もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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日本三大怨霊の一角、菅原道真公。将門公に続いてこの人も真4にて本格参戦です。

雷神として名高い方ですが、本来は学問の神様として祀られているように、真面目な政治家であったようです。






1、雷神咆哮

ヨナタンが殿と一緒に踏み込んだのは、焼け落ちた屋敷らしきもののある場所。地下にこんなものがあるとは考えにくい。

 

領域ということだ。

 

天使を即座に展開する。

 

上空にいるのは、勇ましい鎧を身に纏った老人だ。周囲には、雷撃が走り続けているのが分かる。

 

「なるほど、菅原道真公か。 雷神としての要素を抽出して、出現させられているようだな」

 

「例の三大怨霊の一角ですね」

 

「本来は穏やかで立派な政治家であり、今では学問の神として祀られてもいる方なのだがな。 あのような姿は道真公も本意ではあるまい。 ……飛ばしすぎるなよ」

 

頷く。

 

そもそも霊夢やイザボー達の増援を待つ。

 

霊夢はあっさり必殺の霊的国防兵器の一体を仕留められる算段がある様子だった。だから敢えて手を分けたのだ。

 

此処でやるべきは、他の面子の合流。

 

側に立っている南光坊天海が、声を張り上げる。

 

「道真公! タヤマなどに使われて苦しかろう。 今、拙僧が貴殿を楽にして差し上げる!」

 

「……」

 

返答は。

 

文字通り、辺りを消し飛ばす雷撃だった。

 

大雨が降り注いでいる焼け野原である。直撃しなくても即死だ。

 

この領域に引きずり込まれたら、殆どの場合手も足も出せないだろう。散開しつつ、天使達に総攻撃を指示。

 

少しでも攻撃の目標をずらしつつ、好機を狙わないといけない。

 

そして援軍を待つ。

 

フリン達だったら、絶対にやってくれる。

 

そう信じて、戦うのみだ。

 

ヨナタンは回復の魔術を展開して、前線で戦っている天使達を支援する。だが、雷撃の火力があまりにも凄まじい。

 

どちらかというと雷撃には耐性があるはずの天使達を、耐性の上から焼き払っている。とんでもない火力だ。

 

直撃したら即死だな。

 

そう考えているうちに、殿が走りながら仕掛ける。

 

光の球が連続して道真公に炸裂。炸裂した上に、爆発する。更に、毒の霧のようなものも叩き込まれる。

 

それを受けて、道真公は五月蠅そうに移動。

 

文字通り雷霆のような動きだ。だが、それを読んでいた南光坊天海が、気合とともに拳を叩き込んでいた。

 

叩き込んだのだが。

 

拡散して消え、即座に地面近くに再出現する。

 

なるほど、身を雷に変えて、拡散も集合も出来ると言うことか。

 

殿に向けて、雷撃を連続で叩き込む道真公。激しい雨の中、体力を消耗させられつつも、激しい攻防が続く。

 

ドミニオンが指示を飛ばし、パワーが視界を遮るように盾の陣列を作って道真公の前に展開。

 

焼かれるのは分かっている。

 

それでも、こうやって少しでも道真公の視界を塞いでくれれば、それだけで大きすぎるほど意味がある。

 

ヨナタンは切り替えると、詠唱して力を蓄えこんでいく。

 

イザボーのように魔術の火力を徹底して鍛え上げているわけではないが、回復だけではなく攻撃も出来る。

 

そのまま、冷気魔術を連続して叩き込む。

 

道真公は小規模な雷撃で、冷気魔術をかき消すが。

 

その隙に、接近した南光坊天海が、連続して拳をたたき込む。

 

今、この場で最高火力を持っているのは南光坊天海だ。それを即座に理解したのか、再び拡散して散る道真公。

 

だが、再出現した地点には、既に殿が待ち伏せて。

 

雷が集結して人型を取った瞬間。

 

不可視の大質量体を叩き込んでいた。

 

そのまま、雨を蹴散らしながら、凄まじい勢いで地面にまで突っ込む殿と道真公。炸裂する地面。

 

領域が揺らぐ。

 

飛び退いた殿に、雷撃が連続して叩き込まれるが。

 

天使達が身を以て防ぎ、体ごと爆散する。

 

道真公が立ち上がる。

 

雷撃を全身に纏い、更にプレッシャーが膨れあがる。今までは本気ですらなかったということだ。

 

雷撃が膨れあがり、全域を蹂躙。

 

爆発するようにして、辺りを薙ぎ払っていた。

 

