いよいよついに三貴神の復活に王手が懸かります。
これがなれば、神降ろしによって更に大きな事が出来るわけですが……
さて、上手く行くかどうか。
一度東のミカド国に戻り、休憩を取る。数日かけてじっくり休憩を取ったが。それはそれとして、既に僕達の後の三回目の成人の儀が行われた後だった。
流石に前回の成人の儀で今までの取りこぼしを回収したからか、今回は六人だけだったらしいが。それでも僕達の時よりも多いし。三回の成人の儀で、最近命を落としたり引退したサムライ衆の欠損人員は補完できたらしい。人数だけは。
その上ラグジュアリティーズというだけで偉そうにしていたサムライ衆はあらかたいなくなり。
実力のみで選抜されたサムライ衆に鍛え上げられたようだが。
これはホープ隊長がしっかり鍛えたのもあるだろうが。
あのギャビーが目を光らせていたのもあるのだろう。
悔しいが、そういった手腕に関しては本物と言う事だ。
しっかり休憩を取り、ヨナタンから報告書も出して貰う。
その後、ホープ隊長を交えて、地下で話をする。状況を説明すると、ホープ隊長は呻いていた。
「大アバドンか。 それがもし悪用されていたら……」
「過去の話ではありません。 今から悪用されることも大いに警戒しないと」
「そうだな。 このまま行動は任せる。 其方での時間と此方での時間は違っている。 それを理由に、私もあの怪物めを引き留めておく」
怪物か。
ガブリエルという天使は、本来一神教の天使の中では慈愛に満ちあふれた存在であるらしいのだが。
今、東のミカド国を壟断しているガブリエルは、ただの怪物だ。
ホープ隊長の言葉も納得が行く。
そして、疲れを充分に取ってから東京に戻る。
霊夢が起きだしてきていたが。神降ろしをする前に、市ヶ谷から回収してきた情報で、驚くべきものがあったというのだ。
素戔嗚尊と天照大神。
この国の三柱の一番偉い神の内二柱。
一柱、月夜見は今霊夢の故郷にいると言う話だが。素戔嗚尊と天照大神は行方も分かっていなかったし、天照大神に至っては千々に砕かれたなんて話まであったそうだ。
だが、それも話が変わってきた。
市ヶ谷の地下、縮退炉のある階層に、封じられた間がある。
それはとんでもない強固な結界で封じられていて。三種の神器。剣、鏡、勾玉でないと開けられないらしいのだが。
その奧に、少なくとも素戔嗚尊に関する手がかりがあるらしい事が分かったのだ。
「情報が散逸してしまっていて其処で何が行われていたのかはよく分かっていないが、少なくとも最高国家機密であったことは確かなようだ。 天使共もタヤマも、そこはどうやってもこじ開けられなかったらしい」
「このままだと大綿津見神を神降ろしして作業を行うことになるけれど、ミカエルらを元の姿に転生させるには力不足かも知れない」
霊夢が指摘。
つまり、賛成と言う事だ。
ドクターヘルもいう。
「仮に駄目だった場合は、駄目だったという結果が得られる。 無駄に彼方此方を探し廻るよりも其方の方が有益であろうよ」
「決まりだね」
「私も賛成だ」
秀も賛成。
マーメイドは既に目的を果たしたからだろうか。要所で声を掛けて欲しいとだけ言って、こういう所ではほぼ何も意見を言わない。
元々は、あまりこういった場で会話するのも苦手なのかも知れない。
殿が決断した。
「よし。 まずは草薙の剣だな。 霊夢よ、さっそく日本武尊の悪魔合体に取りかかってくれるか」
「なんとかギリギリと言う所よ」
「かまわん。 呼び出せさえすれば、此方の味方として活躍してくれよう」
「……そうね」
霊夢の声は重い。
幻想郷という場所を大天使に蹂躙された時。
あのオモイカネの本体が其処にはいたらしいが。それでも半殺しにされた。瞬間再生レベルの不老不死能力を持っていたにもかかわらずだ。
四大天使の内三体を失っても、天使達の力は侮れない。クリシュナの指摘で、僕もそれを思い知らされていた。
