もう一人の東京守護者   作:dwwyakata@2024

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明けの明星が戦略を変えたのと同時に、クリシュナ達多神連合も戦略を転換。

東京で再び起きかねなかった修羅場が起きなくなります。

それだけではありません。

悪魔のなかの不満分子を集めて処分する動きが始まります。

それは東京の統一……東のミカド国を壟断する大天使との戦いの為に、必要な事でした。





1、思惑工作

東京駅は既に無人になっていた。これはガイア教団の方から、これから戦場になると手を回したらしい。

 

なんだかんだでガイア教団の方が心地が良い人間はいる。

 

そういう人間にまで、人外ハンターの庇護にはいるように強制するつもりはフジワラにはないようだ。

 

僕もそれは同じである。

 

ガイア教団は、あり方を改めなければならないだろう。とくに役立たずと見なした人間を殺すようなやり方は、絶対に続けさせてはならない。

 

だが、ガイア教団の基本的な思想。

 

力を貴ぶという事そのものは、それはそれでありだと思う。

 

過剰すぎるその思想は、結局無意味な世界を作り出してしまうだろうが。それでも、そういうコミュニティがあっても良い筈だ。

 

だから、ガイア教団を潰すつもりはフジワラにはないし。

 

僕もガイア教団のガンになっている様な連中。

 

例えばあの双子の老婆とか。

 

そういうのを排除すれば、同調は出来ると考えていた。

 

それに、リリスとも決着を付けなければならない。

 

前衛に立つ僕らと秀。

 

霊夢は疲れも溜まっているようだし、後衛に控えて貰っている。殿も少し前衛から後ろ。

 

他にマーメイドも前衛にいる。

 

これが総力戦だ。

 

かなりの数の悪魔が東京駅に群れている。

 

いずれもが、敵意を剥き出しにしてきいきいと声を上げていた。

 

皆、既に悪魔を展開済み。

 

だが、見た感じ、必殺の霊的国防兵器を連れてくるほどでもない。勿論侮れる相手ではないが。

 

勝てると、僕は判断していた。

 

ずんずんと歩いて行く僕。東京駅に布陣していた悪魔は威嚇の声をあげていたが。僕がムスペルを連れていて。

 

ムスペルが吠え猛るのを見ると、明らかに怯む。

 

それが。戦い開始の合図となった。

 

ワルターが従えている荒くれの悪魔達が、一斉に襲いかかる。特に先頭に立つギリメカラは、凄まじい勢いで突進していく。

 

象の悪魔は凄いな。

 

そう思いながら、僕は歩きつつ、近寄ってくる悪魔をオテギネで貫き、払い、叩き潰し。首を刎ね飛ばす。

 

敵陣を切り裂いていくと、上空にわっと悪魔の群れが出現するが。それはヨナタンの天使部隊が対応する。

 

市ヶ谷は必殺の霊的国防兵器達が。

 

シェルターはフジワラが守ってくれている。

 

怖れる事など、何も無い。

 

なお、流石に悪いと思ったので、カガはシェルターの守りに残って貰った。

 

東京の勢力をまとめるための戦いだ。

 

東のミカド国を壟断する大天使という共通の敵がいるとはいえ、ガイア教団には主導権を握れず不快感を示す悪魔もいるというのなら。

 

ガイア教団の者が納得するやり方で。

 

それを黙らせるだけである。

 

激しい乱戦の中、伝令に来たのはアサヒだ。

 

アサヒも既にこう言う仕事ができるようになってきている。

 

「フリンさん! 銀座まで飛ばしていた伝令の悪魔からの伝言です! 銀座の人達も避難して、一旦距離をとっていて、戦闘で巻き込む恐れなし! 存分に暴れてくれって!」

 

「結構! アサヒ、少し下がって。 しばらく乱戦が続くから、庇いきれないかもしれない!」

 

「はい!」

 

前衛で頑張っている人外ハンターには、鹿目と野田がいる。

 

