桃桜の魔王   作:グレンリアスター

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後悔

GⅢレースを終えたわたしは白雪トレーナーとトレセン学園に帰ってきた。

 帰ってくる途中、白雪トレーナーはいつも通りわたしと楽しく話をしていたけど……レースの時に浮かべた彼女の暗い表情が忘れられない。

 トレーナー室に到着した後、白雪トレーナーは背伸びをする。

 

「今日はウララさん疲れたと思うし、もう帰っていいよ」

「え?反省会はしないの?いつもはするのに」

「それは明日でいいよ」

「そう……わかった」

 

 わたしは「じゃあね」と言って、トレーナー室を出て、扉を閉めた。

 そして気配を消して、扉に耳を当てる。

 どうしても白雪トレーナーの暗い表情が忘れられなかった。

 いったいどうしてあんな顔を、

 

「う…うぅ……」

 

 扉の奥から白雪トレーナーの泣き声が聞こえた。

 もしかして……泣いてるの?

 

「ごめんなさい、ウララさん。あなたを……勝たせることができなくて」

 

 その言葉を聞いたわたしは、頭をハンマーで殴られたかのような衝撃が襲った。

 同時にどうしようもないぐらい胸が痛くなる。

 

 そっか……そういうことか。

 白雪トレーナーは色々なトレーニングメニューを考えてくれた。

 わたしを勝たせるために。

 わたしの……ために。

 なのにわたしは……本当のハルウララのようになることばかり考えていた。

 負けてもいい、勝たなくてもいい。

 ただ楽しく走れればそれでいい。

 自分のことしか……考えていなかった。

 その結果、

 

 

 大好きな人を悲しませ、泣かせた。

 

「くっ!」

 

 わたしはその場から立ち去った。

 空は曇り、やがて冷たい雨が降る。

 雨が降る中、わたしは走り続けた。

 胸が苦しくても、涙が流れても、ただ……走り続ける。

 

「わっ!」

 

 石に躓いたわたしは、水たまりの上に倒れる。

 服は汚れてしまうが、今はそんなことどうでもいい。

 

「ううう」

 

 大好きなトレーナーを泣かせた。

 

「うううううう」

 

 大好きな人を悲しませた。

 

「ううううううう」

 

 そんな自分が……許せない。

 

「うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

 冷たい雨の中、わたしは大声で泣いた。

 泣くことしかできなかった。

 

<><><><>

 

 涙が枯れるまで泣いたわたしはゆっくりと立ち上がる。

 

「もう……負けない」

 

 白雪トレーナーを二度と悲しませない。

 白雪トレーナーを二度と泣かせない。

 そのためなら勝ち続ける。

 絶対に負けない。

 

「もう楽しく走るハルウララ(わたし)はいらない」

 

 これからは勝利のために生きる。

 勝利のためだけに走り続けよう。

 そのためなら……わたしが好きだったハルウララを捨てる。

 

「勝つためなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

「化物になってやる」




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