敵を侮っていたのだ。
日本武尊が復活したところで、もしも東のミカド国の天使達が総攻撃を掛けて来たら、もう東京は保たないかも知れない。
それくらいの状況を想定して、動かなければならないのだろう。
まずは神田明神に移動。
かなり活気がある。
神々は人々に姿を見せていて、鳥居の側にいる武神らしい神が、どうすればいいかの指導を他の文化圏の神や、加護を願いに来た人々に説明している。
僕も霊夢に言われて、二礼二拍手というのをやって、神社に敬意を払う。
僕は一神教徒だったのだろうけれど。
大天使達や四文字の神の言動を見る限り、その下にいるつもりはない。
心配なのはヨナタンだが。
ヨナタンは異文化であろうと敬意を払うべきと判断したのか、とくに抵抗もなく神社に敬意を示していた。
そのまま霊夢が神降ろしを始める。
まだまだ神降ろしが必要だ。
その度に霊夢の消耗も激しい。
霊夢の力が上がってきているとは言え、それでもこう立て続けだと厳しいし、霊夢程の手練れが戦線から外れるのは大きいのだ。
ほどなくして、霊夢が大綿津見神を降ろす。
そして、悪魔合体を開始するが。
今までで一番凄まじいスパークがスマホから走っている。これはあのスマホ、壊れるかも知れないな。
そう思いながら、僕は周囲を警戒。
神社にいる神々が霊夢に回復の術をかけ続けているから、負担は減っているはず。そう信じて、様子を見る。
勿論狙撃とか、奇襲とか。
そういったものにも備えなければならなかった。
ごっと、風が吹き荒れる。
雷が落ちたかと思った。
凄まじい音が収まると、其処には。
縮退炉の前にいた、仮面をつけた武人が立っていた。どうやら、成功したようだった。
「日本武尊、ここに。 軛から外れた今、この国の未来の為に戦おう」
「日本武尊どのだ!」
「人界の英雄ぞ!」
「頼もしき話だ!」
神々が口々に言っている。
霊夢は冷や汗を拭って、それからスポーツドリンクを口にしていた。とりあえず、まずは此処からだ。
草薙の剣についての話。
更には市ヶ谷の奧に封じられている可能性がある素戔嗚尊と天照大神について。霊夢が確認すると、日本武尊は険しい顔をしていた。
「それをどこから聞いた」
「データが残っていたそうよ」
「そうか。 ……まあ良いだろう。 そなた等の拠点で話そう。 此処で話すのは色々と面倒な事でな」
「分かったわ。 また移動か……」
霊夢がぼやく。
まあ、霊夢の負担を考えると仕方がない。日本武尊は、以前戦った時よりもプレッシャーが小さい。
これはあの時の戦いを経て、膨大なマグネタイトを吸収して僕が力を上げたからかも知れないが。
それについても、過信は出来ないだろう。
一旦シェルターに。
シェルターで、物珍しそうに周囲を見ている日本武尊を囲んで、早速話を聞く。日本武尊は。疲れきっている様子の霊夢を見て心配そうにしたが、咳払いして話してくれた。
「実はこれは神々でも上位の存在しか知られていない事で、私も草薙の剣を貸し与えられてそれで知った事なのだがな。 この国の三貴神は、分霊体という仕組みを用いて、この国のために力を分散したのだ」
「力を分散?」
「そうだ。 神造魔人などと言ってな。 特に素戔嗚尊は歴史の要所で姿を現し、異国の神と戦ったと聞く。 ただ大戦で各地に散ったところを、それぞれが各個撃破されてしまったそうだが」
「なんということだ……」
殿がぼやく。
初めて聞いたことだったのだろう。
まあ、それもまた仕方がない。殿の正体についてはこの間名前を聞いたが、僕としてもまだあまりぴんと来ていない。
「待ってくださいまし。 それでは千々に砕かれたというのは」
「文字通りの意味だ。 天照大神にしてもそう。 月夜見にしても分霊体から作りあげた神造魔人は倒されて、それっきりらしい」