野田は凄い悪魔を連れていると聞いていたが。フィンマックールというその騎士らしい人物は、苛烈な剣捌きで暴れまくっていた。

 

この騎士もケルトの関係者らしい。

 

ケルトの名のある戦士は、彼方此方にいるというか。

 

そもそもそれだけ荒々しい戦士を輩出するくらい、苛烈な戦闘が行われていた土地なのだろう。

 

躍りかかってきた大蛇を。上空に出て、一気に頭を唐竹に叩き割る。

 

それでももがく大蛇にムスペルが組み付き、一気に焼き払い、蒸発させてしまった。凄い熱量だ。

 

ムスペルが吠え猛ると、それだけで前にいる悪魔がさがる。

 

逃げようとした悪魔を斬り伏せたのは、好戦的な羅刹の群れだった。

 

「雑魚はただ進め! さがることはゆるさ……」

 

言い切ることはできなかった。

 

マーメイドが叩き付けた冷気魔術が、羅刹の群れをまとめて氷の像に変えたのだ。そして一瞬後には、ギリメカラが踏み砕いてしまった。

 

マーメイドが悲しそうにしている。

 

ああいう弱者を踏みにじって偉そうにしている奴が一番嫌いらしい。

 

それは何となく分かる。

 

秀が、城を呼び出す。

 

城そのものが悪魔になっている長壁姫という存在らしい。

 

それが触手を振るって、悪魔を薙ぎ払い始めると。雑魚はもうどうにもならなくなって、逃げ始める。

 

「緒戦は順調だな」

 

人外ハンター達はそんな事を言っているが。

 

僕はそう上手く行くとは思えない。

 

霊夢が強いと断言していたセトなどの悪魔が引き払ったという話だが、それでも前にガイア教団の聖堂に出向いたとき、ヤバイ気配が幾らでもあった。

 

続いて夜叉の群れが出てくる。

 

夜叉の群れも戦意が高く、倒されても倒されても前に出てくる。

 

イザボーの魔術が次々に炸裂して焼き払うが、それでも引くことをしない。徐々に此方も被害が増え始める。

 

「負傷者はすぐにさがれ!」

 

「交代だ! 俺が前に出る!」

 

前に出てきたのはナナシだ。そして、前衛に多数の鬼達を召喚して暴れさせる。その鬼達は、普通のものではなく、どれも転化していた。

 

なんでもあの鬼は仏教の獄卒であるらしく、本来はそれほど邪悪な存在ではない、という事実があるらしい。

 

まあ地獄の獄卒だし、亡者に舐められたら話にならないのだから。恐ろしい姿なのは当然ということだ。

 

そして地獄によって鬼の姿は違い。

 

時々霊夢が口にする最下層の地獄である阿鼻地獄には、世にも恐ろしい姿の鬼も存在するそうだ。

 

多分ナナシが呼び出したのは、そういう鬼達。

 

それらが、羅刹や夜叉と互角以上に戦い、戦線を立て直す。

 

ナナシはデザートイーグルというでっかい銃と大剣を手に。アクロバティックに飛び回りながら最前衛でトリッキーに戦っている。

 

もういっぱしの戦士だな。

 

そう舌なめずりしながら、僕もまた前衛で暴れ回る。

 

しばしして、東京駅の前面から悪魔の掃討は完了。

 

そして、後方に負傷者を下げる手伝いをしていたスプリガンが告げてくる。

 

「フリンさん、僕転化出来ると思う!」

 

「よし、お願い!」

 

光に包まれるスプリガン。

 

やがて、財宝を守る妖精は。

 

少し太めの体型の、棍棒を持った男性の神格に変貌していた。

 

バロウズが解説してくれる。

 

「財宝神クベーラね。 財宝を守る神格で、毘沙門天の元となった神よ」

 

「凄い力を感じる。 フリンさん、僕をずっと使ってくれてありがとう。 きっと役に立てる!」

 

