桃桜の魔王   作:グレンリアスター

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桃桜の魔王

 空は曇り、激しい雨が降る中、とある大きな競馬場でG1レースが行われていた。

 そのレースでは今日のために努力してきた多くのウマ娘達が全力で走る。

 必死な表情でゴールを目指すウマ娘達。

 誰もが勝利を望む。

 

 しかし、そんな彼女達の後ろから……一人のウマ娘が一気に追い抜く。

 

 そのウマ娘は桃色の髪を伸ばしており、瞳には桜の花が宿っている。

 彼女の身体を覆うのは、黒と桃色のドレス。

 ドレスの上には桃色のラインが走った漆黒のロングコートを羽織っていた。

 ロングコートの背中部分には、ウマ娘の顔と桜の花びらの紋様が施されている。

 そして頭には、桃色の宝石が埋め込まれた黒い王冠が乗っていた。

 

 その姿はまるで……魔王。

 

 桃髪の魔王に追い抜かれたウマ娘達は、絶望の表情を浮かべ、速度を落としていく。

 圧倒的な速さで走る魔王は、1着でゴールする。

 だが大勢の観客達は歓声を上げない。

 誰もが言葉を失っていた。

 

「……」

 

 1着でゴールした桃髪のウマ娘は、喜びの表情を浮かべない。

 笑いはしない。

 ただ彼女は……地面に座り込んでいるウマ娘達を見下ろした。

 

「ハッ……ハッ…」

「い、いや……」

「なによ……これ……」

 

 多くのウマ娘達は顔を歪め、カタカタと身体を震わせる。

 彼女達は恐怖を覚えた。

 

 桃髪のウマ娘―――『桃桜(ももざくら)の魔王』に。

 

<><><><>

 

 午後九時十分。

 ようやく家に帰ってきた俺―――水矢一(みずやいち)は、ベットに座り込む。

 

「はぁ~……疲れた~」

 

 俺はハァ~とため息を吐いた。

 今日は残業で帰るのが遅くなってしまったよ。

 まったく、あのクソ上司……帰ろうとした時に仕事を押し付けやがって。

 

「今日はゲームして寝るか」

 

 俺はポケットからスマホを取り出し、アプリを開く。

 

「あ~……やっぱりウマ娘はいいな~。癒される~」

 

 今、俺がやっているのは大人気ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』。

 美少女となった競走馬たちを自分の手で育成し、レースに走らせる育成シュミレーションゲーム。

 アニメ化や漫画化、映画化するほど人気で、多くの人を魅了させた。

 俺もそんなゲームの虜になった一人である。

 課金もめちゃくちゃするぐらい好き。

 もうお小遣いのほとんどはウマ娘で使っている。

 

「やっぱり……この子が一番いいよな~」

 

 俺はスマホ画面に映る一人のウマ娘を見つめた。

 そのウマ娘は桃色の髪を伸ばし、桃色の瞳を両目に宿している。

 頭には赤い鉢巻きを巻いており、体操服を着ていた。

 

「ハルウララ……最高に可愛いな~」

 

 そう。俺の推しは桃髪美少女であるハルウララだった。

 

 ハルウララ。才能はないが、決してくじけないウマ娘。

 レースで負けても、最後には元気な笑顔で観客達に手を振る最高のウマ娘。

 彼女にはいつも元気をもらっている。

 ハルウララのおかげで残業ばかりの仕事も頑張れていた。

 

「はぁ~……ハルウララに直接会いたい!」

 

 今の言葉に偽りはない!

 俺は一人のフォンとして、ウマ娘のハルウララに会いたい!

 いや……ハルウララになりたい!!

 ハルウララになって、美人トレーナーと共にレースを頑張ってみたい!!

 

「なりたい!!ハルウララに!!俺はなりたい!!!」

 

 俺が己の願望を叫んだ時、突然床が大きく揺れ始めた。

 

「じ、地震!?」

 

 俺が驚いていたその時、天井が崩壊。

 瓦礫が頭に直撃した直後、俺の意識は黒く染まった。

 

<><><><>

 

「ん……?」

 

 目を覚ますと、俺の瞳に知らない天井が映った。

 

「ここ……は……?イテッ」

 

 ゆっくりと起き上がった俺は、痛みを感じた頭に手を当てる。

 あれ?なんか声が高くない?

 というか……なにこのベット?

 俺……こんなベットで寝てたっけ?

 

「ウララさん。ようやく目を覚ましたの?」

 

 隣から声が聞こえた。

 しかも聞いたことがある少女の声。

 

「嘘……」

 

 俺は自分の目を疑った。

 だって……俺の目に映っているのは、一人の……ウマ娘。

 ウェーブのかかった鹿毛のセミロングヘアー。

 馬のような両耳を覆う青色のカバー。

 右耳の直下には緑色のリボンとサイドテールが揺れている。

 そして瞳は赤みを帯びたブラウン。

 

「キングヘイロー?」

 

 そう。俺の目の前にいるのは、一流のウマ娘になろうとしているウマ娘―――キングヘイローがいた。

 

「そうよ?なに……どうしたの?というか呼び捨て?いつもみたいにキングちゃんって呼ばないの?」

 

 首を傾げるキングヘイロー。

 待って。マジで待って。

 なんでウマ娘が目の前にいるの?

 

「えっと……なんで君がここにいるの……ですか?」

「喋り方が変よ。ウララさん。というかなにを言っているの?ここは私たちの部屋で、私たちはルームメイトでしょ?」

「ルームメイト?俺と……君が?」

 

 待って。

 確かキングヘイローのルームメイトって確か!

 

「キ、キングヘイロー!」

「また呼び捨て?」

「じゃなかった。キングちゃん!鏡ある?」

「鏡ならそこにあるわよ」

 

 キングヘイローは壁に立て掛けてある姿見鏡に指を指す。

 俺はすぐにベットから降りて、姿見鏡の前に立った。

 そして……俺は目を大きく見開く。

 

「マジ…で……?」

 

 鏡に映るのは、一人のウマ娘。

 桃色の髪に、桜の紋様が宿った桃色の瞳。

 可愛らしい顔立ちに低身長。

 間違いない。

 見間違えるはずがない。

 

「ハルウララ……?」

 

 鏡に映っているのは、俺の推しキャラであるハルウララだった。

 そして鏡に映っているのがハルウララだってことは……。

 

「俺が……ハルウララになってる!?」

 




 読んでくれてありがとうございます。
 これは読者の皆様に感謝を込めて作った作品です。
 読者になにが読みたいですか?と聞いたところ、が『ウマ娘のガールズラブ系が見たい』だったので、書かせてもらいました。
 少しでも読者の皆様に楽しんでもらえたら嬉しいです。
 よかったら感想をください。
 そして『魔剣のカンネ』もよろしくお願いします。
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