「じゃあ天照大神を復活させる事はできないのですか」
「いや、そうでもない」
フジワラの言葉に、日本武尊は言う。
なんでも分霊体が砕かれても、信仰は残っているし、何より最後のセーフティとして三種の神器が神々にたくされている。
それが揃った今。
少なくとも天照大神を復活させる事は可能だそうだ。
ただ、それには膨大な力が必要になるそうだが。
「現状の大綿津見神を神降ろしした程度では無理かしら」
「いや、力量はそれで足りるだろう。 天照大神は必ずしも神として暴威を振るう存在ではなく、太陽の恵みそのものを示す神だ。 問題はそなたの力ではなく、竜脈から得る体の方。 そなた等のいうマグネタイトというものだな」
「天海」
「はっ!」
殿が呼び出すと、その場に南光坊天海が姿を見せる。
きっとこの人は、人間時代の殿に仕えていたのだろう。
「今の話は聞いていたな。 何かしらの策はないか。 わしは霊的云々の事はようわからんでな」
「まず四天王寺を元に戻し、その結界から生じる力を正常化すれば、東京には竜脈が戻ります。 それによって各地で欠乏していたマグネタイトが足りるだけではなく、悪魔の凶暴化も沈静するでしょう」
「今まで手が足りずに出来ずにいたが、それをしておくべきか」
「はっ。 ただ……」
南光坊天海がいうには、それをやったら確定で大天使達に気付かれると。
大天使達も何もせず見張っているわけでもなく、負けて東のミカド国で大人しくしている訳でもないのだと。
その言葉については、クリシュナが言っていたのと同じだ。
「だとすると、先に今捕らえてあるミカエル等を一神教の影響を受けていない神格に戻す方が良いかしら?」
「それなんだがね……」
フジワラが咳払いして、説明してくれる。
今の時点で解析した結果、ミカエルらのうち、ウリエルとラファエルについては、大綿津見神の神降ろし併用でなんとか出来そうだと言うことだ。
問題はミカエルである。
ミカエルは祖を辿るとマルドゥークにまで辿りつくというのだ。
この神については以前聞いている。
ラハムの母親だというティアマト神。
それを倒して、神々の王となった存在。
典型的な暴風神であり。非常に猛々しく強力な神だと言う事だ。
「マルドゥークは恐らくだが、今の霊夢くんでも賭けになるだろうね。 より強力な神を神降ろしして、底力を上げられれば話は変わってくるかも知れないが。 それに、ミカエルらを元の姿に戻した場合、確定でガブリエルは気付く」
「そうなると順番を考えないといけないですね」
ヨナタンが提案。
まず、三種の神器を持って市ヶ谷地下を訪れてはどうかと。
それで状態を見て、その状況次第で次善の策に移っては、というのである。
なるほど。確かに現実的な策だ。僕としても反対する理由がない。
それにそもそもとして、ヨナタンは東のミカド国を救う覚悟を既に決めている。王になる覚悟をだ。
ただしそれも、まずは大天使を悉く叩き潰さないと無理だろう。
予想以上に大天使達の力が高いことを知った今となっては。それも順番を考えないと上手く行かないはずだ。
皆が銀髪の子を見る。
やがて殿が決断していた。
「よし、今回はヨナタンの提案を受ける。 いずれにしてもこのままでは手詰まりなのは事実だ。 ガイア教団も、クリシュナの動きもよく分からない以上、此方が力をつけて手数を増やすのは必須だ。 最大の仮想敵である四文字の神と大天使達を相手にする前に、出来る事を全てやっておこう」
「分かりました。 僕はすぐに出られますが」
「霊夢よ、大丈夫か」
「戦闘は無理だけれど、行って調べるのはなんとか」
此処で言う戦闘は無理というのは、空を飛んで大物悪魔と正面からやりあうような戦闘という意味だ。
実際市ヶ谷の戦いでも、疲弊が激しい中霊夢は支援に徹して良い活躍をしてくれた。
決まれば後はすぐだ。