「よろしく!」

 

さて、次だ。

 

負傷者の手当てを進め、補給を入れつつ、斥候を出す。

 

東京駅の内部には悪魔がすし詰め、ということもないようである。むしろ、銀座で迎え撃つつもりのようだ。

 

殿が前衛に来る。

 

それで、耳打ちされた。

 

まあ一般の人外ハンターには、まだ正体は明かしていないし、仕方がない。

 

「銀座での戦闘を奴らは避けるだろう。 銀座は富の集積地で、奴らにとっては力の象徴でもある。 何より将門公が眠っていて、下手に刺激をするのは避けたいのだろうな」

 

「そうなると、あの聖堂が」

 

「うむ。 もう一会戦あるだろう。 しかも今度はラーヴァナとインドラジットが出てくるだろうな。 インドラジットは透明化しての奇襲を得意としているそうだ。 毒による攻撃もな。 気を付けろ」

 

一度足を止めて、補給を入れる。

 

かなりの負傷者を出したが、それでも被害はそれほど多くは無いだろう。ただ、人材は今失う訳にはいかない。

 

ベリアルはああ言っていたが。

 

あの双子老婆は、それこそ人質作戦とかを平気で採るかも知れない。

 

とにかく今は、人死にをこれ以上無駄に出してはいけない。出来れば大将同士の一騎打ちで決められたら話は早いのだが。

 

態勢を整えてから、ヨナタンの天使部隊を先頭に、東京駅に入る。

 

連絡通路を抜けて、銀座の街に。

 

既に奇襲を警戒しているが、奇襲の様子はない。後方に対する奇襲が行われる様子もない。

 

恐らくだが、インドラジットは、堂々とやりあって勝てると考えているのだろう。

 

インドラジットの逸話は聞いたが、神々の王インドラを打ち破っただけではなく、ビシュヌの化身の一つラーマ率いる猿と呼ばれる種族の軍と戦い、一度の会戦で数十億を戦死させたという。

 

とんでも無い数字だが、それだけ強いということだ。

 

インド神話はこういう無体な数字が出てくると言う事だが。

 

それだけ圧倒的に強いと言う事の示唆でもあり。

 

侮る訳にもいかない。

 

銀座の街を抜けると、聖堂の前にいかにも強そうな悪魔の一団が布陣している。どうやらここからが本番だ。

 

多数の腕に武器を持ち、堂々と待ち受けているのが、あれがラーヴァナだろう。いかにも戦争が好きそうな、好戦的な顔をしている。

 

一般のハンター達には戻って貰ってある。

 

まず僕から名乗る。

 

「サムライ衆のフリン、見参! 羅刹王ラーヴァナ、一対一の勝負を所望する!」

 

「ほう、このわしを相手に一対一だと! しかし笑う事もできないな。 その力、わしと戦った神々に勝るとも劣らぬとみた! 中々に心が躍る戦いよ! 貴様等、手出しは不要ぞ!」

 

「ははっ!」

 

「インドラジットってのはいるか? 俺たち三人と、と……この銀髪の子が相手になってやる。 この子はとんでもなく強いぞ。 どうだ、怖くて出てこられないか!」

 

ワルターが啖呵を切ると。

 

すっと、側に巨大な気配が湧いて出る。

 

多数の首に腕。

 

恐らく此奴がインドラジットだろう。

 

ラーヴァナより一回り気配が大きい。しかも、姿を見せるまで、気配を感じ取れなかった。

 

本当に透明化しているんだと思って、戦慄する。

 

こいつは、必殺の霊的国防兵器と互角の相手と見て良いだろう。

 

「よういった人間。 あの猿ども……ヴァナラの軍勢を蹴散らした私が相手になってやろう。 くれぐれも簡単に死ぬなよ」

 

「こっちの台詞だぜ」

 

ワルターが前に出る。

 

そして、秀とマーメイドも、前に出ていた。

 