飛び退きながら氷魔術で壁を作るが、それも粉砕され、薙ぎ払われる。

 

吹っ飛ばされたヨナタンは、泥の中に叩き込まれ。

 

必死に意識を保とうとするが、其処へもの凄い速度で道真公が突っ込んでくるのが見えた。

 

まずい。

 

道真公が、至近に。

 

手にしている青い剣は、多分雷をそのまま形にしたものだ。それを、突き刺しに来ている。

 

あんなもの、貰ったら瞬時に消し炭だ。

 

だが、道真公に、ドミニオンが組み付く。一瞬だけ出来る隙。其処へ、ヨナタンは叫びながら、グラムを突き出す。

 

グラムが突き刺さる。

 

だが、ドミニオンが木っ端みじんに吹っ飛ばされ。

 

ヨナタンもまた、吹き飛ばされていた。

 

全身が焼けるように痛い。

 

見える。

 

南光坊天海が、総力で渡り合っている。

 

だが、押され気味だ。

 

此処は道真公の領域である。簡単に勝たせて貰えないのは分かりきっていたが、それでも厳しいか。

 

殿が助け起こしてくれる。

 

光に守られている銀髪の子だが。自己回復は出来るらしいが、他の者を回復させることはできないらしい。

 

「とにかく自身の回復に専念しろ。 このままだと天海も押し切られるな……」

 

「ぐっ。 すみません……」

 

「かまわん。 どの道人間なんぞ単独で出来る事などしれておる。 わしが知る戦国最強の男も、最初は国を掌握する事からやっていた。 それを為し、当時技術が進歩していた金山を発見したことが躍進につながった。 つまり最強の男ですら、運がなければ躍進などできなかったのだ。 最強では無いと自覚すること。 知らぬ事がたくさんあることを知る事。 それがヨナタン。 そなたの道を開くだろう」

 

そうか。

 

その通りなのだろう。とにかく、言われた通り回復に努める。

 

冷静になれ。

 

殿はまた、南光坊天海とともに仕掛けに行っている。

 

雷撃使い相手に至近での戦闘は分が悪いと考えたのか、光の術を連続で放って、それで対抗しているようだ。

 

ヨナタンは回復魔術で自分を治しながら、好機を待つ。

 

天使達は散発的に仕掛けているが、どうにもならない。仕掛けた端から焼き払われている。

 

だが、それでも。

 

南光坊天海と殿に向かう攻撃を、少しずつ逸らせている。

 

南光坊天海が、極太の雷撃で吹き飛ばされる。

 

だが、その時。

 

銀髪の子が何度となく敵を屠り去った光の柱で、道真公を貫く。

 

今の形態になってから、無法な移動を出来なくなったらしい道真公が吹っ飛ばされて、地平まで吹き飛ぶ。

 

呼吸を整えている銀髪の子。

 

身を守っている光が薄れているのが分かった。

 

そして、即座に戻ってくる道真公。

 

青い光の剣を、銀髪の子に振るい上げる。ダメージは受けているが、あれはとてもではないが。

 

今、やるしかない。

 

氷魔術を収束させ、道真公に叩き込む。

 

横殴りに叩き込まれた大量の氷の杭が、道真公を乱打する。それで動きが止まった瞬間、銀髪の子が不可視の質量体で道真公を殴り飛ばす。

 

そして、この瞬間、勝負がついた。

 

道真公を、後ろから貫いたのは甲賀三郎だ。

 

更に、炎の柱が道真公を焼き払い。フリンとワルターが、大上段から渾身の一撃を斬り降ろし。

 

逃れようとした道真公を、結界が拘束。

 

秀が、刀を鞘に収めていた。

 

超高速の抜刀剣術、居合い。

 

それをもろに叩き込んだのだと分かった。

 

道真公が、呻きながら薄れていく。

 

どうやら、やってくれたのだ。

 

領域が消え、ただの部屋になっていく。道真公がいた場所が岩の山みたいになり。それに霊夢が札を投げて、抑えていた。

 

「これでタヤマの手札は残り一つ。 だけど……」

 

いうまでもない。

 

全員ボロボロだ。

 

フリンが連絡を上に入れる。電波も通るようになったようだった。

 

「必殺の霊的国防兵器、三柱を撃破。 ただし被害甚大。 継戦能力はかなり厳しい状態です」

 

「分かった。 一度戻って来て欲しい。 回復班に準備をさせる。 タヤマはどうせ逃げられない。 回復を入れてから仕留めよう」

 

「了解」

 

見ると、霊夢は意識があるのが不思議なくらいの有様。

 