僕達と霊夢、それに殿とドクターヘルで現地を調べる。
残りの面子は各地の要所を固める。
神田明神は生半可な戦力ではもはや落とせないだろうが、それでも一人は誰かを漬けておくべきだろう。
なお、日本武尊にも来て貰う。
知識のある存在に来て貰わないと、どんな罠があるかわかった者ではないからだ。
時間が加速しているような錯覚すら感じる。
とにかくやる事が多い。
ワルターが六本木のターミナルから出ると、一つずつ指を折って数えていた。
「ええと、まずは大天使三体を神の手下ではなくす。 四天王寺ってのを元に戻す。 その二つの前に、より強いこの国の神様を呼び戻す。 対外関係は、ガイア教団の動きに注意する。 クリシュナの行動を注意する。 だー、やることが多い!」
「一つずつ整理するのは正しい行動だよ。 まずはその「より強いこの国の神様」を呼び出しに行く行動だね」
「ああ、分かってるよ。 それにしてもガイア教団の連中はずっと黙りだな。 この辺りでなんか仕掛けてこないだろうな」
「君達」
出迎えに来たのは、小沢さんだ。
敬礼して話をする。
元に戻った市ヶ谷の内部を案内して貰うために呼んだのだ。志村さんは、ニッカリさんと連携して阿修羅会から解放された六本木を初めとする彼方此方の街を調べ。阿修羅会が出していたような依頼は全て取り下げさせているという。
また残党狩りについてもやってくれているそうだ。
アベが倒れた以上まともに動ける残党なんていないだろうが。
それでも、先手先手を打っていくのは正しい行動だろうと僕も思う。
六本木から少し歩いて、市ヶ谷に。
途中で悪魔は出るには出たが、この間の大規模会戦を経た影響か、露骨すぎる位に数は減っていた。
大物は特にそうだ。
代わりに雑魚が増えていて、カタキウラワが死肉を漁っているのを見かける。カタキウラワは此方を見ると、そそくさといなくなる。
「まだ豚肉はでまわらないんスか、小沢さん」
「子豚を育てているところで、まだしばらく先かな。 鶏の方はそろそろ鶏肉を出荷できるかも知れないという話が出ているよ。 そういう意味では、まだまだカタキウラワを狩る事を専任にしている人外ハンターもいるし、肉としても重要だね。 だけれども、それが終わろうとしているかな」
「それはありがてえな。 他人事になっちまうけど」
「いや、君達のおかげだ。 私も各地のスカウト以外に出来る事が増えてきた。 今回も、古巣の案内がそんなことにつながるとは思っていなかったよ」
小沢さんは幹部自衛官と言う奴だったらしいから、市ヶ谷の奧になんかあるらしいという話は聞かされていたそうだ。
市ヶ谷まで大した相手もいない。
何回かそれなりの悪魔は出たが、全て蹴散らす。霊夢が出るまでもない。そもそも日本武尊の視線を受けて、それで逃げてしまう悪魔も多かった。
市ヶ谷に到着。
此処では甲賀三郎がいつも常駐していて、人外ハンターも交代で見張りについている状態である。
霊夢も結界を展開している事もあり。悪魔が入り込んでも、人間が入り込んでも、すぐにばれる。
入口辺りは突入時に粉砕されたが。
それも修理が終わり、内部では色々と作業が行われていた。戦車が並んでいる。どれもまだ壊れているようだが。
「思ったよりもたくさん戦車があるんですね」
「どれも壊れてしまっているから、これから少しずつ直さなければならんがな。 共食い整備で使ってしまうものも多そうだが、思ったよりは状態がいいものも多い。 今後大天使を相手にするのなら、このままの戦車では力不足なのが問題よのう」
「エイブラムスが三両あって、状態がいいのが救いですかね」
「まあそうだな。 戦車を作るのは生半可な技術では無理だから、一から作って増やせるようになるのは、下手すると数十年先かもな」
小沢さんの言葉に、ドクターヘルが冷静に返す。
色々作ってくれるドクターヘルだから、余計に色々と説得力がある。