「他全ては私達二人で相手になってやる。 幾らでも懸かってこい」

 

「どうやら人間と混じっているようだが、たかが二体で我等ランカーの羅刹を相手にするだと! ふっふふふ……舐めてくれたものだな!」

 

バカな連中だな。

 

さっきまで戦っていた雑魚共よりは強いようだが、それでも秀とマーメイドの力は、此奴らよりも明らかに上だ。

 

さて、僕はこれで安心して背中を預けられる。

 

オテギネを構える僕の前に、堂々と降りてくるラーヴァナ。僕は仲魔達には、手出し不要と伝える。

 

此奴程度に勝てないなら。

 

リリスなんか、倒せる訳がない。

 

あの渡されたロザリオについても念の為に持って来てはある。

 

だがそれ以前に、まずは東京をまとめるためにも。

 

此奴は倒さなければならないのだ。

 

「行くよ」

 

「来い! この羅刹王ラーヴァナ、二度も人間に負ける事はない!」

 

地面を蹴る。ラーヴァナは驚くほど機敏に動きながら、僕の初撃を、複数の腕で交差させた武器で防ぐ。

 

地面を踏みしめながら、突きを立て続けに入れるが、火花が次々散り、弾き返される。逆に空いている腕で、ラーヴァナは立て続けに剣を槍を叩き込んでくる。それらを全て紙一重でかわしつつ。僕は丁寧に反撃を入れていく。

 

「面白し! わしと真正面から槍一本で渡り合うか!」

 

「……」

 

さがりつつ、丁寧に相手の動きを捌く。

 

そして、飛び退く。

 

足下から何かが伸びてきて、一瞬遅れていたら足首を掴まれていた。

 

周囲から気配。

 

飛び退いたのは、勘が磨かれているからだ。此奴、最初から何か仕込んでいたな。僕がじっと見据えると、ラーヴァナは笑う。

 

「わしはほぼ不死身の肉体を持っていてな! お前達が仕掛けて来る事は想定済だった故、仕掛けをしておいたわ! この辺りはわしの血を撒いてある! つまりわしの掌の上で戦っているのと同じだ!」

 

「そ。 つまらん戦い方をするんだね、魔王と言う割りに」

 

声が冷える。

 

勿論仲魔を集めるつもりもない。こんな小細工に頼り、そして僕相手に真正面からの交戦を放棄した。

 

この時点で、こいつの実力はもう見極めた。

 

明らかに興味を失った僕を見て、ラーヴァナが不愉快そうに顔をしかめると、わめき立てる。

 

同時に周囲全域の土から黒い何かが噴き上がって、全方位から掴み掛かってくる。

 

くだらない技だな。

 

僕はそれをラーヴァナが出してきた瞬間に動いていた。加速。加速加速。更に加速。支援魔術を掛けながら、更に速く。

 

ラーヴァナの操作がまるで追いついていない。

 

慌てた様子で、僕の一撃を受けるラーヴァナだけれども、ガツンと弾き飛ばされたのは今度はランカー島の羅刹王。

 

最初に腕一本で僕の攻撃をしのげていない時点で、こいつの剣腕と腕力は理解した。僕も最初は様子見。

 

そしてこんな小手先のくだらん技に力を更に削いでいる。

 

それは、体の操作が疎かになる事を意味している。

 

瞬く間に腕を二本叩き落とし、更に蹴りを叩き込む。吹っ飛んだラーヴァナが辺りの地面に働きかけようとするが、その時には間合いに入り、頭を叩き落とす。だが、即座に頭が生えてくる。

 

殆ど不死身と言う訳か。

 

そう。

 

だったら、粉々になるまで砕いてやる。

 

というか、何とか僕と距離を取ろうとしている時点で、近接戦で勝ち目がないと判断したのは目に見えている。

 

そのまま足を踏むと、股下から正中線を抉り切り上げる。ぎゃっと悲鳴を上げたラーヴァナを見て、羅刹や夜叉達が明らかに動揺していた。

 

