。 ナナシとアサヒも攻撃班に加わって貰う。 それと……」
フジワラがいうには、神田明神近くに出来た森の守護者。
ダヌーという母神の巫女として覚醒した人外ハンター、ノゾミという人も神田明神の守りに加わってくれるらしい。
神田明神の近くに、この東京の闇の中にもかかわらず生じた森は、今八咫烏が光を与えて育てており。
そこに多数の妖精やケルトの戦士や幻魔が移り住んでいて。
神田明神とも良好な関係を構築。
上手くやれているという。
ただ、その中にダグザの姿はないそうだ。
ちょっと不安だが、まああのダグザという神、隙を見せなければ悪さをすることはないだろう。
そういう相手ということは分かっているので、今は気にしなくても問題は無い。
「市ヶ谷の内部については、何度か悪魔による偵察をして分かっている。 後で会議で展開するが、バロウズに転送もしておこう」
「ありがとう、助かります」
「後は実際に殴り込むだけか」
「今回に関しては、その意見に賛成する。 こうしている間にも、何が起きるか分からない状況だ。 急いだ方がいいだろうな」
僕は手を叩く。
霊夢が回復するまで時間が掛かる。
その間に東のミカド国でしっかり休んでおく。それと、ミイラになっていたと報告した大天使達が。
息を吹き返して、回復し始めていると、ヨナタンに報告書を上げて貰う。
これはガブリエルがしびれを切らすのを防ぎ。
何より、その虚を突くのが目的だ。
ガブリエルはそのまま三大天使が戻ってくると考えているだろう。
だが、もしも三大天使が、まったく別の存在として、東のミカド国へ戻ったとしたらどうなるか。
東のミカド国を制圧して好き勝手にしている大天使達は。不意を突かれて潰乱する。
其処に僕達とホープ隊長、それにサムライ衆も加われば。
いや、出来れば霊夢達にも加わって欲しいが。
ともかく、勝ち目が生じてくる。
その打ち合わせをしながら、東のミカド国へ戻る。
作戦は佳境に入ろうとしている。
だが、まずは市ヶ谷からだ。
市ヶ谷で大アバドンなんてものが生じたら、どうなるかしれたものではない。悲惨な結末を避ける為にも。
権力にしがみついた病人。
タヤマには、消えて貰う。
東のミカド国でしっかり休憩を取る。そしてホープ隊長にも来て貰って、打ち合わせをしておく。
ギャビーがガブリエルであること。
他の三大天使はそのままではなく、別の形で東のミカド国へ戻し。その結果、圧制者ギャビーを撃破出来る可能性が高い事。
それらを告げると、ホープ隊長は頷いていた。
「東のミカド国については、私の方でも調べている。 ただ、悪魔化する民はまだまだ出ていて、予断を許さぬ状態でな。 本当に絶対に勝てる状態になってから、私に声を掛けるようにしてくれ」
「分かりました」
「お頭、それはそうと、大天使どもに狙われたりは」
「今の時点で動きは見せていないな。 ただ、いつでも殺せると判断しているだけかもしれないが」
頷くと、後は別れてシェルターに。
既に霊夢が起きて来ていて、そして作業を始めていた。神田明神に来て欲しいと言われたので、すぐに出向く。
神田明神の境内。魔法陣が書かれている。
あれは、多分魔法の言語で書かれたものだ。その中で霊夢が激しく舞っている。この時点で神降ろしをしているようだ。
汗が飛んでいる。
回復してはまたこんな激務か。倒れたりしないといいのだけれどと思ってしまうが。ともかく任せるしかない。
やがて霊夢が喝と叫ぶと。
周囲に、凄まじい力が満ちていた。
「大綿津見神!」
「お戻りになられた! 大いなる海の神よ!」
「神々よ、壮健なようで何よりだ」
霊夢の目が青くなっていて、声も変わっている。神降ろしが起きているのだ。霊夢が青い光の衣も纏っているように見える。
そして分かる。
確かに力が底上げされている。
霊夢がスマホを手に取ると、作業実施。一時的に引き上げた力を用いて、必殺の霊的国防兵器をよみがえらせる。
スマホが壊れるかも知れないとフジワラは言っていたが。