それくらい大変な破壊が行われた。
それが分かってしまうし。
文化なんてそう簡単に再生出来ないのも、思い知らされる。
「この棟ですね。 縮退炉のある場所とは若干違う通路から奧へ行くのですが、その先に幾つかセキュリティがかかった扉があって、其処が問題の場所のようです」
「縮退炉のある場所からいけないのか?」
「この辺りはセキュリティの観点から、別にしていたんでしょう。 私も幹部自衛官だったのですが、もっと上位の幹部しか奧には入れませんでしたし、どんなトラップがあるか分かりません、 悪魔を前衛にした方が良いかも知れません」
「お任せを」
ヨナタンの天使達が出る。
いずれにしても、今はもうセキュリティのかかった扉も生きてはいないので、罠にだけ気を付ければいい。
棟に入ると、内部にはかなりあらした跡があった。
書類が散らばっているのを見て、小沢さんが嘆く。
「この棟を守るのにどれだけ犠牲を出したか分からない程なのに、最上層部の人間は最後は放り捨てて逃げた。 許しがたい話です」
「もう繰り返させないようにしましょう」
僕が小沢さんをフォローする。
さあ、この先だ。
扉はどれも死んでいるから、普通に開く。元はカードとか必要で、それも厳重な手続きも必要だったらしいが、それらも今は意味がない。扉自体にも仕掛けが色々あったらしいが、それらも全て手動で開く。
扉を開くと通路があったが、それも直線。
これは或いはだが、本来は色々罠があって、直線で充分だったのかも知れない。
天使達が先に行くが、予想されていた罠もほぼ生きていなかった。
一応そういうのに詳しそうなドクターヘルがいるし、なんなら最悪の場合強行突破するために備えてもいたのだが。
こういったものは使う人間次第。
それを思い知らされるように、僕も拍子抜けするくらい最深部まで簡単に通る事が出来ていた。
一応後方を南光坊天海が見張って、罠の類が発動したときに備えていたのだが。その心配もなかった。
天井が落ちてきたりとか壁が迫ってきたりとか岩が転がってきたりとか。トゲトゲの生えた落とし穴とか。
そういうのもなかった。
「私が聞いた話によるとレーザーによるトラップは配置されていたらしいのですが」
「それならわしが無力化しておいた。 レーザーに出力が送られていたのを見つけたのでな」
ドクターヘルが当然のようにいうので、小沢さんがちょっと困惑していたが。
まあこの国のそういうセキュリティは昔からザルで有名だったらしく。小沢さんも仕方がないのかなと諦め気味である。
やがて、最深部につく。
流石に最深部にはごっつい扉があって、取っ手とかが色々ついていた。
日本武尊が前に出て、操作を始める。
此処の事は知っていたらしい。
今までは此処までの通路を通る間は悪魔召喚プログラムの中にいて。此処で草薙の剣を出して作業をすることはあったらしいのだが。
それ以外では、作業はなかったそうだ。
複雑に取っ手を動かして操作していく様子を見て、霊夢が何かしらの呪術に基づいた手順だと言っていたが。
僕には分からなかった。
いずれにしても、扉はガコンと音を立て開いて。
その扉が開くと、祭壇がある。
まず日本武尊が草薙の剣をおくと、霊夢が神降ろしをして、鏡と勾玉をおく。これは神と半分一体化しているらしく、神田明神から神降ろしで一時的に呼び出すことで、出来るそうだった。
祭壇が反応。
床に沈み込むと、右側の扉が開く。
草薙の剣を回収すると、日本武尊が此方だと言って案内してくれる。
奥に入ると広い部屋があって、なんらかの液体が溜まった穴が三つ。そして、意外に文明的な……ドクターヘルが作るような装置が色々並んでいる部屋に出た。
「此処だ。 此処で三貴神の分霊体を作成して、国難の時などにはこの国で活用していたようだ。 ただこの国の支配者でも簡単に入る事は許されず、独自の組織と何よりも神々が厳重に管理していたようだがな」
