もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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ついに完全に埋まった阿修羅会との戦力差。

サムライ衆と人外ハンターは一気呵成に攻勢に出て、市ヶ谷の地上部分を占拠。

しかしここからが本番です。

阿修羅会の最大戦力、必殺の霊的国防兵器が控えているからです。






死闘市ヶ谷
序、攻城戦


残念ながらコンディションは万全とはいえないが、それでも行くしかない。ここ市ヶ谷の深部にあるドクターヘルの言う「縮退炉」は、あまりにもタヤマに持たせておくには危険すぎるのだ。

 

既に天使を斥候として派遣して、情報をヨナタンが収束させている。

 

案の場、駐屯地地下はいきなり最初から、元からある情報と違っているという事だ。構造が滅茶苦茶で、もとの地図は役に立たないらしい。

 

内部に展開されている悪魔も強く、天使達は既に大きな被害を出していた。

 

それでも情報を集めてくれる天使達。

 

ヨナタンが苦しそうにしているのを、側にいる南光坊天海が諭す。

 

「斥候達は出来る範囲でやれることをしてくれている。 それに答えるのが主君たるそなたのすることだ」

 

「はい、その通りですね。 僕がもっと心を強く持たなければ」

 

「どうしても無理であるのなら殿に相談せよ。 殿は想像を絶する苦難を乗り越え続けて来た方だ。 きっと力になる」

 

「ええと、天海さんは殿の事を知っているんだね」

 

無論と、南光坊天海は言う。

 

しかし、今は誰であるかを話すべきではないと言われているらしく、時が来たら話してくれるそうだ。

 

情報がある程度集まった時点で、人外ハンター達も駐屯地の敷地にいた悪魔の掃討を完了。

 

負傷者を下げ、遊撃班は半分がシェルターに戻った。

 

ナナシとアサヒは此処から駐屯地の制圧を続行。

 

他の人外ハンター達も、戦車と歩兵戦闘車、それにレールガンなどを駆使して、此処を死守するという。

 

此処には持ち出せていない兵器がたくさんあるらしく。

 

中には国家機密で知られていないものもあるとか。

 

それらを回収出来れば、確実に力になる。

 

ガイア教団は何を目論んでいるかは分からないが、それでも今後は衝突に発展する可能性がある。

 

ガイア教徒そのものはそこまでの脅威ではないが。

 

それでもガイア教団の後ろ盾になっている悪魔達の戦闘力は尋常ではない。とにかく今は。

 

あらゆる事に備えて、戦力を整備しなければならない。

 

「霊夢の調子はどうだ」

 

「神降ろしはいけるわよ。 ただ前線で戦うのはちょっと厳しいわね」

 

「分かった」

 

殿が咳払い。

 

戦闘指揮を取ると言うことだった。

 

「わしの本領は野戦であるのだがな。 まあ攻城戦も経験がないわけではない。 予定通りに攻めるが、いざという時はわしが判断する。 いずれも、深入りはするな。 確実に敵の領域を削り、安全圏を確保する」

 

「敵襲!」

 

「対空砲火! 制圧射撃!」

 

後方で戦闘が起きている。

 

ナナシ達が応戦しているが、かなりの数の堕天使が飛来しているようだ。手強いのはいないようだが、もう少し残って敵をたたいた方がいいのではないかと思う。だが、志村さんが連絡をわざわざ入れて来た。

 

「マーメイド殿もいるし、此方は対応できます。 炉の確保を!」

 

「……分かりました。 武運を」

 

銀髪の子が頷くと、まずは前に踏み出す。僕も頷いて、その後に。

 

今、東京に集い。

 

この地獄を終わらせに来ている者達が、一同に集っている。

 

勿論その意思は一つではない。

 

それぞれに思惑は違ってもいる。

 

価値観だって違っているし。

 

育って来た環境だって、持っている知識だって、目指すべき先の先だって違っているだろう。

 

それでも。

 

この東京が間違っていて。

 

どうにかしなければならない、という事だけは同じだ。

 

皆、地下空間に。

 

灯りは生きている。天使達が見てきたとおり、かなり複雑な構造になっていて、とても機能的な建物だとは言えなかった。

 

進みながら、確実にマッピングをしていく。強い気配が、地下にはいるなりビリビリとし始める。

 

頷いて、それぞれが別行動を開始。

 

まずは三班に分かれて、必殺の霊的国防兵器のうち、迎撃に出て来ている三体をそれぞれ仕留める。

 

内部はそれらの領域になっている可能性が高く。

 

まとまって動くと、まとめて全滅する可能性が決して低くない。

 

だから少数精鋭だけで進む。

 

