もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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市ヶ谷での戦いが終わり、縮退炉を確保し。

そして何よりも、ついに天照大神が復活。

封印されていたこの土地の太陽神の復活は、文字通り闇の世界の終わりの嚆矢となりました。






分裂の時代の終わり
序、凱旋神田明神


神田明神に到着。

 

市ヶ谷に押し寄せた悪魔を全部叩き潰した。こっちには必殺の霊的国防兵器もケルトの戦士達もいた。

 

いずれも大活躍してくれて、それで被害は最小限まで抑えられた。

 

それだけじゃない。

 

ヨナタンの連れていたドミニオンがソロネに転化した。

 

炎の車輪そのものの姿をした上級天使。上級三位の実力者。

 

神に対する忠義で熱く燃え上がっているらしいが。

 

いままで同様ヨナタンへの忠義を崩していない。

 

ただ、今後はヨナタンの直衛に移ると言う。その代わり、新しく転化したドミニオンに天使隊の指揮の座を交代した。

 

そして僕の仲魔も、ついにラハムが転化を感じ始めたという。

 

もう一段階転化すれば、恐らく。

 

いずれにしても、その時は近い。

 

ともかく、バスで降りる。霊夢は相当に参っているようだが、それでも以前のような顔色が真っ青な状態ではない。

 

力が上がってきていて。

 

余裕が出始めているのだ。

 

そして、日本武尊が側について。バスから降りて来た者達を見て、神田明神の神々がわき上がっていた。

 

「天照大神!」

 

「太陽が戻られたぞ!」

 

「おお、このような日が来るとは!」

 

感激の声が上がる。

 

同じ太陽神でも、八咫烏とは違う。最高神としての太陽神だ。その威光は、歩くだけで神社に轟くかのようである。

 

これでも弱体化しているというのだから驚きだが。

 

ともかく、これでやるべき事が出来たといえる。

 

ケルトの神々も、太陽の光が森に行き渡り始めた事を感じて、明らかに喜んでいるようである。

 

異教の神々でも同じようにやっていける。

 

異境でも。

 

霊夢が天照大神に傅く神々を見て言う。

 

「ある妖怪研究家が言っていた事があるのだけれどね」

 

「妖怪の研究家?」

 

「ええ、大戦の前の大戦に参加して、片腕を失いながらも漫画をずっと書き続けた偉大な人よ。 その人の言葉に、面白いものがあってね」

 

「それほど偉大な漫画家が!」

 

イザボーが反応。

 

まあそうだろうなと、ワルターが若干しらけ気味に見ていたが。まあ、それについては別にいい。

 

僕としては、その話に興味がある。

 

「世界中何処でも、同じ妖怪がいる。 名前は違うけれど、基本的にどこの国でも同じ妖怪がいるのだ、ってね」

 

「妖怪というとちょっと範囲は狭いけれど、それって悪魔や神々の事だよね多分」

 

「ええ。 日本でもっともその人に身近だったから、妖怪だと言っていたのでしょうね。 あたしもその人のことは後から知ったのだけれど。 世界中の伝承を調べて学んでいくうちに、すとんと腑に落ちたわ。 元々オリエントから発生した神々の概念が世界中に伝播した、としても。 それにしても、世界中であまりにも似たような概念の悪魔や神々が多すぎる。 これは文明のつながりを示すというよりも、むしろ人間の中には似たような考えが根底にあって、それが妖怪……悪魔や神々を作り出しているのでしょうね」

 

だから、それが良い方に作用すれば。

 

人外ハンターノゾミの側にいるダヌー神は、太陽神天照大神の光を目を細めて受け取っている。

 

荒々しいケルトの戦士達も、太陽の光が満ちているのを感じて、それで感謝しているようだ。

 

手を取り合えるのだ。

 

「それは良い事だと思う。 ただ、此処からは……」

 

「ええ、忙しくなるわね。 連続で幾つかこなさなければならない。 特に四天王寺の解放と、大天使達を元に戻すこと。 この二つは立て続けにやる必要があるわ。 確定で東のミカド国が仕掛けて来るでしょうし。 正確にはそこにいる大天使達がだけれど」

 

クリシュナが言った通り、大天使達の戦力は侮れない。

 

だから、その前にやっておくことがある。

 

クリシュナと話をつけること。

 

後ろを突かれないようにすること。

 

つまり、ガイア教団と同盟なり撃破なり、済まさなければならないということだ。

 

以前霊夢を圧倒したセトを初めとする強力な神々が背後についているガイア教団だが、それでも現時点の戦力だったら、負けるとは僕は思わない。

 

ただ、簡単に勝てるとも言えないだろう。

 

連絡が入る。

 

フジワラからだった。

 

「フリンくんか。 すぐにシェルターに来て欲しい」

 