秀も酷く傷ついていた。

 

ワルターが肩を貸してくれるので、有り難くそれを受ける。ワルターに何があったのか聞いた。

 

「そっちも苦戦したんだな」

 

「予定通り一体目は瞬殺出来たんだ。 問題は八十禍津日っていう奴でな。 とにかくやばかった。 全体に即死の領域を張っていただけでなくて、近付いたら凄い速度で逃げ回りやがってよ……」

 

霊夢が張っていた結界から離れると即死と言う事もあって、必死の追跡だったという。

 

しかも逃げながらも八十禍津日は反撃を連続で行って来たため、簡単に斃せる相手でもなかったそうだ。

 

しかもだ。

 

なんとか甲賀三郎や呪いに強い悪魔で打撃を入れて、それで追い詰めると。いきなり領域の性質を転換。

 

即死から錯乱に切り替えてきたという。

 

それで同士討ちもあって、大苦戦の末。

 

やっと倒して来たのだとか。

 

「あれは広域の敵を罠に引きずり込んで皆殺しにする生きた罠みたいな奴だった。 二度と戦いたくねえ」

 

「同感ですわ……」

 

「あ、いたぞ! こっちだ!」

 

ナナシが来ている。

 

アサヒがすぐに回復を使える悪魔を使って、応急処置をしてくれる。

 

それだけでも随分助かる。

 

とりあえず一度地上に出る。

 

かなり激しい戦いの跡があって、それで戦車も歩兵戦闘車もかなり傷ついているようだった。

 

レールガンは撃ちきったらしい。

 

大物が仕掛けて来ていたのだろう。

 

「野戦陣地は作ってある! 其処で休んでくれ!」

 

「畜生、全身がいてえ!」

 

「回復がかかると、やっと体の痛みを自覚できるようになったって事ですわよ。 ワルター、貴方骨まで露出していたのよ」

 

「うっせえ、分かってるよ! アドレナリンがどうのこうのだったな!」

 

医療班が来て、手当をしてくれる。

 

フリンは平然としているが、あれはちょっと例外だ。かなり打撃は受けただろうに。

 

殿は引っ込んで、銀髪の子が手当てを大人しく受けているのを見ると、ほっとする。ヨナタンも出来るだけ天使達を回復させて。その天使達に回復の魔術を使わせる。

 

周囲で話しているのが聞こえる。

 

「マーメイドの奮戦もあって退けられたが、次の攻撃を俺たちだけでどうにか出来るのか……?」

 

「大物堕天使が立て続けに現れたもんな。 此処にあるものって、それだけやばいんだろ」

 

「タヤマが必死に守りを固めていた程だぜ。 悪用すると世界ごと滅ぶって話だ」

 

「おっかねえ……」

 

人外ハンター達は戦意をなくしている。それだけ激しい戦いが行われていたと言う事だ。

 

志村さんが来た。

 

横になったままでいいと言ってくれる。そのまま、話をしてくれた。

 

「散発的な戦闘が続いている。 シェルターと神田明神でもそうだ。 阿修羅会の後ろ盾になっていたような悪魔は片付いた筈だが。 それ以外にも、野良で活動していた悪魔がかなり仕掛けて来ている。 早くタヤマを倒して炉を確保しないとまずいだろうな」

 

「しかし、しばらくは動けません。 特に……」

 

霊夢はバスの中だが、今は完全に熟睡だろう。

 

あの消耗から考えると当然だ。

 

大綿津見神を神降ろしする時点で相当にきつかった様子なのに。その後も無理を続けたのである。

 

しかも面倒な事に。

 

対タヤマ戦でも、出て貰う他ないだろう。

 

フリンもそうだが、ヨナタンも今は此処を離れられない。上で休んでくるのも手なのだが、そうしていたら地下の大アバドンになりかねない縮退炉がどうなるか分からないのだ。フリンは見逃したらしいが、ガイア教団の暗殺者も来ていたと聞く。

 

何を狙っているのか、不安がどうしてもある。

 

無言で休む。

 

しばらく休んでいると、戦闘音。マーメイドが出てくれたが、それでもすぐには片付かなかった。

 

野良で暴れている大物悪魔が、此処の守りが弱体化したのを嗅ぎつけたのだろう。

 

此処の地下にあるものを握れば、東京の支配権を一気に手中に収めることが可能となる。それを考えれば、仕掛けて来るのも当然だと言えた。

 

どうにか動けるようになるまで、数回そういう事があり。

 

右往左往している人外ハンター達は、志村さんがいなければ逃げ出していた可能性も高かった。

 