「ラーヴァナ様が押されている!」

 

「くそっ! 手助けに……」

 

そうほざいていた連中が、次々に秀に斬り捨てられている。まさに風のように。

 

更にマーメイドの冷気魔術が辺りをまとめて凍り付かせる。とてもではないが、支援どころではない。

 

僕はラーヴァナを逃がさない。無表情で迫ってくる僕を見て、明らかにラーヴァナが恐怖に顔を歪める。

 

日本武尊との戦いの後だったから、楽に思えるのもあるのだろうが。

 

そのまま、全身にあらゆる槍技を叩き込んでいく。腕も足も、頭も。再生する端から斬り飛ばす。

 

大きく息を吐く。

 

手足を失って再生しようと必死にもがくラーヴァナの、核を見極める。

 

このまま体力を削りきっても斃せそうだ。

 

神話的にどんな逸話があっても、所詮はマグネタイトで実体化しているのだ。どれだけ強力な再生力があっても限界がある。

 

神話は所詮神話。

 

実際に四文字の神だって、唯一絶対でも、全知全能でも、なんでもないのだから。

 

だが、僕は此奴に完勝したい。

 

完勝することで。

 

「強い者」に夢を見ているバカな連中の、目を覚まさせたいのだ。

 

「お、おのれええっ!」

 

ラーヴァナが破れかぶれに全身を無理矢理復元させ、辺りを滅茶苦茶に薙ぎ払う。だが、その剣筋ははっきり言って稚拙。

 

パワーはあるが、それだけだ。

 

全て冷静に見切りつつ、次の瞬間には腕を全て叩き落とし、口から炎を吐こうとしたラーヴァナの頭上に出ると、頭全てを刎ね飛ばした。

 

それでも再生しようとするラーヴァナだが、着地と同時に、既に見切った核を背後から貫く。

 

ラーヴァナは胸の真ん中に大穴を開けられ。

 

そのまま、前のめりに倒れていた。

 

マグネタイトになって消えていく。

 

「手応えがないな……」

 

「お、おい! ラーヴァナ様が!」

 

「おのれえっ! 人間ふぜ……」

 

わめき散らした太めの羅刹が、後ろから秀に胴斬りにされる。

 

さてインドラジットは。

 

あっちもヨナタンとワルターの連携で動きを止められ、天使部隊の体を張った一糸乱れぬ攻撃で透明化も意味を為さず、完璧なタイミングでイザボーが大火力魔術を叩きこんでいることで、徐々に抑え込まれている。

 

更に殿が以前アベを倒した大技……銀髪の子の方か。巨大な異形を一瞬だけ出現させ、空間を抉り取る大技を叩き込んだ事で、インドラジットもまた体の半分を抉り取られ。其処にワルターが大剣で大上段からの一撃を叩き込み。更にはヨナタンのグラムが胸を貫いていた。

 

「インドラに勝利した私が! に、人間に……!」

 

「インドラジット様!」

 

「ぎゃあああっ!」

 

マーメイドの冷気魔術が、残った羅刹達を一網打尽に氷漬けにして、更には粉砕してしまう。

 

それを見て、戦意を無くしたらしい羅刹達が、ひっと声を上げると。武器を捨てて、降参していた。

 

遠めにそれを見ているガイア教徒達。

 

彼等は思い知った筈だ。

 

強いと言う事を理由に、好き勝手していた悪魔達が。

 

子供や老人を食い散らかして、それでガイア教徒達もそれが正しい摂理だと認めていた悪魔達が。

 

人間に圧倒され。

 

蹂躙されて滅び。

 

挙げ句の果てに、降参に走る有様を。

 

ワルターが無言で、並べと一喝。それから、ワルターとイザボーがそれぞれ契約して手持ちに変えていく。

 

後で人外ハンターに譲ってしまうつもりだろう。

 