「敵襲ですか」

 

「いや、ガイア教団のベリアルが来た。 それも、敵襲ではない形でだ」

 

「はあ」

 

ベリアルか。

 

銀座で見かけたような気がする。強力な堕天使だったはずだ。ともかく、すぐに戻る事にする。

 

素戔嗚尊を元に戻せなかったことは仕方がない。

 

今は時間がない。

 

ともかく天照大神の存在を、神田明神に迎え入れることで。この国の神々のパワーバランスが決定的に変わった。それが大きいのだ。

 

バスですぐに戻る。

 

霊夢は酒が欲しいと呟くと、無言になった。回復の魔術でも回復しきれないらしい。こればかりは仕方がないだろう。神降ろしによる驚天の技を何度も見ると、それはやむを得ないと感じてしまう。

 

ただ、僕らも力が上がってきている。

 

多数の堕天使を撃退した市ヶ谷の戦闘でも感じたのだが、立て続けに必殺の霊的国防兵器を倒したのがとても大きかったのだと分かる。

 

今なら、或いは。

 

今までは勝ち目などないと判断せざるを得なかった相手でも、どうにかなるかもしれないというのが本音である。

 

ただ、それは慢心かも知れない。

 

ともかく、技を磨かなければならなかった。

 

シェルターにつく。

 

そこでは、シェルター前で秀と向き合っている、赤い服を着た変なおじさんがいた。丸々と太っていて、鯰髭なんか生やしている。気が良さそうなおじさんだが、残念ながらあからさまに気配がおかしい。

 

秀が視線を送ってくる。

 

気を付けろ、という意味だ。

 

シェルターからフジワラが出て来て、此方を見て頭を掻く。

 

「頼まれてね。 以前此方で確保していたトキという暗殺者の子を預かったんだ。 酷い折檻を受けたらしくてね」

 

「折檻。 どうしてまた」

 

「捨て駒にされたんだよ。 元々ミイとケイはあの子を使ってアベと相討ちにさせるつもりだったらしい。 相討ちにならなくても、アベを弱らせれば御の字とね。 それが生きて帰ってきたから、気にくわなかったのだろうよ」

 

「……!」

 

イラッと来たが。この赤いおじさんに怒っても仕方がないか。

 

というか、なんとなく分かってきた。

 

この赤いおじさん、ベリアルか。

 

気付いた僕に対して、赤いおじさんはなんかウィンクしてきたので、思わず表情が凍り付く。

 

ちょっと苦手な相手かも知れない。

 

「馬鹿馬鹿しいと思ったから、こっちで引き取って貰う事にした。 後、わしらの主からの伝言も受け取っていたからね。 丁度良いからきたのさ」

 

「ともかく、それならば余計に中に入っていただけますかね。 立ち話もなんだ」

 

「いや、大戦の時に四大天使を倒した英雄の拠点に乗り込むほどわしは剛毅ではないのでね。 此処で話してしまうよ」

 

ベリアルの実力からして、今の僕らが総掛かりでどうにかという相手だが。

 

それでもこんな事を言うのは、余裕からか。

 

或いはなんの理由からか。

 

「閣下の伝言だ。 閣下は今回の件、静観だそうだ。 本来だったら閣下を倒して力を示すべしとでもいうところなのだろうが、そもそもその意味がなくなったとか」

 

「何それ。 どういうこと」

 

「恐らく、人間と融合して神を討ち取る意味を見いだせなくなったのでしょうね」

 

側に浮き上がったのはマーメイドだ。

 

マーメイドは寂しそうに笑った。

 

或いはこの子。

 

その神の半身としての人の悲劇を、色々見たのかも知れない。

 

明けの明星ルシファーの伝承は、僕も見た。

 

もしも、ルシファーがマーメイドがいったような、神が半身を得て完全体になる事の真似事をするなら。

 

選ぶ相手は。

 

多分ワルターかナナシだ。

 

そうなったら、僕はどっちかとやり合わなければならなかったのか。いずれにしても、ろくでもない話である。

 

マーメイドから聞いた話。世界のルールはマントラの理とかいうらしいが。

 

それに関してルシファーが自身での打開に興味を持てなくなったのだとすると。確かに身を引くのは、あるのかも知れなかった。

 

「ただ、それに納得がいかん連中が現在銀座に集まっている。 それらをお前等で始末してくれるか」

 

「どういうこと、仲魔でしょうに」

 

「皆が閣下の言う事を行儀良く聞いているわけではない。 魔界からはみ出してきて、血にだけ飢えているようなカスだっている。 君達に討ち取られたアドラメレクのような輩がそうだ。 あれの同類がまだまだ銀座にいて、隙さえあれば東のミカド国に乱入して大勢の人間を食い散らかそうとしているのさ。 わしには興味がない話だし、閣下もあまりそういうことはやらせたくないようでね」

