桃桜の魔王   作:グレンリアスター

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重賞レース

 重賞レースで走るために、わたしはトレーニングを頑張った。

 筋トレ、走り込み、勉強。

 あらゆることをして数週間……ついにGⅢレースが始まった。

 控室の更衣室でわたしは勝負服に着替える。

 

「ついにこの服が着れた」

 

 鏡に映るのは頭に赤い鉢巻きをして、ピンクの体操服を着たわたしの姿。

 ゲームに登場するハルウララと同じ格好。

 前世で好きだったハルウララそのもの。

 

「えへへ~」

 

 だめだ。

 ついつい顔がにやけちゃう。

 でもしょうがないよね。

 だって前世の推しキャラを見ちゃったら、嬉しすぎて笑っちゃうよ。

 

「トレーナ!トレーナ!どうかな?」

 

 更衣室を出たわたしは、自分の勝負服姿を白雪トレーナーに見せる。

 

「う、うん。すごく可愛いよ」

「えへへ~すっごい嬉しいよ~。ウララ~」

 

 好きな人にそんなこと言われたら、死んじゃいそうなぐらい嬉しい。

 

「ウララさん。……レース、頑張ってきてね」

「うん!最高に楽しいレースをしてくるよ!」

 

<><><><>

 

 控室を出た後、わたしはレース場にやってきた。

 観客席から大きな歓声が響き渡る。

 すごい……観客が多い。

 

「よし、頑張ろう!」

 

 ゲートの中に入ったわたしはスタートが始まるまで、深呼吸した。

 他のウマ娘達は緊張した様子でスタートを待つ。

 だけどわたしは気にしない。

 

 落ち着て、わたし。

 どんな時も……どんなレースでも、勝つことより、楽しいレースをすることが大切。

 勝っても負けても最後には笑う。

 それが……ハルウララだから。

 

「いっぱい……楽しもう!」

 

 そして……ゲートが開き、レースがスタート。

 わたしを含めて、多くのウマ娘達が走り出した。

 多くのウマ娘達がわたしの前を走る。

 だけどわたしは焦らない。

 焦らず、レースを楽しむことを考える。

 

「アハハ……楽しい!」

 

 やっぱり楽しくて、気持ちいよ。

 レース場で走るのは。

 そんなことを考えていると、もう最終レース。

 

「行っくよ~!」

 

 わたしはここで全力を出す。

 何人ものウマ娘達を追い抜く。

 だけど前にいるウマ娘三人を追い抜くことができない。

 

「くっ、速い!」

 

 やがて前にいる三人のウマ娘はゴール。

 その後にわたしもゴール。

 今日は4着だった。

 でも……やっぱり楽しかったな。

 

「アハハハ!」

 

 わたしは笑顔を浮かべて、手を振るう。

 すると観客席からわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「今日も可愛かったよ~!ハルウララ!」

「いい走りだったよ、ウララちゃん!」

「次は勝てるぞ、ハルウララ!」

 

 観客の中にはわたしの走りを見に来てくれた人もいる。

 それがたまらなく嬉しい。

 

「そうだ!トレーナーは?」

 

 わたしは観客席にいると思われる白雪トレーナーを探した。

 探して、見つける。

 

「あ、トレー……」

 

 白雪トレーナーに手を振ろうとした時、わたしは胸が痛くなるのを感じた。

 痛くなったのはなぜか?

 それは……白雪トレーナーの顔を見たからだ。

 

「トレー…ナー……?」

 

 白雪トレーナーは暗い表情を浮かべていた。

 なぜそんな顔をするのか、分からない。

 なんで暗い顔をするの?

 なんで笑ってくれないの?

 なんでそんな悲しそうなの?

 分からない。分からない。分からない。

 

「……」

 

 さきほどまで楽しいと思っていた気持ちは、一瞬で消え去る。

 胸に残るのは、痛みだけだった。

 




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