「わしもこんな場所は初めて見る。 まあわしの時には国難は既に去っていたから、それもそうかも知れぬが」
「それはそうと、ちょっとまずいわよ」
霊夢がハンカチで額の汗を拭っていたが、前に出て穴を覗く。
僕には分からないが。
霊夢には分かるのだろう。
「天照大神の方は殆ど力が残っていない。 素戔嗚尊もごく僅かね。 月夜見は幻想郷に本体がいるから良いとしても……」
「そうなると、やはり四天王寺の復興が優先か」
「……ちょっと待って」
霊夢が周囲を調べ始める。
ドクターヘルもPCのコンソールとキーボードを見つけて、操作し始めた。ドクターヘルの指が超高速で動いて、何やら出て来たデータを追っているようだ。
「霊夢よ。 面白い事が分かってきたぞ」
「何かしら」
「残量のデータがある。 それによると天照大神は1.5、素戔嗚尊は8、月夜見は6だそうだ。 ふむふむ、神造魔人を作り出すには10の残量がいるそうだが。 最悪の場合は、1を用いて神を呼び出すべしとある。 信仰心を得ればこれは徐々に溜まっていくそうで、1をためるのに100年かかるとか。 それも三千万の人間がいてやっとの話だそうだがな」
「三千万!」
ちょっと絶望的な数字だ。
僕でも今の東京の三百倍の人間だと即座に計算できるし。
霊夢は考え込みながら歩いていたが、やがて結論を出していた。
「四天王寺を開放する前に、三貴神を具現化させるべきね。 ただ、特に天照大神を復活させると、神田明神まで護衛しなければならないわ。 散々色々な神々が狙って来るでしょうしね」
「それって、要するに弱体化した状態で復活してもらって、その後四天王寺をどうにかして竜脈を解放して、それで力を取り戻して貰うって感じ?」
「そうなるわ」
なるほど、分かってきた。
まあ、それなら僕達も仕事ができたと言うことだ。
ワルターが、心配げに言う。
「それよりあんた、体力は大丈夫か?」
「なんとかなるわ。 此処でやることは神降ろしではなくて、神の残滓を集めるだけだからね。 三貴神は分霊体として管理しやすいように自らをしたのでしょうよ。 此処まで大胆な事をするのはちょっと神としても珍しいけれど」
「いずれにしても、僕達が総力を挙げて帰路を守らなければならない、ということだね」
「ええ」
霊夢が準備を始める。
床に何やら模様を描き始めたので、僕達は部屋を見回る。市ヶ谷駐屯地は甲賀三郎と南光坊天海が目を光らせてくれているが、それでも手が足りないかも知れない。
直後、殿に言われて、僕は外に出る。恐らく既に勘が鋭い奴は気付くだろうと言う話だったからだ。
そして、すぐにその言葉は現実になっていた。
隣に、残像を作って甲賀三郎が来る。
それはそうだ。
空から、無数の悪魔が出現したのだ。
いずれも堕天使のようだが、此処を目指している。市ヶ谷の乱戦で人外ハンター達が必死に追い払った連中の残党か、或いは。
「これは骨が折れそうだ……」
「わしは通路で侵入してくる敵を迎え撃つ。 フジワラ、敵襲だ。 増援を出来るだけ送ってくれ」
「分かりました。 秀さんに向かって貰います」
「うむ……」
さて、やるか。
僕が最前列でオテギネを構える。ヨナタンとイザボーが後列に、僕がワルターと前衛を担当する。
悪魔達もありったけ出す。
人外ハンター達も敵襲と叫んで、彼方此方で戦闘配置に。
堕天使達は、まずは雑多な悪魔を多数、上空からけしかけてきた。敵は今回はかなり本気のようだ。
余程天照大神が蘇るとまずいのだろう。
だけれども、だ。
こいつらを削りきれば、東京で人に害なす悪魔をそれだけ削る事ができる。人間とともにあろうとしてくれる悪魔だったら、いてほしい。
だが存在が害にしかならない悪魔は、悪いが倒させて貰う。それだけだ。