静かな通路に灯りが点り、それがずっと続いている。

 

霊夢は迷わず進んでいる。恐らく、霊夢が進むとおりで問題ないのだろう。僕は時々周囲を警戒しつつ、雑魚悪魔は引き受ける。

 

常時展開しているラハムと二人で、だいたいの悪魔は仕留められる。

 

それでも手が足りないなら増援を呼ぶだけだ。

 

ワルターが殿軍を守ってくれる。

 

後は、ただ進むだけでいい。

 

霊夢が足を止める。

 

「やっぱりね。 この気配、あいつと同じだわ」

 

「知り合い?」

 

「幻想郷……あたしの故郷にいた奴よ。 戦闘で致命打を受けて今は戦える状態じゃない。 ただこっちに来る時に、色々各地の神話の知識を教えて貰ったわ。 文字通りの知恵の神たる存在。 向こうでは八意永琳と名乗っていたけれど、その本当の名前は八意思兼神。 オモイカネとだけ言う事もある」

 

「そんな凄い奴が、そこまでやられたんだな……」

 

ワルターが、幻想郷に攻め寄せた大天使達の強さに戦慄する。

 

霊夢が言うには、ほとんど瞬間再生レベルの不死の体の持ち主らしいのだが。それでも神話の戦いになると、殺される事は普通にある。

 

どうやったら此奴を殺せるんだというような奴が容赦なく殺されるのを見て、霊夢も世界に絶対なんてないと悟らされた原因の一つであるらしい。

 

霊夢が見ている扉の先。

 

それがいるのは、間違いなかった。

 

「さっきの情報だと、此処の先に行った天使は生還していないわね。 厳しい戦いになるでしょうね。 二人とも、準備は良い?」

 

「問題なし!」

 

「おっけいだ!」

 

「よし……!」

 

霊夢が先に出て、扉を開ける。

 

勘が一番働くから、罠にも対応しやすい。そういう事なのだろう。

 

扉を開いた先には、巨大な脳みそみたいな存在が蠢いていた。それは触手を部屋……いや、もう領域の内部だろう。

 

張り巡らせて、じっと此方を見ている。

 

凄まじい力だ。

 

南光坊天海や甲賀三郎よりも更に上ではないのか。生唾を飲み込む僕の前で、霊夢が札を出していた。

 

「兵器化された分霊体。 貴方の本体からの言づてよ」

 

「……!」

 

「知恵の神を戦闘兵器にするというのもまるでセンスがないわね。 何が必殺の霊的国防兵器だか。 とにかく大人しくしなさい。 すぐに楽にしてあげるわ」

 

「……姫様は……無事か」

 

声。姫様。誰のことだろうか。

 

霊夢はそれを聞いて、目を伏せる。

 

そうか、とだけオモイカネは呟く。

 

殺されたのか。それとも瀕死の状態なのか。僕にはなんとも見当がつかないが、無事ではないことだけは分かった。

 

他の二班は、必殺の霊的国防兵器を相手に、激戦を繰り広げている可能性が高い。一秒でも早く加勢に行かないと、死者が出かねない。

 

オモイカネの力を見て理解したが、此処に配置されているのは危険な存在ばかりだ。高位の悪魔でも遭遇は致命的。

 

そんな相手だからこそ、守りに配置した。

 

そのタヤマの思考が簡単に分析出来る。

 

だからこそ、一気に突破しなければならない。

 

相手は油断すれば一瞬で殺されるほどの相手だ。同じ必殺の霊的国防兵器がいても、である。

 

「制御札による反撃能力は自力では対処できない。 そなた等を傷つけるは忍びない。 一発で決めろ。 巫女よ。 そなたであれば、弱点は見抜けるはずだ」

 

「ええ、問題ないわ」

 

「頼むぞ」

 

それで、オモイカネは黙る。

 

霊夢はすっと指さすが、その指先がずっと動いている。即座に理解。常に急所が動いているタイプ。

 

以前戦った西王母と同じだ。

 

支援魔術を重ね掛けする。ワルターも同じく。

 

「好機は一度だけよ。 外したら確定で反撃が飛んでくる。 それもこの場の全員が一発で消し飛ぶレベルよ」

 

「問題ないよ」

 

「おう!」

 

ワルターにハンドサイン。

 

作戦は決めた。

 

僕は深呼吸すると、入る。最大限まで集中して、それで一点を確実に貫く槍となる。更に集中して、一撃の精度を上げていく。

 

使う技は貫以外にはあり得ない。

 

そしてオモイカネの様子からして。

 

狙うべき場所については、霊夢の指先を見ながら、概ね見当がついていた。

 