 

「ようは自立の意思を見せている軍閥の処理か。 またくだらん仕事をなげてきよるわ」

 

殿がぼそりという。

 

もう正体は周知だし、周囲に聞かれて困る相手もいない。

 

意味はよく分からなかったが、汚れ仕事であるというのは分かった。

 

咳払いすると、霊夢は言う。

 

「それで、銀座にいる主要な大物は?」

 

「セトとアスラ王、それにわしの盟友であるネビロスは手を引くことに決めた。 その代わり、インド神話系の雑多な神々が集まっているな。 其奴らのまとめ役をしているのはラーヴァナだ」

 

「ということはインドラジットもいる?」

 

「今呼び出しているようだな」

 

霊夢の言葉に、ベリアルが即答。

 

厄介ねと、霊夢がぼやく。

 

バロウズが解説してくれた。

 

「羅刹王ラーヴァナ。 印度の神話に登場するランカー島の支配者で、ヴィシュヌの化身と激闘を繰り広げた文字通りの魔王よ。 その王子であり、透明化の能力を持った強力な……恐らく最強の羅刹がインドラジットことメーガナーダ。 インドラジットというのはインドラに勝利したものと言う意味の言葉で、神々の王であるインドラを倒したほどの強者よ」

 

「面白そうじゃねえか。 ここんところ大物との戦いで少しは自信が出てきたところだしな。 どれほど通じるか見せてもらうぜ」

 

「そうだな。 大天使達が相手の場合、どれほどやれるのか。 良い演習になるだろう」

 

ヨナタンも乗り気か。

 

咳払いすると、ベリアルはなおも言う。

 

「それと、リリスは残った。 ただし、リリスの後見をしていたサマエル……楽園の人間に知恵の実を与えた蛇は手を引くことにした。 閣下の忠実な下僕であるという以上に、今回の件での介入はこの機では無いと考えたのであろうな」

 

「そうなると……」

 

「東のミカド国ではリリスが色々と悪さをしたらしいな。 リリスを討ち取る好機だ。 リリス自身も、それで四文字の神を仕留められるのならと、お前達と戦うつもりのようだぞ」

 

そうか。

 

あいつは今でもやっぱり許せない。

 

あいつの理屈も何もかも。

 

ただ、あいつはあいつで筋を通していることだけは認める。今回は最終的な勝利のための捨て石を喜んでかって出たというわけだ。だからこそ、決着を付けなければならないだろう。

 

僕は乗る。

 

ただ、コレは僕だけの戦いじゃない。

 

「というわけで話は伝えた。 わしは戻る。 その子をよろしくな。 ガイア教団がこれ以上無茶をしないように、後は徹底的に躾けてやってくれ」

 

「それはあんたの仕事だったんじゃないの?」

 

「悪いがわしは中間管理職だ。 出来ない事も多いのさ」

 

霊夢の鋭い突っ込みに、ベリアルは肩をすくめて。しゅっと消えていた。

 

まあいい。

 

とりあえず話し合いだ。

 

確かに、天照大神の復活は、そう遠くない未来にガブリエルの耳に入るはずだ。

 

ただ、総攻撃をするにしても、大天使達にも準備がある。大天使達との開戦が、いつどこでになるかは分からないが。

 

それでも出来るだけ此方でコントロール出来た方が、被害も減らせるだろう。

 

またやるべき事が増えた。

 

だが、それは必要な事だ。

 

僕は頬を叩いて気合いを入れると。

 

さて、次にやるべき事はと考える。

 

それと、此処からしばらくは東のミカド国に戻るのは控えた方が良いだろう。ガブリエルがどう動くか分からない。

 

最終的にホープ隊長とは話はする。

 

ただそれも、事前に決めてある合図を用いて。

 

地下に来て貰って、話すつもりだった。

 

 

 

ベリアルは魔界に戻る。

 

魔界といっても、アティルト界の一部。

 

おかしな話で、実際には天界と地続きである。人間の精神の影響を強く受ける此処では、悪魔が神に、神が悪魔になることが珍しく無い事を示すように。

 

それだけ頻繁にあり方が変わってくる。

 

今でこそ悪趣味極まりない闇の世界である魔界だが。

 

いずれ花咲く美しい場所に変わるかも知れない。

 

それも人の心のあり方か。

 

ただ、そんな美しい心を人が持つことは、ベリアルが知る限りついぞなかった。

 

個人として、聖人と呼べるような存在は今まで存在した。

 

ベリアルも少数例だけ見た事があり。そういった存在には、如何に邪悪なベリアルでも敬意を払った。

 

だが、人間はどいつもこいつも。

 

敬意など払わなかった。

 