大量の妖鳥が、まず先頭になって突っ込んでくる。一緒に出て来た小沢さんが、人外ハンター達とともに銃撃で弾幕を張る。僕の仲間達も、一斉に魔術を空中に投射。まだまだ小手調べだ。
数を減らす。
炸裂する魔術と銃撃が、大量の妖鳥を叩き落として行くが。第二波、第三波と次々来る。それだけじゃない。
徐々に強いのが出始める。
もの凄い大きさのが飛んでくる。
「凶鳥フレスベルグよ。 北欧神話の世界樹の頂点にいて、世界を見下ろしている巨鳥だわ」
「あれはおおきいね……」
「他にも凄いのがいる!」
「あっちは鵬よ。 糞が村一つを潰したという伝承がある巨鳥ね」
まあいい、こっちも大きいのを出すだけだ。
それに、一匹だってここから先は通さない。
ラハムが放った呪いの術が、まとめて多数の妖鳥の息の根を止める。ムスペルが上空に吠えて、放った溶岩隗が、まとめて多数の敵を叩き落とす。アナーヒターの清浄な水が、邪悪な悪魔達を溶かすようにして浄化する。
ヨナタンの天使部隊は重厚な陣形を組んでいて、飛来する雑魚悪魔を全く寄せ付けない。
また前衛にいるワルターの悪魔達は、いずれも力強く、迫る悪魔達をものともしてなかった。
特にギリメカラは鼻を振るって迫る悪魔を片っ端から千切っては投げている。
とても頼もしい限りである。
ぶつかりあうフレスベルグと甲賀三郎。
激しい斬撃を浴びせる甲賀三郎に、フレスベルグが巨体を生かして冷気を浴びせ続ける。
だが、そのフレスベルグを、横から飛来した槍が貫いていた。投擲したのは、ここの守りについているケルトの戦士達だ。
人外ハンター達も、自慢らしい悪魔達を展開して、敵を防ぐ。
鵬が叩き落とされる。
南光坊天海が、凄まじい体術で、巨大な鳥を文字通り拉げさせたのだ。凄い力だ。今更ながら、よく勝てたものだと感心する。
前に躍り出たイザボーが、光の壁を展開。
空から飛来した、超火力の魔術をそのまま跳ね返していた。
魔術返し。
最近手持ちから覚えた切り札らしい。
跳ね返された魔術を避けると、突っ込んでくるのは大物の堕天使だ。
「堕天使アガレスよ。 ソロモン王72柱の筆頭とされている大堕天使ね。 戦闘力はベリアルに劣るようだけれど」
「あれ、乗ってるのは何?」
「ワニという生物ね。 今は此方では見る事が出来ない生物で、生存しているかも分からないわ」
「そう……」
見えてくる。ワニに乗ったお爺さんという感じの堕天使だが、いずれにしても叩き落とさせてもらう。
ラハムに視線を送ると、そのまま蛇の髪を束ねてくれる。僕はそれに乗ると、全力で撃ちだして貰った。
まさか飛んでくるとは思わなかったのか、魔術をぶっ放そうとしていたアガレスが、呆然とするのがみるみる迫ってくる。
そのまますれ違い様に、首を叩き落とす。
下で、風の魔術でクッションを用意してくれたので、そこに降りる。風の魔術を使ってくれたのは、ティターニアだった。
「相変わらず無茶苦茶ですわね……」
「イザボーも、さっきの魔術返し凄かったよ!」
「ま、まあ消耗が大きいから、あまり使えませんけれど」
ちょっとイザボーも嬉しそう。
堕天使達はアガレスが鎧柚一触されても戦意が衰えていない。だが、幾らでも来い。
阿修羅会同様、この東京を私物化して無茶苦茶しようというのであれば。
全部まとめて、薙ぎ払ってやる。
※三貴神の復活装置について
これは真女神転生5での神造魔人精製装置っぽいものの描写を参考にしています。この世界線では神造魔人は彼方此方にかり出された挙げ句、飛び交った核兵器の直撃を受けて全滅してしまいました。
恐らく真5で描写していたシステムを完全に理解で来ている自信はないので色々違うかも知れませんが、平行世界で別のものが使われていると考えてくださると助かります。
事実真2では、地下に天照大神が普通に封印されていましたからね。平行世界でいろいろと違っているのだと思います。