仕掛ける。

 

叫ぶと同時に、ワルターが走る。

 

跳躍して、フルパワーの斬撃を叩き込む。腕力は僕より劣っても、単独の点に対する破壊力はワルターの方が上だ。

 

がっと、オモイカネの表皮に一撃が突き刺さる。いや、凄まじい防御魔術で押し返されている。

 

だが、その瞬間。

 

僕はオモイカネの触手のうねる内側へと飛び込み。

 

そのまま、霊夢の指先が示す地点に。

 

オモイカネの内側から。

 

貫を、叩き込んでいた。

 

恐らく防いでくる。それは分かっていた。だから、同時に仕掛けなければならなかった。

 

だが、オモイカネは知恵の神。

 

多分それもまた、読んでいる可能性が高かった。

 

だったら、やるべきは一つ。

 

相手の内側に入り、内側から貫く。ただ、それだけだ。

 

一瞬の沈黙の後、僕を掴んで、ラハムが無理矢理引っ張り出していた。オモイカネが石の塊となって、降り注いだからである。

 

まあ、それで死ぬほどヤワではないが。

 

それでも、オモイカネが制御を失った。つまり倒れたのは、事実だった。

 

部屋が元に戻っていく。

 

周囲に点々としているのは、阿修羅会の連中の残骸だ。死体と呼べるほどのものすら残っていなかった。

 

多分後からこの部屋に逃げ込んで殺されたんだろう。それとも、オモイカネと一緒に迎撃しろとでもタヤマに言われて、ここまで来たのかも知れない。

 

残心して、気を払う。

 

さて、次だ。

 

霊夢が札を回収。これで悪魔合体と大綿津見神のあわせ技を用いて。後でオモイカネを呼び出すことも出来るだろう。

 

頷くと、霊夢が目をじっと閉じる。

 

そして、すっと指さした。

 

「まずいわね。 イザボーの方が大苦戦しているわ。 ヨナタンの方も、楽ではないようだけれど」

 

「すぐに向かおう」

 

「大丈夫か。 また消耗したんじゃねえのかあんた」

 

「問題ないわ。 ちょっと飛んでいくわけにはいかないでしょうけど」

 

かなり頑健な様子の霊夢が、露骨に青ざめている。

 

やはり消耗が凄まじいんだ。後で良いお酒でも幾らでも飲んで休んで欲しい所だが、そうもいかないだろう。

 

全力で、次の戦場に向かう。

 

だが、霊夢がぼやく。

 

「妙ね。 苦戦しているのは確かなようだけれど、傷ついているという感じはしないわ。 搦め手専門の相手なのかも」

 

「つまりその場に飛び込むと、こっちも罠にはまると?」

 

「可能性はあるわ。 とにかく違和感を感じたら、即時撤退よ。 ラハム、あんた少し後ろを飛んで。 もしも領域内に踏みこんで様子がおかしいようなら、無理矢理全員引っ張り出して」

 

「分かりました!」

 

「……」

 

ラハムも正しいと判断したのか、僕の命令を待たずに答えていた。まあ、それはそれで正しいか。

 

走る。

 

階段を下りて、それで上の方で凄まじい音を聞く。あれは雷か。霊夢がぼやく。

 

「あっちもあっちで大変だわ。 あれは恐らく、菅原道真公ね」

 

「例の三大怨霊の」

 

「ええ。 だとすると、雷撃魔術の専門家と見て良いわ。 ヨナタンの班には殿がいるから、簡単に倒されることはないと思うけれど」

 

「そう、だね」

 

不安だが、仕方がない。

 

外でも断続的な戦いが続いている状態だ。遊撃班に混じってくれているマーメイドを呼ぶわけにもいかない。外にだって、相応の悪魔が来ているのだ。此処を守っていた必殺の霊的国防兵器が倒れた時。

 

この奥にある縮退炉が手に入る。

 

そうすれば、如何様にも悪用できる。

 

実際問題、タヤマみたいなアホですら、東京を此処まで破滅的な状態にまで追い込めたのである。

 

ある程度知恵が働く悪魔が抑えでもしたら、どうなることか。

 

足を止める。霊夢が手を横にしたからだ。

 

特に変わったところはないように見えるが、霊夢は目を細めてじっと見ている。ワルターも手をかざすが。特に変な所は見つけられないようだ。

 

「妙ね」

 

「いや、僕には分からない」

 

「俺もだ。 ……何が起きるのか、一番頑丈そうな俺が体で確かめてみようか?」

 

「必殺の霊的国防兵器が能力を展開しているとなると、それが致命的な事になる可能性が高い。 それをやるのは最後よ。 幾つか試してみましょうかしらね」

 