人間に対する敵意と不信感はベリアルの中にもある。

 

特にベリアルとネビロスが守ってきた、酷い運命に殺された女の子。アリスとともにあるようになってからは。

 

より人間への不審は強くなった。

 

まあ、それはいい。

 

今は、閣下への報告が先だ。

 

明けの明星である閣下は、城の最深部にいる。ベリアルが出向くと、途中で同じような魔界の重鎮達にあう。

 

既に方向転換は伝えられているようで、活発な議論が行われているようだった。

 

「人間共に丸投げするというのか?」

 

「いや、まずは様子見ということらしい。 閣下はどうも座についた神が独占してきた知恵の一部を得られたらしくてな」

 

「なんと……」

 

「それによると、今のままであると、座を奪ったところで意味がないらしい。 閣下がやっていた、人間と無理に合一しても至高天に入る事は出来ても、世界のあり方まで変えることは出来ないそうだ」

 

そんな事を話している。

 

困惑しているもの、混乱しているもの、様々だ。

 

「敵対者の動きが気になるが……」

 

「あれは問題ないそうだ。 恐らくだが、そもそも現時点での状況の変化には興味も見せないとか」

 

「それはそれで困るな。 全ての調停者であろうに」

 

「そうだな。 アッシャー界で敵対者とされた言葉が一人歩きした結果ではあるのだが……」

 

玉座の前に。

 

ベリアルが跪いた先には、ヒカルという女子学生の姿を取ったままの閣下が、椅子に行儀良く座っていた。

 

実はこの姿を解除すると、やはり他の悪魔と同じように、形が崩れてしまう。

 

それくらい現状では、人が減り。

 

悪のカリスマである閣下ですら、その偉大な姿を維持できない状態になってしまっている。

 

更に其処から人間と無理に合一なんてしようものなら。

 

或いは禿げた威厳のない大男とか。そういうとてもお労しい姿になってしまったかも知れない。

 

一通り報告をする。

 

閣下は頷くと、側にいた悪魔。堕天使ルキフグス。魔界の宰相とされる存在が、声を上げていた。

 

髭を蓄えた立派な老人の姿をしている悪魔だ。

 

魔界では穏健派で、マッカの管理をしているとても重要な地位にある。

 

「閣下、動揺が広がっております。 ラーヴァナ親子が先走るだけではこのままでは済むかどうか……」

 

「今回は、人間達の力を見る為の試しだと皆に告げておけ」

 

「試しでありますか」

 

「そうだ。 ラーヴァナと奴に同調した悪魔、それにリリス。 これら程度も斃せないような戦力では、どのみち大天使どもには勝てん。 大天使どもにはあのメタトロンも控えておろうしな」

 

「……」

 

メタトロン。

 

最強の天使と言われる存在にて、天界の掃除屋筆頭。

 

その残虐性から、サタンの天界における姿などとも言われ、四文字たる神が低次に身を置いたときの形などと言われることもある天使の中の天使。

 

その実力は閣下が信頼するベルゼバブを超えており、特に信仰心をほぼ天使共が独占している今は。閣下に並ぶかそれ以上だろう。

 

奴だけでも最悪だが。それを超える最悪だったのは、四大天使が揃った時。

 

いや、それはまだ可能性としてありうるか。

 

四大天使がもしも揃った場合、その力全てを集約し。神の力そのもの。神の戦車として知られるメルカバーと化身した可能性もあり。

 

その時は閣下ですら勝ち目はなかった。

 

「だが、もしもラーヴァナを自力で倒し、四天王寺で封印された竜脈を解放し、日本神話系の神々が加護を与えたのであれば。 ……もう一押し欲しいが、あの四文字の神に届くかもしれぬ」

 

「閣下は人間を愛しておいでですな」

 

「私が愛しているのはその可能性だ。 それに……神に好きなようにされたという点では、私が姿を借りる事を契約した人間達も同じ事であるからな」

 

ルキフグスが一礼すると、皆に話をしに行く。

 

ベリアルも退出しようとしたが、呼び止められた。

 

「クリシュナめが過激な手をとる可能性がある。 例えば無理な合一を計るとかな」

 

「は。 排除しますか」

 

「いや、今は監視に留めよ」

 

「御意……」

 

さて、此処からだ。

 

ベリアルにとっても面白い状況の到来。元々ベリアルも戦いは嫌いではない。それにあの四文字の神をたたき落とせるなら。それは、素晴らしい戦いになる筈なのだから。








「神の知恵」を思わぬ形で手に入れた閣下は、完全に原作と戦略を転換します。

長い間四文字の神の使徒とやり合ってきた閣下は、相応に頭が回るし柔軟です。

その結果、色々な事が変わってきます。

目的が同じであれば、無駄な戦いをしなくても済む。そういうものなのです。



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