ヨナタンは、本当にこれで良いのだろうかとも思う。

 

いや、最善手なのは確かだ。

 

そもそもこの地下にあるものを、あの邪悪なタヤマに渡すわけにはいかない。タヤマのような男が持っていていいものではないのだ。

 

霊夢が起きだしてきたので、ヨナタンも身を起こすが。

 

志村さんが運んできていた酒を手に取ると、すぐにバスの中に戻った。まあ、仕方がないだろう。

 

酒を入れて数時間また眠って、それでやっとどうにか出来るか、というくらい消耗していた。

 

霊夢は寝ている時はもの凄く機嫌が悪いらしく、声なんか掛けたら即座に攻撃が飛んでくるらしいので。

 

人外ハンター達はその話を聞いているからか、霊夢を明らかに怖れていた。

 

恩知らずだ。

 

そして、最近はフリンがサムライ衆にそう見られている事も、ヨナタンは知っている。勿論東京でともに戦っているようなサムライは違う。

 

だが、東のミカド国のサムライ達は。

 

本当に烏合の衆しかいないのだと。ヨナタンは何度も思い知らされて、心がとても苦しかった。

 

横になって休んでいる間に、戦況が聞こえる。

 

シェルターの方はどうにか撃退したらしい。フジワラが関聖帝君を連れて出て、それで叩き伏せたそうだが。

 

どうみてもフジワラは全盛期の力はない。

 

早めに代わりの者が育たない限り、人外ハンターが今度は瓦解しかねない。しかし代わりがいるとは思えない。

 

野田や鹿目は腕は立つが人の上に立つ器じゃないし。

 

ナナシはまだ経験が不足しすぎている。

 

銀髪の娘についている殿は。最高の指導者ではあるが、今すぐ受け入れられるのは難しい。

 

殿が憑いていることに関しては、まさか、とヨナタンすら思ったのだ。それに銀髪の娘は優れた英雄だが、人を引っ張り指導者に向いているかというと。

 

何らかの形で殿が肉体でも得ないと駄目なのではあるまいか。

 

そうとすら感じる。

 

銀髪の娘が来る。既に状態は万全のようだ。自身の傷は自力で回復出来るようだし、何より体力も多いのだろう。

 

声を落として、耳元で言われる。

 

「そろそろ霊夢が起きてくる。 秀ももう回復する頃合いだ。 出る準備を整えておけ」

 

「分かりました」

 

銀髪の子が渋面を作る。

 

それはそうか。声をわざわざ落としたのだ。周囲に、敬語で話しているのを聞かれるとまずい。

 

まだ少なくとも、殆どの存在に殿のことを知られる訳にはいかないのだから。

 

フリンが伸びをしながら、起きだしてきた。

 

魔術は支援しか使えないが、身体能力だけならこの中でも既にトップかも知れない。

 

続いて秀も起きてくる。

 

あれ、少し力が増しているか。

 

「秀さん、力が?」

 

「これか? ああ、私はお前達が言うマグネタイトを体内で制御する事ができてな。 任意で力に割り振ることが出来る。 前に一人で戦っていた頃はこれを余り上手にできなくてな。 強くなった力も持て余すばかりで、あまり効率的に強くはなれなかったのだが、今は色々と改善して強くはなれる。 うたれ弱さに関しては、どうしても克服は出来なかったが、当たらなければ良いだけのことだ」

 

最近は喋るようになってきているな。

 

駐屯地に、わらわらと何か来る。

 

悪魔だが、敵対的な様子はない。

 

どうやらケルトの伝承に残る戦士達のようだ。

 

いずれもが幻魔なのだろう。

 

豊富な髭を蓄えた老人が前に来る。腰に剣を帯び、槍を持っていた。

 

「ダヌー様の指示で救援に来た。 我等ケルトの戦士達、この地を守る戦士達とともに戦おう」

 

「有り難い。 皆疲れきっていた」

 

「人であれば仕方が無い事だ。 以降は我等が最前線に立つ。 多少の悪魔程度ならどうにでもなる。 今のうちに回復を済ませておいてくれ」

 

アーサーと名乗った老人に、周囲が色めきだつ。

 

そんなに有名な存在なのか。

 

いずれにしても、悪魔の力は知名度にも影響を受ける。人間が減りすぎて、信仰が新たに殆ど得られないのなら、其方の方が大きいだろう。

 

板金鎧を着たいかにも有名そうな騎士達が周囲を固める。

 

一目で強いと分かる。あれならば、多少の悪魔が相手でも苦にはしないだろう。言うだけの事はあるということだ。

 