マグネタイトになって消えてから、ラーヴァナとインドラジットのデータを得られたとバロウズが告げてくる。

 

いずれ悪魔合体で呼び出せるらしい。

 

さて、次だ。

 

殿が咳払いする。

 

勿論銀髪の子がやったので、とてもかわいい咳払いになっていたが。

 

「次はリリスだね。 ガイア教団の聖堂を陥落させて、このばかげた集団を屈服させるよ」

 

「そうだね。 力を貴ぶという思想は、東京の現在の状況から考えると、あってもいいのだろう。 だけれど、最低でもそれは自分だけにするべきだ。 子供や老人など、他者にまでそれを強要した挙げ句、悪魔の餌にするなんて論外にも程がある」

 

「俺はどっちかというと此処は居心地が良さそうなんだが、それでも確かに他人にそのあり方を強要するのはなしだな。 その点ではヨナタンと考えが一致するぜ」

 

「……それに、あの身勝手なリリスには、出来るだけしっかり決着を付けておきたいですものね」

 

イザボーもリリスの事は嫌いらしい。

 

秀が刀を鞘に収めながら言う。

 

「それは良いが気を付けろ。 大多数はいなくなったようだが、それでも聖堂の奧には強い気配がある」

 

「ええ。 今倒したインドラジット達と同格の存在のようだわ」

 

マーメイドも警告してくる。

 

ちょっと手強そうだ。

 

そして、僕は今の戦いで、背後を守ってくれていた仲魔達を見る。

 

その一人。

 

ラハムが、頷いていた。

 

僕とともに常に最前線で戦い続けて来たラハムが。ついに転化の時が来たようだった。

 

そうか、いよいよか。

 

ラハムが転化するとしたら、その存在は一つしか無い。

 

もしも今後、凄まじい力の神々を相手にしていくとしたら。その存在は絶対に必要不可欠だ。

 

霊夢にばかり大きな負担を掛けていたが、それも終わりに出来る可能性がある。

 

東のミカド国と事を構える前に、準備は僕も終わらせなければならない。

 

或いはだけれども。

 

明けの明星は、僕らのために不満分子をエサ代わりに用意してくれたのかも知れない。

 

そのエサを食い破れないなら僕らは其処まで。明けの明星が思うとおりに、好き勝手に東京や人間を利用して世界を滅茶苦茶にする。

 

だけれども、僕らが想定以上の活躍を見せるなら。

 

まあ、あくまで想像だが。

 

「バロウズ、聖堂内部のマッピングは大丈夫?」

 

「以前来た時に記録をしているわ」

 

「それは心強いな。 私はフリンの側につく」

 

秀が僕に。

 

ヨナタンの側に殿が。イザボーの側にマーメイドがつくようだ。

 

まあそれで大丈夫だろう。皆ガントレットを持っていて、それぞれでバロウズが情報を共有しているのだから。

 

聖堂に足を踏み入れる。内部はしんとしていて、迎撃の悪魔もいなかった。

 

ガイア教徒達もさっきまでは此処で見ていたようだが、何処かに離れたらしい。

 

あの妖怪みたいな双子の老婆の気配も、見当たらなかった。








※ラーヴァナとインドラジットについて

メガテンではかなりの頻度で出てくる羅刹の親子ですね。特にインドラジットはメガテンのスピンオフであるアバタールチューナー2で破壊的な強さでの活躍を見せたので(あれは厳密には元々のインドラジットではないでしょうが)、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。ちなみに作中で説明しているとおり、インドラジットとは後から貰った名前で、本名はメーガナーダです。

メガテンではインド神話系の神々が優遇される傾向があり、シヴァがだいたいの場合最強の神格だったりするので、当然インド神話の神々を苦しめた魔族達も強力です。

ただ今回は、強いが故に……あんな強力な奴でもやられるのだからと。強硬派の悪魔達を諦めさせる試金石として利用された形になります。

長く争っていた東京をまとめるには、必要な事だったのです。







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