それくらい凄まじい光が迸っていた。
神々がおおと声を上げて、者によっては正座して見ている。色々な姿の者がいる。
神田明神の外にも神々が集まっている。
どうやら争うよりは、此処に加わりたいと思っている雑多な神々のようだ。大天使の殺戮を免れた雑多な外来種かも知れない。
ほどなく光が収まると。
見覚えがある、鱗に身を覆い、刀を背負った戦士が姿を見せていた。
「龍神甲賀三郎見参。 悪を討ち、闇を斬る!」
「心強いわね」
「思った以上に早かったな。 大綿津見神を蘇らせ、力を借りて我を呼び出すとは、中々面白い事をするものだ」
ふっと笑うと、甲賀三郎はイザボーに歩み寄る。
霊夢は次の作業に入っていた。
「イザボーというサムライよ。 そなたの直衛として動こう。 それでかまわないだろうか」
「大変に心強いですわ」
「そうか」
甲賀三郎は近くで見ると、顔らしいものがない。そういう存在なのだろう。だが、なんとなく笑ったのが分かった。
そして、霊夢が続けて呼び出す。
必殺の霊的国防兵器。
今までで一番苦戦させられた強敵。
南光坊天海が、そこにいた。
「南光坊天海、見参! 闇に包まれたこの国を、今こそ光で救いださん!」
頼もしい。
南光坊天海は霊夢を見ると、一言だけ呟く。
「この娘の力はかなりのものだが、そろそろ限界であるな。 だが、立て続けの限界までの力の行使で底力も上がっておる。 次の神降ろしでは、もう少しやれよう」
ふっと、光が消える。
霊夢が神降ろしを終えたのだ。
そのまま倒れかけるのを、マーメイドが支える。
僕が出ようと思っていたのだが、何が起きるのか先に理解していたような動きだった。
「ありがとう。 こけて顔から地面になんてのは御免だったからね」
「いいの。 それより回復魔術を。 このままでは戦地にいくのは無謀よ」
「任せて」
アサヒが出ると、ありったけの悪魔を出して、回復魔術を霊夢に掛ける。それだけではなく。イザボーのコノハナサクヤビメも、境内にいたアメノウズメも、同じように回復の魔術を掛けてくれていた。
そして、南光坊天海は、ヨナタンへと歩み寄っていた。
「常に悩み正しくあろうとするものよ。 拙僧が力を貸そう」
「ありがたい。 貴方のような聖僧が手を貸してくだされば、百人力、いや千人力です」
「拙僧の力など微々たるものだ。 信仰は違えど、目指すものは同じだ。 天使達よ、拙僧とともに破滅の到来を防ぐぞ!」
「偉大なる異教の僧よ。 我等はヨナタン様とともに。 そして目的が同じである以上、その言葉に唱える異は無い」
よし、これで準備が整った。
神田明神の近くに、数台のバスがつく。これと、直したばかりの戦車というのが一両。それに歩兵戦闘車というのが一両。
それぞれ一緒に来てくれるらしい。
今回の作戦は、霊夢は疲弊しているものの、他の英傑含めて全員が出る文字通りの総力戦となる。
コレに負ければ、東京は更に酷い状態になるだろう。
阿修羅会が持ち直す可能性はない。
ただ、血迷ったタヤマが滅茶苦茶をする可能性がある。それは一秒でも早く止めなければならなかった。
バスに乗る班と、ターミナルで六本木まで移動する班に分かれる。
僕達はターミナルに行くかと思ったが、バスを護衛して欲しいと言われた。まあ、それならそれでいい。
先行して秀と殿が市ヶ谷に仕掛けて、僕達とマーメイド、それに霊夢が後から行く。
なお、ドクターヘルも来るそうだ。
これについては。途中でバスの中で話を聞く。
作戦会議については、既に神田明神に霊夢が行く前に済ませてある。
情報が何らかの形で漏れている。
だから、今。
此処で、最大の機密を、今回の作戦の主力にだけ話す。そういうことらしかった。
「市ヶ谷にあるものは、通称無限炉ヤマト。 大戦前にこの国が総力を挙げて作りあげた、いわゆる縮退炉というものでな」
ドクターヘルが話し始める。
それは、「この東京」が作り出された、大戦の原因となった話だった。