桃桜の魔王   作:グレンリアスター

15 / 28
魔王は捨てる

 レースとウイニングライブを終えたわたしは白雪トレーナーと一緒にトレセン学園に帰った。

 トレーナー室に到着すると、白雪トレーナーはすごく心配そうな顔でわたしに尋ねる。

 

「ウララさん……どうしたの、あの走り?ライブの時も別人のようだったよ」

「……トレーナー」

「なに?」

「わたし……これから勝ち続けるよ」

 

 わたしの言葉を聞いて、白雪トレーナーは目を大きく見開く。

 

「トレーナーがわたしを選んでよかったって思えるウマ娘になるよ」

 

 もう白雪トレーナーを悲しませたりしない。

 そのためなら勝利という結果を生み出す機械になってみせる。

 レースも、ライブも支配する魔王になるよ。

 

「だから……ずっと見てて」

「ウララさん」

「それと……今回のレースで1着を獲ったからトレーニングマシンが使えたり、すごく走れる秘訣の本が借りられるんだよね?」

「そ、そうだね」

「なら今すぐそのトレーニングマシンを使って、本を読もう」

「い、今から!?」

「うん。一秒でも早く強くなりたい」

 

 もう負けないために、鍛え続ける。

 だって弱い自分は捨てたのだから。

 楽しく走るだけのあのハルウララはもういない。

 これからは……勝ち続けるウマ娘の魔王になる。

 

<><><><>

 

 それからわたしは新たなトレーニングマシンで己を鍛え、走る秘伝の本を読んだ。

 おかげで前より強くなったのが分かる。

 次のレースはG1……絶対に勝ちに行く。

 そのためには……アレを捨てないと。

 

「……」

 

 トレーナー室のゴミ箱の前で、わたしは……勝負服を持ったまま立っていた。

 赤い鉢巻きとピンクの体操服……これはハルウララの大切な勝負服。

 わたしが……俺が好きなハルウララの衣装。

 だけど……もうこの勝負服はいらない。

 弱い自分はいらないんだ。

 だから、

 

「さよなら……弱いハルウララ(昔のわたし)

 

 わたしは勝負服をゴミ箱に入れ、蓋を閉めた。

 感情を捨てたからか……なにも感じない。

 

「これで……いいんだ」

 

 すでに注文してある。

 魔王となったわたしに相応しい勝負服を。

 もう弱い自分はいない。

 今、いるのは……永遠に勝ち続けるウマ娘の魔王だ。

 

「さて……トレーニングを始めよう」

 

 わたしはトレーニング用の体操服に着替え、トレーナー室から去っていった。

 

<><><><>

 

 トレーニングを行うために、トレーナー室から去っていったハルウララ。

 誰もいないトレーナー室に二人のウマ娘が入ってきた。

 

「「……」」

 

 二人のウマ娘はゴミ箱の蓋を開け、ピンクの体操服と赤い鉢巻きを取り出す。

 そして彼女達は……なにも言わずトレーナー室から出て行った。




 読んでくれてありがとうございます。
 よかったら感想と高評価をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。