イザボーが起きだしてきて、最後に霊夢が加わる。

 

ワルターも怪我を既に治しきっていた。

 

志村さんが声を掛けて来る。

 

「まさかアーサー王が味方になってくれるとは。 いずれにしても、此処は我々だけで支えます。 マーメイド殿も行ってください。 地下にある縮退炉を、何があっても確保してください。 東京がなくなるかの瀬戸際なんです」

 

「分かったわ。 そんな場所だったら、あの人が来る可能性も高そうだし……」

 

「とりあえず、皆、無理をしないでね。 怯えきっているだろうタヤマだけれども、だからこそ何をするか分からないし」

 

「わしも行くぞ」

 

ドクターヘルが来る。

 

戦車と歩兵戦闘車の応急処置をしていたようだが、まあ来て貰わないと困るか。縮退炉をこの人でないと精確に扱えないのだから。

 

霊夢が苦々しげに言う。

 

「これはとんでもない気配だわ。 タヤマの奴、手駒にしていた必殺の霊的国防兵器が全て倒されたことに気付いて、もう最後の切り札を切ったわね」

 

「何者か見当はつく?」

 

「これほどの気配となると、日本神話の最強格でしょうね。 アマツミカボシの分霊だったら最悪よ。 彼奴は日本神話で結局最後まで戦いでは倒せず、懐柔してどうにかした存在。 もしも出てこられたら、手の打ちようがないわ」

 

霊夢がそれほど言う程の相手か。

 

フリンが腕組みする。

 

「今一緒に戦ってくれる甲賀三郎と南光坊天海をあわせても厳しい?」

 

「厳しいわね。 此処にいる面子全員でかかって、その二柱も加えて、ようやく勝ちが見える相手よ」

 

「他の可能性は」

 

「例えば日本武尊か崇徳上皇かしらね。 どちらにしても大苦戦は免れないわ」

 

それほど気配が凄まじいと言うことか。

 

いずれにしても行くしかない。

 

ヨナタンも天使部隊を回復させた。更に一体がドミニオンに転化した。ドミニオンも、最初に転化した一体が、更に上位の……上位天使になれるかも知れないようだ。

 

大天使は上位天使の中でも更に精鋭中の精鋭のようだが。

 

それでも上位天使は雑兵扱いの中位天使とは完全に格が違うようだ。

 

上級三位の天使はソロネといい、座天使と言われるらしいが。

 

いずれにしても仲魔に出来れば、今後の戦いで大いに力になってくれるだろう。

 

ヨナタンは立ち上がると、手を叩いて皆を集めるフリンの話を聞く。

 

「相手への道は既に確保してある。 此処には想定される中で最強の面子も集まってる。 きっと勝てる筈」

 

「そうだな。 俺たちが弱気のままじゃ、勝てる相手にも勝てねえな」

 

「負ければ最悪上で暮らしている普通の人達も危ない。 大天使どもがどんな暴挙に出るか知れたものじゃないから。 だから、必ず勝とう!」

 

そんなに力強い言葉では無い。

 

だけれども、フリンの言葉には静かな力がある。

 

ヨナタンは頷く。

 

そして必ず勝つと、自身に気合いを入れていた。

 

民を顧みず、己の権力だけを考えているラグジュアリーズ。その最も醜い部分を、ヨナタンは幼い頃から見ていた。

 

ご落胤だと父は喧伝し。

 

将来の権力や財産を目当てにしてすり寄って来る大人達の性根の醜さを、ヨナタンは幼い頃から思い知らされてきた。

 

バカだったらむしろ幸せだったのだろう。

 

ヨナタンはそういった大人達の醜さを理解出来る程度の頭はあったから、余計に苦しむ事になった。

 

家にいる使用人達も、ずっとヨナタンの事を獣の目で見ていた。

 

お手つきにでもなったら、一生楽して暮らせるかも。そう話している使用人達の言葉を何度も聞いた。

 

反吐が出ると思った。

 

だから、自分は貴族であるなら、それに相応しい存在にならなければならないと考えたのだ。

 

民なくしてなんの貴族か。

 

だから、今こうして、心折れずに立っていられる。この地では、牙なき民がどれだけ泣いているか分からないのだから。

 

フリンが真っ先に歩き出し、皆がそれに続く。

 

ヨナタンもその一人に混じって。この東京で厄災そのものとなった、タヤマを討ちに行くのだ。







ついに残りはあと一柱……!

必殺の霊的国防兵器が、東京の人々を脅かす脅威であった時間が、終わろうとしています。












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