霊夢が符を投擲。

 

確かに符が燃え尽きる。これは、何かが起きていると言う事だ。僕も何かがあるのだと認識。

 

頷くと霊夢は結界を展開。

 

だが、その結界が、瞬時に砕けるのが分かった。

 

これはまずい。

 

霊夢は専門家だ。それが探知に全力を割り振っただろう結界が瞬時に崩壊する。僕は冷や汗を掻いて飛びさがる。

 

これでも一応相応の死線をくぐってきた。

 

素人が手を出せる空間じゃないじゃないことは一発で分かった。

 

「もう少しさがって。 これは分かってきたわ。 穢れよ」

 

「穢れというと、悪魔が大喜びしそうな?」

 

「少し違うわね。 ここで穢れと呼ぶのは極端な生命力よ。 幻想郷ではそれから生じる存在を妖精と言っていたし、神々が住まう月の都には穢れが極端に少なかったわ。 生物が存在しなかったからよ」

 

「一概に悪いものだとは思えないけれど……」

 

しかし、だ。僕にも何となく分かってきた。

 

森の中は人間にとっては異界だ。下手に足を踏み入れる事は死に直結する。

 

過剰な生命力は、時に毒となる。

 

人間に対してさえそうだ。

 

アティルト界だったかに普段はいて、現実世界にはマグネタイトを用いて実体化している神々や悪魔達の場合は。

 

更にそれが猛毒になる事が多いのかも知れない。

 

「まずいわね。 穢れを操る日本関連の奴だとすると候補は幾つかあるけれど、この気配はわかってきたわ。 大禍津日か八十禍津日。 月の戦いで神降ろしで使ったから覚えているわ。 おそらくこれは八十禍津日の方ね。 古い時代は八はたくさんという意味で使ったから、たくさんの穢れという意味の神格で、災厄をもたらす邪神という意味よ」

 

「それは、本当にやばそうだね」

 

「そんなのにイザボーが捕まってるのか!?」

 

「連れている甲賀三郎は相性が良いだろうから、即死しているような事は恐らくないわ。 秀は人間と悪魔が半々だし、即座にやられていることもないと思う。 ただし、時間を掛けるとまずい。 今、対策の結界を展開する。 少し待ちなさい」

 

霊夢はずっと無理をしている。心配だが、もはや手がない。

 

仕方がない。

 

回復魔術を使える悪魔をと思ったが、僕の手持ちはいない。ワルターが何体か出してくるが、殆ど焼け石に水だ。

 

とりあえず僅かながらに回復させる。

 

霊夢はありがとうと呟くが、それだけしか出来ない程疲弊している様子だ。これはさっさと全てぶちのめさないと。

 

程なく、霊夢が喝と叫ぶと、結界が展開された。

 

頷くと、ラハムに霊夢に肩を貸すように指示。霊夢も立っているのがやっとの様子である。結界を展開しながら戦うのは無理だろう。

 

「幸い、相手は広域即死攻撃を使うタイプで、タヤマが罠そのものとして利用していると見て良いわ。 八十禍津日そのものは大した力がないはずよ。 とにかく、即座に決めてしまって」

 

「分かってる!」

 

「それで、奴は扉の向こうか!?」

 

「……そうだといいんだけれどね」

 

扉を開けて、その言葉の意味がわかった。

 

其処は領域になっていたが、肉の蠢く巨大迷宮になっていた。

 

なるほど。この領域、ただ無駄にだだっ広く、問題の八十禍津日とやらが見つけづらくなっているわけだ。

 

しかも穢れという即死トラップを全域に展開していて、見つけ出せなければ即死と。

 

文字通りの即死コンビネーションである。

 

イザボーが心配だ。

 

霊夢は青ざめて荒く息をつきながら、こっちだと言って指を差す。ラハムが支えて、速度を落としながら浮いて進む。僕達は固まって進んでいくが、肉の塊が突然盛り上がって、壁になろうとする。

 

オテギネで一閃して、壁をブチ抜く。

 

そのまま直進する。

 

迂回なんてしている暇はない。確実にイザボーのところに、最短距離で行かなければ間に合わない可能性が出て来ている。

 

彼方此方にぶくぶくと膨れあがって死んでいる死体が散らばっている。

 

悪魔もあるが、阿修羅会のものもあった。これもタヤマが雑な指示を飛ばして、領域に迂闊に踏み込んでしまったのだろう。

 

過剰な生命力でこういう有様になってしまったと言う訳だ。

 

とにかく急がないとまずい。

 

こんな風にイザボーが死ぬなんて、あまり考えたくなかった。

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